ARMORD CORE VI Revenge on the NEST   作:わるめ

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第3話 羨望

 ファムが部屋のモニターで再生したメッセージは、大手ドーザー集団Radからの依頼だった。

 

「早速だが、あんたに頼みたい仕事がある。ちょっとした人命救助さ。ジャンクパーツの回収に出ていたウチのスタッフが1人消息を絶ってね。だが何処に行ったか大方の目星はついている」

 

 音声は続く。

 

「あんたの拠点からそう遠くない位置にジャンカー・コヨーテスが占拠している集落がある。あいつらは私らを目の敵にしているからね、恐らくはそこに拉致されていると見ていいだろうね。救援部隊を寄越してやりたいところだが、今はちょっとした騒ぎでグリッドの警備が手薄になっちまってね、人手が足りないって訳さ」

 

 傭兵に来る仕事の依頼メッセージ。ガードナーは大手ドーザーの頭目から直々の依頼に心を躍らせていた。

 

「そこであんたの出番だ。集落を巡回しているコヨーテスのMTを掃除して、ウチのスタッフを救助して欲しい。シミュレーターでの腕前はそこそこあるらしいじゃないか。良い返事、期待しているよ」

 

 音声はここで終わった。

 

 ガードナーが隣の人物に目をやると、呆れた顔の姉がいた。

 

「私に隠してる事、あるよね?」

 

「......あー、そうですね~」

 

「逃がさないよ」

 

 忍び足で離れようとするガードナーの肩をファムが掴みグイと引き戻す。

 

「シミュレーターがどうのって言及が気になってね。まさかとは思ったけど、私に無断でNESTで戦ってるなんて」

 

「隠しててごめん、でも俺だって戦えるようになって役に立ちたいと思ったから! それにNESTなら実際にダメージを受ける訳じゃないからけがの心配もないし」

 

「はぁ~、あんたは分かってない。実際の戦場は本当に危険なの。シミュレーターでBランクだかAランクだか知らないけど、どんなに大それた称号があろうと、負けたら死ぬ。そういう世界なのよ」

 

 ファムの言い分に論理的に反撃する術が、ガードナーには無かった。

 

「それでも、いつか姉さんの隣で戦えるようになりたいと思ったから。姉さんだけ危険な目にあわせて自分は安全な所で留守番の日々を脱したかったから、自分なりに力を付ける方法を考えたんだ」

 

 それはガードナーの本心であった。傭兵として生きる姉への憧れと、失敗し帰らぬ人となる事への不安。両方の合致が、自らがACに乗り姉の手伝いをするという目標を導き出していた。

 

「まぁ口で言っても納得する様子も無いようだし。分かったわ、じゃあこうしましょう」

 

 ファムの提案はガードナーにとって意外なものであった。

 

「今度の仕事、あんたにも手伝って貰うわ。但し、戦闘要員じゃなくて輸送用ヘリの操縦士としてね」

 

「いいのか?」

 

「あんたには頼むことは二つ。私の機体を作戦区域付近に投下する事、私が敵MTを全滅させて安全が確保できたらヘリに救護対象を乗せて連れ帰る事よ。」

 

「勿論やるよ! でもなんで」

 

「百聞は一見に如かず。実際に戦場を見たとき、あんたが何を感じて、どう思うか。それを踏まえた上で本当にACに乗りたいのかしっかり考えてみて」

 

 その言葉の重みが、この時のガードナーにはまだ実感出来ないでいた。寧ろ姉の手伝いができる事、現場に出られる事への高揚感が頭の大半を占めていた。

 

 

 夜の暗闇を輸送用ヘリが泳ぐ。

 

「よし、目標の集落を発見。ここで良いわ、投下して頂戴」

 

「わかったよ。ACカーネーション、投下」

 

 ヘリ下部のハッチが開き、白い逆足のACが投下される。雪原の真っ只中に舞い降りたACは着地の勢いで逆に雪を舞い上がらせた。

 

 ガードナーは姉のACが集落へ向かっていくのを確認しつつ、ヘリを付近に着地させた。

 

 そしてヘリに備えられている望遠システムを作動させて姉の動向を追う。

 

 いくつかの建造物がまばらに建っている程度の小規模な集落。そこに向かって真っすぐ機体を前進させる姉の姿が見えた。

 

 近づいてくる機影に気づいたのか、コヨーテスのMTが建造物の陰から姿を現した。数は八機。

 

 内一機が両腕の機銃をばらまいてきた。

 

「各機、所属不明ACの迎撃に当たれ」

 

 部隊のリーダーであろう男の声に続いて、残り七機も陣形を組み一斉に機銃を発射した。

 

 対するACリンカーネーションは左肩のパルスシールドを展開し、殆どの弾丸を無効化した。そうして機体速度を維持したまま右肩のミサイルと両腕のレーザーハンドガンを撃ち込み、息つく間もなくリーダー機以外の七機を消し炭に変えた。

 

 リンカーネーションがブースターの出力を上昇させ、残ったリーダー機へ機体を急接近すると、両足での蹴りをお見舞いした。

 

 それを避けられなっかったMTが地面の雪を散らしながら吹き飛んでいく。

 

 体制を崩し起き上がれないMTにリンカーネーションが銃口を突き付ける。

 

「そこの集落にRadのメンバーを監禁しているのは分かっているわ。どうせもう戦力になるような物は残っていないのでしょう。捕まえているRadのメンバーを引き渡してさえしてくれれば、命までは取らないであげるけど?」

 

「あ......あぁ、降参だ。もう争う気はねぇ」

 

 そう言ってリーダーの男はコックピットから出て、一棟の建物を指さした。

 

「あそこの塔型になっている建物に捕えてある、好きにするがいいさ」

 

 無人になった目前のMTをレーザーで破壊するファム。任務にはMTの排除も含まれている。

 

「という訳で出番よ、ガードナー」

 

「り、了解!」

 

 ガードナーは唖然としていた。ACを駆り仕事をこなす姉の姿を見るのは初めてだった。一体どんな現場になるのかと身構えていたが、実際には戦闘と呼べるようなものさえ起らなかった。

 

 ACの圧倒的な力、それをいとも容易く扱う姉の存在に増す尊敬。そこに少しばかりの恐怖も添えられた。

 

 目の前の光景を目に焼き付けながら、ヘリを移動させて目的の人物の回収に向かうのだった。

 

 




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