私、これでも幹部なんですけど!?   作:石鹸52mm

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内海アオバの備忘録3

 

 これは内海アオバのSSです。

 ※作中で口論をする場面がありますがこの場面の表現はあくまで二次創作の表現であり、作者の価値観とは著しく乖離しています。ご注意ください。

 

─────────

 

某日・アビドス商店街

 

「…へ?弾が入荷してない?」

 

「そうなんだよ~、悪いね嬢ちゃん達。わざわざ来てもらったのに」

 

私達は、商店街で思わずハプニングに遭遇した。私達の使ってる弾薬がもうすぐ尽きそうだったので補給をしに来たんだけど、いつも仕入れてる業者さんにそんなことを言われてしまった。アビドス商店街は利用する人がそもそも少ない。いつも買いに来てるのは私達ぐらいで、他はアビドス区に寄るカイザーグループの傭兵とか、その辺の不良達が急場をしのぐために買いに来るくらいだった。だから在庫を切らしてる、なんて思いもしなかった。

 

「ホシノ先輩…どうしますか?」

 

「いや、どうするも何も…なんで在庫が切れてるんですか?」

 

今日は、私とアヤネちゃんが買い出しの担当だった。買いに来たのは主にノノミちゃんの弾で、他は対策委員会の子の弾。弾薬は学校で保管する以上、一定量は保管をしないといけない。そうしないと、私達の学校が不良に占領されて無くなってしまう。ノノミちゃんの使ってる弾は大口径でコンビニじゃ買えないからアヤネちゃんの運転で買いに来たんだけど…。

 

これじゃ車だとD.U地区ぐらいまで車を走らせないといけない。だから、私は「なぜ弾が切れてるのか」が気になって仕方がなかった。それを聞くと、猫の店長さんは困ったように頭を掻いた。

 

「う~ん、いつも弾を仕入れてる問屋さんのトラックがね、あんまり来なくなったんだよ。なんか問屋さん側でシステム障害?か何かが起こったらしくてね。掻い摘んで言うと、いつもはシステムを使って足りない種類を自動で発注してるんだけど、今は紙で発注しててね。誤納品が起こるといけないから、よく使う弾しか今は頼んでないんだよ」

 

「なるほど…分かりました。ありがとうございます」

 

「本当にごめんね。ノノミちゃんだっけ?その子の使う弾控えとくよ。次からその弾も一緒に発注しておくから、この紙に書いてくれねえか?」

 

「はい、分かりました」

 

アヤネちゃんが弾の種類を書いてくれている間、私は商店街からD.Uのガンショップまでの距離を調べる。うん、この距離ならまだ夕方までには帰れる。これなら、まだなんとか保つかも。アヤネちゃんが戻ってくると、私はスマホに表示した距離と時間をアヤネちゃんに見せた。

 

「アヤネちゃん、D.Uのガンショップなら、今日中に買って帰れそうだよ~」

 

「そうですか、良かったです…弾が無いと、戦いようがありませんからね」

 

「そだね~、このままじゃジリ貧だからね~。んじゃ、急いで買いに行こっか」

 

そう言って、私とアヤネちゃんは車に乗る。だから私は、この後訳の分からない戦闘が起こるなんて、予想もしてなかった。

 

 

─────────

 

アビドス郊外 踏切沿い

 

「あとはこの踏切を真っ直ぐ進んで…あれ、踏切降りてるね」

 

「そうですね。貨物列車か何かでしょうか?」

 

私達は、アビドス地区からD.U地区に行く通りの踏切で足止めを食らった。アヤネちゃんはハンドルを握ったまま、私はスマホでシロコちゃん達にD.U地区に行くことをモモトークで知らせておいた。シロコちゃん達からは、「できれば早く帰ってきてほしい」と言われた。もう、手間のかかる後輩ちゃん達だね~。

 

 

・・・

 

「…なんか、踏切上がるの遅くない?」

 

「そうですね、何かあったんでしょうか──」

 

 

 

ドオオオオオオオオオン!

