ARMORD CORE VI Revenge on the NEST   作:わるめ

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第9話 執着

 復讐を果たす為にガードナー達が取る行動指針は、大きく分けて2つである。

 

 1つは、情報収集。仇であるACカイヤナイトに接触する為には、その居場所を知る必要があった。その他、そのパイロットの正体や目的、人物像等知る事で少しでも、仇討ちの成功率を上げたいという考えがあった。

 

 もう1つは、戦闘技能の研鑽。実際にACカイヤナイトと対峙したとして、敗北しては意味がない。勝利する為の機体は既に手にしているからこそ、その機体のスペックを最大限に引き出す最後のプログラムとも言える搭乗者の力を底上げする必要がある。

 

 以上2つを同時にこなす方法として、NESTに潜る事が必要であった。ガードナーが初めてカイヤナイトと対峙したのはNESTでの事であったから、そのNEST内で同行を探る事ができる可能性がある。また、NESTで他のAC乗りと対戦を重ねる事で、ある種の武者修行のような状況を作る事も出来るからだ。

 

 だがこの考えを実行するには、あるモノが欠けていた。傭兵支援システムオールマインドが提供するオンライン対戦シミュレーターNESTに参加するには、オールマインドに登録された傭兵のIDが必要になる。ガードナーは傭兵としてのIDを持っていないのだ。

 

 通常、NESTに参加するには、まずオールマインドに傭兵登録をしなければならない。だが申請手続きやIDの発行には、それなりに時間が掛かる。1日でも早く仇討ちをしたいガードナーにとしては、出来得る限りの最短でカイヤナイトに近づきたいのが心情であった。

 

 だから今、ACリィンカーネーションを駆って、姉であるファムが命を落とした現場へ、仇の手で破壊されたACの残骸の目前へと舞い戻って来たのだ。

 

「どうやらシステム系統は完全には死んでいません、データの抽出は可能です」

 

 ガードナーの耳に、通信機越しにレインの声が聞こえた。

 

「了解した、それじゃあ始める」

 

 ガードナーの操る蒼いACが、焼け残ったACカーネーションにアクセス。識別IDの読み取りと回収を完了させた。

 

 焼け焦げた残骸の中に放置されているであろう姉に、ガードナーは思いを馳せた。システム系統が死んでいないACなのだから、コックピットを丁寧にこじ開ければ、姉の遺体を持ち帰り然るべき手段で葬ってやる事も出来るかもしれない。

 

 そういうアイデアを考えている時に、それは起こった。

 

「ガードナーさん、上空に未確認ACの反応あり!」

 

 咄嗟に機体を後ろへバックさせると、さっきまでリィンカーネーションがあった地点が、ナパームの雨に打たれたのが確認できた。その雨はガードナーの眼前を炎の海へと変えて見せた。当然、カーネーションにも炎は引火して、燃え残っていた残骸すら無情に燃やしていく。

 

「チッ、避けられたか」

 

 見上げると、宙に浮かぶは、くすんだ黄色の四脚ACである。

 

 ガードナーは疑問を投げかける。

 

「お前、何者だ」

 

  壮年の男、少し高い印象を受ける声が返答する。

 

「名乗る程の者じゃあないさ、只、何日か前にここで戦闘があったと聞きつけてな。使えるジャンクでも残ってりゃあ......ておい!」

 

 話が終わる前に、ガードナーは行動を起こしていた。リィンカーネーションのパルスブレードを展開し上昇。流れるように、黄色のACに斬りかかったのだ。その斬撃は、見事黄色いACの1足を切り落としてみせた。

 

「よくも、姉のACを無残に燃やしてくれたな」

 

 浮力を失った3脚のACが体制を整えつつ着地する。

 

「何だよ、恨み言かい。お前さん、まさか勘違いしてねぇか」

 

「何がだ」

 

「人殺して生活してる傭兵風情が、まさか御綺麗な最期を迎えられるとでも思ってるんじゃねぇかって聞いてんのさ!」

 

 3脚のACは背中に隠し持っていたバズーカを右手に持ち、放った。

 

 ドウッ!

 

 低い爆発音は、リィンカーネーションへの着弾を意味していた。

 

 ACに備えられている姿勢制御のシステムが、機体へのダメージを抑えてくれたので致命傷でこそないものの、次に何か喰らってはひとたまりもないだろう。

 

 そういう状況を顧みず、ガードナーは機体を3脚のACへ直行させる。

 

 滑るように逃げる3脚のACだったが、足を失ったディスアドバンテージは大きく、その移動速度は万全の状況に比べ劣っていると言わざるを得なかった。

 

 ガキン!

 

 リィンカーネーションが3脚のACを踏みつけにする形で拘束する。

 

「クソ! 待ってくれ、俺は何もお前さんをどうこうしようってんじゃないんだ」

 

「じゃあ最初に放ったナパームはどう説明する」

 

「あれはな、疑心暗鬼になっていたんだ、自己防衛だよ! 只でさえAC乗りなんて危ない奴らばっかだろ。錯乱した強化人間でも乗ってたら、先手を打たなけりゃ自分の身が危ないだろう」

 

 その言い分には一理あると考えたガードナーは、止めを刺す考えを保留にして話を聞いてみる事にする。

 

「それに知ってるか。ここ最近、変なACも出てきているって噂だぜ。なんでもNESTで1度そいつに遇ったら、現実でも殺しに来るとかなんとかって」

 

「おい、そのACってもしかしてカイヤナイトというACネームか」

 

「なんだ、お前さん知ってるのか」

 

「知っているも何も、俺も一度そいつとNESTで戦っているし、姉の仇でもある」

 

 そこまで言って、ガードナーは内心喋りすぎたと感じた。だがその素直な態度こそが、相手には真摯に映ったのだ。

 

「おぉ、そいつはたまげた。俺はそのACを探しているんだ。なぁ、俺と手を組む気はないかい。先の激高を見る限り色々察するものがある。お前さん、仇討ちしたいんじゃないか」

 

 そこまで言い当てられた所で、隠す理由もなくなった。

 

「その通りだが、お前の目的は何だ。なぜカイヤナイトを探す」

 

「知り合いが、カイヤナイトにターゲティングされる可能性があるからだ。そいつはな、NESTでカイヤナイトに遭遇しちまっていてな。噂が本当なら現実でも殺しに来るという事態は考え得る」

 

「ガードナーさん、申し出に答えるかどうかはお任せします」

 

 通信機越しのレインがそう言った。

 

 足元にいるコックピット越しの人間が話す言葉をどこまで信じていいものか。出会い頭に発砲するようなやつと協力できるかどうか。不安要素は残っているが、仇討ちの成功率を上げるには協力者が多い方が良いとガードナーは考えた。

 

 それにもし裏切りや本性を露にするような事があれば、今度こそ排除するまでだ。

 

「分かった、お前とは協力しよう」

 

「助かるぜ、そうこなくっちゃな。俺の事はドナーと呼んでくれ、因みにACはブリッツという名だ」

 

「......俺はガードナーだ」

 

 こうして、打倒カイヤナイトを目標に奇妙な協力関係が結ばれる事となった。

 

 

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