少し、原作改編があります。
雄英高校入試試験
「……写真で見るよりも大きく感じるな」
「ですねえ」
門すら巨大な高校の前に、私とヒミコは立っていた。
燈矢とヒミコを連れて、サンサン晴明の施設を脱出したあの日から、今日で約10年と言ったところか。
私とヒミコは、雄英高校の入試試験を受ける為に、雄英高校を訪れていた。
偏差値79。入試倍率300倍。
なんだこれ。と言いたくなる滅茶苦茶で破茶滅茶な高校だが、私たちが夢を叶える為の確実な一歩になる事は間違いなかった。
「緊張。しているか?」
試験会場に向かいながら、私はヒミコに問う。
「全然です! 燈矢兄と研究員さんが手伝ってくれたので!」
ヒミコは言いながら、にぱーと笑った。
「そうか」
私はそれだけ言って、再び前を向いた。
ちなみになのだが、燈矢は既に雄英に在籍している。
今は3年生。私たちよりもずっと年上だ。
なんでも、
確かに、彼の努力には目を見張るものがある。
私の持っている回復能力に頼らず、戦い続けるにはどううればいいか。火力を更に上げるにはどうすればいいか。
などなど。考えに考えた末、彼はBIG4にまで上り詰めた。
…と、そんな事を考えている間にも、広大な講堂に辿り着いた。
「じゃあ、ヒミコ。頑張れよ」
私とヒミコは試験会場が別々だ。
彼女とは、ここで別れる必要がある。
「はい、研究員さんも!」
ヒミコが拳を作って向けてきたので、私も同じように拳を作ってぶつける。
「じゃあな」
私はそう言って、試験会場に向かって行ったのだった。
筆記試験。拍子抜けだった。
偏差値だとか、倍率を聞くには、物凄く難しいのかと身構えたが、簡単だった。
まあ私が転生しているからだろう。
研究員時代の知識が据え置きだったことに、今改めて感謝した。
報告書を書くにあたって、国語力は必要であるし、数学、理科は言うまでも無いだろう。社会科…は頑張ったとしか言えない。英語は、海外の部署に訪れる際に必要だった為何ヶ国語かは喋れるようにしていたのが幸いした。
だが、これで終わりでは無いのは既に知っている。
実技試験なるものが存在しているらしい。
燈矢から聞いた情報によれば、1P、2P、3Pのロボットと、0Pのお邪魔虫ロボットを倒す試験なのだとか。
そんな事を考えながら、前方にモニターがある巨大な部屋で座って待っていると、突如として画面に人が映った。
あれは…確かボイスヒーロー、プレゼント・マイク…だったか。キバタンオウムの様な髪型が印象的だったのを覚えている。
『今日は俺のライブへようこそー!!エヴィバディSAY HEYYYYYYYYYYY!!!!』
瞬間、私の脳を爆音が揺らした。
うるさいな?!
目を白黒させながらそんな事を考えたが、実技試験の説明らしい。
手元に資料……。あ、これか。
そうこうして、プレゼント・マイクの説明が一通り終わり、私たちは場所を移していた。
グラウンドが大量にあるらしい。
私たちは、バスに乗ってグラウンドに訪れていた。
βだのγだの言っていたが、試験には支障なさそうだったので聞き逃していた。
さて、もうそろそろ始めるとおも… 『はい、スタート』 ?!
