日本最強、錆白兵の友達   作:113(いちいちさん)

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第拾漆話 極限環境訓練

 復帰した炭治郎は破竹の勢いで柱稽古を突破していた。

 宇髄による基礎体力向上訓練から始まり、時透による高速移動稽古、甘露寺による地獄の柔軟、伊黒による太刀筋矯正訓練をたったの二週間足らずで突破したのである。

 

 そして実弥による無限打ち込み稽古において、実弥と玄弥の兄弟喧嘩とはとても呼べない殺伐とした対話に玄弥を庇い割り込んだ結果、実弥と炭治郎の二人には接触禁止令が下されたのである。

 

「巻き込んで悪かった善逸」

「いや、そのおかげで地獄の稽古から抜け出せたんだからむしろ感謝してるよ」

 

 偶々巻き込まれた結果、炭治郎と共に強制的に次の稽古に回された善逸は歩きながら確認する。

 

「次の稽古は炎柱と水柱の合同だったよな?」

「そうだね、どんな稽古かな?」

「煉獄さんの稽古は慣れてるし、鱗滝さんも優しそうだから楽勝だよきっと!」

 

 雑談しながら森を抜けるとそれなりの広さの湖が広がっていた。

 湖の辺には焚き火が焚べてあり、側には二人の隠と真菰が立っていた。

 

「よく来たね炭治郎、それに我妻君だね?」

「お久しぶりです!」

「ここで待ってて、先にあの子達の番だから」

 

 そう言って歩き出す真菰。湖の端にはそこそこな高さの崖があり、その上に六人の隊士が木刀を持ち一列に待機していた。

 

「じゃあ行くよ、えいっ」

『『『えっ?うわあああっ!?』』』

ザバアアアン!!

「「ええええっ!?」」

 

 なんと真菰が隊士達の背中を蹴り崖から湖に突き落としたのである。

 そして後を追う様に自身も飛び込む真菰。

 

『『『ぐわああああっ!!』』』

 

 暫くすると大きな水柱と共に空中に吹き飛ばされる隊士達。彼らはそのまま湖の辺に打ち上げられると気絶した。

 

「風邪を引かない様、早く連れて行ってあげて」

「「はい!」」

 

 彼らは待機していた隠により担架に山積みにされ何処かへと運ばれて行った。

 

「今見た通り、水の中で私に攻撃を当てたら合格だよ?」

 

 突然の蛮行に恐怖する二人に対していつもの微笑で稽古の説明をする真菰。

 

「・・・もしも溺れたら・・・人工呼吸は口でお願いします」

「わかった、そうしよう」

「アンタじゃねぇよ!!」

「久しぶりだな炭治郎!」

「義勇さん!錆兎さん!」

 

 そこに何故か()()()()の隊士達を引き連れた義勇と錆兎が現れた。

 

「どうぞ姉さん」

「ありがとう」

「お二人はどうしてここに?」

 

 錆兎から渡されたタオルで顔を拭く真菰。炭治郎は錆兎と義勇の二人がここにいる事に疑問を持ち質問する。

 

「俺達は一足先に柱稽古を完了してな、こうして姉さんの手伝いをしてるんだ」

「そうなんですね!流石です!」

「丁度良かった。身体も汚れてるしこの子達も一緒にしようね」

 

 そうして炭治郎、善逸、隊士達を崖に連れて行き同じ様に蹴り落とす真菰であった。

 

「(クッ、寒さと流れで身体の自由が・・・何時ぞやの血鬼術よりも戦い辛い!)」

 

 川からの水の流れに押されてまともに動けない上呼吸もままならない炭治郎達のもとに真菰が飛び込んで来る。彼女はまるで水を得た魚の様に炭治郎達に近付く。

 

「(なんとか反撃を、水の呼吸陸の型・・・グッ!?)」

 

 水中でなんとか真菰に向かい木刀を振るもあっさり躱されると、お返しとばかりに木刀が振られ炭治郎達は水面に打ち上げられた。

 

「ゲホゲホ!駄目だ、全く歯が立たない・・・」

「死ぬかと思った・・・」

 

