ARMORD CORE VI Revenge on the NEST 作:わるめ
これは夢だ。幼かった頃の体験。眠りについたとき、度々記憶の再演を見る事がある。
研究者の両親、姉、俺。四人で囲む食卓。
両親が仕事をする後ろ姿、幼い自分にはどんな研究なのかは分からなかった。
夜なのに赤い空が怖くて眠れないでいると、姉さんが気づいて頭を撫でてくれた。
二人で囲む食卓。
ベットに縛り付けられて眩しい光を当てられると、何だか息が苦しくて、ちょっとだけ世界が広く感じた。
モニターの前で言い争ってる両親。
家が広いから姉さんとのかくれんぼはやりがいがあった。
四人で囲む食卓。
ベットで浴びる眩しい光。
誕生日ケーキのろうそくに灯った火を吹き消した。
家の外に出たことがバレると母は泣き、父にぶたれた。
四人で囲む食卓。
俺にとってあの日々は平和でかけがえのない日常だった。
ある日の夜中に、姉さんが俺の体を揺すって起こした。寝ぼけ眼をこすりながら、訳も分からず姉さんに手を引かれて歩かされた。
しばらく歩いていると、途中で姉さんが俺をおんぶして段差を登って行った。
目が暗闇に慣れきってなくて、いまいち判別がつかなかったけれど、何かしらの乗り物に乗せられたらしい事は分かった。
狭い空間に席は一つしかなく、先に座った姉さんの膝に乗せられて、ぶかぶかのヘルメットを被せられた。
正面が明るく光って目前にモニターがあることが分かった。
目前の大きな扉をこじ開ける巨人の手が映り込んでいる。
今乗っているのはACだ。
建物の外に出たACは宙へ浮き、夜空に向かって加速した。
「姉さん、どこに行こうとしているの? 勝手にこんな事して、お父さんとお母さんに叱られるよ」
「その心配はないわ」
姉さんの考えていることが分からなくて、なんだか怖かった。
そのうえ背後から何かが迫っている予感もして不安が募る。
「お願いがあるんだけど、目をつぶっていてくれる? 私が声をかけるまで絶対に開けないで」
訳も分からず従うしかなかった。
機体が機敏に動いているのだろう、体が右へ左へ揺らされる。
爆発のような、破裂のような大きな音が聞こえてきて、耳が痛い。
どれくらいの時間がたっただろう。
気が付くと機体の揺れは殆ど無くなっていた。
「もういいよ」
目を開けると、下には地面、上には星たちの光が見えた。
「姉さん、お父さんとお母さんは......」
「2人にはね、もう会えないの」
「それって」
「死んじゃったんだ、ACと闘って」
その声は震えていた。
「だから、これからは2人で暮らさなきゃいけない。不安だと思うけど、絶対に守ってあげるから」
姉の事を直視できなくて、両親がなぜ死ぬことになったのかよく分からなくて、星空を眺める事しか出来なかった。
ガードナーが目を覚ますと、そこは自室のベットだった。
あの日、姉を失ってから実に13日が経過していた。
結局、姉の敗北を背に逃げる事しかできなかった。
戦いには敗れたが、ターゲットの救出には成功したので報酬は支払われた。だが姉を失った事による喪失感、悲しみに心を支配されたガードナーにとって、金など何の意味もなさなかった。
どうしてこんな事になったのだろう。と、思考を巡らす。
薄々分かっていた事だが、姉が敗北した原因はガードナーにあった。言いつけを守らずNESTで戦いをしていたからだ。
NESTではこういう事が起こる事がある。ランクマッチでランダムに対戦相手と当たる。そして敗れる。その後もう一度同じ対戦相手に当たる。先の戦いで相手の戦略は分かっているので、戦い方を変えて勝つ。
このように1度目で相手の機体構成や戦い方の癖を見ておいて、次当たった時に相手が嫌がりそうな戦い方をする事で勝ち星を拾えるというシチュエーションがある。
パーツや武装をたくさん持っているAC乗りであれば、機体構成を即座に変更して対策を講じる事もあろう。
だからガードナーは、自分が1度NESTで機体構成を晒してしまった事が姉の不利に働いたと見ていた。そしてそれは実際正しかった。
実質自分のせいで姉が死んだ事実を直視するのが辛かった。
正確には、半分は自分のせい。もう半分は敵のせいだと理解していた。
こんな状態でも喉が渇き腹が減る自分の体に苛立ちを覚えながら、ガードナーは部屋を後にした。
キッチンの冷蔵庫に食材と水が少し。あまり食欲は湧かなかったので水だけ飲む。
暫くボーっとしてふと我に返る。
意識がはっきりすると、またあの場面がフラッシュバックしてしまうので、何かしら仕事をして紛らわそうと格納庫へ向かった。
格納庫には機体が無いAC置き場と未整備の輸送用ヘリが置いてある。
ヘリを整備する前に、端末の確認をしてみる。
新着メッセージ、1件。
先日の仕事で救出した少女からだ。
「この間は危ないところを助けていただき、ありがとうございました。......あ、申し遅れました。私、レインと申します。お姉さんの事は、残念でした。私の救出任務で命を落としたのですから、恩や情の類は感じてしまうというものです。しかし、私も1人のドーザー、1人のメカニックです。こんな事で帳消しにできるとは思いませんが、もし今後お力になれるような事があれば連絡してください」
律儀な人だとガードナーは思った。そして今の傷心して孤独に思考を重ねていただけのガードナーにとって他者の声、言葉がもたらす励みの効果は当人の想像以上であった。
少しだけクリアになった頭でもう1度、今自身が何をすべきか、何がしたいのかを考える。
その思考の行きつく先は、とてもシンプルな答えだった。
自分が原因で姉を失ったのだからお門違いなのかもしれなが、あの赤いACを思い出すとガードナーの頭には恨み言が湧いてきて堪らないのである。
「あいつ、マジで何だったんだ」
「あいつさえ出てこなけりゃ」
「半分は俺のせいで姉さんは負けた、けどもう半分はあいつのせいだ」
「そうだ、そもそも何であのタイミング、あの場所に現れたんだ」
「1度NESTで戦った相手の対策をしたような機体構成で」
「そんな芸当が可能なのか」
「何か秘密があるのか」
「だとしたらそれを突き止めなくてはならない」
「そして」
「絶対に姉さんの敵を討ってみせる」
ガードナーは早速レインへコンタクトを取った。
まずは、自身が戦う為の手段を。ACを手に入れなくてはならない。
本作品はpixivにも同内容で投稿しております。