私、これでも幹部なんですけど!?   作:石鹸52mm

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内海アオバの放浪記3

 

これは内海アオバのSSです。

 

─────────

 

某日 ミレニアム区間 工場跡地

 

「とりあえず、作戦概要は聞いてんだろ?じゃあ、あとアタシらが共有するのは現場の地形だ。跡地は線路沿いに有刺鉄線で囲まれてて、付近の防犯カメラも生きてっから潜入しても気づかれちまう。入り口はもう死んでるセキュリティゲートだけ。資材の搬入口も兼ねてたから駐車場もあってだだっ広い」

 

「あの…そ、それって結局、正面から堂々と行く、ってことですか?」

 

「…まぁそうなりますね。セキュリティゲートを越えて駐車場を越えた後は、居住区、研究スペースと思われる左右の建物をクリアリングしつつ、最奥の工場跡まで真っすぐ向かいます。もっとも、道中で狙撃可能ポイントがいくつかあるのでそれを警戒しながら、という形ですね」

 

「へ、へぇ~…」

 

アオバはネルとアカネの説明を聞きながら、内心動揺を隠せずにはいられなかった。聞いている限り、工場跡地の攻略というよりも、突撃作戦と言われた方がまだ納得できる内容だった。

それでもアオバが平静を装えているのは、二人が携行してきていた装備を見た故の、安心感。ネルは二丁のサブマシンガンを携行し、アカネはハンドガンと恐らく爆薬が入っているであろう、大きなボストンバッグを片手に持っていた。

 

アオバの戦闘経験は、駅構内と列車内の二つに絞られる。作戦における戦術についてはよく分かっていない。しかし、噂に聞くC&Cの勝利の象徴、"ダブルオー"。そして、陽動、ブリーチング、広範囲の攻撃を担う爆破の"ゼロスリー"。この二人がいればそこまで自分の負担はかからないだろう、と自分の負担の皮算用をしていた。

入り口まで舗装された道路を歩きながら三人は、正確にはネルとアカネが楽し気に相手のフォーメーションを予想していた。

 

「まぁ…そうだな、アタシがここを守るんだったら、索敵を兼ねて駐車場にドローンか自動ターレットを置くな。そんで建物から狙撃するやつを置いて敵を間引いて、工場で迎え撃つ。だいたいそんなところじゃねえか?」

 

「私でしたら駐車場にバリケードを敷いて、奥から迫撃砲で制圧する、というのが浮かびますね。それであれば本丸まで近づくまでにある程度戦力を削げますから」

 

「いや、アカネ。相手は少なく見積もって五人だ。それだと駐車場で迎え撃つやつが真っ先に落ちる。迫撃砲で支援するにしても、こっちの戦力が分かんねえ以上相手は安牌を取ると思うぜ」

 

(この二人、めちゃくちゃ頭が回るんですけど!?私お荷物じゃないですか!?)

 

アオバは二人の会話に一切入れず、後ろから静かについていくばかりだった。それに、聞いているフォーメーションを聞く限り、出だしから戦いは避けられないと判断した。

そして、問題は最奥にあるという工場跡までの距離。手段は分からないが、現時点ではこちらが一方的に攻撃される間合い。この二人であれば潜り抜けられるだろうが、ついてきた自分はどうだろうか?

 

アオバが自分の立ち回りを考えていたところで、三人はセキュリティゲートの入り口に着いた。

本来警備が常駐しているはずのセキュリティゲートは閑散としている。警備室に付いている防犯カメラとスピーカーが視界に入ってきたところで、スピーカーが起動するプツ…という音が聞こえてきた。

その音にC&Cは各々の武器のセーフティを徐に外す。その眼は既にセキュリティゲートの先を見据えており、先ほどまで明るい雰囲気は消え失せていた。その雰囲気に当てられ、アオバも慌てて銃のセーフティを外す。

 

"ハッハッハ、ついに現れたな、悪党!我々の成す正義を邪魔しに来たな!"

 

聞こえてきた声にネルは鼻で笑った。

 

「おいおい、不法占拠者が「正義」を騙ってるなんて、とんだお笑い種だなぁ?」

 

"これは誰も利用していなかった場所と材料を拝借しているだけに過ぎない。この正義は、認められるものだ"

 

アカネも追従して反駁する。

 

「それは認められませんね。私達は貴方達を捕えてここを"掃除"するよう依頼されていますから」

 

"問題ない、貴様らは、我々のいるところまで辿り着けない!"