 

 

 

「「うわっ!?」」

 

地響きと共に、線路から爆音が聞こえてきた。嫌な予感がする。やがて、線路沿いに設置してあったスピーカーから音声案内が流れてくる。

 

"大変申し訳ございません。当区間にて列車の故障事故が発生したため、現在運転を見合わせております。列車修理の為、係の者が向かっております。運転再開時刻は未定となっております。申し訳ありませんが、別の交通機関をご利用いただくか、今しばらくお待ちください。繰り返します────"

 

スピーカーから流れてきたその内容に、アヤネちゃんが声を発した。

 

「…未定!?どういうことですか!?」

 

「ん~…今聞こえてきた音が原因だよね~…どうしよう…」

 

「でも、他の交通機関を利用するといっても車をここに置いていくわけには行きませんし…」

 

「いつヘルメット団が学校を襲ってくるかも分からないからね~、流石に行かないと困っちゃうな~」

 

そういえば、と私は爆音で思い出した。スマホでクロノスニュースのチャンネルを少し見た時のことだった。ハイランダー鉄道学園のアビドス区間の列車で事故が起こった、というニュースだった。その後のインタビューで分かったことは、生徒が一人列車に乗り込んで、その場で不良を鎮圧したということだった。その時のインタビューで特徴的だったのが、乗客による「爆音がした」というコメントだった。列車で爆発物なんか普通使わない。

 

そうなると乗り込んだその生徒は"素手で"それを引き起こしたと仮定できる。その後ハイランダーの公式発表を見たところ、昨今の治安悪化に備え、「列車緊急対応部」を新設したと言っていた。恐らくその生徒がやったのだろう。と、なると今回の事故も同じ生徒が起こした可能性がある。

 

それならば、列車を動かしてこの状況を変えてくれるかもしれない。いや、変えてもらわないといけない。そうしなければ私達の学校が危機に曝される。ただでさえ絶望的なこの状況で、連邦生徒会の援助なんか待ってる余裕なんかない。私はそこまで思考が確定した途端、座席に置いてあった武器を持って、助手席のドアに手を掛ける。と、アヤネちゃんが不安そうな声で私を呼び止めた。

 

「ホ、ホシノ先輩?なんで、武器を持って車を降りるんですか?それに、顔、怖いですよ…?」

 

私はアヤネちゃんを不安にさせないように、へにゃり、と笑みを浮かべてこの後のことを伝える。

 

「んや、おじさんこれに思い当たる節があってさ~。なんとかならないか聞いてくるよ~。アヤネちゃんは、車を降りずに待っててね~」

 

「ちょっと、ホシノ先輩!?」

 

私は助手席のドアを閉めると、踏切に歩き出した。音の大きさからして、距離は近い。少し歩けば列車が見えてくるはずだ。行ってどうするかはまだ決まってないけど、私はアビドス対策委員会委員長だ。この状況をなんとかする義務がある。私が、この学校を守るって、決めたんだ。

 

 

─────────

 

アビドス区間 線路

 

「あれ、やりすぎちゃった…?」

 

私はまた、アビドス区間で緊急対応をしていました。内容は列車内に忍び込んで貨物を強奪しようとしていた不良がいると応援要請があり、鎮圧することでした。幸いすぐ到着して鎮圧したので、貨物に異常はなかったんですけど。貨物を守るために、不良を床に叩きつけたのが良くなかったみたいです。列車の下から、変な音が鳴って。その後貨物列車の乗務員が慌ててやってきて、私は恐ろしい事実を聞かされました。

 

「アオバ部長!も、申し訳ないのですが…今の衝撃で牽引車の駆動系に異常が出ました!」

 

「…え?」

 

どうやら、ついやりすぎてしまったようです。ゲヘナの駅ジャックから、しばらくお休みが取れていないので、寝不足なんですけど。とにかく、牽引車が故障したということは修理する必要性があるということです。貨物列車内にも修理する乗務員は常駐してると思いますが、部品によってはなんとかして牽引車を移動させる必要があります。そうしないと線路周辺の交通網が麻痺してしまいますから。

 

そういえば、列車が故障した時のマニュアル、時間が無くて読めてないんですけど。とりあえず私じゃどうしようもできないので、大人しく貨物列車の外で状況報告を管理室にします。

 

"…やりすぎだ。内海アオバ、加減は効かないのか?何のために列車緊急対応部がある?"

 

「…列車の運行のトラブルに際して、列車を安全に運行できるよう鎮圧する、ですけど…」

 

"そうだ。運行の安全を担保するのがお前の役割だ。にもかかわらず、お前は運行を止めている原因になっている。列車の修理コストは学園側で負担するが…帰ったら始末書を書いてもらう。分かったら戻れ"

 

そう言って、管理室との無線は途絶えました。始末書なんて最悪の響きです。ただでさえ休みがないのにミスをすると怒られて、仕事が山積みで、また働いて…これ、意味あるんでしょうか。私の寝不足の頭が、ゆらゆらと揺れます。

 

青天井の憂鬱と赤信号の体調。その二色のどす黒い原液が、私の心をぐちゃにぐちゃに塗り潰していきます。なんだか、私じゃない私が中にいるみたい。そうこうしているうちに、私は貨物列車の線路上に、人影がいるのを見つけました。

