柱合会議から数ヶ月後、
なんでも、無限列車と言われる客車列車にて四十人以上が行方不明になるという事件があり、調査に向かった数名の隊士達が全員行方不明となっているらしい。
調査に向かった隊士達は全員が”
そんなこんなで先に駅で待機している杏寿郎と合流した俺達は、件の無限列車へと乗車した。
「白鴉殿と黒兵衛の
「なっはっはっ!嬉しい事言ってくれるじゃねぇか!ところでその大荷物は何だ?」
「実はカクカクシカジカで・・・良ければ一緒にどうですか!」
杏寿郎が持っている荷物が気になり聞いてみると、今朝助けた弁当屋から購入した弁当らしい。
しかもその弁当屋のお祖母さんが二十年前に槇寿郎に助けられていたと言うから何とも不思議な縁を感じる。
「成程槇寿郎が・・・アイツもつい数年前までは立派な剣士だったんだがなぁ・・・」
「その事ですが、今一度父に会っていただけないでしょうか?あの日から一度もお会いしていないと聞きます」
「いや、アイツ俺を見ると怒るからなぁ・・・まあ、それよりも今は弁当を食わないか?」
「そうですね!実はまだ一口も食べられていなかったので、頂きましょう!」
杏寿郎に話を振られた俺は何だか気まずかったので話題を変えることにした。
「柱だっけ?その煉獄さんと黒兵衛さん。顔とかちゃんとわかるのか?」
「うん、匂いも覚えているから大丈夫」
俺、竈門炭治郎と妹の禰豆子は、鎹鴉の指令で善逸と伊之助と共に無限列車へと乗り込んでいた。
現地にいる煉獄さんと黒兵衛さんに会うため列車の中を進んでいると、空気が震える大声が聞こえてきた。
「うまい!」
「「!?」」
「うまい!」
「うまい!」
声のする方へ近付くにつれその声はどんどん大きくなって行き、遂に声の主の下へ辿り着いた。
「うまい!」
「これは美味しいなっはっはっ!!」
そこには大声で弁当を食べている煉獄さんと黒兵衛さんがいた。
「・・・あの人達が炎柱と川柱?」
「うん・・・」
「・・・唯の食いしん坊じゃなくて?」
「うん・・・」
とりあえず声をかけてみた。
「あの・・・すみません」
「うまい!」
「あ、もうそれは凄くわかりました・・・」
「おっ?炭治郎じゃねぇか!」
炭治郎が呼吸の事で訊きたい事があるというので、呼吸は専門外な俺は杏寿郎へ丸投げして善逸と伊之助という二人の隊士と話をしていた。
「へぇ?お前が獪岳の言っていた弟弟子か」
「えっ?兄き・・・兄弟子は何と?」
「うるさくて臆病で泣き虫でサボり魔で女に目がないカスだと言っていたな」
「なにそれ酷い!!」
「・・・殆ど事実じゃねぇか」
兄弟子からのあまりの言われ様にショックを受ける善逸とボソリと声を漏らす伊之助。
「だが、こうやって直接会ってみると案外まともそうで良かったよ。俺の想像通りの奴だったら修正する所だったからな」
「えぇ・・・何されかけてたの俺?やだ怖い・・・」
そんな話をしつつも、善逸と伊之助はその優れた感覚で黒兵衛を観ていた。
「(何だろうこの音。熟練の老剣士というか、爺ちゃんみたいな音がする。黒兵衛さんって一体何歳なんだ?)」
「(コイツとんでもねぇ・・・コイツが鬼殺隊の主か・・・?)」
偶然にも黒兵衛の核心に迫る善逸と、黒兵衛の強さを感じ取り人知れず戦慄する伊之助であった。
「炭治郎達の話も終わったみたいだな。そろそろ気を引き締めな、何時鬼が出るかわからないからな」
「え・・・嘘でしょ、鬼出るんですかこの汽車!?」
「出るぞ」
「出んのかい嫌ァーーーッ!!鬼の所に移動してるんじゃ無くここに出るの嫌ァーーーッ!!」
善逸が騒いでいる間に車掌が来て切符を切り始めた。
「・・・・・・はて?俺は何をしていたのやら?」
気がつくと俺は巌流島に立っていた。
「何か忘れているような?」
