ARMORD CORE VI Revenge on the NEST 作:わるめ
闇夜の荒野をヘリが行く。
ガードナーの下にごく短いメッセージが届いたのである。
「指定する座標へ来て下さい」
レインから示されたのは座標。そこに向かえば、依頼していた機体を受領できるのだろう。そう踏んだガードナーはベットから飛び起き、急ぎ出立の準備を整えてヘリを飛ばした。
闇夜の荒野をヘリが行く。
暫く移動を続けた先でガードナーの視界に入ってきたのは、巨大な棺桶のような物体。AC移動用のシェルパが見えてきた。
すぐ近くにヘリを着陸させてシェルパのシステムにアクセス。その扉を開けると1機のACが格納されていた。
青く細身の2脚。レッドパープルの光を宿す6つの目。両手には小型の拳銃を2丁握り、肩には6連のミサイルとパルスブレードを携えている。ガードナー目にその姿は、復讐を遂げんとする騎士のように映っていた。
早速コアのハッチを開けて乗り込む。通常モードを起動させると''リィンカーネーション''というAC名がモニターに表示された。続いて各種パラメータのデータを確認していく。
ガードナーが気になったのは、ある動画ファイルがデータの中に含まれている事だった。それを再生してみると、映像の殆どがノイズで埋め尽くされており、一体どんな内容のものだったのかは全く分からなかった。それでも暫く再生を続けると、ある場面で映像のノイズが晴れた。
映っているのは、ラボのような場所を高いところから撮影したもので、画角内には女性2人。内1人はガードナーの知る人物、レインだ。何か言い合っているようだが音声には相変わらずノイズがかかっている。再生を続けると少しの間だけノイズが消え、もう一方の女性が発した言葉を聞くことができた。
「そうそう、隠し撮りしている映像は好きにしていいよ。まぁ、やれるもんならね」
以降の音声と映像は再びノイズまみれとなった。
部分的に取り除かれたノイズに対して、ガードナーは何かしらの意図を感じざるを得なかった。詳しい事情は分からないにしても、レインの身に不都合が起こっている事は容易に推測できた。
自らの復讐の為に機体を用意してくれた恩人。その人物を見捨てるという選択肢は、ガードナーの中には存在しない。
ガードナーは、シェルパの移動ルートの記録を確認する。シェルパの発進元を知る為だ。
レインがこのACを届けようとした矢先、件の動画にあったやり取りが起こり、自由が利かない中で何らかの手段を用いてAC入りのシェルパを発進させた。この推測が合っているとするならば、シェルパの発進元にレインがいる可能性が高い。
判明した発進元はグリッド086、Radの根城である。
「待ってろよ、造って貰ったコイツの力で迎えに行ってやる」
AC、リィンカーネーションがシェルパから飛び出す。ブースターから噴射される火が、その蒼い機体を空の彼方へ押し上げてくれた。
数時間の飛行の後、ガードナーの目に映ったのは巨大な鉄で模られた雲のような、或いは天井のような建造物。グリッド086である。とても広大な建造物である。
こんな場所を闇雲に捜索した所で大した意味を成さないだろう。まずはシェルパ発進元の正確な位置まで最短距離を突っ切る。その間に降りかかる火の粉は払うまでだ。もしそこに何もなかったとしても、不審なACが侵入しているという事が知れ渡れば、相手側から何かしらのアクションを望めるはずだ。
リィンカーネーションをグリッドの開けた空間に着地させる。恐らく輸送カーゴか何を射出するカタパルトだ。
メインシステム、戦闘モード起動。
移動等の基本的な操作のみに割いていたエネルギーを戦闘用のシステムに分配する戦闘モード。通常モードのようにエネルギー切れを気にせず飛び続けるといった事は出来なくなる。その代わり武装の使用、姿勢制御によるダメージの軽減、スキャンによる索敵等の戦闘に必要な機能を開放するACの花形といったモードである。
この先は敵機の攻撃が予想される。モードの切り替えは必須であった。
機体を前進させ、この先の屋内を目指す。目前の長橋を渡れば建物内部に侵入できる。橋を渡っていると、チャージ音のようなものが聞こえてきた。何処からか狙われている。スキャンに敵影は引っかからない。瞬間、ガードナーの勘が冴え渡る。
上だ。咄嗟に後ろへクイックブーストを行う。眼前には青い光の柱が発生した。上空からの強力なレーザー照射。危機一髪であった。
先の一撃を回避したのも束の間。また例のチャージ音が聞こえてきた。今度はアサルトブーストで機体を高速で前進させる。その前進する速度を維持したまま機体を左へ振る。さっきまで居た空間に青い光の柱が降りてくる。回避は成功した。
またまたチャージ音が聞こえてくる。だが機体スレスレの回避行動を毎回成功させるのは至難の業だ。ガードナーは急ぎ機体を橋の下へ移動させる。チャージ音が聞こえなくなった。上空のロックオンから外れる事が出来たのである。
そのまま橋の下を飛行して、被弾する事なく建物内部に侵入した。
内部は、まずACが幾らでも積めそうな程巨大なエレベーターになっていた。その後開けた空間に出ると、中央に火山が現れた。よく見るとそれは人工物であり、機能停止したロボのようだった。
「何かの実験後か、過去に戦闘があったのか」
少し不気味に思いながらも、その空間を進む。閉じた扉にアクセスして外への道を開いた。
