日本最強、錆白兵の友達   作:113(いちいちさん)

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第弐話 鬼殺隊の大黒柱

 俺の名前は艶黒兵衛。身長六尺四三寸、黒髪のギザギザ逆立つ短髪、日焼けした褐色肌の筋肉隆々マッチョマンの鬼殺隊士だ。

 鬼殺隊に入隊してはや二十年、色々な事があったので、ここらで一旦振り返って見ようと思う。

 

 まず、入隊には育手(そだて)と呼ばれる人の元で修行し、最終選別を合格する必要があるらしい。そこで槇寿朗から元水柱の”鱗滝左近次(うろこだきさこんじ)”という育手を紹介して貰った。

 早速鱗滝の爺さんの師事を受けたのだが、俺が既に独自の完璧な型を会得している事にたいそう驚かれた。何処で覚えたのか聞かれたが、流石に前世で覚えたとは言えなかったので見様見真似で独学で覚えた事にした。

 そして更に驚かれたのは、俺は既に”全集中の呼吸(ぜんしゅうちゅうのこきゅう)”と”常中(じょうちゅう)”という技術を会得していたという事らしい。

 話を聞くと鬼殺隊士は全集中の呼吸で身体能力を強化し戦っているそうで、呼吸には幾つかの流派がありその中でも水の呼吸に近い呼吸を俺は既に会得しているらしい。

 正直俺は前世と同じ様に生きているだけで別に何か特別なことをしているつもりはないが、簡単に言えば生きているだけで全集中・常中を行っているということらしい。

 俺は前世から技名などは特に考えていなかったのだが、呼吸と型が名無しは格好悪いのでとりあえず”川の呼吸(かわのこきゅう)”と名付ける事にした。

 実技に関しては既に教える事は何も無いという事で、鬼殺隊の歴史などの座学を学び、諸悪の根源である”鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)”についても知る事となった。

 

 そんなこんなで弟子入りしてから一月程で最終選別に向かうことになった。

 お前に願掛けは必要ないだろう、と言われつつ貰った鱗滝の爺さんの手作り狐面を被り最終選別に参加した俺は、試験会場である藤襲山(ふじかさねやま)にいる鬼を全て狩り尽くしたことで七日経つ前に合格した。

 途中、鱗滝がどうたら言う変な手だらけの鬼がいたが話に付き合う義理もないのでさっさと頸を落とさせて貰った。

 

 正式な鬼殺隊士になった事で専用の日輪刀を貰えることになり、持ち主によって色が変わるらしいので早速完成した刀を握った所、肌と同じ褐色に染まった。

 また、伝令係として”鎹鴉(かすがいがらす)”と呼ばれる人語を話せる鴉が一羽付く事になるのだが、それが何と白い鴉だった。

 名前は”白鴉(びゃくあ)”と言い鬼殺隊で育てたのでは無く、いつの間にか鎹鴉の群れに混じっていたらしい。白鴉は自身が決めた相手にしか付く気が無く、かといって追い出す訳にもいかず困っていた所、俺の合格を知るやいなや自分から立候補してきたらしい。

 そんなこんなでパートナーになった訳だが声を聞いて驚愕した。明らかに聞き馴染みがあるその声は前世の友達、錆白兵のハクそっくりだったのだ。しかも喋り方もござる口調なので、本気でハクの生まれ変わりかと思い色々と質問してみたのだが、無反応だったので他人(鴉)の空似だと思うことにした。

 因みにその見た目と口調から女性隊士に人気で、口癖は

 

「拙者にときめいてもらうでござる」

 

 である。

 やっぱりハクの生まれ変わりなのでは?

 

 こうして鬼殺隊に入った訳だが、実に十二年振りの刀という事で嬉しくなり調子に乗った俺は全国各地を周り鬼を狩りまくっていたのだが、その中には”十二鬼月(じゅうにきづき)”と呼ばれる鬼舞辻無惨直属の鬼がいて、その中の”下弦の鬼(かげんのおに)”と呼ばれる下桁六体の鬼が複数含まれていたらしく、その結果半年で鬼殺隊士の最高位である柱に選ばれる事になった。

