もしも、彼に個性があるよって知っている方がいれば、コメントで教えてくださると幸いです。
「一応聞くケド…君たち、何してるのサン」
ヒミコを宙吊りにしながら、サンサン晴明は言う。
「…言うとでも思っているのか? ヒマワリ」
私はそう言いながら、反抗的な目でヒマワリを見つめる。
「…そう。でも、何も君に喋ってもらう必要はなくてね。この子に喋ってもらおうかな?」
サンサン晴明は言いながら、今度は左手でヒミコの首を絞め出した。
「っ!」
「ハハ! どうだい? 言う気になった?」
サンサン晴明の不気味な眼差しと笑みが、私を貫く。
ヒミコは、小さい体をバタバタと振ったり、短い手足で、逃れようと必死にもがく。
だが、サンサン晴明の丸太の様な太い腕は、その程度ではびくともしていない。
「…性根が腐っているな…! 貴様は……!」
言いながら、私は、口を開いて言葉を紡ぐ。
「? おや? 私に抵抗する気かな? 君の発現したての個性で? 笑っちゃうのサン」
ヒマワリは、そんな私を嘲笑う様にして言う。
だが、知った事か。
「……アノマリー番号457番…“燃え盛る男”…!」
私は、庭から草を一房千切り、口に運びながらそう言った。
直後に、私の体全体から炎が巻き起こり、瞬く間に燃え盛り始める。
「な、何をしてるのサン」
「…何をするだと? 知れた事ォ…」
この施設ごと。お前を完膚なきまでに破壊する。
「や、止めるのサン!? そんなことしたらどうなるか分かっているのか?!」
「分かっているさ。お前、職員、子供を含めた全員。 “私”によってこの世から抹消される。骨も肉も残さない。塵すらも残さない…。完全犯罪ならば。誰にもバレなければ……無罪だろう?」
言っている間も、私が立っている場所の足元から、徐々に炎が燃え広がっている。
「お前のせいだ。サンサン晴明。お前が何も言わずに私たちを行かせていれば………。こんな事にはならなかったんだ。…それとも何か? ご丁寧に説明すれば満足か? ヒミコを離したら炎を消す。と」
「だから! 止めろと言っているのはサン!」
サンサン晴明は、私に向かって拳を振るってきた。
あの肉塊のような、己の質量に頼った重心移動などではなく、明確に殺意のこもった拳だ。
拳が眼前に迫る。
だが、私は落ち着き払っていた。
そのまま、もう一つ能力を発動させる。
「アノマリー番号106番、”オールドマン“」
私は、迫っていた拳をひらりと避けつつ、顔の真横をすれ違う拳に触った。
サンサン晴明は、私が攻撃を避けた事に驚きつつも、また同じ腕を私に振ってきた。
しかし、拳は私に届かなかった。
サンサン晴明の手が突如黒く変色したかと思うと、それはすぐに異臭を放ち始め、元々あった場所からズルリと溶け落ちた。
「ぃ“っぎゃあああああぁあああ!!!」
サンサン晴明の痛々しい絶叫が響くが、私は何も感じなかった。
「どうだ? 糞ヒマワリ。体が腐って無くなる感覚は。ええ?」
私が使ったアノマリーは、オールドマン。彼の能力は、触ったものを腐らせる能力だ。
もちろん、これも例外なく私によるパワーアップを受けている。
人間であれば、ほぼノータイムで全身を朽ちさせられる。
だが、そうなると疑問が生まれるだろう。
何故今、サンサン晴明を殺さなかったか? という至極真っ当な疑問が。
これには大切な意味がある。
私の個性は、性質上普段使いはできないし、試したり、訓練したりもあまり融通が効かない。
だが、今はどうだ?