「何をぼーっと立っているでござるか」
「!」
話しかけられて振り返ると、そこには刀を持ったハクが居た。
「拙者と勝負するでごさるよ」
「あーそうだったな。忘れてた」
そう言うと俺は"軟刀・革"を抜き構える。
暫くの間お互い睨み合うと、どちらとも無く走り出した。
鬼の血鬼術により眠らされた黒兵衛達。そこへ鬼の見せる夢に魅了された男女が現れ、彼らの腕に縄を巻こうとする。
「全く、世話の焼ける者共でごさる」
「!?・・・誰!!」
乗客全員が眠る中、聞こえて来た声に反応する三つ編みの少女。
そこには切符を持たない為術に掛からなかった白鴉が居た。
「白い鴉が喋ってる?まだ夢の中じゃないわよね?」
「お主らもまた、鬼の術に取り憑かれた者共でごさるか」
黒兵衛と共に血鬼術に取り憑かれた人間を何人も見て来た白鴉は、冷静に状況を判断すると翼を広げる。
そしてそのまま彼女達に向かって飛び立つとすれ違いざまに手刀(翼)により気絶させた。
「拙者にときめいてもらうでござる」
「か、恰好良い・・・」
最後に残った三つ編み少女はそう言うと気絶した。
「むー?」
「おや、起きられたか禰豆子殿」
騒ぎを聞いて禰豆子が箱の中から出てきた。
彼女は魘されている炭治郎に近づき、彼を起こそうと体を揺する。
「ちょうど良かった。炭治郎殿達を起こす手伝いを頼むでござる」
「むん!」
錆白兵と斬り合う黒兵衛。しかし、最初は笑顔だった黒兵衛だが、時間が経つにつれて表情が曇りだす。
「うーん・・・」
「どうしたでござるか?」
「・・・なんか違うんだよなぁ」
斬り合いを止めた黒兵衛が首をひねる。そして徐ろに口を開いた。
「お前、ハクじゃねぇだろ」
「何を言っているでござるか!」
黒兵衛の言葉に動揺する錆白兵、そこに黒兵衛が畳み掛ける。
「俺の知っているハクはこんな
「ッ・・・」
「そもそも初めからおかしかったんだ。ハクが自分から勝負を仕掛けてくれるなんて
そう言うと黒兵衛は間合いを一瞬で詰め、あっさりと錆白兵を斬り裂いた。
「グッ・・・!?」
「アンタにゃちっともときめかねぇ」
そう言いながら納刀する黒兵衛。
いつの間にか着ていた着物は隊服に、刀は日輪刀に戻っていた。
「さて、どうやらここは夢の中みてぇだが・・・どうすりゃ出られるんだ?」
黒兵衛があたりを見渡していると、突如身体が炎に包まれた。
「うおっ!?何だ?熱く無ぇ?」
「黒兵衛さん!・・・黒兵衛さん!!」
しかし、熱や痛みは感じず、むしろ暖かく安心感があった。そして何処からとも無く炭治郎の声が聞こえてきた。
「黒兵衛さん!!」
「んあ?」
「良かった!目が覚めたんですね!」
夢から覚めた黒兵衛の眼の前には炭治郎と禰豆子がいた。周りを見渡すと煉獄、善逸、伊之助の三人はまだ目覚めていないようだった。
「禰豆子の血鬼術で焼いてもらったんです」
「そうか、あれは禰豆子かやってくれたのか。偉いぞぉ」
「むふー!」
禰豆子の頭を撫でる黒兵衛と、誇らしげに胸を張る禰豆子。
「それにしても、鬼の術にまんまと嵌る様では大黒柱の名が泣くぜ」
「駄目です・・・他の三人はまだ起きません」
「恐らく夢と自覚する必要があるんだろうな。禰豆子の協力があるとはいえ、こればっかりは本人次第だ」
そう言うと黒兵衛は腰の刀に手を掛ける。
「行くぞ炭治郎、ここは禰豆子とビャクに任せて俺達は本体を倒す」
「わかりました!」
三人も禰豆子達に任せて鬼狩りに向かう二人。炭治郎の案内で屋根の上に登り先頭車両を目指して走っていると鬼はすぐに見つかった。
「あれぇ起きたの?おはよう。まだ寝てて良かったのに」
そこにいたのは十二鬼月が一人、”下弦の壱・
「せっかく良い夢を見せてや・・・」
シュパッ!!
