「ついに・・・私の・・・元へ来た・・・今・・・目の前に・・・鬼舞辻無惨・・・我が一族が・・・鬼殺隊が・・・千年・・・追い続けた・・・鬼」
産屋敷耀哉と鬼舞辻無惨が遂に相対する。
目の見えない耀哉はあまねに彼の容姿を聞き、どこか納得した様な声を出す。
「そうか・・・そう・・・君は・・・来ると・・・思っていた・・・必ず・・・」
「私は心底興醒めしたよ産屋敷。身の程も弁えず、千年にも渡り私の邪魔ばかりしてきた一族の長がこの様なザマで・・・」
無惨は満身創痍の耀哉を見てそう吐き捨てる。
「醜い、何とも醜い。お前からは既に屍の匂いがするぞ、産屋敷」
「・・・そうだろうね・・・私は・・・半年も前には・・・医者から・・・数日で死ぬと言われていた・・・」
耀哉は既に死人同然の身体を気力だけで無理矢理起こす。
「それでもまだ・・・私は生きている・・・医者も・・・言葉を失っていた・・・」
身体中から出血してもなお、上半身を起こし無惨を睨みつける耀哉。
「それもひとえに・・・君を倒したいという一心ゆえだ・・・無惨・・・」
「その儚い夢も今宵潰えたな、お前はこれから私が殺す」
「君は・・・知らないかも知れないが・・・君と私は・・・同じ血筋なんだよ・・・」
耀哉は鬼舞辻無惨に自らの一族について語った。
無惨が鬼になった後、呪われたかの様に産まれてくる子供が急死する様になった事。無惨を倒す事に心血を注ぎ続ける限りは一族が絶えないと神主から助言された事。神職の一族との間に子供を作る事で子供の寿命は伸びたが、それでも三十年と生きられない短命の一族となった事。
全てを聞いた無惨であったが、彼は興味なさげに口を開く。
「迷言もここに極まれりだな、反吐が出る。お前の病は頭にまで回るのか?そんな事柄には何の因果関係もなし、なぜなら・・・」
「私には何の天罰も下ってはいない。何百何千という人間を殺しても私は許されている。この千年、神も仏も見た事がない」
彼はそれがさも当然だとばかりに言い放つ。
しかし、耀哉の考えは違っていた。
「君は・・・その様にものを考えるんだね・・・だが、私には私の考え方がある・・・無惨・・・君の夢は何だい?」
耀哉からの予想外の質問に沈黙する無惨。
「この千年間・・・君は一体・・・どんな夢を見ているのかな・・・」
「(・・・奇妙な感覚だ。あれ程目障りだった鬼殺隊の元凶を目の前にして憎しみが湧かない、むしろ・・・)」
「「ひとつとや一夜明くれば、賑やかで、賑やかで・・・」」
「(・・・?)」
「「お飾り立てたり松飾り、松飾り、二つとや二葉の松は・・・」」
そこには鬼舞辻無惨を前にして庭園で遊ぶ産屋敷家の長女と次女、"ひなき"と"にちか"の二人がいた。
「(・・・この、奇妙な懐かしさ、安堵感・・・気色が悪い)」
自身に生まれた謎の感覚に戸惑う無惨。
「当てようか・・・無惨・・・君の心が私には見えるよ・・・」
「?」
耀哉の声に無惨の思考が途切れる。
「君は永遠を夢見ている・・・不滅を夢見ている・・・
「・・・その通りだ、そしてそれは間もなく叶う。禰 豆子を手に入れさえすれば」
「君の夢は叶わないよ無惨」
「禰 豆子の隠し場所に随分と自信があるようだな?しかし、お前と違い私にはたっぷりと時間がある」
「君は・・・思い違いをしている」
「何だと?」
耀哉の言葉に不機嫌になる無惨。彼は気にせず話を続ける。
「私は永遠が何か・・・知っている。永遠というのは人の想いだ。人の想いこそが永遠であり、不滅なんだよ」
「下らぬ・・・お前の話には辟易する」
耀哉の話にさらに機嫌を悪くする無惨。それでも彼の語りは終わらない。
