日本最強、錆白兵の友達   作:113(いちいちさん)

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第肆話 那田蜘蛛山

 竈門兄妹と出会ってから早くも二年が経過した。

 その間お互いに色々なことがあった。炭治郎達は無事鱗滝の爺さんと出会うことができたのだが、修行して一年程過ぎた頃、たまたま里帰りしていた真菰と錆兎に鉢合わせし一悶着あったらしい。その後は鱗滝の爺さんの説得もあり何とか禰豆子は見逃され、真菰と錆兎の二人は任務の合間に炭治郎へ稽古をつけるようになったそうだ。

 錆兎は言わずもがな真菰も顔に似合わずスパルタな為心配だったが、炭治郎は気合と根性で乗り切り見事岩を斬ったという。

 その後は無事最終選別も乗り切り今は鬼殺隊として立派にやっているらしい。

 

 そういう俺はと言うと、何と舎弟ができた。

 名前は”獪岳(かいがく)”と言い、元鳴柱の”桑島慈悟郎(くわじまじごろう)”の愛弟子で雷の呼吸の使い手だ。多少性格に難ありだが、入隊して一年以上生き延びている優秀な隊士だ。

 出会ったきっかけは彼が鬼に不意打ちを仕掛けられたのを助けたからで、本人は自身の実力の伸びに悩んでおり性格の割には努力家で鍛錬を怠らない姿勢に俺は好感を持った。

 それと声がなんとなく七花に似ていて何だか放って置けず、いくらか助言をしたり刀を変えたりしてみた所、想像以上に実力が伸びたからかいつの間にか俺を”兄貴”と呼び慕い始めたのだ。

 呼吸や型が俺と全く違う為継子にはできなかったが、その代わり舎弟にしてくれと頼まれたので後方兄貴面が好きな俺は一つ返事で了承し、ついでにとある決め台詞を教えておいた。

 そんなこんなでたまに一緒の任務に就く事があるのだが、事あるごとに弟弟子についての愚痴を聞かされる為、どんな奴か一度会ってみたいと思うようになった。

 

 そんなこんなでこの二年間一度も炭治郎と会っていなかったので機会があれば顔を見せに行こうと思っていたのだが、まさかそれが柱合会議になるとはこの時は思っていなかった。

 

 

 

 

 

 鎹鴉からの指令で俺、竈門炭治郎はひょんな事から知り合った同期の”我妻善逸(あがつまぜんいつ)”と”嘴平伊之助(はしびらいのすけ)”の三人で”那田蜘蛛山(なたぐもやま)”へと向かっていた。

 のだが・・・

 

怖いんだ!!目的地が近づいてとても怖い!!

 

 案の定臆病な善逸が癇癪を起こし足止めをくらっていた。

 

うるさい!!男が喚くな見苦しい!!

「あっ!錆兎さん!」

「何だコイツら?全く気配がしなかったぞ?」

 

 善逸をどうにかしようとしていると、狭霧山で稽古をつけてくれた錆兎さんともう一人、黒髪で赤紫色の羽織を着た大人しそうな匂いがする青年が近づいて来た。

 

「こいつは俺の親友の義勇だ」

「・・・冨岡義勇だ」

「冨岡さんですね!初めまして!よろしく!」

「・・・ああ」

 

 義勇はそれだけ言うと黙ってしまった。何か気に障る事をしてしまったのかと心配する炭治郎にすかさず錆兎が補足する。

 

「義勇は口数が少ないが良い奴だから仲良くしてやってくれ」

「良かった、何か怒らせてしまったのかと」

ねえ君達メチャクチャ強そうな音するじゃん!!もうこれ俺いらないよね!!

「泣くんじゃない男だろ!!」

 

 二人の強さを感じ取った善逸が騒ぎ出し、それを錆兎が窘めようとする。

 

「俺がついて行った所で足手纏いになるだけだよ!!」

「いい加減にしろ善逸!錆兎さん達が困ってるだろ!」

「俺は行く!!お前はガクガク震えながら後ろをついて来な!!」

 

泣けば許されると思うなよ!!

「「「!?」」」

 

 今まで静観していた義勇からの突然の大声に固まる三人。

 

「泣いたところで事態は好転しない!!寧ろ悪化の一途を辿るのみ!!」

「足手纏いだと?その鍛え上げられた肉体は、研ぎ澄まされた神経は飾りか!?何故その力を振るわない!!」

「お前は()()()()()最終選別を突破したのだろう!!ならば鬼殺隊士としての職務を全うしろ!!」

「死ぬのが嫌なら鬼殺隊など辞めてしまえ!!だが、託されたものがあるのなら戦え!!」

 

 初対面の義勇からの突然の叱責に固まる善逸。

 義勇は言うだけ言うと炭治郎達を追い越し那田蜘蛛山へ歩みを進める。

 

「行くぞ錆兎」

「あ、ああ。お前がこんなに喋ったのは最終選別以来か?」

「ごめん善逸、俺も行くよ」

「あばよ!!」

 

 そうして一人置いて行かれた善逸であった。

 

 

 

 善逸を除く四人は山の入口に差し掛かると、一人の負傷した隊士を発見した。

 

「た、助けて・・・」

「大丈夫か!何があった?」

 

 錆兎が隊士に近付くと、突然その隊士の身体が何かに引っ張られるようにして浮き上がった。

 

()()()()()()!!俺にも!!」

「ッ!? 水の呼吸・壱ノ型 水面斬(みなもぎ)り!!