 

ピンクのセミロングで、制服に学生証がぶら下がってます。この区間にいるってことはアビドス高校の生徒さんでしょうか。なんか、徐々に私の方に向かってきてるんですけど。やがて、オッドアイの瞳が私の目と合いました。その顔には、何の表情も浮かべてません。

 

「ねえ、君がハイランダーの列車緊急対応部かな?」

 

「えっと…そうですけど、何ですか?」

 

ピンクの生徒さんはショットガンに何か…黒い四角のバッグ?を持っていて、今からお茶に行こう、とかそんな雰囲気じゃないんですけど。…あ、家の茶葉切れてました。買いに行かないと。

 

「いや、ね?おじさん達今から買い物に行きたいんだけど、君が列車を止めたから踏切が下りたまんまでさ~…"あれ"、なんとかしてくれない?」

 

おじさん、と自分を呼んでる生徒さんが貨物列車を指差してるんですけど。…え?あれ私が動かさないといけないんですか?

 

「あの…その…牽引車の駆動系が壊れているので、修理するのに時間がかかるんですけど」

 

「それって、どれぐらいかかるの?1時間?2時間?どのみち、おじさん達が困ってることには変わらないんだけどな~。おじさん達も急いでるからさ、お願いできないかな?」

 

ピンク髪の生徒さんは、困り顔でなおも食い下がります。いや…私こういうの慣れてないんですけど…。なんで地元の生徒さんを説得しないといけないんですか?段々、私の言葉も熱が籠ります。

 

「わ、私は仕事をしただけなので…私に言われても。私に仕事を回した人に言ってもらえますか?」

 

「ねぇ、おじさんの言ってる意味、分かってるかな?"困ってるから、なんとかして"、それだけだよ?」

 

生徒さんの語気が強まります。こういうの、クレーマーっていうんでしょうか。別に私に言ったところで、何か変わるわけでもないのに。すごく無駄なことしてるって分からないんでしょうか?

 

「わ、私は治安部隊なので…お客様窓口に電話すればいいんじゃないですか?」

 

「…はぁ~。なんとなく、分かったよ」

 

生徒さんは呆れたように、顔をしばらく上にあげます。私は「分かった」という言葉に安堵をしたのですが、再び生徒さんと目が合った時には、非難というか、侮蔑というか。そういう目つきに変わっていました。

 

「それにしても、治安部隊なのに、市民の生活も守れないんだねぇ。ハイランダーの治安部隊っていうから少しは期待したんだけどなぁ~。結局やってることはただ壊して回ってるだけの犯罪者か」

 

「…え?」

 

「ゲヘナとかトリニティの治安部隊、知ってる?あそこはちゃんと「しっかり仕事をする」人を選抜して、その上で訓練とかもやってる、いわば「選りすぐり」の人達だよ。君みたいに力をいたずらに振り回してるだけじゃ、人選ミスと言うしかないねぇ~。そういうの私達の学校のあるところでするの迷惑なんだよね」

 

…私が、ブラックマーケットにいる犯罪者と一緒?一人でずっと稼働して、悪い人を倒して、少ない選択肢から最適解を取っているはずなのに。私はそこまで言われなきゃいけないんですか?感謝もされず、差別されて、優れた人達と比較されて。そんなの。私が()()()()()()()から、変わってないみたいじゃないですか。そのうちに。この人はどの面下げて来たんだろうと、思ってしまいます。私の黒く染まった心が、心の外へ溢れ出るみたいな感覚があって────

 

 

ポケットから、()()()()()()()()()

 

 

「…はぁ。車使うなら、電車が止まるぐらいの可能性ぐらい頭に入れてくださいよ…。これぐらいで怒る器なのは、身体が小さいからですか?それとも学校の規模が小さいからですか?」

 

「…君、なんて言った?」

 

「貴方、アビドス高校の生徒ですよね?アビドス高校は廃校寸前の寂れた学校だって聞きます。だから、学校も寂びてればそこにいる生徒の器もその程度なのかなって、思っただけですけど」

 

私の言葉に反応して、生徒の目つきが、鋭くなります。図星みたいですね。私も口から出る言葉を、抑えられません。

 

「今の言葉訂正してくれないかな?私にはなんと言おうが構わないけど、私の学校に対してそんなことを言われる筋合いはないんだけど」

 

「私は事実を述べてるだけじゃないですか。それも頭の悪い不良でも分かる事実を。それで私に責任転嫁ですか?貴方の落ち度を、私が尻拭いしろと?嫌に決まってるじゃないですか。狭い世界で生きてると、価値観も時間が止まったみたいに狭いまま育つんですね」

 

