仮面ライダーカルヴァリア   作:虎ノ門ブチアナ

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#17 ネルガル

 ユニットD本部、訓練場上階モニタールーム。

 

 これから始まるさだめと勇太郎の戦いを金剛と大淀が固唾を飲んで見守っていた所に黒木が入室する。

 

「なんの騒ぎですか、戻ってきたと思いきや戦闘とは」

 

 黒木との再会を全く喜べない大淀ではあったが、彼になんとか事情を説明する。それを聞いた黒木は、眼鏡をかけ直すとため息をつく。

 

「あの無礼な青年はつまりあなたがたに仇成(あだな)す敵だったと、全くひどい話だ……それでそんな相手をみすみす本部に連れてくるとは、藤村君がいながら判断が軽率だったのではないですか?」

「軽率……かも知れませんが、もし彼──火島君の気持ちが変われば心強い味方になります」

 

 神経質さが垣間見える口調で責め立てる黒木に金剛が言葉を返す。

 負けじと黒木がさらに説教を続ける。

 

「そんな確証の無い考えであなたがたの権限を行使されるのも内閣(こちら)としては困り物なんですがね。ただでさえ人手が無い時にこんな遊び紛いの戦闘に人員を割いてほしくはないんですよ」

「人手が無い……だからこうして火島君を仲間にできる様に頑張ってる訳ですよ」

「だからと言って……!」

 

 金剛からの答えに黒木は反論できず舌打ちする。それを見て大淀が心の中でザマーミロ、と呟いて溜飲を下げる。

 

 

《Confluencer Ready》

《DEATH》

《STEAM》

 

「変身」

 

《Property Compile……DEATH・STEAM》

 

 静かに戦士の鎧を纏ったカルヴァリアは顎を下げて勇太郎を見つめる。

 

「コツは掴んでる、俺も行くぜ」

 

 勇太郎の体を炎の様に揺らめく粒子が包み、その姿を炎の異形、バーンレーマへと変貌させる。

 互いに準備が整い、戦闘が始まる。

 

 まずはカルヴァリアがモータルザッパーを出現させバーンレーマへと斬撃を放つが、容易くかわされ、その勢いのままバーンレーマが上昇、ジェットエンジンの要領で飛翔する。

 立体的な機動によってカルヴァリアの背後を取ったバーンレーマが手から炎を噴射、彼女の装甲を燃やす。

 

「くっ……!!」

 

 仮面ライダーの装甲が持つ耐熱性でなんとかこらえるが、これが続けば内部の機器が故障し耐えられなくなる。それを予測しカルヴァリアはこれが速攻勝負である事を悟る。

 

 バーンが続けざまに炎を浴びせるが、モータルザッパーを投擲(とうてき)、一瞬の隙を作ってイートリッジを取り替える。

 

《JET》

《Property Replace……DEATH・JET》

 

 形態を変化させ機動力を上昇させたカルヴァリアはバーンレーマの背後を取り、持ち直したモータルザッパーを振るう。当然回避するバーンレーマだったが、その動きを読まれていたカルヴァリアに足をかけられ、倒れてしまった。

 

「動きが単調……」

「!」

 

 バーンレーマが地に伏せている間にモータルザッパーへスチームイートリッジを装填、蒸気の噴出で加速した斬撃をバーンレーマに食らわせる。

 

「がぁぁッ!!」

 

 倒れているバーンレーマを持ち上げる様に切り上げ、バーンが放り投げられる。

 力なく転がされるバーンレーマだったが、なんとか立ち上がり、カルヴァリアに炎を浴びせる。

 

「くぅっ!」

「アチいか、これが俺の覚悟の炎だ」

 

 この熱を正面から受け続けるのは非常にまずい。そう判断したカルヴァリアが金剛に通信を繋ぐ。

 

「藤村さん、仮面ライダー用の射撃兵装を開発してたりって」

「すまない……現状レーマに対して有効な遠距離攻撃手段はライドボレアスしかない」

 

 当のライドボレアスは2台が廃車状態、1台が調整中、今は使用できない状況にある。バーンの炎をかわしながら有効打を与える手段は残されていない様に思われた。

 

(――いや、まだ)

 

《CONCRETE》

《Property Replace……DEATH・CONCRETE》

 

 バーンの炎をかわしながらカルヴァリアは形態を変化、デスコンクリートで応戦する。

 

(コンクリートで足場を固めつつ顔面を狙う……そして窒息させれば炎の勢いは下がるはず)