 

 錆兎は咄嗟に隊士の背中辺りを斬り払うと、一瞬切れた蜘蛛の糸のようなものが反射して見えた。

 吊り上げられた隊士はそのまま地面に落下しそうになるが、錆兎に抱えられ着地すると地面に優しく寝かされた。

 

「グフッ・・・ありが・・・」

「もう喋るな、傷に響くぞ」

「錆兎」

 

 寝かせた隊士の下に義勇が来て応急処置を始める。

 

「凄い、なんて速い判断力と技なんだ・・・流石錆兎さんだ」

「感心してる場合か!!俺達も行くぞ!!」

 

 炭治郎と伊之助も遅れて錆兎達の下に向かう。

 

「どうやら糸のようなもので操る血鬼術のようだな」

「処置は済んだ。行くぞ」

「この人はどうするんですか?」

「置いて行く」

「安心しろ、命に別状はない。それに後は”(かくし)”が引き継いでくれる」

「は、はい!わかりました!」

 

 負傷した隊士を置いて炭治郎達は山の奥へと進む。

 暫く進むと、負傷した三人の隊士と辺りを警戒する前髪分けの隊士を発見した。

 

「”村田(むらた)”!!」

「ハッ!?・・・錆兎!!冨岡!!良かった、助かった・・・」

 

 村田と呼ばれた隊士は錆兎と義勇を見て安堵の表情を見せる。

 そして炭治郎と伊之助にも気付くと驚きの声を上げる。

 

「何だ!?猪の化け物!?」

「安心しろ、味方だ」

「応援に来ました。階級・(みずのと)、竈門炭治郎です」

「同じく嘴平伊之助だ!!」

「状況は?」

「鴉から指令が入って十人の隊士がここに来た・・・」

 

 四人は村田の話を聞く。

 

「山に入って暫くしたら、隊士が、隊士同士で・・・斬り合いになって・・・!!」

「成程、やはりあの()か?」

「・・・村田、お前が居ながら、情けない」

「うぐっ・・・すみません・・・」

 

 状況を冷静に分析する錆兎と義勇の言葉に落ち込む村田、そこにすかさず錆兎から補足が入る。

 

「気にするな村田、今のは『村田、お前程の剣士が居ながらこれだけ犠牲が出るとは、相手の戦力を見誤り到着が遅れた自分が情けない』という意味だ。そうだな?」

「・・・?、最初からそう言っているが?」

「「「(分かり難い・・・)」」」

 

 義勇の言葉足らずに困惑する三人であった。

 

キリ・・・キリ・・・キリ・・・

 

「「「「「!?」」」」」

 

 何かが軋む音に気付き周りを見渡すと、糸に操られた隊士達が周りを取り囲んでいた。

 

ウフフ、ウフフフフ・・・さぁ私の可愛いお人形達、手足がもげるまで踊り狂ってね

 

 

 

 

 

 所変わって鬼殺隊本部にて。

 

「よく頑張って戻ったね。私の剣士(こども)達は殆どやられてしまったのか、そこには"十二鬼月"がいるかもしれない」

 

 命懸けで情報を持ち帰った鎹鴉の話を聞き、鬼殺隊の当主である"産屋敷耀哉"は冷静に判断を下す。

 

「"柱"を行かせなければならないようだ・・・真菰カナエ

「「御意」」

 

 花柄の羽織に狐の面を斜めに掛けた小柄で幼い見た目をした女性”鱗滝真菰”と、蝶の羽を模した羽織に蝶の髪飾りを着けた大人びた女性”胡蝶カナエ”の二人は名前を呼ばれ立ち上がると行動を開始する。

 

 

 

 炭治郎達が向かったここ那田蜘蛛山には、かの十二鬼月が一人”下弦の伍”が待ち構えていたなど、炭治郎達は知る由もなかったのであります。




大正コソコソ噂話
 錆兎、義勇の階級は十段階ある内の最高位である”(きのえ)”。次期水柱はどちらかと隊士達の間でよく話題に上がっており錆兎は潜在能力の高い義勇に継いで欲しいと思っているが、義勇は自身には相応しくないと思っているそうです。
 村田は五段目の”(つちのと)”。最近水の呼吸が少し濃くなって喜んでいるそうです。
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