「なにさ、それ。君に八つ当たりでもしてるって?それはないよ。話しててらちが明かない人に話してもしょうがないじゃん」

 

私も、生徒も、銃のセーフティはいつの間にか外してました。お互いに、足と一緒に口も動かして。

 

「はぁ、でも銃は出すんですね。結局、貴方も不良と同じ穴の狢ですね。不幸な自分に酔いしれて、学習しない、我慢できない、頭を使わない…。まぁ、そっちの方が心が楽ですもんね」

 

「もういいよ、喋らなくていい。自分でなんとかするよ。邪魔だから君どっか行ってくれない?」

 

「それはできないですね。結局、貴方も私からしたら鎮圧対象なので」

 

私が口を吊り上げてそう言う頃には、お互い射程範囲内。吊り上がった眉が、見開かれた目が、嚙み締めた顎が、これから起こることを私に告げています。これも、私への罰でしょうか。

 

「勝てると思ってるの?こう見えて、私強いよ?」

 

「え、えへへ。すいません。それはないですよ。だって貴方、「()()()」の目、してるんで」

 

 

 

「お前今からその見下してる相手に負けるからさ、今から辞表の内容でも考えときなよ?」

 

 

 

「じゃあ私は、貴方のそのしょうもないプライドを叩き折ってあげますよ」

 

 

 

そこからの記憶は、曖昧です。ただ"戦え"という声が、私の脳内に響いていました。

 

─────────

 

某日 ハイランダー鉄道学園 医務室

 

「…あれ?」

 

気付けば私は、少しくすんだ白い天井が目に入りました。私が貨物輸送管理部の時によくお世話になったところです、見間違えるはずがありません。ということは…

 

「いたっ。…え?」

 

私は身体を動かそうとして、痛みで一瞬身体が竦みました。身体をまさぐると、背中やらお腹に何か湿布が貼り付いているのが分かります。私の声に反応したのか、医務室の生徒さんが私のところにやってきます。

 

「あぁ!アオバ部長、目覚めたんですね!良かった、数日ぐらい寝込んでたんですよ?まだ痛いところはありますか?」

 

「少し、あちこちは痛みますけど…」

 

「そうですか。触診した感じ、骨とかは大丈夫そうなので、しばらくしたら治ると思います。とりあえず、話したい人がいるそうなので、呼んできますね」

 

医務室の生徒さんが部屋を出て行ってから、私は頭に残っている記憶を思い返します。あの日はアビドス区間で牽引車を壊してしまって、管理室から始末書を書けとか言われて。それで確か線路に生徒さんがいて───。その後が思い出せません。たぶん、その生徒さんと戦ったと思うんですけど。そこまで考えていると、2人、コツコツと足音がして、緑の髪色の生徒さんがやってきました。と、いうか着てるこの制服って…

 

「やほ~、私はCCC(中央管制センター)の橘ノゾミ!」

 

「同じく、橘ヒカリーよろしくー」

 

「えぇっ!?CCC!?」

 

CCCってハイランダーの実質生徒会じゃないですか!?幹部の2人は私に近付いてくると私の顔をまじまじと見つめてくるので、私は思わず顔を背けます。幹部が私に直々に話って、なんか嫌な予感がするんですけどぉ…。もしかして、私クビですか?

 

「報告書のイメージとちがーう」

 

「だよねー。なんか、もっと極悪非道!みたいな感じだと思ったんだけどね~」

 

「わ、私そんな書かれ方されてるんですか…」

 

私はあくまで鎮圧のみを業務として任されているので、自分で報告書を書きません(最も、報告書とか書けないんですけど)。それにしても、この2人が来るのは意外というか…スオウさんが来ると思ってたんですけど。

 

「あ、監督官なら来ないように言っといたよ~、あいつ人の心わかんなそうだからさ~。入院したあげく説教されるなんて、まっぴらごめんじゃん?」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「のーぷろぶれむー、アオバはこれからも現役ー」

 

「は、はぁ…え?現役?」

 

幹部の人の言葉に、私は唖然とします。私はてっきり、今回したことの責任を問われてクビになると思っていました?…あれ、私、何したんだっけ。いまいち、記憶が定かじゃありません。ていうかよく見たらこの人達、手にピザ屋の袋持ってるんですけど。ベッドに備え付けの机にピザ屋の袋を置くと、幹部の2人は椅子に腰掛けます。

 

「パヒャヒャッ、やっぱり説明が必要だよね~!まぁ話長くなるかもだし、ピザでも食べながら聞きなよ~!」

 

「さんせー。アオバも食べるが良いー」

 

「は、はぁ、ありがとうございます…」

 