つまり、今のうちに能力を試せるだけ試しておこう。という事だ。
などと考えている間に、サンサン晴明は無くなった右腕の付け根部分を押さえながら倒れ込んでいた。
「どうした? ヒマワリ。なんだったか。“お前の発現したばかりの個性では太刀打ちできない”などという戯言が聞こえた気がするのは…。私だけか?」
ヒマワリの腕の中に、既にヒミコはいない。
私に向かって拳を振ってきた時点で離していた。
ヒミコは、グッタリしながら寝転がっている。
「燈矢」
私は、先程から蚊帳の外だった彼を呼ぶ。
燈矢は、体をビクッと跳ね上がらせた。
「ヒミコを外まで。頼めるか?」
言うと、彼はハッとした様に頷き、ヒミコを背に抱いて塀の穴に潜って行った。
それを横目で見てから、サンサン晴明に向き直り、言う。
「さてヒマワリ。もう邪魔は入らない事だ。存分に殺し合おうではないか」
私は、燃え盛る右腕を前に突き出した状態で、再び言う。
「アノマリー番号885番、“生きている真空”」
瞬間、突如としてサンサン晴明がもがき出した。
陸に打ち上げられ、酸素を求める魚類の様に。
その姿はあまりにも…滑稽だった。
「どうだ? 空気を吸えないと言うのは。それが、先程ヒミコが経験した痛みだ。苦しみだ。分かるか?」
サンサン晴明は、口をパクパクさせるだけで、何も言わない。
いや、言えないのだ。
真空状態。ということは、息ができないだけではない。
空気が無い。すなわち、空気を震わせることができない。
声というのは、空気を震わせて出すものだ。
それを塞がれれば、声が出ないのは馬鹿でも分かるほど当たり前だった。
「滑稽だな。先程まで私を嘲っていた花が…逆に私に見下されるというのは」
私は、フン、と鼻で笑いながら、生きている真空を解除した。
「っ、は! かっはっ、ひゅっひゅう、げぇっほ、ごほっ!」
サンサン晴明は、必死に空気を吸い込み、そしてむせ込んだ。
「死に体…だな」
私は、蹲って体を震わせるサンサン晴明に対してそう言った。
「醜い花…おっと、違った。綺麗(笑)な花にはトゲがある…。どうだ? 少しは反抗してみては?」
当然、煽りだ。奴の怒りを煽っているだけにすぎない。
既に瀕死の奴には、私に反抗する力など残ってはいない。
…と、思っていた私も、奴と同じ様に馬鹿だった。
サンサン晴明は、今が好機を見たのか、腐って無くなった腕とは逆の腕で私を殴ってきた。
今度も“オールドマン”で受けようとするが、突如として襲ってきた嫌な予感を感じ、バックステップを踏んで後方に退避する。
私の勘は的中し、拳から約30cm程の光の線が伸びて、私の胴体を横薙ぎに切り裂いた。
私の腹から上が、地面にゴトっと落下し、残された下半身の切断面からは鮮血がシャワーの様に噴き出る。
「…そういえばそうだったな。貴様の個性。確か“ソーラー”と言ったか…。日光の光を取り込み、己のものとする個性…」
恐らく今回は、パンチをブラフに、鋭い光の刃を生成し、私に一矢報いたのだろう。
今度は私を地に落としたサンサン晴明の顔に、喜色が溢れる。
だが、そんな顔も、次の瞬間絶望に染まった。
私の上半身の切断面から、肉が盛り上がり、先程失った下半身を再び作り出した。
「…事前に唱えておいたんだ。悪いな」
今使ったものは、恐らく世界一有名なあれだ。
アノマリー682。不死身の爬虫類。
能力は、半永久的な即時再生力、身体の変形、攻撃への適応能力。
まあ要するに、呪術○戦の魔虚羅と思ってくれればいい。
これさえあれば、即死級でなければ再生可能だ。
今のはもう少し遅ければ危なかったが…。まあ誤差だろう。
「さて、次はどれで
右腕を突き出す私を、サンサン晴明は絶望に染まった顔で見つめていた。
施設から火が上がり、私が燈矢達と合流したのは、それから1時間後の話だった。
tips…
研究員
トガちゃんを傷つけられてブチ切れる。サンサン晴明をボコボコにして施設に火を放った。
ちなみに、サンサン晴明の個性を知っていたのは、事務室に忍び込んだ時に見たから。
後々、トガちゃんを傷つけられて我を忘れていた自分の話を燈矢から聞いて、ドン引きする羽目になった。
ちなみに、現実に疎い彼が呪術廻戦を知っていたのは、幼少期(前世)に漫画を読んでいたから。
燈矢
キレた研究員に恐怖を抱いた。ヒミコを運び出す様に自分に言った声と、サンサン晴明に何か言う時の声の温度が違いすぎて鳥肌がたった。
トガちゃん
サンサン晴明に首を絞められて気絶した人。
燈矢に運び出された後意識を取り戻し、一人で残っていると聞かされた研究員の元に戻ろうとするが、燈矢に阻止された。
1時間して戻ってきた研究員を見て、安心感からまた気絶した。
サンサン晴明
トガちゃんに手を出した事で研究員の怒りを買い、実験体…もとい、サンドバックにされて死んだ。
施設、従業員、子供
研究員に焼かれて死んだ。施設も、人の気配も、塵すら残らず消えてしまった。
後々、難攻不落の未解決事件、もしくは都市伝説として、人々の記憶に恐怖を植え付け事になる。
SCP457 燃え盛る男
燃料(石炭や空気、天然ガス、タール、ガソリンなど)を与える事で燃えるSCP。今回は空気と草を使用した。
SCP106 オールドマン
物体を通り抜ける、触ったものを腐敗させる能力。
SCP885 生きている真空
空間を捻じ曲げる、真空を作り出す能力。
追記(同日19時44分)
お気に入り200突破! 本当にありがとうございます!