私、これでも幹部なんですけど!?   作:石鹸52mm

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内海アオバの放浪記5

 

これは内海アオバのSSです。

 

───────

 

ミレニアム 工場跡地

 

5つのモーターの駆動音と共に、それらは現れた。

単色のペンキで乱雑に塗りたくられたブリキ。三つのカメラアイがターゲットを捉え赤いレーザーが当てられる。

機銃が乱雑にくっつけられた片腕に、アオバ達が見上げるほどの躯体。

歪だが、人に向けるにはあまりに過剰な五機のロボット達が、シャッターを突き破って腕を伸ばしてきた。

 

「ざけんなッ!」

 

一撃、ハイキックでアームを弾き返す。

──二撃、逆手で銃を叩きつけてアームをひしゃげさせる。

その間にも、他のシャッターから飛んでくる銃弾をジャケットで受け、翻って遮蔽物に隠れた。

 

"ハーッハッハ!正義のあるところ、力あり!"

 

「うるせェ、よそから盗んだジャンク品だろうが!」

 

ネルがアカネに目配せすると、アカネは懐からグレネードを取り出し、ピンを抜く。

グレネードがロボット達の足元に転がったのち、青白い閃光が炸裂した。

その衝撃をまともに受けたロボット二機は地面に膝をつき、煙が吹きだし始める。

それを合図に、アカネがアオバの腕を引き、ネルと共に入口に走り出す。

あまりの判断の速さにアオバは困惑していた。───これは何か、策略があったり?

 

「えっ、これからどうするんです!?」

 

「…現時点で私たちとしては敵に対する有効打を持っていません。対物ライフルなど、とにかく物理的な火力が必要です」

 

「いや、私、終わるまで帰れないんですけど…」

 

「それまではミレニアムにいりゃーいいんじゃねぇの?とりあえず、あの分厚い体をなんとかしねえとあいつらは引きずり出せない」

 

「いや、だから──」

 

「私たち以外にもエージェントがいますので、次は全員で対応する形になりますね。どのみち、今回は想定外だったとセミナーに、」

 

 

 

 

 

「私にお給料が入らないんですけど!!!」

 

 

 

 

アオバがグンと足を地面に踏み込むと、アカネの腕が悲鳴を上げ思わず手を放した。

先を走っていたネルがアカネの声に振り向くと、顔を青くしたアオバが胸に手を当てていた。

渇望に飢えた獣の目が、二人を見据えている。

アカネは思わず武器に手を掛けたが、ネルはただ、次の言葉を待っている。

 

「そりゃ──どういうことだ?」

 

「この仕事を終えない限り、私に特別手当が入らないんですけど…。あと、報告書書かされますし」

 

それを聞いたネルは一応調べた情報を頭で浮かべた。

陸送を全て管轄している激務のハイランダーの中でも、一番の()()()

それがその対応をされるのでは、何をするにもややこしくなる。

 

「あー…なるほどなぁ」

 

「リーダー、彼女は錯乱しています。あのロボットが追ってくる前に、一刻も早く離脱を」

 

アカネの言葉を手で制すると、ネルは首でアオバを促した。

いつの間に、ネルの口角は喜びの色を示していた。

 

「それぐらい言うなら、なんかあるんだろ?()()()()()が」

 

「はい…アレをなんとかする道具は持ってきています。ただ、列車に置いてきてしまったので──」

 

アオバが続きを言おうとすると、遠くからモーターの駆動音が聞こえてきた。やがて地面の揺れが三人の元まで響いてくる。

ネルは大きなため息をつくと、徐にスマホを取り出した。数コールの後、相手が出る。

 

"はい、セミナーの早瀬です。"

 

「アタシだ。エンジニア部から取り上げた迫撃砲があったろ?あれをアタシのいる座標に撃ち込んでくれ。今から」

 

"ちょっと、何言ってるんですか!?あれは弾道も無茶苦茶、威力も計算では──"

 

「相手がゴリアテみたいなのを五機出してきた。たぶんウタハなら使えるだろ。じゃあな」

 

電話を切ると、ポケットから小型のビーコンを取り出し、近くのコンテナの中に放り込んだ。

一部始終を見ていたアカネは顔を青くし、アオバはネルの意図を理解した。

現在三人は工場跡地の建屋が並ぶ通りの表で止まっていた。

迫撃砲の支援と残りの爆薬で足止めをし時間を稼ぐ、ということだろう。

 

「…部長、本気ですか?」

 

「大マジだ。アカネは残りの爆薬を適当に設置しといてくれ」

 

「あ、ありがとうございます。危険な役割を担わせてしまって──」

 

ネルは笑うと、黙って握り拳を突き出した。それに合わせて、アオバもぎこちなく握り拳を当てる。

やがて、地面の揺れが激しくなってきた。アオバは後ろに振り向いてショットガンを肩にかける。

入ってきた場所に向かってクラウチングスタートの姿勢を取り───

 

 

 

 

地面を起点にしたミサイルのように、()()()

 

 

 

 

「なぁ、アイツ聞いてたよりも無茶苦茶じゃねえか?」

 

「まあ。スカウトするのも、いいかもしれませんね」

 

「学校が消し飛んじまうよ」

 

アオバを見届けた二人は、向かってきたロボット達に振り返った。

ぶつかった建物を粉砕しながら、金属製の怪物は次第に近づいてくる。

首筋の冷や汗は拭い。襟元は正して。

ネルは銃を、アカネは爆薬を持ち直した。

 

 

 

 

「「───ミッション、開始」」

 

 

 

 

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