 

スピーカーから聞こえてきた高らかな声と共に、遠くから風を切る無数の音が聞こえてくる。

アオバが空を見ると、夥しい数の飛行ドローンが、列を成してこちらに真っ直ぐ向かってきていた。

どれもドローン下部に銃口が付いており、いくつかは改良され、銃口の横にミサイルの弾倉が付いていた。

 

「えっ?あれ、全部倒すんですか?一旦、退きません…?」

 

「ここまで寄られたらもう撒けねえだろ、腹ぁ括れ。なんなら隠れててもいいぜ?もっとも、この数はアタシらからしたら朝飯前だ」

 

「まぁ少しはお手伝いいただけると、こちらとしても助かりますが」

 

「うぅ…帰ったら特別手当申請するんですけど…」

 

 

─────────

 

「はぁ…はぁ…っ!」

 

「オラオラァ!こんなもんかァ!?」

 

駐車場は混迷を極めていた。ネルがドローンの間を跳び回りながら銃弾を撒き散らし、ドローンのカメラやボディ、弾倉に当たっていく。ドローンは煙を吹き出しながら、次々と地面に墜落していく。

 

「標的捕捉、排除します」

 

アカネは放り投げた爆薬にハンドガンの弾を当て誘爆させ、ドローンを爆発に巻き込んでいた。爆風からカメラや燃え焦げた装甲が軽快な音を立てながら地面に転がる。

 

アオバはショットガンをドローンに向け射撃するが、銃弾はドローンの装甲を掠めるのみで、命中率は芳しくない。

ドローンからの銃弾の雨を、アオバは遮蔽物のない駐車場をあちこちに走ってギリギリ避けていた。

やがてアオバはネルやアカネが墜落させたドローンの残骸に気づいた。アオバは残骸に近づくと、落ちていた装甲の中でも一際角張ったものを手に取った。そして、腕を振りかぶると─────

 

「えいっ」

 

ブオンッ

 

アオバに銃口を向けていたドローンの集団に向かい、装甲を投擲した。けたたましい風切り音と共に、装甲は一直線にドローンに飛んでいくと、ドローンの集団に命中した。

一機目のドローンに装甲がめり込むと、その勢いのままドローンが二機目、三機目へと飛び火し、ドローンの集団が鉄くずになり地面に墜ちていく。

 

「ハハッ、やればできんじゃねえかよ!アオバァ!」

 

「私のやり方見てるんですか!?お二人に頑張ってもらわないと、私手も足も出ないんですけど!?」

 

そうこうしているうちに、アカネのハンドガンが最後の一機を落とした。アオバもリロードをしつつ、付近の手頃な残骸を一機、片手に持つ。

 

「向かいましょう。恐らくネル先輩の言う通り狙撃手が───」

 

アカネが言った、その時。夕焼けの建物から、光が見えた。あれは、レンズの反射光────

アオバがアカネの前に立ったのと、狙撃が行われたのはほぼ同時だった。

 

 

 

左手のドローンの残骸を、頭部から胸部にかけて翳す。他の場所であれば即致命傷にはなり得ない。

銃を捨て、空いた右手でアカネの肩を無理矢理抱く。

 

 

 

紺色に変わりつつある空の下、乾いた銃声が響く。アオバの手に一瞬凄まじい圧力がかかるがそのままいなす。

傾けた残骸は、役目を終えアオバの胸元で砕け落ちた。

 

「も、申し訳ありません!お怪我はありませんか!?」

 

「上手く跳ねたので、特には…それより、ネルさんは!?」

 

そう言ってアオバが建物を見やると────

 

 

ネルが、ビルの窓枠を"蹴りながら"建物屋上へと向かうのが、見えた。

そのまま屋上へと登り切ると、力強い殴打の音が何度か響く。

やがて、音が止むとネルが屋上から顔を出し、アカネに向かってハンドサインを出した。

 

「……えぇ…」

 

「進みましょう。どうやら狙撃手は一人だけだったようですね。先に行っていただいて構いません」

 

「りょ、了解ですけど」

 

銃を拾ったアオバは、そのままネルのいる建物に合流するべく走っていった。

アカネは銃をリロードし終えると、走っていくアオバの背を眺めて、ぼそりと言葉を口にする。

 

 

「守られるなんて、いつ振りでしょうか」

 

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