 

 瞬時に戦術を思案したカルヴァリアが早速実行に移す。

 バーンはせわしなく動き回りながらカルヴァリアの隙を伺っているが、先程足をかけた時と同様動きは単調、足を狙うのは容易かった。

 

「今!」

「!」

 

 バーンの片足にコンクリートが射出され、固められる。

 破壊されないうちに顔面へとコンクリートをさらに打ち放つ。

 これでカルヴァリアの作戦は成功するかと思われたが、バーンの持つポテンシャルは彼女の想像を超えていた。

 

「しゃらせぇ!」

 

 固められたコンクリートを一瞬で破砕したバーンレーマが続いて顔面めがけて射出されていたコンクリートを回避する。

 

 カルヴァリア渾身の戦術はバーンによって破られた。近距離では熱にやられ、遠距離ではパワー不足。そして、今のカルヴァリアには“(かせ)”があった。

 

 その枷を壊す時が、来ようとしていた。

 

「……使うか」

 

《JET》

《Property Replace……DEATH・JET》

 

 デスジェットに変化し、バーンの火炎をよけながら一時離脱する。

 何をする気なのかと考えを巡らせるバーンだったが、仮面ライダーのシステムの理解がある正義と金剛には悪い予感があった。

 

「まさかな」

 

 いつもより険しい表情でつぶやく正義に花恋が視線を移す。

 

「三隈さん?」

 

 

《LEON》

 

 その起動音で正義の目が見開いた。その瞬間に驚愕しながらも花恋がカルヴァリアの方へと向く。一体何が起こるのか彼女には皆目見当がつかなかったが、“カルヴァリアが何かをする”という直感が働いていた。

 

 瞬間、カルヴァリアがデスイートリッジを外していた。

 その様子を見て金剛も窓に張り付く。

 

《Property Unstable……LEON・JET》

 

「信濃、本気か!」

 

 思わず叫ぶ正義を見て花恋が異様な雰囲気を感じつつもどういう事なのか説明を求める。

 

「デスイートリッジを外すのってそんなマズいんですか?」

「ああ、君には説明していなかったが、イートリッジと変身者には相性がある。自身の性質と近いイートリッジほど相性が良く、安定したシステムの運用を可能としている。現状俺達の使うイートリッジの場合自分の性質と同じイートリッジ以外は大体相性が悪い」

「じゃああのレオンジェットって相性そんな良くない……」

「ああ、多彩な攻撃が可能になる代わりに出力が著しく落ちる。バランスを取るか、テクニックを取るかの判断が求められる……信濃はテクニックを重視した、という事になる、が……」

 

 通常併用されないレオンとジェットの合わせ技でバーンレーマを翻弄しようというカルヴァリアの策だったが、正義の予想通りその出力はデスイートリッジを使用している時よりも格段に下がっていた。

 だが、機動力に優れた性質と攻撃力に優れた性質を合わせる事で今までのカルヴァリアには無かった戦術を獲得した。

 

 ジェットの機動力でバーンレーマに急速接近、レオンの鉤爪(かぎづめ)で確かなダメージを与える。そして一気に離脱して反撃をさせない。この繰り返しでバーンレーマへと手傷を負わせていく。

 

「これが私の全力……! だからどうか……火島さん!!」

「くっ……どれだけ傷付こうとも、俺は、俺はアイツを……!!」

 

 バーンレーマの攻撃がカルヴァリアをかすめる。未だ彼の拳は届かず、カルヴァリアに翻弄されるままであった。

 

《Decisive Boost……LEON・JET》

 

 とどめにカルヴァリアがバーンレーマへと最後の一撃を放つ。

 

 が、爪撃を振るう寸前でカルヴァリアの動きが止まった。

 相性不良のイートリッジを使う弊害が起きたのだ。

 本来相性が良いイートリッジを使う事でパスしていた処理が、相性が悪いイートリッジを2個使用するという荒業(あらわざ)によって阻害されて動作に支障をきたしたのである。

 

「こんな時に……ッ!!」

 

 悔恨するカルヴァリアにバーンレーマの拳が炸裂する。完全に隙を突かれた会心の一撃であった。

 バーンレーマの持つパワーに圧倒されそのまま殴り飛ばされたカルヴァリアが勢いよく地面に落下、何度か横転しながらうつ伏せに倒れ込んだ。

 

「これが俺の覚悟だ!!」

 