「川の呼吸・壱ノ型
魘夢が何か言い終わる前に黒兵衛によって頸が落とされた。
「(速い!全く動きが見えなかった!)」
黒兵衛の放った居合斬りは本人の技量と、更に腰に巻き付けられた刀のしなりによりスピードが上乗せされ、圧倒的な速さと切れ味によりいとも簡単に頸を斬り落としたのだ。
「お前は
「話の途中で頸を斬るなんて酷いなぁ」
「!?」
「ん?」
しかし、頸を斬られてなお喋り続ける魘夢。何と斬られた頸から肉が生えて列車と繋がっていた。
「成程、
「そうだよ?その身体もこの頭も唯の一部分さ。俺の本体はこの汽車そのものさ!」
「ッ!?」
「ほう?」
魘夢の言葉に驚愕する炭治郎と、いまだ冷静な黒兵衛。
「つまりこの汽車に乗っている二百人の人間は既に俺の腹の中と言う訳さ。守りきれるかい?たった二人で」
「楽勝さ、俺達ならな?」
そう言い切る黒兵衛。
「ならせいぜい頑張りたま・・・」
そう言いきる前に細切れになる魘夢の頭部。
しかし、本人が言っていたように既に本体では無い為、列車全体が疼き出す。
肉の壁が乗客を飲み込もうとするが、すかさず黒兵衛がそれを遮る。
「川の呼吸・弐ノ型
車両全体を包んでいた肉壁は一瞬で粉微塵に切り刻まれた。
「行くぞ炭治郎!」
「はい!」
黒兵衛と炭治郎の二人は肉壁を切り刻みながら後方へと向かう。
「どいつもこいつも俺が助けてやるぜ!!須らく平伏し!!崇め讃えよこの俺を!!」
「ムウウッ!!」
「禰豆子ちゃんは俺が守る」
覚醒した伊之助と眠ったままの方が強い善逸、禰豆子の三人がそれぞれ乗客を守る為戦いそして、
「うたた寝している間にこんな事態になっていようとは!!よもやよもやだ」
炎柱・煉獄杏寿郎が刀を構える。
「柱として不甲斐なし!!穴があったら、入りたい!!」
ドン!!
彼が移動したことにより車体が大きく揺れる。
「何だ!?」
「安心しな、杏寿郎だ」
「黒兵衛の兄ぃ!!」
炭治郎と黒兵衛の前に一瞬で煉獄が現れる。
「ここに来るまでにかなり細かく斬撃を入れて来たので鬼側も再生に時間がかかると思います!!」
「よし、この汽車は八両編成だ。俺と杏寿郎とビャクは後方六両を守る。残りの二両は善逸と禰豆子が守り、炭治郎と伊之助は鬼の頸を探せ」
「頸!?でも今この鬼は・・・」
「どんな姿になろうとも、鬼である限り急所はある。お前と伊之助の感覚なら必ず見つけられる筈だ、頼んだぞ!」
「!・・・はい!」
黒兵衛の指示を聞き動き出す炭治郎と煉獄。
「さて、行くか」
「そうでござるな」
他の鎹鴉への連絡を終え、黒兵衛の肩に止まっていた白鴉は、身体に提げていた小刀を嘴で抜くと飛び立った。
それから幾度となく肉壁を斬り裂いていると、突如断末魔と共に車体が大きくうねり始めた。
「やったようだな!だがしかしこのままでは不味いな」
列車と完全に融合している為、鬼が苦しみのたうち回るとそのまま車体も連動してしまう。
そして遂に車体が横転し脱線してしまった。
「川の呼吸・伍ノ型
黒兵衛は咄嗟に技を出し乗客を守ろうとする。
刀を高速回転させることで発生する竜巻が客車全体に行き渡り、脱線の衝撃で空中に放り出された乗客を纏めて絡み取ることで壁や床に激突するのを防いだ。
そして煉獄もまた、技を出すことで衝撃を和らげ乗客の被害を最小限に抑えることに成功した。
「ご無事でしたか!」
「ああ、善逸も気絶してるが問題ない。暫くしたら起きるだろ」
脱線した列車の外で煉獄と黒兵衛が落ち合う。
乗客達は流石に無傷とはいかなかったが、彼らの尽力と鬼の肉壁が幸運にもクッションになったおかげで死者は一人もいなかった。
「ここは俺に任せてお前は炭治郎達の所へ行ってやってくれ」
「わかりました!」
煉獄を炭治郎達の救護に向かわせた黒兵衛は乗客の救助を始める。
動ける者は他の怪我人を運んでもらい、出口が塞がっている車両は屋根を斬り裂いてそこから救出する。
伊之助も合流し救助を進めていると、突如先頭車両の方から衝撃が響いた。
「!?」
黒兵衛は即座に戦闘態勢になり、伊之助に救助を任せて走り出した。
見事下弦の壱を討伐した炭治郎達でありますが、そこになんと上弦の鬼が現れるなど、この時の彼らは思いもよらないのでありました。
大正コソコソ噂話
白鴉は鎹鴉の中で唯一鬼と戦う力を持ち、鴉でも持てる特別製の小刀を帯刀しています。
その実力は並の鬼殺隊士よりも強く、小さな体と飛行能力により十二鬼月未満の鬼なら簡単に倒せる程です。
そのため黒兵衛からは錆白兵の生まれ変わりだとほぼ確信されてますが、本人(鴉)には前世の記憶はありません。