 独自の呼吸である川から取って川柱となり、柱特権により日輪刀を新調できるとの事だったので試しに前世で使っていた軟刀・革を再現できないかと提案を送った所、なんと刀鍛冶の里長自らが製作に乗り出し、あのペラペラに薄い日本刀を完成させてくれたのだ。

 完成した刀は、前世で見た茶色い無地の革では無く、柄から鞘にかけて美しい水の流れが描かれており更に頭には”(かわ)”の文字が刻まれていた。

 この刀を見て俺はこれこそが薄刀・針の失敗作ではなく、一本の刀としての完成形、”日輪刀・鈹”なのかと一人感慨深いものを感じていた。

 

 

 

 そんなこんなで数年後。

 

 鬼殺隊のトップである産屋敷前当主が亡くなった為、その息子である”産屋敷耀哉(うぶやしきかがや)”が当主となった。耀哉君とは幼少期から交流があり前当主から後を託されていた為、槇寿郎と共に後見人の様な立場となり色々と支えて来た。特に”神籬(ひもろぎ)あまね”ちゃんと祝言を挙げた際には、必ず参加する為に担当地域の鬼を全滅させたりもした。

 

 とある孤児達が住む寺に鬼が出たという事で向かった所、二人の生存者を発見した。二人を鬼殺隊で保護し話を聞いた所、子供達の保護者をしていた”悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)”という青年が何と素手で鬼を朝まで殴り殺し続けていたという。正直今直にでも戦力として迎い入れたかったが、本人の意志を尊重し自分で決めて貰う事にした。

 彼は寺の子供達の様な犠牲者をこれ以上増やさない為にと鬼殺隊入りを決意してくれた。その後は驚異的な速さで成長して行き、一年で柱となり”岩の呼吸”使いとして”岩柱”に任命された。

 因みに後から知った事だが、実は盲目だったらしくもしも目が見えていれば俺をも超える剣士になっていただろうと思った。

 そしていつしか俺と行冥は”鬼殺隊の二大巨頭”と呼ばれるようになっていたのである。

 

 鱗滝の爺さんの弟子が鬼殺隊に入り、その後柱にまで上り詰め”水柱”に任命された。名を”真菰(まこも)”と言い、孤児だった所を鱗滝の爺さんに拾われ、本人の強い希望から弟弟子である”錆兎(さびと)”と共に鱗滝の爺さんの養子となったらしい。

 彼女は自分の兄弟弟子達に対して実の兄弟の様に接しており、呼吸は違えど一応兄弟子である俺の事も”クロ兄”と呼び慕ってくれている。そんな彼女を見ていると黒子の事を思い出して懐かしくなった。

 現在は鬼殺隊に入隊した錆兎とその親友である”冨岡義勇(とみおかぎゆう)”を継子(つぐこ)に取り育成中である。

 因みに普段はふわふわした幼そうな性格だが怒らせると柱の中で最も怖いらしい。

 

 ”宇髄天元(うずいてんげん)”と言う元忍が”音柱”に任命された。この時代にも忍がいるのかと思い実際に会ってみた所とんでもなく派手派手な男だった。真庭忍の時も思ったが少しは忍べ!と言いたい格好の奴ばかりで、逆に派手な恰好なのに忍べている事実こそが優秀な忍の証なのかとさえ思えてきた。

 そして彼には何と三人も妻がいると言うではないか!?俺は今まで初々しい恋人達に対して後方兄貴面する事に喜びを感じてきたが、一夫多妻制もまた良き物なり。

 そんなこんなで四人の仲を根掘り葉掘りしつこく聞こうとした結果、天元からは若干距離を置かれるようになってしまった。

 

 悲鳴嶼が助け、後に”花柱”となった”胡蝶(こちょう)カナエ”が”上弦の弐”と遭遇し戦闘になったと連絡があった俺は現場へ急行した。

 その後、上弦の弐を追い詰めるも重傷のカナエを置いて行く訳にもいかず取り逃がしてしまった。初めて上弦と交戦したがやはり下弦とは別格の強さだった。あれほどの脅威を取り逃がしてしまったのは痛かったが、耀哉君からは上弦と遭遇して五体満足で帰って来たのは褒められるべき事だと言われ、カナエの妹の”胡蝶しのぶ”から姉の命の恩人だと大変感謝されたので今は良しとする。

