最強異能者の俺がVtuberになったらちやほやされると思ってたのに何故か初手大炎上したんだが!?   作:スノーマン(ユッキー)

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最推しとの遭遇

「はぇ~、ここが聖地か~」

 

 

 

 デビュー配信兼引退配信をした翌日、俺はファンタジア事務所前に立っていた。配信を終了してから一時間も経たずに社長から直接電話が掛かってきて呼び出されたのだ。まぁ公安の圧をかけてきて無理やりデビューしたと思ったら即日引退なんて好き勝手したら怒られるのは仕方ない。仕方ないがV業界ではトップクラスとはいえ俺が一声かけたら木端微塵になる規模の会社でしかない。何も恐れることは無いし、なんなら公安の堂島<どうじま>さんに任せて俺自身は知らぬ存ぜぬを貫き通すことも出来る。出来るが。

 

 

 

「流石に大好きなファンタジアに不義理を働くわけにはいかねぇよな……」

 

「ははっ、鬼島が殊勝にしてる姿なんて初めて見たぞ」

 

「いや、元凶が何楽しそうにしてるんですか堂島さん」

 

 

 

 保護者同伴は駄目、なんて言われてないので俺は今日の呼び出しに堂島さんを巻き込んだ。といっても移動の際はいつも堂島さんが車を出してくれるから、事務所に送ってもらったついでに社長室まで着いてきてもらうだけだ。本人曰く出世街道まっしぐらで公安の中でも偉い方らしいのに、なんでこの人俺のアッシーになってるんだろうな。

 

 あ、因みに鬼島は俺の本名である。鬼島英雄<きじまひでお>、英雄と書いてひでおと読む。人によってはふざけてヒーローなんて呼んでくるが、それを聞いた堂島さんは【魔王の間違いだろ?】 と笑っていた。誰が魔王だ! ちょっと気に入らない奴を再起不能にするだけで、まだ人殺しの一線は超えた事ない善良な異能者を捕まえて酷い言い草だ。

 

 

 

「と、と、と、とりあえず社長室に乗り込めば良いんですかね?」

 

「乗り込んで一暴れでもするのか?」

 

「しません! ちょっと言い方を間違えただけです!」

 

「ははっ、お前が常識全無視して乗り込んでも、もみ消してやるが。まぁ今回は普通に受付に行くぞ」

 

「この人発言が一々怖いんだよなぁ……」

 

「あ? こっちからしたら普段のお前の方が怖いわボケ」

 

「そんなことないでしょ」

 

「……まぁ自覚ねぇか」

 

 

 

 意味深に呟くの止めてくれませんかね!? ガチっぽく聞こえるじゃんか! 俺ほど善良な異能者なんて居ないぞ!? え、異能者が大抵頭のネジ外れた奴ばかり? それはそう。

 

 受付で堂島さんが要件を伝えてくれると、俺達は社長室があるビルの最上階に案内された。付き添いの堂島さんが全部やってくれてるのは俺がまだ生まれたての小鹿みたいに震えているからだ。

 

覚悟はできているが怖いものは怖いのだ。エレベーターに乗っている間に【戦場の鬼とか呼ばれているお前にも怖い物があったんだな】と堂島さんがくつくつと笑っていたが、何その渾名。俺初めて聞いたが!?

 

 

 

「やぁ轟君に堂島さん、わざわざ来てもらって悪いね」

 

 

 

 そう言って社長室で俺を待ち受けていたのは、何処とは言わないが滅茶苦茶大きいお姉さんだ。

 

仕事が出来る知的さを醸し出してるこのモデル並みの美人は北川響<きたがわひびき>、ファンタジアの社長だ。大学時代に友人達と起業して大成功させている手腕は確かだろう。そしてそんな社長の傍には俯いているイケメンと不機嫌そうな美女がいた。ファンタジアオタクの俺には分かる、二人は一期生の勇者――威世戒勇と、女騎士――久古ロゼに違いない! え、なんでアバターと違うのに分かるかって? んなのオタクの直感に決まってるだろ。やべぇ推しと同じ空気吸ってる! ああ、空気が美味しんじゃ~。富士山の頂上より美味しい。いや、富士山登った事ないけど。

 

 

 

 

 

