仮面ライダーカルヴァリア   作:虎ノ門ブチアナ

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#15 熔ける鋼

 警視庁八王子警察署上川口駐在所からの緊急連絡。

 “レーマに襲われたとみられる青年が友人の死体を担ぎながらやって来た”という報告。

 

 その情報を受け取ったユニットDは通報者が火島勇太郎であると断定、仮面ライダーの現地への急行を発令した。

 

「──恐らく彼は天渡会に追われている可能性がある。みんなはライドシステムで現地に到着後すぐさま彼を保護、必ず守ってほしい」

 

 金剛からの指示に通信先のさだめ、花恋、正義がうなずくと、それぞれの車両へ搭乗し、目的地へ急ぐ。

 

 

「花恋さん……あの人達は、お友達なんだよね」

「うん、だから、今度こそ……守らなくちゃ」

 

 決意に燃える花恋を横目にさだめがライドゼファーを走らせ、駐車場に取り付けられたゲートをくぐる。

 

 

 東京都八王子市川口町。

 東京の西部に位置し、山麓が並ぶ自然豊かな町に仮面ライダー達が出揃い、物々しい雰囲気を生み出す。

 目的地に到着した3人は交番を発見するとすぐさま駆け込んでいく。

 

「警視庁対異形成怪物開発班です!」

 

 正義が警察手帳と共に言い放つと、彼の言葉を聞いて立ち上がった青年──勇太郎に視線を移した。

 

「君がここに通報した火島勇太郎君か」

「あなたが武装隊の隊長さんですか」

「まぁ……そうなる。君と……その友達を守りに来た」

 

 自分達を守ってくれる存在がいてくれる事に心から安堵する勇太郎だったが、奥に待機しているもう2人の人員がフルフェイスのヘルメットで顔を隠している様子に猜疑心(さいぎしん)を覚えた。

 

「後ろの人達はメット外さないんですか」

「この2人に関する情報は極秘事項でな、すまない」

 

 承伏しがたいといった表情を見せる勇太郎にただ申し訳ない、とつぶやくしかない正義だったが、赤いメットを被った人員が前に出て、ヘルメットを外してみせた。

 その姿を見て勇太郎は絶句したが、同時に納得した。

 

「那珂さん、だね」

 

「ッ! 那珂、君の姿も表向きには秘密だと!」

 

 叱責する正義だったが花恋は首を横に振る。そして微笑みながら勇太郎と楓を見て、目を閉じる。

 

「火島君は私達が天渡会の人間じゃないかって疑ってたと思うんです。だから、私が、火島君の友達の私が行かなくちゃって思ったんです」

「だが君は……」

「ありがとう、それとごめん那珂さん。おかげで安心して楓を任せられる」

 

 哀しげな笑顔を見せる勇太郎に正義はまたも言葉をかけられず、心を曇らせる。

 

「君らの様な未成年に物事を背負わせない為に俺がいるはずなのにな……火島君、すまなかった。全力で君を守らせてもらう」

 

 覚悟を言葉にしながら、正義は勇太郎の肩を叩く。

 

「一応俺もレーマ、なんすけどね」

「その話は後だ。現状君を戦力とは認めず、護衛対象としてのみ扱う。いいな」

 

 はい、とばつが悪そうに勇太郎がごちると、正義と花恋が笑う。

 

「さて、そろそろおいでナスビですわね」

 

 遠方から聞こえる車の駆動音に花恋は笑みを浮かべながらコンフルエンサーを装着する。

 続いて正義、メットを被ったままのさだめも装備を整える。

 

《Confluencer Ready》

 

「那珂さん!」

 

 勇太郎の声に花恋が視線を流す。

 

「あの時俺達を逃がしてくれてありがとう、それと、今、来てくれてありがとう! 俺助けられっぱなしだ!」

「持ちつ持たれつだよ、火島君勉強教えてくれたじゃん」

 

 花恋が歯を見せ笑うと、勇太郎も微笑む。

 

「絶対勝ってくれよ、でないと楓が化けて出そうだ」

「だね」

 

 車から現れたのは先の戦いで立ちはだかった強敵、メタルであった。

 その姿に驚く一同だったが、今回現れたレーマは1体。メタルのみに集中して戦える様で花恋は少しだけ安心する。

 

「レーマ狩りか、早かったな。だが関係無いか──俺一人で壊すのみだからな」

「そうは問屋が(おろ)さねぇぞ」

 

《DEATH》

《STEAM》

 

《PANGOLIN》

《ANCHOR》

 

《UNDEAD》

《HOPPER》

 

