聖魔杯に乗り込んだら本物の未来視持ちがいて詰んだ件 ~公園でゲットしたパートナーがポンコツ過ぎる~   作:信頼できる語り手

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安心なの

「はぁはぁ、ここまで来りゃ大丈夫だろ……。しかし、凄ぇな、すもーく。その……何だっけ?能動的迷彩(アクティブ・カム)とか言うヤツ」

 

「おくとぱしー・ゔぃじょん。火星ノ最先端技術ダゾ」

 

「へぇ、火星のねぇ……。少なくとも俺の住んでた日本では『見』た事がねぇ、異様に複雑な仕組みなのはマジだな」

 

「俺トシテハ、しどうノオカシナ眼モ、興味深イガ」

 

 科学、オカルト、SF問わず。

 

 シドウの眼はあらゆる事象を正確に観測・記録し、理屈を無視して一度だけ再現できる。

 

 それこそが、山寺サナカの命名した『観測点の魔眼』。

 

「俺のストックがオカルト連中に効くかは微妙だったが、エルシアの『魔法』とやらで隙を作れたのはラッキーだったぜ」

 

 隔離空間都市に入場する前。受付近くで言い争っていた連中。

 

 その中でも異彩を放つ『何か』がエルシアの手元に集まる様子を目撃して以降、シドウは彼女からその『何か』を盗める機会を伺い続けていた。

 

「ただ問題は、全然制御ができねぇ事なんだよなぁ……。眼を凝らして避けねぇと、俺とドルフィンまで巻き込まれる。そこら辺の調整は、エルシアに教えて貰いてぇな……」

 

 姉に似た雰囲気から苦手ではあるが、いざという時に命を救ってくれる技術ならば、頭を下げてでも教わる価値はある。

 

「あと、俺の視界が捉えた範囲しか『再現』できねぇから、本家よりも逃げ場が多い。社長はビビってたが、冷静に対処すりゃ凌げねぇ攻撃でもなかったはずだ」

 

 シドウが注目株ではなく、手の内がばれていない今だからこそ通用した、ただのハッタリ。

 

「まあ、何にせよ」

 

「キュー、キュー!そうですね!」

 

 シドウとドルフィンの心は1つである。

 

有り金(チケット)全部、置いてきちまった……」

 

「この、お馬鹿ー!」

 

 命の危険があったとはいえ、ジュラルミンケースはあの場に置き去りだ。ザジ辺りが回収したか、魔法に巻き込まれて燃えたか……。

 

「君達モ『だんぼーるはうす』ニ住マナイカ?」

 

「そんな『素晴らしい提案をしよう』みたいな感じで誘われても……」

 

「俺、結構デカいけど入れっかな?」

 

「意外と乗り気!?」

 

 

 

 何やら重要な任務中らしい自称火星人『すもーく』と別れたシドウの前に、幾何学模様の覆面を被った全身タイツの男達が現れた。

 

「山寺シドウだな!我々に同行して貰おうか!」

 

 ドルフィンがバタバタと慌てたように背ヒレを振る。

 

「し、シドウ様!囲まれてます!」

 

「見りゃ分かる。ああ、いや、俺の眼も背後までは見えねぇから報告は助かるが……。今は警戒しなくて良い」

 

 シドウはドルフィンを制止し、全身タイツに向けて両手を挙げる。

 

「その格好……お前ら、魔殺商会の下っ端だろ。『伊織貴瀬』のとこに連れてくってんなら、抵抗はしねぇ。ちょうど、こっちも野暮用があったんでな」

 

「魔殺商会、ですか?それは一体……?」

 

 その質問に対して、シドウが持つ答えは1つしかなかった。

 

「──悪の組織だ」

 

 

 

「金貸してくれ」

 

 耽美な顔立ちに銀縁メガネをかけた若い男性と対面するなり、シドウは頼み込んだ。

 

「くくっ。山寺シドウ。君は表の世界では、借金の踏み倒しを繰り返して、金融会社のブラックリストに入っている。この意味が分かるか?」

 

 伊織魔殺商会社長兼魔殺商会グループ総帥──伊織貴瀬は、犬歯を見せて笑う。

 

 シドウも満面の笑顔を返した。馬鹿な彼にもそれくらいの道理は理解できる。

 

