………やあ、私だ。研究員だ。
今の状況を説明しよう。
ヒミコに抱きつかれている。
なぜこうなったか、これだけではさっぱり分からないだろうな。
説明するから少し待っていただきたい。
さて、あれは、私がサンサン晴明を倒し、施設に火を放った後の事だ。
先ほども思ったが、暗い。それでいて狭いんだから、更に始末が悪い。
私は、サンサン晴明を倒し、施設を燃やしてから、塀の穴を通って燈矢達と合流を図っていた。
サンサン晴明相手に、いい訓練…ならぬ戦闘ができたため、私としては満足極まりない。
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか森の中に出ていた。
周辺に住宅街などが無い事を踏まえると、あの施設を更に怪しく感じてしまう。
森の中にわざわざ? 何のために?
考えれば考えるほど、犯罪感が溢れ出てきてより不信感が強くなる。
まあ、それも杞憂だろう。
なんせ、子供も施設も、ましてや従業員も。もうそこに居た痕跡すら微塵も残っては居ないのだから。
個性に耐える為か知らないが、強化された視力で辺りを見渡す。
そのまま少し歩いていくと、10m程先の茂みの中に、燈矢とヒミコを発見した。
「ヒミコ、燈矢、無事か?」
私は言いながら茂みに近づく。
と、その茂みから、突如として何かがものすごい勢いで私の方へ飛んできた。
ソレは、私の腹に腕を回して、一向に離そうとしない。
半ばパニックになりながら個性を使って引き剥がそうとする。
と、そんな時に。
「研究員さ“あ”ん“!!」
涙で顔をビチョビチョに汚したヒミコの声が聞こえてきた為、引っ付いているのがヒミコだと分かったのだった。
そして、最初に戻る。というわけだ。
ヒミコも、泣き疲れて寝てしまっている。
それなのに、私を一向に離してくれない。寝ているはず…だよな?
離してくれないヒミコは、もうこの際置いておこう。
それ以前に、私たちはやるべきことがあった。
ズバリ、この森からの早急な撤収だ。
施設が燃えているのは、恐らく森に近い家に住んでいる住民とかが見ているだろう。
その住民は、恐らく既に警察に通報しているだろう。
その側に私たちがいたら、どうなってしまうか。
絶対に警察に捕まる。
故に、私たちはできるだけ急いでここから逃げなければいけない。
「燈矢、行くぞ」
私は、引っ付いて離れないヒミコを、力で強引に引き剥がして背におぶり直すと、燈矢に言った。
燈矢は頷くと、私の後ろに着いて歩き出す。
私たちは、未来に向けての一歩を、また新たに踏み出した。
かくして、傷物の彼らは歩き出す。
憧れるヒーローになるために。
…さて、これにて一章は終了となります。
ここまで応援してくださった皆様方、大変ありがとうございました。
二章からは、ついに本編に合流し、雄英入学から始まります。
それでは、次は二章でお会いしましょう。