 3人がそれぞれのイートリッジを起動、ベルトに装填する。メタルがそれよりも早く変貌し指を伸ばして鋼鉄の遠距離攻撃を食らわせるが変身中の各員に防御フィールドが発生し刺突を阻まれる。

 

「独自システムによる特殊重力の発生……天渡会は大人しく指をくわえて戦士の完成を見守っていなさい」

 

 レーマへの怒りから来る感情の励起か、いつもより饒舌(じょうぜつ)なさだめの煽りを受けてメタルレーマは舌打ちする。

 

「変身!」

 

《Property Compile……DEATH・STEAM》

《Property Compile……PANGOLIN・ANCHOR》

《Property Compile……UNDEAD・HOPPER》

 

 白の戦士、カルヴァリア。

 銀の戦士、AD2。

 赤の戦士、ヴィヴレ。

 

 3人の仮面ライダーが並び立ち、人々を守らんと見栄を切る。

 

「勇ましく現れた訳だが、結局強さは以前と変わらんだろう」

 

 そう呟いてメタルレーマはすぐさまライドボレアスを探し始める。

 

「アレが無ければ俺の体に届かぬ脆弱な愚者達が」

「させるか!」

 

 AD2が走り出し、メタルレーマの先頭を行く。

 

「馬鹿め、貴様の行く先があの光線のある場所だと、教えている様なものだ!」

 

 メタルレーマがAD2を追った先にあった布の被せられた機械を見つけて破壊する。

 

「これで貴様らの勝ち筋は消えたな」

 

 嘲笑するメタルレーマだったが、AD2からは絶望や焦りといった反応が見られない。

 冷静を装っているのか、それとも今破壊したモノが囮であった可能性が無いかとメタルレーマは思考する。

 確かに破壊したその機械はバイクのものであり、以前見られたライドボレアスと同じ形であった。しかし何故、ライダーは微動だにしないのか。その答えに行きつかぬまま、メタルレーマはAD2のアンカーに縛り付けられていた。

 

「動きを止めたところで俺は砕けんぞ」

「まだ気付いてないのか」

 

 AD2がそう言い残してその場から離れると、メタルレーマは周囲を確認する。

 と、彼の横でヴィヴレがライドボレアスの発射態勢を取っていた。AD2に集中していたせいで彼女がライドボレアスを操作していた事に気付かなかったのだ。

 

「ならば今破壊した──」

「バイクは転送してもらった予備品だよ」

 

 光と熱がメタルレーマを包み、全身を焦がしていく。

 

「くッ……!」

「ライドボレアスを他の人が使えるってのも想定外だったみたいッスね、あーオモロ!!」

 

 ヴィヴレがエネルギーの限界まで熱線を照射し、メタルレーマの体を溶解させていく。

 

「だが何度も受けた攻撃! みすみす受け続ける訳にはいかないッ!!」

 

 熱線に耐えられなかったアンカーの鎖を破断して、照射が止んだ隙にメタルレーマがその場から撤退しようとする。

 しかし。

 

《Property Compile……DEATH・CONCRETE》

 

 カルヴァリアのフォームチェンジ。デスコンクリートによってメタルレーマの足元が固められ転ぶ。そして地に這いつくばった瞬間に更なるコンクリートを射出し、体全体を硬化させる。

 無理な体勢で固められ力が入らないメタルレーマへとライドボレアスの追撃が行われる。

 

「ッ!!」

 

 2射目。メタルレーマの肉体を()かし、粒子化させていく。だがまだ届かず、コンクリートが溶けて自由を取り戻した彼がライドボレアスの破壊へと急ぐ。

 前方から放たれる荷電粒子はみるみるうちに体を削いでいくが、己の肉体と同じく鍛錬し続けた精神でもって耐え抜き、ライドボレアスへと近付いていく。

 

(あの……あの忌々しき武装さえなければ……!!)

 

 あと一歩、あと一歩踏み出せばライドボレアスを破壊できる。その瞬間体に亀裂が入る。このままでは爆散し、レーマとしての姿、力を維持できなくなってしまう。だが前回と同じ様に耐えてみせればいい。前と同じく2回の熱線を耐え切れば勝利する。

 絶対にこの鋼鉄の体を、レーマ狩り(仮面ライダー)は打ち砕けない。負けない事は勝つ事なのだ。

 

「そうだ、負けなければ、勝てる!!」

 

 ライドボレアスが破壊された。

 ようやくその一歩を踏み出したメタルレーマの一撃によってその機械は呆気なく砕かれてしまったのだ。

 実際複雑な機構を搭載したライドボレアスは屈強な肉体を持ったレーマにかかれば簡単に壊せてしまう繊細な代物であった。

 

