ARMORD CORE VI Revenge on the NEST   作:わるめ

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第6話 爆弾

「それでは、今から3つ質問をします」 

 

 通信モニターの向こう側から話しかけてくる少女の名はレイン。

 

復讐を誓った男に不足しているものは何か。それは対象を倒す為の武器、つまりはACであった。

 

 新たなACを手に入れる為に、ガードナーはドーザーのレインを頼る事にしたのである。倒したい相手がいる事、その為のACが必要な事を伝えて。

 

 彼女は快くACの建造へ協力を申し出てくれた。

 

「質問に答えていくことで、貴方に合ったACを設計する事ができます」

 

「そういうものなのか、そんなやり方聞いたことないけど」

 

「まぁ、ここは騙されたと思って。どうせ1人でACを組んだ経験なんてないのでしょう」

 

「それはそうだけど」

 

 ガードナーは少女のペースにどんどん飲まれていった。

 

「とにかく、さっさと始めますよ! まず第1問。貴方は今長距離走のスタートラインに立っています。周りには他の選手わんさか。そんな中、1人声を掛けてくる男が。彼は言いました。『なぁ、ゴールまで一緒に走ろうぜ』と。貴方は彼と暫く並走する事にします。しかし、レースも後半に差し掛かったタイミングで事態は起こります」

 

「なぁ、これ何の話なんだ」

 

「いいから! 彼は徐々に速度を上げて、ついには貴方との距離をしれっと引き離して抜き去って行ったのです。ここで決断の時です。貴方は彼を追いかけますか、並走する為? 或いは抜かし返す為? それともあくまで現状維持をして自己の記録に挑戦する道を選ぶか、はたまた彼の持久力が想像以上に消耗していて後から追いつくことに賭けるか!」

 

 ガードナーは困惑した。ACと何の関係があるのか分からなかったからだ。

 

 しかし、モニターに映る少女の顔が、目が、こちらの返答を期待して今か今かと待ち望んでいる。

 

 諦めて回答を出すことにした。

 

「......追いかけるよ。だって腹が立つじゃないか、約束を破られたんじゃ」

 

「分かりました。それでは第2問! 貴方は刑事です」

 

「ちょっと待って、その『刑事』って何だ?」

 

「あー。刑事とはですね、遠い昔の人類が国家というものに属していた頃の職業です。ざっくり言うと人々の生活を脅かす悪者を捕まえる人と捉えてもらって構いませんよ」

 

「なるほど」

 

「じゃあ続けますね。目の前には過去何度も多くの犠牲を出した凶悪な殺人鬼がいます。一方その隣にはその殺人鬼の所為で命の危機に瀕した老人がいます。殺人鬼を追えば老人は息絶えますが、老人を救えば殺人鬼は逃げます。貴方はどちらを選びますか」

 

「中々難しい質問だな」

 

 ガードナーはこの質問に即答出来なかった。少しの沈黙を経て導き出した答えとは。

 

「殺人鬼を追うよ。今相手を逃したら次はいつチャンスが来るか分からないし、そこで殺人鬼を捕まえる事ができれば後に犠牲になる人を減らす事にもなると思うから」

 

「その行為で目の前にある救えるかもしれない命が失われる事になりますが、そこに対して後から後悔してしまうんじゃないかという不安はありませんか」

 

「勿論ある。犠牲になる老人に対して申し訳なく思うだろうけど、その代わり絶対にその殺人鬼を逃がしはしない。それがある意味で弔いにもなるはずだ」

 

「わかりました、では第3問です。これは他でもない貴方自身の言葉で教えてください。私が作るACで倒したい相手を討った後、その先の未来で貴方は何をしますか」

 

 この質問に関して、ガードナーは一切迷う事無く答える事が出来た。

 

「その先なんてものは無い、死んだ姉さんの敵を討つ。それが全てだ」

 

「......わかりました。質問は以上です、お付き合い頂きありがとうございます。おかげで貴方に合ったACを考える良いヒントになりました」

 

「なら良かった」

 

「数日あれば部品・パーツの調達から建造まで出来きるでしょうから、完成次第連絡しますね。じゃ、早速取り掛かりますので」

 

 そう言ってレインがさっさと通信を終了した。

 

 ガードナーは彼女のペースに乗せられてしまっていた。その所為もあり、若干の疲労感があった。

 

 だがおかげでACの調達はあてが付いた。

 

 後はどうやって宿敵カイヤナイトを見つけ出すかが問題である。今ガードナーにできる事は、今後について考えながらACの完成を待つこと位だった。

 

 

 あの通信以来、レインは1週間働き詰めだった。昼間はRadの構成員として工房での作業を手伝い、夜はガードナーから依頼されたACの建造に時間を割いており、息つく間もない生活を送っていた。

 

 その甲斐あって、ついにACは完成した。

 

 レインは自身が組み上げたACを移送用のシェルパに格納して一息つく。

 

「ようやく完成したようだね」

 

 声を掛けてきたのはRadの頭であるシンダー・カーラだった。

 

「カーラさん!」

 

「前にアンタを救出した奴への恩返しなんだろ。なかなかの傑作が仕上がったんじゃないか」

 

端末で機体データを確認しながらカーラが言った。

 

「私の救出任務がきっかけで、彼のお姉さんが命を落としましたから。恩返し半分と罪滅ぼし半分です」

 

「そうかい」

 

「ところで、一つ訊いてもいいでしょうか」

 

「なんだい」

 

 それは、間違えであって欲しい疑念。

 

「カーラさん。貴方はこの星を、ルビコンを焼こうとしているのですか」

 

 はっきりさせないで、このまま日々を送ることだって出来た筈なのに。レインはそれを選ばなかった。

 

 胸を張ってRadの一員を続ける為にも、今後自分が生まれ育った故郷の壊滅に加担する事になるのか、或いは単なる思い過ごしか白黒つける必要があったのだ。レインにとってこの行為は、さながら起爆寸前の爆弾を処理するような緊張感であった。そしてこの場合、爆発を意味するのは勿論......。

 

「どこでそれを知ったんだい」

 

 疑念が真実であるという確信に変わる言葉である。

 

「以前コヨーテスに捕えられていた時に、通信のやり取りが聞こえてきたんです。話していたのはコヨーテスのメンバーとオーネスト・ブルートゥという人だったようです」

 

「それで?」

 

「ブルートゥという方が言うには『私の古巣では、今も密かにこの惑星を焼却する準備が進んでいる筈です。それ自体は問題では無いのですが、まだ見ぬご友人との出会いが、踊る為の舞台が消えてしまうのは少しばかり物悲しい』との事でした。最も、コヨーテスの人たちも話半分で聞いているようで、いつもの虚言だと真に受けてはいない様子でしたけど」 

 

「なるほどね、アイツにも感づかれていたとは。とにかく、知られたからには隠し事は無しだ。アンタの言う通り、私はルビコンを焼きはらう計画を進めている。企業の連中が躍起になって手に入れようとしているコーラルをこの世から無くす為さ。あんな危険なものは人の手には余るからね」

 

「他に方法は」

 

「無いね」

 

 普段の調子で落ち着いて話すカーラだったが、その瞳は己の使命という炎を静かに宿していた。

 

「さて、これを知ったからにはアンタには選んで貰わなくちゃならない。私たちに協力するのか、しないのか」

 

 




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