 悔しさを滲ませる炭治郎と顔面蒼白の善逸。

 他の隊士達も既に体験していた為なんとか気絶せずに全員自力で水から上がった。

 

「さあ、風邪を引かないよう煉獄君の所に案内してあげて?」

「はい!皆歩けるな?行くぞ」

「ゲホッ、はい!」

 

 先程担架で運ばれて行った隊士達とは違い、錆兎と義勇に自分の足でついて行く炭治郎達。

 隊士達は体力を温存する為か道中での会話は一切行われなかった。

 

「この匂い・・・煙?」

「木が燃える音・・・まさか山火事!?」

「心配するな、もう直ぐ着く」

 

 森を抜けると突如熱気が押し寄せて来た。

 

「よく来たな竈門少年!我妻少年!それに皆!」

 

 そこには燃え盛る炎を背に竹刀を持つ煉獄が仁王立ちで待っていた。

 

「「ええええっ!?」」

 

 驚愕する炭治郎と善逸の横を、先程の隊士達が今度は煤だらけで気絶した状態で運ばれて行った。

 

「俺の稽古は至って単純、この炎で囲まれた中で俺からの攻撃に耐え切ったら合格だ!」

 

 広場には円を描くように大量の薪が積まれ今も激しく燃え上がっており、炎と煙で反対側が殆ど見えなくなっていた。

 炭治郎達は一箇所だけ火の無い場所から広場の中央に移動する。

 

「(さっきと打って変わって熱と煙で何もしなくても体力がみるみる削られて行く・・・!熱せられた空気を吸うと肺が焼けそうで呼吸も制限される・・・!)」

 

 炭治郎は燃え盛る炎の中周りを警戒する。

 

「(煉獄さんの姿が見えない、焦臭くて匂いも追えない・・・っ!?)」

「ガッ!?」

 

 その時、隣に立っていた隊士の背後から煉獄が現れ竹刀で打ち倒された。そのまま次々と倒されて行く隊士達。

 

「善逸!」

「わかってる!」

 

 炭治郎と善逸は背中合わせになりお互いの死角をカバーする。

 その時、炎の中から何かが飛び出した。

 

「「!?」」

 

 二人の視線が捉えた物は煉獄では無く火の点いた薪だった。

 そこに背後から現れる煉獄。二人は咄嗟に防御しようとするも間に合わず一本取られてしまった。

 その後は真菰と煉獄の稽古を数回往復しその日の訓練は終了となった。

 

 その日の夜。炭治郎達は湖の側にある小屋にて夕食を摂っていた。ちなみに食事は真菰と錆兎、義勇の三人の手作りである。

 

「今日の献立はご飯と焼き魚、それと黒兄が差し入れてくれたさつまいもの味噌汁だよ」

わっしょい!!兄ぃの作るさつまいもは絶品だ、皆も味わってくれ」

「黒兵衛さんが作ってるんですか?」

「竈門少年は知らなかったか、あの人の生家は百姓の家系だ」

「そうなんですね、あんなに強いからてっきり煉獄さんみたいな剣士の家系だと思ってました」

 

 炭治郎の疑問に答える煉獄。続く炭治郎の言葉に他の隊士達も頷く。

 

「任務の合間に墓参りと畑仕事をして、収穫できた野菜を偶に差し入れてくれるんだ」

「墓参りですか?」

「ああ、両親と妹のな・・・あの人の家族は鬼に殺された」

「「!?」」

 

 煉獄の言葉に驚く炭治郎達。

 

「鬼殺隊では珍しくない話だよ。でも黒兄は私達と違って家族の仇は自分で取った凄い人」

「父の話では、当時まだ十二だった兄ぃは包丁一本で鬼を倒し、そのまま家族を弔っていたらしい」

「十二歳で!?やっぱりおかしいよあの人!?」

 

 二人の話を聞き驚愕する善逸。

 

『そうか、妹か・・・お互い惨めだなぁ』

「(あの時の言葉はこの事だったのか・・・)」

 

 炭治郎は彼と初めて出会った時の言葉を思い出していた。

 

「だからかな、黒兄は私達の事も本当の弟妹みたいに良くしてくれたの」

「俺達の世代はあの人の世話になった者も多くてな、お館様が鬼殺隊の父であるならあの人は鬼殺隊の兄と言えるな!」

 