「はっ……やった……これで私の……勝ちだ──」

 

 

 背後からの熱線。もう1台のライドボレアスであった。

 

「なんで……ソイツが……!?」

「さっき使ったろ予備品をよ、なら撃てるライドボレアスが1台じゃないって想像できるだろ」

 

 AD2が冷徹に告げると、メタルレーマがそれに気付かなかった自らの愚かしさを痛感しながら悔恨(かいこん)を叫ぶ。

 

「俺の肉体が負けた……レーマ狩りめ……!!」

 

 メタルレーマが爆散する。赤い粒子がその場を染め上げ、空へと舞い上がっていく。

 すかさずAD2がイートリッジに回収し、その力を入手する。

 ようやく戦闘が終了したと安心するヴィヴレだったが、カルヴァリアがその場から離れる。どうやら彼女は遠方にて走り出した高級車を追っているらしい。

 

「さだめちゃん、あの車──」

「メタルレーマを乗せていた天渡会のだ、君も追ってくれ!」

 

 重装甲ゆえ数百メートルほど離れた車を追跡できないと判断したAD2の指示を受けてヴィヴレが疾走する。バッタの跳躍力を持ったヴィヴレはカルヴァリアを追い越して車の前方に立つ。

 

「逃がさないからッ!!」

 

 ヴィヴレの拳が追突した高級車のフロント部にめり込み、一撃で走行を停止させる。

 

 乗車していた天渡会構成員2人が持っていた拳銃の掃射を試みるが、対レーマ用に設計されたライダーの鎧には傷を付ける事すら叶わなかった。

 

「天渡会の構成員、あなた達も逮捕します」

 

 停止した車に追いついたカルヴァリアが告げると、堪忍した構成員らが手を挙げる。

 そこに自転車を漕いできた警官が2人に手錠をかける。

 

「もう天渡会はいない、か」

「ええ、私の方で確認できた勢力はこれで全てでした」

 

 他の構成員がいない事を了解したAD2が金剛に通信を繋ぐ。

 

「イートリッジ回収完了、戦闘を終了します」

「お疲れ様、みんな。火島君は無事かい?」

「那珂です! 今交番に戻って火島君と合流しました」

「分かった、それじゃあ……」

 

 金剛が口をつぐむ。勇太郎が楓の遺体をそのまま連れている事を理解していた彼は複雑な感情を自らの知性で処理しながら次の行動を考える。

 

「とにかく霧島君を安らかに眠らせてあげたい、こちらで葬儀社に連絡しつつ霧島君と火島君を運べる車を手配する、みんなはそれまで火島君といてほしい」

「了解しました、また天渡会が来るかも知れないので警戒を続けます」

 

 勇太郎の不安を煽らない為に変身を解除した正義、さだめが交番に到着し花恋らと合流する。

 

 

「助けてくれて、ありがとうございました」

 

 ライダーらの活躍で難を逃れた勇太郎が正義へと深く頭を下げる。

 

「しかしまだ本当に君を助けられた訳じゃない。レーマとなった君の処遇も決まらず、君の友人を弔う事もできていない」

 

 眉間にしわを寄せる正義だったが、勇太郎はいいえ、と返す。

 

「武装隊のみなさんがいなきゃ無い命だった訳ですから、例えレーマになってても」

「そうだな……追手のレーマはかなりの強敵だった……正直今回使った武装が俺達の限界だった」

 

 破損した2台のライドボレアスを見て正義が目を細める。

 

「それで、火島君の処遇は決まってないって言ってましたけど……私みたいにする事ってできないんですか?」

 

 花恋が問うと正義がそうしたいよな、と呟いて金剛にまたも連絡する。

 

「先生、ひとつ提案したいんだが火島勇太郎君を那珂の時みたく仲間にするってできるンスか」

「それね、俺も考えたんだけど今度ちょっとめんどくさい人が本部に来るみたいで、その辺やっかまれそうでね」

「やっかみ、スか」

「いや……まぁ俺や大淀指揮官がうまくやるからその方向性で考えたい……が、あとは火島君の希望次第かな」

 

 確かに、と正義が呟くと金剛が通信先のデスクでうなずく。

 

「火島勇太郎君──」

 

 正義から呼ばれ、勇太郎は不思議な緊張感を覚えながら返事をする。名前の後に何を言われるのかは大体想像がついていたが、それが確定するのが恐ろしかったのか。いや──。

 

 

「君は我々の仲間としてレーマを倒す覚悟があるか?」

「あります」

 

 勇太郎は、笑っていた。

 

 

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