 そう叫び勝利を確信するバーンレーマだったが、カルヴァリア──PRSの処理落ちで変身解除されてしまったさだめの怒りは消えない。

 

「何が覚悟、ですか……そんな事で私の……後悔は……なくならないッ!!」

 

 瞬間、その場にいる全員に怖気が走る。それは人間の持つ野生が持つ本能というべきか。

 

 死。

 

 それを感じ取ったバーンレーマはさだめから距離を取る。

 金剛はモニタールームから“やめる”様に求める。

 正義は花恋の手を引いていた。

 

 さだめが放つ粒子、それはレーマに変貌する(きざ)しであった。

 

 まだ負けられない。

 その衝動が彼女を突き動かす。

 ──だが。

 

(この力は、違う。この力を使っては、駄目)

 

 心の中で自分を必死に制止するさだめだったが、その行動は既に完了していた。

 

「うあああああッ!!──」

 

 

 デスレーマ。

 

 

 さだめが変貌した“死”の異形。

 それが彼女の示した覚悟への返答、己の本気という行動であった。

 

 だが、その力を使ってしまえば、周囲の人々を、レーマでさえも、殺してしまう。

 さだめの本意ではないその力が、波動となって伝播(でんぱ)する。

 様に見えたが、実際に起きた現象は死とは異なっていた。

 

「……」

 

 その場にいる全員が死を直感し、本当に死ぬと覚悟してしまっていた。

 しかし誰も命を落とす事なくレーマに変貌した彼女の姿を皆が捉えていた。

 

「いや……」

 

 口を開いたのは、デスレーマを実際に目撃した事のある正義であった。

 デスレーマと思われていた異形は、過去に見られた姿とは全く違うカタチとなっていた。

 その様子を見て金剛はある仮説に辿り着く。

 

「デスレーマではない別のレーマに……なった?」

 

 その仮説は正しかった。デスレーマではなくなったその異形から正体が語られたのだ。

 

 

「──“ネルガルレーマ”……死を司り、死を否定する、私に“神様”がくれた新しい力。進化した私の、性質」

「ネルガル? それってメソポタミア神話に出てくる冥界、破壊、疫病、死を支配する神格の名前じゃないか」

 

 金剛が呟くと黒木が息を呑む。

 

「私はこの力を……“殺さずに殺す”為に使う」

「何いってんだ、カルヴァリア……」

 

 思わず口漏らすバーンレーマを見つめ、ネルガルレーマはその姿をさだめのものに戻し、霧散する粒子を右手に集中させ、イートリッジの形に収束させた。

 

「! 何してんだ」

「私の力をイートリッジって形に実現した……神様の性質に進化したから、なんか凄い力に近付いたオマケ、らしいけど……よくわからない」

 

 さだめでさえも深く認識していない現象が発生している事に一同は混乱する。

 

「レーマ因子を物質に変換してイートリッジの形状に構築した、というのか? マジ?」

 

 考察を進めながら状況をメモする金剛を見て大淀が問う。

 

「何が起こっているんだ、藤村くん」

「詳しく説明はできませんが、さだめちゃんが“進化”と称していた通り、レーマの力が新生、新しく生まれ変わった可能性があります──そんな事例は初めて観測されますが。ただ、それが本当で、あのイートリッジが本物なら、さだめちゃんの新しい力に、なったと思われます……それにあの子のあの自身に満ちた顔……」

 

 大淀と金剛がさだめの凛々しい表情を見る。

 

「何か、凄い事が起こるんじゃないかって」

 

 

 新たなイートリッジを(たずさ)えたさだめがそれを起動させる。

 

《Nergal》

 

「改めて私と戦ってください、火島さん。この力で説得してみせます」

「説得? どうやるかは分からねぇが、やれるものならやってみせろ!」

 

 バーンレーマが戦闘態勢を取ると、さだめがコンフルエンサーの右側スロットにネルガルイートリッジを装填する。

 続いて左側にスチームイートリッジを装填、ダイヤルを回す。

 

「変身」

 

《Property Compile……NERGAL・STEAM》

 

 その音声と共に形成された新たなるカルヴァリアの装甲は白と灰の鎧に紫色の装飾を足した様相を呈していた。

 仮面ライダーカルヴァリア・ネルガルスチーム。その戦士はバーンレーマを見据(みす)えて腰を落とす。

 

「仮面ライダーカルヴァリア、交戦開始します」

 

 

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