「君は誰にも許されていない、この千年間一度も・・・そして君はね無惨、何度も何度も虎の尾を踏み、龍の逆鱗に触れている」
耀哉はこれまで散って行った
「私を殺した所で鬼殺隊は痛くも痒くもない。私自身はそれ程重要じゃないんだ」
「・・・・・・」
「この・・・人の想いと繋がりが、君には理解できないだろうね無惨。何故なら君は、君達は・・・」
「君が死ねば全ての鬼は滅ぶんだろう?」
確信を持って言い放った耀哉の言葉に無惨は青筋を立てる。
「空気が揺らいだね・・・当たりかな?」
「黙れ」
「うんもういいよ、ずっと君に言いたかった事は言えた」
怒りを露わにする無惨に対して耀哉は満足そうに答える。
「最期に・・・ひとつだけいいかい?私自身はそれ程重要ではないと言ったが・・・私の死が無意味な訳ではない。私は幸運な事に鬼殺隊・・・特に柱の子達から慕ってもらっている。つまり私が死ねば今まで以上に鬼殺隊の士気が上がる・・・」
「話は終わりだな?」
「ああ・・・こんなに話を聞いてくれるとは思わなかったな・・・ありがとう、無惨」
耀哉を始末しようと無惨が腕を伸ばした、その時・・・
シュパッ!!
突如畳の下から斬撃が放たれ、無惨の頸と腕が切断された。
しかし、断面から血管が伸びると驚異的な速さで接合され瞬く間に傷が完治する。そして無惨は中庭まで跳躍し間合いを取る。
「やっぱり
「悪いがアンタが用意した花火は没収させて貰った」
床下から現れたのは川柱、艶黒兵衛その人であった。
「初めましてだな、鬼舞辻無惨さんよ・・・本当に
「貴様か艶黒兵衛・・・呼吸も脈拍も、全く気配を感じなかったがどうやって隠れていた?今まで散々私の邪魔をしてくれたな?貴様は産屋敷の次に邪魔な相手だ」
無惨は黒兵衛の登場に内心驚愕するが、全く表に出さずに口を開く。
ドドドドドドッッ!!
「!?」
そこに庭や建物の一部に偽装した鉄筒から大量の金属片が発射される。これらは質の悪い玉鋼や折れた日輪刀などで作られた即席の散弾銃である。
「こんなもの・・・ッ!?」
ドンッッ!!
金属片に切り裂かれる身体を一瞬で回復する無惨の足元が突然爆発する。
この爆弾は産屋敷家族に被害が及ばないよう上方にのみ爆風を送る指向性地雷であり、それでも防ぎきれない破片や小石は黒兵衛が全て撃ち落としていた。
「随分と用意周到の様だが、この程度で仕留められると思われていたのは心外だな・・・ッ!?」
服はボロボロだが肉体は無傷な無惨が炎の中現れるが、その周りに謎の肉片が浮かび上がる。
「(肉の種子?・・・血鬼術!!)」
ビシイッ!!
肉片は巨大な棘となり無惨の体を貫く、更に棘の一本一本が無数に広がり無惨の体を完全に固定する。
「(こんなもの吸収すれば・・・何!?)」
「吸収しましたね無惨!私の
体に刺さった棘を吸収しようとする無惨の腹部に隠蔽の血鬼術により近づいた、無惨の支配から逃れた数少ない鬼である”
「珠世!!何故お前がここに・・・そうか!目眩しの血鬼術で近づいたか!」
そして気がつくと産屋敷家族が忽然と姿を消していた。
無惨が棘で固定されたと同時に、珠世の付き人である”
「拳の中に何が入っていたと思いますか?鬼を人間に戻す薬ですよ!!どうですか効いてきましたか?」
「そんなものができるはずは・・・」
「完成したのですよ!状況が随分変わった!私の力だけでは無理でしたが!!」
ゴウン・・・ゴウン・・・ゴウン・・・ゴウン
珠世の発言に周りの状況も忘れて動揺する無惨。
ゴウンゴウンゴウゴウゴウゴウゴウゴウ
「斬って駄目なら消してみろってな・・・やっちまえ行冥!!」
「南無阿弥陀仏!!」
ゴシャアァ!!!
