SCP財団の入る前に面接官役だった研究員は、私にそう聞いてきた。
他の質問や行動などは覚えていやしないが、それだけは深く記憶に残っていた。
その時、私はこう答えたはずだ。
”良き隣人であり、友人であり、尊い保護対象だ“
と。
その考えは、今も昔も。どれだけ時が経てども変わらない。
私のオリジンは、全てSCPが関わっているのだから。
彼らは、単なる生物や保護対象ではない。
私のその意見と思考は、恐らく覆ることはないだろう。
だから、思いもよらなかった。
まさか、私自身がSCPになってしまうだなんて。
ごばっ。
そんな音と共に、少しずつ私の意識は覚醒した。
どうも、寝転がっていたらしい。私は体を起こした。
「……どういうことだ?」
そうして発した第一声はそれだった。
私の記憶に嘘偽りや食い違いがなければ、私は爆発に飲み込まれて死んだはずでは…?
確かにそうだ。何度思い出しても、あの眩い爆発しか思い出せない。
となると、私はどうしてこんな場所…路地裏で寝ているのだろう?
おかしい。おかしすぎる。
そして、次に私は思い至った。
アノマリーの力では? と。
私は、アノマリーとは対等な関係であろうと常に心がけていた。
それ故、友好的なアノマリーには好印象を持たれていたのだ。
その交友関係にあったアノマリーの誰かが私を救ったのか?
そう思うが、私をあの場所から移動させたりする能力を持ったアノマリーは、あまりいないはずだ。
まず思い浮かんだアノマリーは、アニマリー1609。このアノマリーは、ある二点を繋ぐことで、物質を移動させることができる能力を持っている。
だが、コイツではないだろう。爆発に巻き込まれた時、私はコイツの側にいなかった。つまり、二点を繋ぐことができないからだ。他にも、SCP1609は、私服でなければ攻撃される。私は作業着であったためコイツは敵対してくるはずである。だからありえないのだ。
他にもそういったアノマリーは存在するが、どれも今の私に関係しそうなアノマリーではなさそうだ。
では何が? 疑問だけが脳内に残るが、何度熟考しても特に進展は得られなかった。
取り敢えず情報だけでも集めよう。
そう思い立ち、私は腰を上げた。
そして、気づいた。
何やら、視点が下がっているのだ。比喩などではない。
いつもの視点と比べても、あからさまに視点が低いのだ。
おかしい。どうしたことだろう。
視線が低い以外にも、私には様々なおかしい変化があった。
まず、髪が長いのだ。前髪ではなく、後ろ髪がだ。長髪。ということだ。
そして、さっき声を出した時に思った…というか分かったのだが、声がいつも以上に高かった。まるで、女性の声の様な、そんな感じだ。
まさか。いや、でもそんな…。
嘘だろう? ありえるわけがない。
悪い冗談であることを期待したいが、今さっき発見した変化を振り返ってみると、なんとなく自分の今の体について理解しかけてきた。
その理解がどの様なものかというと…
もしかして、私は今女体なのか? だ。
認めたくないという意思と、確認しなければという意思が、即座に葛藤を始めた。
そんなくだらない意地の様な意思が数分間激しい攻防を繰り広げ、結局意地は敗北を喫した。
男性か女性から判別する、一番簡単かつ分かりやすい方法がある。
だが、今の私には“ソコ”に手を伸ばすのは至難の業だった。というよりも、困難を極めた。
更に数分の時間を要し、私は“ソコ”に手を触れた。
……………。
ない。
無かった。
これで分かった。私はどうやら女性になってしまったらしい。いや、恐らく身長的に女児だろう。
ショックかどうかは知らないが、恐らくショックだろう。私は膝から崩れ落ちる様にして座り込んだ。
そして、すぐに思考を巡らせる。
アノマリーの中にこの様なことができるアノマリーはいただろうか?
いるにはいるが、そのアノマリーがワープ能力も有しているかと言われると、再び迷宮入りしてしまう。
ということはもしやここは別世界なのか? 俗に言うライトノベルのような?
だとすればこれらの状況は説明がつくが、誰がどう考えても非現実的極まりない。
まあ、いい。先程の通り情報を集めよう。
ショックからなんとか立ち上がり、歩き出した。
話は変わるが、私は、ショルダーバックなるものを身に着けているようだ。
起きた場所から出る前に一通り漁ってみた。今から、中に入っていた物の話をしよう。
中に入っていたものとしては、
・名札
・住所の書かれた紙
・500円程入った財布
の3点。これ以外には、コンビニで買い物をした後のレシートやら、ゴミが大量に詰められていた。
名札は、子供が小学校で使っている様な物で、名前だけが書かれている。
……………………ふむ。
確かに名前があった。
まあ変わらず研究員でいいだろう。とはいっても、今は研究員ではないが。
そんなことを考えているうちに、外に出た。どうやら、袋小路にいたらしい。
出た瞬間、明かりに照らされる…なんてことはなかった。
外は、真っ暗闇だ。夜中だった。
さっきまでは、袋小路にいたため真っ暗闇の中だったのだが、今は街灯のおかげでしっかりと周りを見渡すことができた。
私は歩き出す。
向かう先は、住所の書かれた紙に書いてあった住所だ。
今さっき通りかかった電柱についていた街区表示板から想定するに、そう遠くはないだろう。
もっとも、この足でどれくらいの時間がかかるかは未知数だが。
ここは都会なのだろうか?高層ビルが立ち並び、夜といえど人の行き交いが激しい。
財団に勤めていた頃は、財団内の仮眠室で睡眠をとり、適当な物を食っていた為、しばらく外に出ていなかったな。……まあ私にとっては、ついさっき死ぬまで財団にいた様なものだが。
もし、先程考えた様にここが異世界なら、何故私はここにいるのだろう。
小説や漫画の様な物だったら、死んだ私を不憫に思った神が…とかがありえそうだが、そんな事はあり得るはずがないだろう。
神など非科学的すぎる。
………アノマリーにはいるが。
例えば………。いや、やめておこう。
…まあ、いい。これを考えるのは後にしよう。歩いているうちに住所の場所に着いていたからだ。
どれくらいかかったのか、時間を数えるのは歩き始めてすぐにやめた。数えていたら頭が痛くなりそうだったからな。
玄関前に立てかけられているプレートには、異頭と刻まれている。
ここが私の家で間違いなさそうだ。
玄関の戸を開け、中に入る。
……………………………………………。
な、なんだ? この有様は…?
嘘だろう? 財団にいた頃の私に部屋よりも汚いぞ?
続きましたね……。まあどこまで書くかは分かりません。
個人的には、トガちゃんと荼毘は救うルートで行きたいんですが……まあどうなるかは分かりませんね…。