炭治郎達は那田蜘蛛山にて蜘蛛の糸に操られた鬼殺隊士と戦闘を繰り広げていた。
操られている隊士の中にはまだ息がある者もいる為糸のみを狙い斬り払っているのだが、斬った端から新たな糸を張られる為苦戦を強いられていた。
「このままじゃキリが無い!!本体を探すしか無い!!」
「それなら俺に任せろ!!」
伊之助は日輪刀を地面に刺すと両手を広げる。
「獣の呼吸・漆ノ型
伊之助のずば抜けた触覚による探知能力により、操っている鬼の位置を特定した。
「見つけたァそこか!!」
「・・・錆兎!竈門と嘴平と共に鬼を討て!ここは俺と村田に任せろ!」
「よし!やれるか村田!」
「ああ!俺だって後輩に良いとこ見せないと!!」
「頼んだ!二人共行くぞ!」
「はい!」
「おっしゃあ!!俺について来い!!」
負傷者と操られた隊士を義勇と村田に任せて錆兎達は鬼の元へと向かった。するとまたもや鬼に操られた隊士達が壁となる。更には惨たらしい事に意識がはっきりした状態で操られていた。
「駄目・・・こっちに来ないで!!じゃないとみんな殺してしまう!!」
「”
尾崎と呼ばれた女性隊士は仲間の亡骸を片手に叫ぶ。更にその奥から重傷の隊士達が現れる。
「すぐに開放してやる・・・伊之助!!鬼の位置は把握しているな!!」
「アア!!バッチリたぜ!!」
「ならば炭治郎と共に先に行け!!俺が道を斬り開く!!」
錆兎はそう言うと隊士達の下へ走る。
「水の呼吸・参ノ型
錆兎は隊士達の間を流れるように通り過ぎ全ての糸を切断した。
隊士達が動かなくなった隙に炭治郎達は鬼の下へ急ぐ。錆兎は二人が鬼を倒すと信じ、再び隊士達が操られないよう蜘蛛を斬る。
炭治郎達は最後の刺客を倒すと、伊之助が炭治郎を鬼の居る所まで投げ飛ばしその勢いのまま鬼の頸を斬ろうとした。
するとその女性の鬼はまるで炭治郎の攻撃を受け入れるかの様に腕を伸ばした。
「水の呼吸・伍ノ型
炭治郎は咄嗟に、斬られた者に苦痛を与えない慈悲の剣撃を繰り出した。
頸を切られた鬼は安らかな表情をすると、炭治郎に十二鬼月の存在を教え塵となった。
「炭治郎達見つからないし最悪だよ!何処行ったのよどっちよ!!」
炭治郎達に置いていかれた善逸は、良心の呵責に耐えられず結局一人で山に入っていた。
本人の耳の良さも相まって蜘蛛の音にビビリ散らす善逸。
「もーーーっ!!うるさいよじっとしてて!!」
音に耐えられず善逸が振り向くとそこには人面蜘蛛がいた。
「こんな事ある!?」
人面蜘蛛から逃走する中、善逸は木々が開けた場所にたどり着いた。そこには蜘蛛の糸で吊るされた小屋と、隊士達がいた。
吊るされた隊士達の中には蜘蛛に変貌している者もいて、あの人面蜘蛛達は元人間だということが判明した。
「(何あれ何あれ何あれ!!人間が蜘蛛にされてんの!?)」
善逸があまりの光景に絶句していると、吊るされた小屋から巨大な蜘蛛の身体を持った鬼が現れた。
「俺お前みたいな奴とは口利かないからな!!」
「くふっ・・・逃げても無駄だぜ?お前は
逃走を図る善逸に向かって蜘蛛鬼は話しかける。話しかけられた善逸は自分の手を確認すると、皮膚が焼けただれたようになっていた。
蜘蛛鬼の話によると、奴の操る蜘蛛に噛まれた者は毒により段々と蜘蛛に変貌して行き、四半刻後には人面蜘蛛となり奴の操り人形になってしまうらしい。
「ギャアアアッ!!ギャーーーッ!!」
恐怖と絶望のあまり泣き叫びながら木に登る善逸の姿に、流石の蜘蛛鬼も困惑する。
「でもさァ俺だって精一杯頑張ってるよ!!なのに最期髪ずる抜けで化け物になんの!?嘘でしょ!?嘘すぎじゃない!?」
「こんな所に来てまでビービー泣いて恥ずかしくねぇのかよ?」
「「!?」」
善逸の脳内に走馬灯が流れる中、突然現れた声に反応し顔を向ける二人。
そこには首元に勾玉を括りつけ、
「か、獪岳・・・?」
「気安く呼び捨てにすんじゃねぇよ鬱陶しい」
「何だお前は?」
「気色悪ぃ鬼だな、消えろよ」
獪岳は鬼を無視して構えを取る。しかし、その手には刀は握られていない。
