仮面ライダーカルヴァリア   作:虎ノ門ブチアナ

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#9 幹部

「天渡会、“幹部”──メタル、お前らが呼んでるその通り、鋼を司るレーマだ」

 

 成田空港第1ターミナル、北ウイング3階。

 メタルレーマは自らの立場を名乗り、場を戦慄させた。

 

「幹部……なぜこんなところに」

 

 漏らす様に呟いたカルヴァリアに、メタルレーマは答える。

 

「ハッキリ言って人手不足だ、例え幹部と呼ばれようとも仕事は端役と変わらない」

 

 だが、とメタルレーマが言葉を続ける。

 

「幹部と呼ばれぬ者との違いは大きい……お前らを倒せるか否かだ」

 

 瞬間、メタルレーマの全身から鋼鉄の角棒が伸びて全方位にぶつける。

 なんとか回避するカルヴァリアだったが、アンデッドレーマは武装を準備しているAD2をかばい直撃する。

 

「ぐッ!!」

「那珂!」

「花恋さん!」

 

 よろけるアンデッドレーマだったが、瞬時に傷を回復し、復帰する。

 

「大丈夫、ここで私が立ってなくちゃだから……!」

「すまん那珂、だがこれでいける!」

 

 AD2が大型バイクを可変させると、巨大な砲塔になり、その照準をメタルレーマに向ける。

 それに気付いたメタルレーマが体を変化させて盾を形成するが、それに構わずAD2は引き金を引く。

 

「溶けろ、レーマ!!」

 

 その装備は、以前パンゴリンレーマが使用していた荷電粒子砲を改造した兵装、携行型二輪荷電粒子砲『ライドボレアス』。

 パンゴリンレーマの際には体に取り付けざるを得なかったエネルギー充填を担う機材をAD2に組み込む事によって威力を落とす事無くバイクに変形しての移動と発射を可能とした金剛の新たなる発明である。

 

 ライドボレアスから放たれた熱線はメタルレーマの生成した盾を溶かし、粉砕する。

 

「……!」

 

 射線上から離れようとするメタルレーマだったが、その鈍重さが仇となり、ライドボレアスの射撃から逃れられない。放たれるエネルギーによって全身が削り取られていくメタルレーマはその場で膝をつく。

 

「幹部と言ったが、この程度だとはな……」

 

 AD2が呟きつつも、決して油断は無く、確実にメタルレーマを仕留めにかかる。

 一方のメタルレーマは体表の損耗を受けて体力的にも厳しい状態となってきたが、戦いを諦めてはいなかった。

 精一杯の力で再び盾を作り、一瞬ライドボレアスの熱線を防ぎ、その隙を突いて体を細く延ばし、射線から離れる。

 体のほとんどが射線から離れた刹那、体を収縮させ、完全に熱線から離脱してみせた。

 一瞬で行われた脱出劇にAD2は舌打ちを鳴らしてライドボレアスを動かし、再度メタルレーマへと向ける。

 

「出力最大! ブッ壊すつもりで放つッ!!」

 

 AD2が叫びながらライドボレアスの液晶を操作、出力の上限を最大値まで上げ、熱線を照射する。

 射出口が熱で融解し、パーツの継ぎ目から(きし)む音が鳴りながらも、威力を落とさずその熱をメタルレーマへと浴びせる。

 

「この……威力は……!!」

 

 先程まで何とか離脱できていたメタルレーマも今回の出力を上げられた熱線から逃れられず、真っ向から砲撃を食らう。金属で構成された全身が溶解し、レーマとしての形を保てず粒子化しながら霧散する。

 

「そのまま()けろッ!!」

「ここまでか……だが、見誤ったなレーマ狩り……俺は端役と言っただろう……!」

 

 メタルレーマが意味深に告げると、同時に金剛から全員に通信が入る。

 

「敵の増援だ! 第2ターミナルにコードネーム・コンクリートレーマとベアーレーマが出現した! 奴らの攻撃で逃げ遅れた人がいる、急行してくれ!!」

 

 カルヴァリアがAD2へと視線を向ける、と、彼は強くうなずいて指示を下す。

 

「ここは俺がなんとかする、君らは第2ターミナルへ!」

「了解しました……花恋さん」

「行こう!」

 

 カルヴァリアとアンデッドレーマがバイクに乗り込み、ハンドル付近の液晶に表示される案内に従って新たな敵の元へ向かう。

 

「……耐えたぞ、レーマ狩り」

 

 出力を上げた熱線を受けてなお爆散を免れたメタルレーマにAD2は戦慄する。

 

「無敵かよ、あんだけの熱量を受けて耐久できる“物質”があるっていうのか」

「レーマとしての組成は現存する物質の硬度では測れない様だな」

 

 メタルレーマが嘲ると、AD2が再度ライドボレアスを構える。

 

「させんッ」

 

 確かにライドボレアスの熱線を二度も防いだメタルレーマであったが、あと一撃受ければレーマとしての変貌を維持できず爆散してしまうだろう。

 ライドボレアスの発射を阻止せんとメタルレーマが体を延ばして破壊しようとするが、AD2の強固な装甲が防御し、操作を許してしまう。

 

(砲塔の損傷具合からしてこちらもあと一発が限界だと思うが……撃てれば勝ちだ!!)

