日本最強、錆白兵の友達   作:113(いちいちさん)

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第壱話 明治の世、鬼との遭遇

 俺の名前は艶黒兵衛、とある田舎の農民だ。

 明治と呼ばれる時代に転生してはや十二年、身長も五尺六一寸にまで伸び、黒髪に毎日の農作業で日焼けした褐色肌と前世に近い見た目に成長した。

 同姓同名だった為最初は生まれ直したのかと思ったが、両親の顔と名前も別人で更に前世は三兄弟の末っ子だったのに対し今は妹と二人兄妹な為、たまたま名前も見た目も同じな別人に生まれ変わったらしい。

 俺は輪廻転生など信じていなかったがどうやら本当にあるらしい。唯、何故前世の記憶が残っているのかは分からないが。

 まあ難しい事はよく分からないし考えても無駄なので、心機一転第二の人生を楽しんでいる真っ最中だ。

 それにしても前世は剣一筋に生きていた訳だが、農民というのも案外悪くない。最初の頃は一歳にして突然流暢に喋りだしてドン引かれたり、一人で田起こしを一日で終わらせてドン引かれたり、薪を作る為に丸太を丸々一本肩に担いで山から降りてきてドン引かれたり、晩飯にと猪を素手で狩ってきてドン引かれたり、剣術稽古と称して丸太で素振りをしてドン引かれたりしていたが、今では家族も村人も慣れて気にしなくなり寧ろ力仕事などに助っ人として積極的に呼ばれる様になった。

 そんなこんなで二度目の人生を満喫している訳だが、剣以外で今最も夢中になっていることは今年九歳になる妹の”黒子(くろこ)”だ。

 これがもう可愛くて仕方ない。俺の事をクロ(にい)と呼び四六時中着いてまわって俺の仕事を手伝ってくれている。綺麗な黒髪黒眼で今は可愛いが将来は必ず美人になっているだろう。無邪気な性格はこなゆきを思い出す。

 

「クロ兄あれやって!」

「おうわかった!」

 

 黒子との最近のお気に入りの遊びは、彼女を背中におぶって木の上や岩場を飛んだり跳ねたりと障害物を避けながら山の中を全力疾走する事だ。

 黒子は目と反射神経が良く、たまに飛んでくる落ち葉や枯れ枝を自分で避けてくれる。

 そんな黒子は赤ん坊の頃から肝が座っていて、昔俺が山の主である猪男(ししお)(左目に傷のある巨大な猪を勝手にそう呼んでいる)とサシで勝負をしてる時、そういえばまだ赤ん坊の黒子をおぶったままだったのを思い出し振り返ると、黒子は満面の笑顔で笑っていた。

 その姿を見て、将来黒子は俺に並ぶ剣士になると確信した(その後両親からこっぴどく叱られた)。

 今では剣の修業もつけてやっており、流石にまだ丸太は振れないが俺が自作した木刀を振る姿は何とも様になっており才能を感じる。

 

「いつか私もクロ兄みたいになれるかな?」

「きっとなれるさ!俺が保証する!」

 

 そんな仲睦まじい兄妹を見て両親は、

 

「「(どうか黒子は普通の女の子になりますように)」」

 

 と願うのであった。

 なお、全力疾走する黒兵衛の背中に長時間掴まる事ができている時点で既に普通じゃない事に気付かない二人であった。

 

 

 

 そんなこんなである日の夜。隣の家の爺さんが風邪に罹ってしまったらしく隣町の病院に行かなくてはならなくなった。

 普通なら徒歩で半日かかる距離だが、俺が走れば一時間もかからないので爺さんを背負って行く事にした。

 既に真夜中なので初めは心配した両親だったが、今までの事を思い出しまぁコイツなら大丈夫かと送り出す事にした(妹はそもそも心配すらしていなかった)。

 こうして俺は見送りに来た家族に手を振り、爺さんを背負って病院へと走って行った。

 

 これが最後の別れになるとも知らずに。

 

 

 

「思ったより軽い風邪で良かった」

 

 爺さんを病院に預けた俺は家に帰る為夜道を走っていた。提灯は持っていたが走るのに邪魔なので消している。明かりを点けずとも夜目が利く為月明かりだけでも問題ない。

 

「明日爺さんを迎えに行けば問題な・・・ん?」

 

 家に近付くにつれ違和感を感じた。何かとてつもないことが起きている、そんな気がする。

 近付くにつれて違和感は大きくなるそして僅かに漂う匂いに気付く。

 

「・・・血!?」

 

 血の匂いに気付いた俺は地面が抉れるのも気にせず全力で走った。

 

 

 

「・・・・・・」

 

 家にたどり着いた俺が見たものは壊された玄関に濃い血の匂い、そして・・・

 

何だ?まだ家族がいたのか?