屋外に出る。そこには多様なMTの群れがあった。逆足のもの、丸まっているもの、4脚の他より大きいもの。それらが皆赤いカメラアイを光らせ、こちらを見ている。
群れが、それぞれの武装をリィンカーネーションへ放つ。弾丸、砲弾、ミサイル。火器の雨霰。それに対してジャンプ、クイックブースト、落下と思いつく限りあらゆる回避行動を行う。ひとしきり避け終えると、リィンカーネーションが反撃の体制に移る。
まずは両手の拳銃を敵機に放つ。ガードナーの想定より細く鋭利な弾丸が飛び出し、被弾したMT達を抉る。肩に背負ったミサイルは、その弾頭の1つ1つが敵機を追尾して触れた対象を爆発させる。残った4脚が放った砲弾を難なく避けながら、左肩のパルスブレードを腕に装着する。パルスの白い刃が、4脚の巨体を切り裂く。
行動を終えると、群れの残骸が当たりに転がっていた。
機体スピード。攻撃手段。その性能の悉くがガードナーのAC操作にマッチしているのを感じた。それはガードナーの姉、ファムのACを拝借していた頃の操作感とは比べ物にならない程だった。リィンカーネーション。それは嘗ての機体の後継の名を冠するに相応しい代物だった。
「少しはやるようだね」
通信が入ってきた。映像で聞いた女の声だ。
「あんたの目的は分かっているよ。その先のカタパルトに乗って上層まで来な」
通信が終わる。コックピット内のモニターにカタパルトの位置までのガイドマーカーが表示された。罠かもしれないが、警戒しつつ従う事にする。
カタパルトで上層へ向かうと、その先の建物にマーカーが移る。そこに声の主がいるのかもしれない。ガードナーは機体をその建物内部へ移動させた。
中は広大な格納庫のようだった。無数のMT、修理中の黄色いAC、速そうなタンク型のACが目立つ。
「よく来たね」
その一言と共に奥からローズマダー色の重量2脚型ACが現れた。
「貴方がシンダー・カーラさんで間違えありませんね」
「あぁ、そうさ」
ガードナーが言葉を紡いでいく。
「貴方に話したい事が2つある。始めに姉の生前、仕事のご依頼ありがとうございました。そのお礼を言いたかった」
「こちらこそ、あの時は助かったよ」
「そして、もう一つ」
ここからが、この場所へ単機で乗り込んだ本題である。
「俺のACを造ってくれた技術者、レインに会わせて頂けないか」
「そう来ると思ったよ」
カーラが機体のコックピットを開ける。操縦席に座っているのがカーラ、その横で居心地悪そうにしている少女がレインだ。
「ガードナーさん!」
そう叫び身を乗り出す。
「レイン!」
ガードナーも思わずコックピットハッチを開ける。続いてカーラが口を開いた。
「折角ここまで来たんだ。あんたには事を知った上で選んでもらうとしようか」
「選ぶ?」
「あぁ、そうさ。先ず、私は危険な物質であるコーラルを根絶やしにする為に星ごと焼き払おうとしている。その計画に気づき反対しているのが、この娘さ。だがこの娘には戦いの技能はない。そこで、私がこの星を焼き払おうとしている事をあんたに知らせる為の映像を撮り、ACと共に譲渡して助力を得ようとしたって流れさ」
「そこまで分かっていながら、どうしてACの譲渡を阻止しなかったんだ。あの映像には意図的なノイズが施されていた。情報漏洩を危惧したんじゃないのか」
「そうさ。もしあんた以外の人間にACが渡ったらこの状況は作り出せないからね。映像にはハッキングをかけさせてもらった。だがACがあんたの手に渡るのは構わないと思った。それが、この娘が選んだ事だからね」
カーラが続ける。
「さて、あんたはどっちを選ぶ? 私に付いてコーラルを根絶やしにするか、この娘に付いて星を守る為に私と闘うか」
事情は分かった。カーラの考え、レインの考え、そして......。
「申し訳ないが、この星の未来に興味はない。というかそれどころじゃない。俺は復讐を果たさなくちゃならない。姉さんを死なせた人間をこの世から消さなくちゃならない。だがその為には、レインの力がこの先も必要なんだ。だから!」
リィンカーネーションが左手の拳銃をカーラのAC、フルコースへ投げつける。カーラがそれを防ぐのにコックピットを閉める時間は無かった。殆ど反射的にフルコースの両椀をクロスさせ防御した。
ガードナーの行動はまだ終わっていなかった。投げつけた拳銃を追うように、フルコースへと機体を急速接近させる。そして両腕のガードを蹴り上げる。ガコンという金属同士がぶつかる音を伴い、フルコースが少し体制を崩す。その衝撃で、レインはコックピットハッチから足を踏み外し落下する。それを見越したリィンカーネーションの左手がレインの落下速度に合わせて差し出される。間一髪、レインの身体をキャッチし、ガードナーのいるコックピットへ運んだ。AC同士のぶつかり合う衝撃と落下のショックで気を失ったレインを狭いコックピットに収める為、ガードナーの膝の上に寝かせ自身のヘルメットを装着させた。
「あんた、どういうつもりだい」
落ちた拳銃を左腕に装備し直して距離を取る。
「カーラさん。俺は貴方の敵にも味方にも成るつもりはない。俺は復讐を果たしたい。その事に、この星の行方は関係がないから」
それがガードナーの答え。
「俺はただ、俺の目的の為にレインの身柄を頂いていく」
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