無惨の背後から現れた悲鳴嶼の持つ鎖に繋がれた
しかし、僅かに再生速度が阻害されるも残った下半身から肉体が形成される。再生した無惨の表情には明らかな苛立ちが込められていた。
「(お館様の言う通り、日光でしか倒せないという事か)」
「(なら、日の出までコイツを足止めするまでだな?)」
無惨の前後から鬼殺隊の二大巨頭が待ち構える。無惨は身体中から荊の様な触手を放ち攻撃するが、二人はそれを難なく防御し、さらには騒ぎを聞きつけた柱と継子達が集結する。
「無惨だ!!鬼舞辻無惨だ!!奴は頸を斬っても死なない!!」
悲鳴嶼の簡潔かつ的確な情報共有が行われる。
「(・・・ッ!!)」
「(よもや!!)」
「(コイツがァ!!)」
「(あの男が!!)」
「(あれが・・・!!)」
「(あの野郎が!!)」
「(あれが・・・)」
「「(奴が!!)」」
「(鬼舞辻!?)」
「無惨!!」
炭治郎の叫びと共に一斉に技を放つ。
「霞の呼吸・肆ノ型・・・」
「炎の呼吸・壱ノ型・・・」
「花の呼吸・壱ノ型・・・」
「蛇の呼吸・壱ノ型・・・」
「恋の呼吸・伍ノ型・・・」
「「「水の呼吸・参ノ型・・・」」」
「風の呼吸・漆ノ型・・・」
「音の呼吸・壱ノ型・・・」
「ヒノカミ神楽 陽華突・・・」
「・・・フッ」
べん!!
『『『『『!?』』』』』
どこからともなく鳴り響いた琵琶の音と共に、炭治郎達の足元に障子が現れ吸い込まれる様に落下する。
その先には城内の様な広大な空間が広がっていた。
「これで私を追い詰めたつもりか?貴様らがこれから行くのは地獄だ!!目障りな鬼狩り共、今宵皆殺しにしてやろう!!」
落下する隊士達を見下しながら言う無惨に対して炭治郎が叫ぶ。
「地獄に行くのはお前だ無惨!!絶対に逃がさない!!必ず倒す!!」
「やってみろ・・・できるものなら!竈門炭治郎!!」
遂に鬼舞辻無惨を追い詰めたと思いきや逆に追い詰められる鬼殺隊、果たして炭治郎達はこの鬼の巣窟から生きて帰ることができるのでありましょうか。
大正コソコソ噂話
・天狗部隊
先代産屋敷当主の死後、黒兵衛と槇寿郎の二人により極秘裏に設立された産屋敷家を逃がす為だけに作られた隠の精鋭部隊であり、逃げ足だけなら柱に匹敵する。
総勢二十人程の小規模部隊であり、産屋敷家に存在を知られないよう部隊の事を知る者は黒兵衛、槇寿郎、悲鳴嶼、隠のトップの四人だけである(槇寿郎引退後は悲鳴嶼が引き継いでいる)。
運営資金は黒兵衛個人が鬼殺隊から支払われている給料の約七割を使っている。産屋敷家に対しても秘匿している理由は、彼らが柱を護衛に付けない理由と同じで優秀な人材を自分達のためだけに使わせないので存在を知られると解体される恐れがあるから。
なお耀哉は部隊の存在を薄っすらと認識していたが、言った所で自分と同じく黒兵衛が止まる筈がないと思い黙っていた(黒兵衛は他の柱達と違いお館様の命令だろうと場合によっては逆らう時がある)。
ちなみに部隊名は天狗の神隠しにあやかっているのと鱗滝リスペクトである。