幹部はピザ屋の袋からピザと書類を取り出して(一緒に入れてたんですけど…)、書類の中身を2人で眺めていましたが、やがて顔を顰めると私の方に渡してきました。

 

「まぁ簡単にまとめるとさ~、私ら列車緊急対応部の権限を管理室からもぎ取ってきたんだよね~」

 

「監督官が何か言ってたけどー、気にしなーい」

 

「え…はぁ!?そんなことできるんですか!?」

 

「パヒャッ、私ら一応幹部だし?めんどいからやんないけど、部一つの権限ぐらい引っ張ってこれるよ?あと、アオバがクビにされかけてたし」

 

「…やっぱり、私とんでもないことしてしまったんですね…」

 

私は渡された書類に目を通します。この書類に、私のこれからの処遇が載っている。そう思うと、目の焦点が合わなくて上手く読めません。やがて、焦点が合って、私は少しずつ、書類の中身を読むことができました。

 

            改定通知書

 

 列車緊急対応部の要請受任部署及び受任者を、以下のように改定する。

 

 ハイランダー管理室→中央管制センター(以下、CCCとする)

 

 朝霧スオウ    →橘ノゾミ、橘ヒカリ

 

 改定にあたり、管理室が持っていた要請受任に対する権限はこの通知書を持って

 

 CCCに移行し、これ以降の列車緊急対応部に対する要請はCCCが受任、要請の許可を

 

 承諾するものとする。

 

私は、一通り目を通して肩を落としました。これ、上司が管理室からCCCになっただけなんですけど。何の意味もないじゃないですか。幹部の2人は一年生と聞いていますし、私は年下の上司からこき使われるだけの存在になったってことですね。私が項垂れていると、幹部の2人がピザを食べるのを中断して私の様子を観察してきます。

 

「アオバーあんまし意味わかってないー」

 

「だね!んじゃアオバに質問。私達、なんでこんなことしたか分かる?」

 

「…そりゃ私をこき使うためでしょうね、CCCにも武力は必要ですから」

 

私がそう答えると、幹部の一人…橘ノゾミは「んなわけないじゃん!?」と手を横に振りました。そして、ピザを一切れ食べると2人して不満げな顔で説明を始めます。

 

「確かに路線毎の派閥とかあるけどさ~…そんなことは関係なくて、この部に皆が依存しすぎなんだって!」

 

「…へ?」

 

告げられた事実に、私はきょとんとしてしまいました。だって、それが私の"日常"だったから。指摘されるまでそれがおかしいかどうかなんて、分かりませんでした。

 

「業務は危険、稼働時間は定時オーバー、非番は月一日なんて…まともな神経してたら頭か身体がぶっ壊れるに決まってるでしょ?てか、自分の顔見た?クマ凄いことになってるよ」

 

「かろーし寸前、どくたーすとっぷー」

 

「…じゃあ、2人は私を助けるために…権限を…?」

 

「ま、私らもそれなりに使わせてもらうけどね。でも、」

 

幹部の一人、橘ノゾミが一拍置いて、お手上げのポーズを取りました。

 

「今アオバが入院してるのも、異常に強い生徒を一人で数十分抑え込んだ末の怪我って話じゃん?それでやらかしたからクビにするなんて、あんまりに不平等でしょ」

 

「でも…それが私に与えられた仕事でしたし…」

 

「アオバは頑張りすぎー、てきとーでいいのだー」

 

幹部の2人は残りのピザを食べ終わると立ち上がり、医務室を後にしようとします。まずい。なにか、伝えなくちゃいけない気がする。せめて、感謝の言葉だけでも伝えないと。

 

「あ、あの!」

 

「ん?どしたの?」

 

「私を助けてくれて、あ、ありがとう、ございます…!」

 

「アオバー、これ貸し一つー」

 

「えぇっ…」

 

「ふふっ、ヒカリジョークー」

 

2人が立ち去った後、私は急いでスマホを取り、ニュースサイトをチェックします。少なくとも、この数日で何があったのかを私は知りません。2人がなぜ私を助けたのか。アビドス区間はどうなったのか。そういうことを考えていた私の目は、トップで出てきたあるニュースに目を奪われました。

 

「連邦捜査部、シャーレ発足…?」

 

 

─────────

 

 

「あの様子全然ピンと来てなかったよねー、絶対。」

 

「それはそうー、全部教えてないしー。運ばれてきたときのじょーきょーなんか知らない方がいいしねー」

 

「いやほんとにさぁ!あれはヤバかった!ていうか、そろそろアビドス高校に届いてる頃じゃない?うちからの"お詫び"の印!」

 

「喜ぶといいねー」

 

 

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