「まさか素手で鬼に挑もうってか?面白ぇかかって来な?」
「ああ、ただしその頃にはアンタは八つ裂きになっているだろうけどな」
獪岳はそう言うと蜘蛛鬼に向かって走り出した。蜘蛛鬼は口から毒液を吹き出し迎撃するが、彼はそれを避けると両手を腰の辺りに置き居合の構えを取る。
「雷の呼吸・壱ノ型
雷のような音が鳴り響くと同時に、蜘蛛鬼の頸は斬り落とされていた。
「馬鹿な!?手刀で俺の首を!?」
「この籠手は
「そんなのありか!?」
そう言いながら蜘蛛鬼は塵になり消えて行った。
「に・・・にいちゃあああん!!たずげでぐれでありがとおおおお!!」
「うわっ!?抱きつくな気色悪い!!」
獪岳は感極まり抱きついてきた善逸を殴り飛ばす。
「ゲェ・・・服が汚れたじゃねぇか」
「だって嬉しくてぇ!!アンタ俺の事嫌いなのに助けてくれたんだもん!!」
「馬鹿!!俺はお前を助けてやった訳じゃねぇ!!大体お前はもうすぐ毒で蜘蛛になるだろうが!!」
「そうだった!!このままじゃ俺蜘蛛になっちゃう!!何とかして兄貴ぃぃぃ!!」
「うるせぇ!!お前に兄貴と呼ばれる筋合いは無ぇ!!」
「うふふ、仲の良い兄弟なんですねぇ」
「「!?」」
突然聞こえた声に二人が振り向くと、そこには蝶の髪飾りを着けた女性、胡蝶カナエが立っていた。
「花柱様!!」
「大丈夫です。あなた達は私が必ず治します」
頭を下げる獪岳を手で制し、蜘蛛の毒に侵された隊士達に向かってカナエは優しく微笑みかける。
那田蜘蛛山麓付近にて。
「怪我は無いですか?冨岡さん?」
「無い」
「本当に?この間だって隠してたじゃないですか!」
「・・・あれは唯のかすり傷だった」
「唯のかすり傷でも細菌が入ったら大変なんですから!」
「またやってるよあの二人・・・」
隠達が負傷した隊士達の治療をする中、カナエの妹であるしのぶと義勇のやり取りを見て村田は一人ため息を吐くのであった。
操り糸の鬼を倒した炭治郎達が山奥へ進んでいると、今度は少女の姿をした鬼を発見した。
「お父さん!!」
少女の鬼が叫ぶと、今までの鬼とは比べ物にならない程の巨体で蜘蛛の顔をした鬼が現れた。
「オ"レの家族に近づくな"!!」
父鬼はそう言うと拳を振り下ろした。三人はそれを躱したが、地面が抉れ土煙が登る程の破壊力だった。
少女の鬼はその隙に何処かへと逃げようとする。
「二人はあの鬼を追え!!コイツは俺が倒す!!」
「でも錆兎さん一人じゃ!!」
「こんな奴俺一人で十分だ!!」
錆兎の言葉で鬼を追う二人、父鬼がそれを追おうとするが錆兎が間に入りそれを止める。
「お前の相手はこの俺だ」
「オ"レの家族に・・・近づくな"!!」
「水の呼吸・肆ノ型
父鬼が飛びかかるが、錆兎に身体をバラバラに斬り刻まれあっさりと倒された。
「早く二人を追わねば・・・ん?」
二人の後を追おうとする錆兎は、木々の間に謎の繭があるのを発見した。
「まさか!?」
錆兎が繭を斬り裂くと人間の骨が流れ出てきた。
「くっ、まだ生きている人がいるかも知れない・・・炭治郎、伊之助、すまんが遅れる!」
流石に見逃す事ができなかった錆兎は、吊るされた繭を全て斬り裂いて行った。
「僕に勝ったと思ったの?可哀想に哀れな妄想して幸せだった?」
炭治郎達は少女の鬼を追った先で、十二鬼月の一人、下弦の伍”
少女の鬼は伊之助が倒すも、十二鬼月の強さはこれまでの鬼とは比較にならず苦戦を強いられた。
それでも炭治郎、伊之助、そして禰豆子の三人による決死の攻撃により累の頸を落とす事に成功した。
・・・かに見えたが、何と累は頸が切られる寸前に自身の糸で頸を切り落とすことで生きながらえていたのだ。
炭治郎達三人は既に身体の限界を超え、最早立ち上がることすら出来なくなっていた。
「(立て!!早く立て!!呼吸を整えろ急げ早く!!)」
「(グッ!!・・・炭治郎!!・・・)」
「血鬼術
糸が炭治郎の身体を椀状に包み込み、段々と狭まってくる。
正に絶体絶命と思われた、その時。
シュパッ!!