 煉獄の言葉に耳を傾けていた隊士達の中で黒兵衛と接点がある者は「確かに・・・」と頷いていた。

 

 

 

 稽古開始から三日後。

 炭治郎は既に水中での戦い方のコツを掴んでいた。

 

「(水の流れに逆らうな、合わせろ!)」

 

 炭治郎は他の隊士達を倒し近付いてくる真菰の姿を捉える。真菰もこれまでとは違う気配に真剣な表情になる。

 

「(最小限の空気で最大限の一撃を!!)」

 

「(ヒノカミ神楽 斜陽転身(しゃようてんしん)!!)」

「!?」

 

 真菰が斬りかかる瞬間、炭治郎は身体を上下反転しそれを避けるとカウンターを仕掛けた。

 技を放った衝撃により巨大な水柱が上がり二人纏めて水面に打ち上げられた。

 

「ゲホゲホ!どうなっ・・・」

「おめでとう炭治郎」

「えっ?」

 

 自分自身も状況が分からない炭治郎に対して水面に浮かんだ真菰が微笑みながら右手を掲げると、彼女の羽織の袖が僅かに裂けていた。

 

「これで私の稽古は合格だよ」

「で、でも掠っただけですよ?」

「ううん、今の炭治郎なら水の中でも十分戦える。だから大丈夫。煉獄君の稽古、頑張ってね。」

「・・・はい!」

 

 真菰の笑みに母親の顔が重なり一瞬見惚れるが、力強く返事をする炭治郎であった。

 

 真菰の稽古を終了し、煉獄との稽古に励む炭治郎。

 

「炎と煙の僅かな動きに集中するんだ」

 

 煉獄が移動する度に僅かに揺れる煙と炎、そして匂いを追う炭治郎。

 そして煉獄が飛び出すよりも一瞬速く反応し技を放った。

 

ヒノカミ神楽 灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)!!

「なんと!?」

 

 炭治郎の斬撃を正面から竹刀で受け止める煉獄。

 驚愕の表情だった煉獄は笑みを浮かべる。

 

「今のは中々危なかった・・・合格だ!」

「えっ!?」

「これにて極限環境訓練は完了だ!今日はゆっくり休んで明日から次の稽古に進みたまえ!」

「でもまだ煉獄さんに一本も入れてませんよ?」

「稽古の目的は俺に勝つ事では無く炎の中でも戦えるようにする事だ。竈門少年が戦える事は十分証明された」

 

 そう言って煉獄は炭治郎の肩に手を乗せる。

 

「初めて出会った時から見違えるように強くなった。竈門少年、君は俺の誇りだ!」

「ッ・・・はい!煉獄さんの継子として恥ずかしくない様、これからも精進します!」

「うむ、その意気だ!」

 

 その後、炭治郎に感化された善逸も本来の実力が出せたことで何とか合格し、二人揃って次の稽古に進む事ができた。

 

 

 

 極限環境訓練の翌日。炭治郎と善逸は岩柱の稽古を受ける為深い山奥を進んでいた。

 

「滝だ!!人がいる・・・」

『『『如是我聞一時仏在舎衛国祇樹給孤独園』』』

 

 修業場に辿り着いた二人の眼前には、念仏を唱えながら滝行をする伊之助と隊士達の姿があった。

 

「「うわあああっ!?」」

心頭・・・滅却すれば・・・

「「!?」」

火もまた涼し・・・

 

 声の方向に振り向くと、そこには丸太三本に大きな石を四つぶら下げた物を肩に担ぎ、その周りを火で炙る悲鳴嶼の姿があった。

 

「ようこそ・・・我が修業場へ・・・」

「「うわああああっ!?」」

 

 

 

 遂に最終関門に辿り着いた炭治郎達、果たしてこの難題を見事達成する事ができるのでしょうか。




大正コソコソ噂話
 艶黒兵衛人物録
・階級 :川柱
・年齢 :35歳 
・誕生日:9月6日
・身長 :195cm
・体重 :100kg 
・出身地:茨城県、行方市
・趣味 :剣法、菜園
・好きなもの:餡団子
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