「鬼島、気持ち悪いぞ」

 

「え? もしかして口に出てた?」

 

「思いっきりな」

 

「くっ、殺せ!」

 

 

 

 俺が恥をさらしていると社長は腹を抱えて笑っていた。えぇ……そこまでの痴態じゃないでしょ。推しの前で恥を晒して俺は死にたい気持ちで一杯だけど。爆死、は推しを巻き込むから駄目だな。

 

まぁそもそも爆発したところで、俺死なないだろうけど。肉片が残ってる限り再生するだろうしなぁ……不老かは怪しいけどとりあえず不死ではあるしな。

 

 

 

「ふふっ、本人前で持ちネタ出来るなんてやはり君は面白いね。ロゼもそう思うだろ?」

 

 

 

 そうくっ殺せ! はロゼさんの口癖である。やはり女騎士と言えばこれだよね。残念ながらファンタジアのライバーにオークはいないけど。人狼はいるけどあの方は仁義の方だからそんな事絶対にしないし。まぁリスナーがオークみたいなもんか。因みにロゼさんはライバーとしての姿はエッチなビキニアーマー姿だが、流石に現実ではしっかりと着込んでいる。というかゴスロリ?風で肌の露出が全然無い。あと社長と並んでるせいか一部の大きさが如実に出ている。箱内ナンバーワンのはずなのに……ボブは訝しんだ。

 

 

 

「どこが? 痛い奴でしかないじゃない」

 

「ふむ、つまりロゼは自分が痛い奴だと?」

 

「なんでそうなるのよ! 私は虚構で口にしてるだけ! 現実で口にしてるこいつと一緒にしないで! それよりちゃんと紹介しなさいよ」

 

「ああ、すまない。轟君は気づいているようだが、彼女は一期生の久世ロゼ。で反対にいるのがもう一人の――」

 

「すまない! 全部俺の所為だ!」

 

 

 

 社長の説明を遮る形で喋りだしたイケメンはやはり勇さんだった。声で分かる!!! 何百回この声を聞いてきたと思ってるんだ!

 

 

 

「俺が最低な発言をした所為で君に辛い思いをさせてしまった!」

 

「えっといさ、威世戒先輩顔をあげてください。悪いのは先輩じゃなくて異能犯罪者ですから」

 

「だがそいつの異能は心に秘めた言葉を口にすることなんだろう? 俺が内心で薄汚れた感情を抱いていたから起きてしまった事件なんだ。だからやはり全て俺の責任だ!」

 

「勇、そんな風に頭を下げ続けても轟君も困るだけだぞ。ほら顔をあげろ」

 

 

 

 社長のお陰で渋々だが顔をあげてくれたことで、その全貌が明らかになった。当たり前だが金髪碧眼という異国風なのはVの姿だけで、魂の方は黒髪黒目の純日本人だった。だが切れ長の瞳は人を惹きつける魅力を持ち、そこから配信時の勇者のように熱い意志が垣間見えた。ラフなジャケット姿だが、確実に和服が似合うだろう。プレゼントとして送ったら着てくれるかな? え、きもい? そっかぁ……。

 

 

 

「わあぁ、俺の最推し現実でも顔面凶器で俺のライフはもうボロボロよ」

 

「何言ってんだお前は。これくらいの顔ごろごろいるだろ」

 

「ぶっ飛ばすぞてめぇ」

 

 

 

 堂島さんも強面ではあるが顔面偏差値は非常に高い。どこか疲れ顔のイケオジだから言える発言だろうが、ファンの前で言っていい言葉ではない。発言したのが馴染みの堂島さんでなかったらホワイトハウスでわざとらしく愚痴を零して外交問題をややこしくして首をとばすとこだった。

 

 

 

「コントを見てるのは楽しいが、こちらの二人の為に一応自己紹介して貰っても良いかな?」

 

「あ、すみません! 三期生だった轟将人です! 因みに隣のおっさんが俺の事鬼島って呼んでますけどそっちは本名です」

 

「誰がおっさんだ! ……公安の堂島だ、よろしく頼む」

 

「公安?」

 

「ほら、ロゼの大好きな漫画に出てくる3重顔面の人が所属している所よ」

 

「あーなるほどね……ってなんでそんな所属の人がここにいるのよ!?」

 

 

 

 なんでってそりゃ俺が一人で怒られるのが怖かったからだけど、そんなこと恥ずかしくて口に出来ない。え、そういうことじゃない?