炭治郎を包み込んでいた糸が斬り払われた。
「よく頑張ったね、炭治郎」
「ま、真菰・・・さん?・・・」
そこには狐の面を着けた女性、鱗滝真菰が立っていた。
「(何だコイツは?いつの間に現れた?)」
累は一瞬で現れた真菰を警戒する。
真菰は横目で炭治郎達の様子を確認すると、再び累に視線を戻す。
プッツン
「よくも私の弟達を・・・」
「ッ!?・・・血鬼術
累は今まで感じた事の無い殺気に当てられ血鬼術を放つ。彼を中心に糸の網が広がり、それが何重にも重なり真菰へと襲いかかる。
「水の呼吸・玖ノ型
糸の網と累の頸が斬られたのは
「(馬鹿な!?・・・何重にも張った糸が同時に、時間差も無く・・・だと!?)」
頸が落ちる中、累は寄り添う炭治郎と禰豆子の姿を見て、過去の記憶が蘇っていた。
累の身体は無意識に炭治郎達に近づくと倒れ伏した。それを見た炭治郎は思わず手を伸ばし彼の肩に手を置いた。
そして累は灰となって消えたのであった。
「やっぱり優しいね、炭治郎は」
「真菰さん・・・ゲホッ!・・・」
「喋らないで、先ずは手当を・・・」
「何をしているのですか真菰さん?」
「「!?」」
二人が声に反応して振り向くと、そこには刀を抜いたカナエが立っていた。
真菰は二人を庇うように間に立つと、刀を収める。
「そこの坊やが庇っている彼女、鬼ですよね?」
「待ってカナエちゃん。斬らないで」
「あれだけ鬼を憎んでいた貴女が、鬼を庇うのですか?それにこれは立派な隊律違反です」
「この子は
「(不味い・・・このままじゃ真菰さんが・・・)」
炭治郎が何とか声を出そうとした、その時。
「伝令!!伝令!!カァァァ!!」
「「「!?」」」
鎹鴉の声に反応する三人。
「炭治郎、禰豆子両名ヲ拘束、本部へ連レ帰ルベシ!!炭治郎及ビ鬼ノ禰豆子、拘束シ本部へ連レ帰レ!!」
「もしかしてその子達が?」
「うん」
「・・・命令とあらば、仕方ありませんね」
鎹鴉からの指令を聞き、刀を収めるカナエ。
「(良かった・・・禰豆子は・・・助かった?・・・)」
傷と疲労、そして安心から炭治郎はそのまま気を失った。
こうして十二鬼月との戦いを何とか生き延びた炭治郎達でありましたが、今度は鬼殺隊本部にて新たな危機に見舞われるとは、この時の炭治郎は知る由もありませんでした。
大正コソコソ話
真菰の年齢は25歳で悲鳴嶼と同期ですが、その見た目からカナエと行動する際は新人隊士達から真菰の方が年下だと勘違いされる事が多いそうです。
力はあまり強くありませんが速さだけならあの音柱を超える程。一度雷の呼吸に変えて見てはどうかと言われた事があるが、その時の真菰の顔を見てからは二度と言われなくなったらしいです。