 

──────────────────

 

 第2ターミナル3階。

 AD2と別れたカルヴァリア、アンデッドレーマがその場に到着すると床面にコンクリートの塊と思しき物体が散乱しているのを目撃した。

 コンクリートの塊が邪魔をしてライドゼファーでは通行できなくなっているのを確認し降車したカルヴァリアらはターミナルの中央で人々の死体を回収しているレーマ2体を補足する。

 

「あれらが増援……」

 

 カルヴァリアが構える様子を見てアンデッドレーマが早速攻勢に出る為飛び出すか思案するが、すぐさま様子見に移る。

 

(前だったらなんも考えずに突っ込んでたけどそれも反省……まずは敵の動きを見る、んで私の力が活用できるか考える。これで行こう)

 

「真っ先に動かない……いい判断ね、花恋さん」

「でしょ」

 

 と、増援の内の1体、コンクリートレーマがカルヴァリアらの到着に気付き、腕の射出機から生コンクリートを放つ。

 数百メートルあろう距離からの射撃に関わらず、正確に彼女らの足元を狙いコンクリートが撒かれる。

 床面に付着したコンクリートは即座に乾燥、硬化してコンクリートの塊となる。

 

「あれでこちらを固めつつ、もう1体で攻撃というのが戦略か……なら」

 

 カルヴァリアがベルトからスチームイートリッジを抜き、ジェットイートリッジを代わりに装填する。

 

《Property Replace……DEATH・JET》

 

 デスジェットに再変身したカルヴァリアが空中からの接近を狙う。

 

「飛ぶ敵ならば足場を固められないでしょう?」

「あっさだめちゃんズルい!」

 

 コンクリートレーマの射撃を避けながらアンデッドレーマがカルヴァリアを追う。

 

 空戦能力の高いカルヴァリアはコンクリートレーマの射撃を回避しながら接敵し、推進力を活かした回し蹴りを見舞う。その蹴撃により叩き伏せられたコンクリートレーマにかかと落としの追撃を食らわせる。

 

「これで終わりに──」

 

 ベルトのダイヤルを操作して必殺技を放とうとした所を、もう1体の敵、ベアーレーマからの爪撃で阻まれる。

 持ち前の機動力で回避したカルヴァリアだったが、その隙にコンクリートレーマの逃亡を許してしまう。

 奴はどうやら回収した死体を運び出す算段らしい。

 

「花恋さん追って!」

「あいあいさー!!」

 

 カルヴァリアがベアーレーマを引き付けていた事でアンデッドレーマは容易にコンクリートレーマの元へ辿り着き、右ストレートを放つ。が、直線的な彼女の一撃は簡単にかわされ、ボディーブローを食らった。

 ――様に見えたが。

 

「そのパンチ、信濃ゼミでやったとこだ!!」

 

 自分の攻撃がかわされる事を見越して次の相手の動きに集中していたアンデッドレーマはコンクリートレーマの攻撃に対応し、回避していたのだ。

 

 攻撃を読まれたコンクリートレーマは今度こそとコンクリートを射撃してアンデッドレーマを拘束しようとするが、近距離から撃っていたゆえにどこを狙うのか読まれ、またも回避される。

 

(相手の動きがなんか分かる気がする……これも多分特訓のおかげ?)

 

 怯んだコンクリートレーマの腕をアンデッドレーマが引っぱり、後方へ倒れ仰向けになる。

 そして、掴んだままの敵の腕を反らして押さえつける。

 

 すなわち、腕ひしぎ十字固めを決めていた。

 

「これも信濃ゼミでやったところだーー!!」

 

 コンクリートレーマがもがくが、アンデッドレーマは全力で拘束に徹する。

 仲間が簡単に無力化された光景に唖然とするベアーレーマであったが、すぐさま無防備なカルヴァリアへの猛攻を再開する。しかし彼女はジェットの推進力で後方へ飛翔、そのままベアーレーマの背部へ回り、肘に取り付けられたスラスターの推力で強化された鉄拳を後頭部へ食らわせる。

 

「うおー! シンプルなゲンコツだぁ!」

 

 思わず実況してしまうアンデッドレーマの声を受けながら、カルヴァリアはベルト中央部のダイヤルを回転させる。

 