 ついでに彼女と仲が良かった”風柱”の”不死川実弥(しなずがわさねみ)”が療養中のカナエの下に血相を変えて飛び込んで来た事で二人の仲が少し進展した。

 

 柱になってはや十数年、遂に俺にも継子ができた。”伊黒小芭内(いぐろおばない)”と”甘露寺蜜璃(かんろじみつり)”の二人だ。小芭内は槇寿郎から、蜜璃ちゃんは槇寿郎の息子の”杏寿郎(きょうじゅろう)”と、煉獄親子からそれぞれ紹介された。

 二人の剣技は俺と近い所があり、それぞれ”蛇の呼吸”、”恋の呼吸”と派生して行き、最終的に二人は柱に任命され”蛇柱”と”恋柱”となった。

 小芭内は槇寿郎に助けられ鬼殺隊入りした訳だが、相当辛い目に遭ってきたらしく最初は全く信用されていなかったが、根気強く接する間に徐々に心を開いてくれた。

 逆に蜜璃ちゃんは結婚相手を探しに鬼殺隊に入隊したというぶっ飛びガールで、良い意味で天真爛漫な普通の女の子である彼女の存在は小芭内の心を開くのに大活躍してくれた。

 というのも何と小芭内は彼女に一目惚れしたらしく、かといって過去の体験から中々一歩踏み出す事ができずにいた為、後方兄貴面大好きな俺が色々とお節介を働いた結果、二人は恋人同士になった。

 といっても文通したりたまに二人で出かけたりする程度の可愛らしいものだが、後は時間が何とかしてくれるだろう。

 因みに小芭内の相棒である白蛇の”鏑丸(かぶらまる)”と白鴉は仲が良い。

 

 槇寿郎が柱を引退し杏寿郎が新たな”炎柱”となった。彼は俺を鬼殺隊に誘い、最も長く共に戦った頼れる戦友だったのだが、妻の”瑠火(るか)”さんが病死した直後から酒浸りになり、任務も疎かになってしまった。俺も彼女には世話になったので勿論悲しかったが、だからといって槇寿郎の豹変ぶりは異常であり、手負いの鬼を見逃そうとしていた時は流石の俺もプッツンし彼を完膚無きまでボコボコにしてしまった。

 結局その事がトドメとなってしまったようで彼はそのまま引退してしまった。

 俺と同世代だった最後の柱がいなくなってしまったのは寂しかったが、生きている内に引退できて良かったとも思っている。

 そんな父親とは対象的に息子の杏寿郎は真っ直ぐ過ぎる程真っ直ぐで近くにいるだけで火傷しそうになる快活な青年に成長した。彼とその弟の”千寿郎(せんじゅろう)”とは生まれた時から家族ぐるみの付き合いだった為、そんな彼が次代の柱になったのは感慨深いものを感じる。

 槇寿郎が抜け俺が柱の最古参になった結果、俺はいつの間にか”鬼殺隊の大黒柱”と呼ばれるようになっていた。

 

 あまねちゃんから”時透無一郎(ときとうむいちろう)”という少年を鍛えて欲しいとお願いされた。

 話を聞くと、彼は鬼に襲われ双子の兄を失い、目を覚ました彼は記憶喪失となっており更には後遺症により記憶を維持できない障害を抱えてしまっているらしい。

 無一郎との稽古は出会ったばかりのハクを思い出した。まあハクはもう少し素直で可愛げがあったと思うが・・・

 そんな彼はとんでもない剣の天才であり、初めて刀を握ってたった二ヶ月で柱にまで上り詰めてしまった。

 俺は前世の記憶があったからこそ半年で柱になれた訳だが、彼は正真正銘素人からここまで成長したのだ。話によると彼は歴代鬼殺隊最強の剣士の末裔らしい。

 因みに俺は歴代三位の強さと言われた。やはり上には上がいるんだなと納得した。

 

 

 

「次の指令でごさる」

 

 ある雪の降る冬の日、二十年来の相棒であるビャクからとある山に鬼が出たとの知らせを受け俺は向かう事になった。

 そういえばあそこには昔助けた三郎爺さんが住んでいる筈だ、急がねば。

 

 

 

 こうして次の任務に向かった先で、黒兵衛と白鴉はとある二人の兄妹と運命的な出会いを果たします。それにより永きに亘る戦いの歴史の歯車は大きく動き始めるのでございます。

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