咄嗟に全速力で駆け出す。
振り向くと、他の受験者たちが目を点にしていた。
『どうしたァ?! 実際じゃ、カウントなんて無いんだよ! 走れ走れ! 賽は投げられてんぞ!』
プレゼント・マイクのその言葉を聞いた瞬間、私の後ろを大量の受験者たちが着いてきた。
…これが最高峰のやり方か…。
私はそう思いながら、淡々と走り続けながら、小さく呟く。
「SCP番号1709‐JP‐番”弱きを佐く刀”」
何もない虚空から、刀が現れ、私の右手にすっぽりと収まった。
このアノマリー、本来なら色々と制約が多いのだが、個性の特権で、私だけが例外として扱われることが既に分かっている。
グランドの中は、高いビルが立ち並んでおり、いかにも都市をイメージして作られていることがうかがえる。
走りながらそんなことを思う。
ふと周囲を見回すと、唐突に、ギャギャギャギャギャ!! と何かがドリフトするような音が聞こえてきた。
「標的補足! ブッ殺ス!!」
両腕の板のような機構に、「1」と書かれた緑色の大きなロボットが私の前に立ちはだかる。
「…ふむ。パワーの確認には丁度いいか」
私はそう呟いてから、助走を付けて跳び、ロボットの顔面に左手をかざす。
「アノマリー番号280-JP-番”縮小する時空間異常”」
瞬間、私の左手の中に黒い球体が現れ、ロボットの顔面と思しき部位をごっそりと抉り取った。
「あっけないな…こういうものなのか?」
疑問に思いつつも、私は刀を握り直し、再び足を動かした。
すると、すぐに3体のロボットと遭遇した。
15Pが2体と、10Pが1体、こちらを見つめている。
「何見テンダオラァ!!」
「見セモンジャネエゾ。アマァ!!」
「ブッ殺ス!」
せめて統率くらいはとってくれよ。ツッコミに困る。
そう思いながらも、10P敵に近寄り、首と頭の接続部に刃を突っ込んで首を掻っ切ると、倒れてくる10P敵の顔面を蹴りつけて跳躍し、15P敵の真上から踵落としを叩き込んで地面と熱烈なキスをさせ、左手で最後の敵を抉る。
「ふーッ…これで41P」
息を吐きながら左手の時空間異常を消す。
ふと、物音を感じて後ろを振り向けば、先ほどまでいなかったはずの10P敵を補足した。
それを刀で適当に壊してから、”不死身の爬虫類”と”アベル”を合成した脚力で地面を蹴って、空へと跳ぶ。
「こう見ると、このグラウンドも案外小さいものだな…おっと、そんなに悠長にしている暇はなかったな」
私は独り言を呟いてから、敵が密集しているところを発見する。
一度ビルに着地し、敵が密集いていた箇所に向けて、再度人外の脚力で跳ぶ。
「はアァー…。…103」
若干汗ばんできた為、前髪を上にかき上げる。
少し後ろを振り向けば、ぐちゃぐちゃに破壊されたロボットの群れが目に映った。
「これだけ倒しておけば、合格は確定かね」
呟きながら、再度宙に跳ぶ。
「できるのならば、できるところまでやらねばな」
私は言いながらビルに着地した。
と、その時だった。
ズドオオォン!!
と巨大な落下音に近い音が聞こえた。
「っ…? かなり近いな」
ふと振り返ると、そこには巨大な緑色の顔があった。
顔は、赤い目玉のような器官を一斉に私へと向けてきた。
「……? で?」
確かに大きいロボットだ。今までのロボットと比べても、明らかに違うというのは見れば分かる。
だが、それがどういうことだというのだろうか。
私にしてみれば、どれだけ小さかろうが大きかろうが鉄くずの塊ということには何の変りもない。
「あいにく、0Pに構ってやる時間はないな」
言いながら、私はビルから跳んだ。
「…116。大分数が減ったな」
かなり倒されてしまったのだろう。ロボットの数が大幅に減っている。
ズガアアン!!
「今度はなん…。……ほう」
振り返ると、顔面を大きく陥没させた巨大なロボットがその巨躯を崩れさせていた。
「あれを倒せる奴がいたとは…驚きだな」
そう言っているうちに、会場のあちこちに設置されていたチャイムから、プレゼント・マイクの声が響いてきた。どうも、試験の終了らしい。
遠くで、「チユーーーー!!」という声が聞こえてくる。
おそらく、保健教諭のリカバリーガールが誰かを治癒しているのだろう。
「終わったか」
私は刀を手放した。
すると、刀は粒子状になって解けるように消えていった。
2026年2月9日
戦闘シーンを大幅修正いたしました。コメントしていただいた方、ありがとうございました。