《Decisive Boost……DEATH・JET》

 

 ベルトから発せられる音声にベアーレーマは腕を広げて反撃の体勢を取る。しかし後頭部を殴打された衝撃が残った状態で大きな隙を見せてしまい、そこを狙ったカルヴァリアのブースター、スラスターを最大推力まで上げた突撃と、その威力を活かした拳によって一撃で爆散させられる。

 

「……次」

 

 立ち込める赤い粒子をかき分けながらカルヴァリアがコンクリートレーマへと近付いていく。

 自身に迫る危機から逃れようともがくコンクリートレーマだが、アンデッドレーマは決して離さず、無用に脱出の為の力を浪費するだけであった。

 

《Arms Transfer》

《Set Import……STEAM》

《Mortal Slash……STEAM》

 

 先程破壊された代わりに呼び出されたスペアのモータルザッパーにスチームイートリッジを装填、コンクリートレーマへと刃を向け、振り下ろす。

 蒸気の性質により凄まじい速度を得たモータルザッパーの鋭い斬撃はコンクリートレーマの首を一息に()ねる。

 斬首と同時にコンクリートレーマの全身が赤い粒子と化し爆散。ずっと力を込めていたアンデッドレーマがようやく解放され、血流を回す為にか腕を振りながら立ち上がる。

 

「なんとか……やったね」

「ええ、でも」

 

 カルヴァリアが人々の死体を集めていた場所を見ると、そこには最初から誰もいなかったかの様に瓦礫のみを残し死体は消え去っていた。

 

「私達が戦っている間の他の増援がいて、回収していった……と推測できるけど」

 

 不審に思ったカルヴァリアが金剛に通信を行う。

 すぐさま応答した金剛に敵の反応が無かったか問うと、神妙な口振りで説明を始めた。

 

「レーマ因子の反応が一瞬だけ確認されていた。監視カメラの映像も確認したところ、その場に一瞬だけレーマが出現し、亡くなった方々を抱えて瞬時に消失している」

「瞬間移動を可能とするレーマがいる……という事でしょうか」

 

 恐らくね、と返す金剛にAD2から通信が入る。

 

「藤村先生、こちらであった状況を伝えます──」

 

 ──第1ターミナル、北ウイング3階。

 

 ライドボレアスを再発射し、ついにメタルレーマが爆散する。

 赤い粒子の舞い散る中、筋骨隆々の巨漢が膝をついた。

 

「流石にレーマの力は持たんか……だが、そちらも3発が限界の様だな」

 

 男が指差すと、その先にあるライドボレアスが発熱し続けたまま煙を吹いていた。

 

「確かにコイツはお釈迦だが、お前さえ確保できれば問題無い。砲撃を受けて人間の姿に戻ってもなお意識があるのは大したモノだが、すぐに拘束させてもらうぞ」

「そうはいかんな」

 

 メタルレーマに変貌していた男が言葉を返すと、彼の背後から宇宙人、それもグレイタイプに酷似した小柄なレーマが一瞬で姿を現し、男の腰に触れる。

 

「なんだお前――ッ!」

 

 AD2が追おうとするが、謎のレーマと共に男は消えてしまった。

 その様子に唖然とするAD2だったが、戦闘が終了した事を確認し、金剛へと通信を繋げる。

 

「――という事が起こり……もう一体レーマが現れたと思ったらメタルレーマと一緒に消えてしまったんです」

「そうか、敵の増援が確認された第2ターミナルでも同様にして被害者の亡骸が奪われた。どうやら敵方には瞬間移動を可能とする──いや、恐らく離脱、撤退に特化したレーマがいると考えられるな」

 

 ここで考え続けても仕方ない、と金剛がライダー達に帰還指示を出す。

 それを聞いて変身解除したさだめらがその場で手を合わせてからユニットD本部へと戻る。

 

 

「天渡会は亡くなった人を回収して何をする気なんだろう」

 

 帰路にてそう問うた花恋に、さだめは静かに説明した。

 

「回収した犠牲者の中にレーマ因子が高い者がいれば仲間に引き込めるという算段なのでしょうね」

「そっか、レーマに殺された人は場合によっては同じくレーマになる、私みたいに。だからそういう人を集めて戦力を集めたいって所なのかな」

「みたいね」

 

 “人手不足”というメタルレーマの発言は実際その通りだったのだとさだめが思い返す。幹部でさえ現場に立って囮役に徹する程彼らにとって有益なレーマがおらず、新しい仲間を増やす為に人を手にかけ、1人でも多くレーマになりうる人間を増やす。そうやってこちらを追い詰めるつもりなのだと考えたら、怒りがこみ上げてくる。

 理不尽に殺されている人が、自分の家族以外にも沢山いる。その状況にさだめは天渡会への憎しみを強くする。

 

 

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