 

 頭から角を生やした四本腕の怪物、だった。

 月明かりに照らされた家の奥を見ると、血溜まりの中にズタズタに引き裂かれた両親の死体、そして・・・

 

お前()中々美味そうじゃねぇか?

 

 鬼の手に握られた黒子の右腕を見つけた。

 

お前、黒子をどうした?

黒子ぉ?ああ、こいつの事か

 

 そう言うと鬼は手に持っていた右腕を見せびらかすように前に出した。

 

喰ってやったぜ?

 

 その言葉を聞いた瞬間、黒兵衛は今生で初めてプッツンした。

 小刻みに震える黒兵衛を見て恐怖で怯えていると思った鬼は話を続ける。

 

このガキ生意気にも俺を包丁で刺しやがったんで腕を千切ってやった

 

 良く見ると鬼の肩に包丁が深々と刺さっていた。

 

するとそのガキ床を這いずりながらこう言ってたぜ?クロ兄助けて、お父ちゃんとお母ちゃんを助けてってな?

「・・・・・・」

その後は足からゆっくりと喰ってやった。痛みと恐怖で歪んだ顔がじっくり見れた上に、久々の稀血(まれち)だったから最高の気分だぜ?

 

 ピクリとも動かなくなった黒兵衛に包丁を抜き捨てた鬼が近付く。

 

安心しな、直ぐに家族に会わせてやるからな

 

 鬼が黒兵衛に手を伸ばしたその時、彼は鬼の視界から一瞬で消えた。

 

何!?グアッ!?

 

 気が付くと鬼は黒兵衛に横顔を殴り飛ばされていた。

 

何が起きた!?

 

 ただの人間だと思っていた相手に殴り飛ばされて混乱する鬼、すると今度は包丁を手にした黒兵衛が現れる。

 

死ね

 

 そう短く言うと鬼に向かって走り出す。鬼は迎え撃とうと身構えるが、既に彼は鬼の後ろへと移動していた。そして瞬く間に鬼の身体はバラバラに切り裂かれ二七二個の肉片になった。

 

馬鹿な・・・稀血でさらに強くなった俺が唯の人間如きに・・・

「まだ生きてんのか?なら何処までやれば死ぬんだ?」

 

 そう言いながら振り下ろされる包丁により鬼の身体はさらに切り裂かれ、二○○○個の肉片にされた頃にはとうとう動かなくなった。

 朝日が昇り肉片が塵になる中、黒兵衛は家族の遺体を埋葬し手を合わせる。

 

「(校倉もこんな気持ちだったのかねぇ・・・)」

 

 そんな事を考えていると、背後から足音が近づいて来た。

 

「その鬼はお前が殺ったのか?」

「・・・右衛門左衛門?」

 

 背後から聞き覚えのある声が聞こえ振り向くと、そこには炎が描かれた白い羽織を身に着けた、炎のように流れる金髪金眼の男が立っていた。

 

「・・・刀?」

 

 そしてその腰には炎を象った鍔をつけた一本の刀が差されていた。それを見た俺の手は自然と腰の包丁に向かう。

 

「おっと、そう身構えるな。俺は”煉獄槇寿郎(れんごくしんじゅろう)”と言う。鬼を斬る為にここへ来た」

「鬼?」

「そうだ。しかし、遅かったみたいだが・・・」

 

 槇寿郎は盛られた土と血だらけの黒兵衛を見て眉間に皺を寄せる。

 

「お前、名前は?」

「・・・黒兵衛」

「他に身内は?」

「いねぇよ・・・」

 

 黒兵衛の言葉に暫し思考した後槇寿郎は顔を上げた。

 

「黒兵衛、”鬼殺隊(きさつたい)”に来ないか?」

「鬼殺隊?」

 

 槇寿郎の言葉に首を傾げる黒兵衛。

 

「ああ。鬼を狩り、人々を守る。それが俺達鬼殺隊だ」

「・・・・・・」

「鬼殺隊の殆どは家族を殺され鬼に恨みを持つ者ばかりだ。それに”日輪刀(にちりんとう)”も使わず包丁一本で鬼を細切れにできるお前なら、あっと言う間に”(はしら)”に成れる程の才能を持っている。どうだ?」

 

 槇寿郎の言葉に黙り込む黒兵衛は、しばらくして口を開いた。

 

「・・・刀を」

「ん?」

「鬼殺隊に入れば、刀を振れるのか?」

 

 親父、お袋、黒子、すまねぇ。俺は人でなしかもしれねぇ。だってよぉ・・・

 

「俺を、鬼殺隊に入れさせてくれ」

 

 家族が死んじまったばっかだってのに、刀が振れると聞いてワクワクが止まらねぇんだからよ。

 

 

 

 こうして黒兵衛は一○○○年の永きに亘る大河の様な運命に流されて行く事になったのでございます。

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