隔離空間都市(ここ)でなら、また借りられるって事だろ?」

 

「……なるほど、噂通り舐めた男だ。少し脅してやれ、リップルラップル」

 

「1名様、ご案内なの」

 

 青っぽい黒髪をした5、6歳くらいの小さな女の子が、無表情に金属バットを素振りしながら現れる。

 

「あん?『今日の聖魔杯』の解説役のチビじゃねぇか。どうせなら、ヴィゼータさんの方に会いたかったぜ」

 

 ぶちっ、と何かが切れる音が響いた気がした。金属バットのグリップが軋む。

 

「上等なの」

 

 ぱこーん!

 

「ぐぇっ!?おい、痛……」

 

 ぱがん!!ぱがぱがぱがぱがーん!!

 

「待っ……」

 

 がすっ!!がすっ!!がすっ!!

 

「やめ……」

 

 ごんごん!!

 

「……」

 

 がごすがごす!!

 

「その辺にしておけ、リップルラップル。やり過ぎだ。死んだらどうする」

 

「わたしは、参加者ではないの。参加者を殺しても、失格にはならないの。安心なの」

 

 そう言いながらも、リップルラップルは満足したように去って行く。その気配が消えた頃になって、シドウが起き上がる。

 

「おぐぉ……痛ぇ……!頭が割れる……!」 

 

「さて、立場は理解できたな?それでは、こちらの用件を言おうか」 

 

 貴瀬は両手を組みながら、本題を切り出した。

 

「我が社で働く気はないか、山寺シドウ?」

 

「ああ?」

 

「調べは付いている。君達は吸血鬼──ヴェロッキア・アウクトスの操っていたペアを何組も倒したな。しかも、その中には、かなり有力な参加者も混ざっていたそうではないか」

 

 貴瀬が身を乗り出す。

 

「川村ヒデオの派手な活躍に隠れているが、俺の目は誤魔化せない。まあ要するに、俺は君の価値を高く見積もっている、という事だ」

 

「じゃあ、金貸してくれねぇ?」

 

「リップルラッ……」

 

 余計な口を挟んだシドウは慌てて沈黙した。貴瀬はニヤリと笑う。

 

「こ、これがメスガキわからせ……!?」

 

 ドルフィンは戦慄した。

 

 

 

CQ(シーキュー)CQ(シーキュー)!聴こえますか?』

 

 未来との交信は一方通行だ。

 

『世界中に張り巡らされてしまった、情報ネットワーク。その中で濃縮・拡散された過剰な情報(どく)は、必ず人類を滅ぼします。遅かれ早かれ、確実に』

 

 未来から過去に対しては、時間を越えて『信号』を飛ばす事ができる。しかし、その逆は不可能だった。

 

『破滅を防ぐ方法は、ただ1つ。第三者に振り回される事なく、人々の意図が捻じ曲げられる事もなく、正しい言葉として情報が伝わる新しい時代を作るしかありません』

 

 未来は複雑に分岐する。何処から投げられたか分からないボールを、正確に投げ返す事などできない。

 

『聖魔杯が最初で最後の好機です。全てのピースがそこに揃っている。聖魔杯の力、聖魔王の称号、地下に眠るモノ。そして──Will.Century Of 21(人類絶滅の引き金)

 

 だから、とある未来のドルフィンは、過去の自分の助けになるであろう言葉を一方的に送信し続けていた。

 

『健闘を祈ります』

 

 

 

「アレがターゲット?魔法に関しては素人かしら。ねえ、ソルカ」

 

「どちらにせよ、私達のような至高の魔導師には敵わないわ。ねえ、ノルカ」

 

 左右逆のお下げ。露出の多いレオタード。緞帳のような厚手のマントを羽織った、そっくりな顔の双子が道を塞いだ。

 

「俺が勧誘を蹴ったから、早速刺客を送って来やがったか?流石は悪の組織だな。おのれ、魔殺商会め……!」

 

 拳大の宝石を頂いた魔導杖を向けられたシドウは、怒りに震える拳を握り締める。

 

「ヴィゼータさん以外にも、こんな美人姉妹を隠していたとは!許せねぇ!」

 

 ──シドウの戦意は漲っていた。




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異能バトル長編もよろしくお願いします。
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