 

 

 

「社長さんは事情を全て知ってるから良いとして、お二人はこの馬鹿のライバーとしての謳い文句を御存知ですか?」

 

「勿論だとも。【世界を救済する最強の異能者】だ」

 

「いくらVtuberの設定がトンデモなものばかりとはいえ良くもまぁ大きく出たわよね。異能者が居なかった30年前くらいならまだしも、今の世の中でそんなこと名乗ったら色々なところからクレームがでるでしょうに」

 

「まぁ何も知らない馬鹿は騒ぐかもしれませんが、お偉いさん方は何も言わないというか言えないですね。こいつ本当に世界を股に掛ける最強の異能者ですから。だから公安の俺が傍に居るんです」

 

 

 

 そう、なにを隠そう俺君最強の異能者なのだ。各国の大規模な異能問題も大抵解決してきているから国のトップ陣も俺に頭が上がらない。えっへん。まぁ俺がやるのって壊す・ぶっ飛ばす・叩き潰すみたいな脳筋な事が基本だけど。自分で言うのもなんだが俺は馬鹿なので頭脳派な事はできない。ドーン! 火力に特化してる分他の事は出来ない事は無いが苦手だ。

 

 

 

「は? 嘘でしょ? 何言って……」

 

「いや、堂島さんは嘘はついてない。どうやら全部真実みたいだ」

 

「え、勇が断定するって事はマジじゃない……」

 

 

 

 信じてもらえるのはありがたいけど、威世戒先輩はなんで断言できるんですかねぇ……。ロゼさんが納得するってことは真偽判定能力持ってるよな?

 

 少なくても今現在この事務所内に異能者は居ない。いくら不用心と言われがちな俺でもそれくらい感知してからビルに入ってる。

 

 

 

「ん? どうした酸っぱいブドウを食べた狐みたいな顔して。顔を見れば嘘をついているかどうかくらい判別できるだろ?」

 

「いや、普通はできませんからね? え、できないよね?」

 

「それができたら警察は苦労しねぇよ」

 

 

 

 堂島さんがいつも以上に疲れた顔をしている。えぇ……俺の推ししゅごいぃいいいい。無能力者なのに異能者みたいなことしてる……。知らないけど多分真偽判定が出来るだけの異能者って居るんじゃない? もう実質異能者じゃん。

 

 

 

(堂島さん、堂島さん)

 

(なんだ急に念話なんて)

 

(なんで威世戒先輩無能力者なんですか?)

 

(は? そんなの俺が知る訳ないだろ。確かに嘘を見抜けるのは凄いが)

 

(いや、それもなんですけど。あの人の周り異様に空気が澄んでるんですよ。空気が美味いって冗談半分でしたけど残りはガチですよ?)

 

(は? いや確かにこの部屋に入ってから妙に空気が澄んでる気はしたが……いやだが異能持ってないんだよな?)

 

(俺が看破できるレベル以上の隠蔽をしているなら話は別ですけど、そうじゃないなら確実に無能力者です)

 

(お前以上が居てたまるか!)

 

(いやまぁ俺こういう小細工苦手だし推しに万が一にでも何かあったらいけないから、かなり抑えて力使ってるから絶対無いとは言い切れないですけど。まぁでもそんな隠蔽が得意ならこんな分かりやすく力を放出してると思えないから無いですね。俺がファンであることを度外視しても、あの人聖剣スキルとかとりあえず聖属性スキル持っててもおかしくないレベルですよ!?)

 

(お前の天敵じゃねぇか)

 

(誰が悪属性だぶっ飛ばすぞ! はぁ……本当になんでこの人ライバーなんてしてるんですかね)

 

(ははっ、お前が言うな)

 

 

 

 うーん、それはそう。俺がライバー活動してるのって日本の上層部しか知らないけど、他国のトップ陣が知ったら泡吹いて倒れそう。日本の上層部がそうだったし。因みに俺の貯金は兆単位であるから、完全にただの趣味なんだよねこの仕事。

 

 

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