ヒミコに施設の話をしてから、一ヶ月ほどが経過した。
食事や睡眠なども、全くもって問題はなかった。
あの肉塊は、ほとんどリビングから動くことがないのだ。
下品な表現になってしまうが、排泄物も全てリビングでしている。…というか漏らしている。この家が臭い理由の7割はソレだ。
…まあいい。
あれからの進捗を話そう。
1つ。
児童相談所が見つかった。
良が働いていた娼館の店主に話をしたところ、「やっと行く気になったのね!」とか言ってすぐに地図を持ってきた。
良自身が児童相談所に行きたがるのを待っていたらしい。
そのままの足で店主には店を辞める事を伝えた。
2つ。
私に“個性”が発現した。
私の個性は
SCP だ。
その名の通りで、SCPに関係する能力を扱うことができると言う個性らしい。
何故個性が発現したことが分かったのかだと?
…缶切りで缶を開けていたら人差し指と中指をバッサリ行ってしまってな。その時、瞬時に指が二本とも生えてきたのだ。
これが個性だろうな、なんて思いながら、夜、家の近くの公園で試したところ発覚したのだ。
だが、この個性には幾つか制約が存在する。それも、不利なヤツが。だ。
1、年齢を重ねるごとに扱える能力が増加する。
2、一度に発動できる能力は15まで。
3、強大な力を持つ能力を扱う場合は、溜めを要する事。
4、元々私がいた世界から、SCPが漏れ出してくる事。
以上この4つだ。
まず、1。これは、誕生日を迎えた瞬間、新たな能力がランダムで9つ手に入る。ヒーローになるまでの間にかなりの数を習得できるだろうから割愛だ。
そして、2。これも大した制約では無いし、個性を鍛えることで更に許容量も上がるだろう。
次に、3。溜めを要する。これは、具体的に言えば、アノマリー-1374-JP-A、アノマリー-1374-JP-B、アノマリー-1374-JP-C。通称“大団円”や、アノマリー-040-JP。通称“ねこです。よろしくおねがいします”、アノマリー-096-。通称“シャイガイ”などのアノマリーが該当する。
相手の精神、及び肉体に対し、決定的なダメージを与える。もしくは、世界の“律”に反するモノ、地形を大きく破壊するモノ。
これができる能力には、溜めが居る。大体20秒くらいだ。
…最後に、4。これは致命的だ。
要約すると、私の所属していた財団が保護しているアノマリーが、こちら側へやって来てしまうと言う事。
もちろん、こちら側に財団なんてあるはずがない。
つまり、野放しの状態でアノマリーがこちらへ来てしまうのだ。
…と、ここまで言うが、4には利点もある。
一つ目は。こちら側へやってきたアノマリーを倒し、沈静化させると、そのアノマリーの能力を得ることができ、アノマリーは元の世界へと帰る。
二つ目は、もしそのアノマリーの能力を既に私が保有していた場合には、そのアノマリーの特性を得ることができる。
まあ4に関しては、プラスマイナスで話をすると、ややマイナスに傾くが…そこはよしとしよう。
そして、私と同じように、ヒミコにも進展がある。
まずは、ヒミコの個性の強化だ。
ヒミコの個性は、確かめるのが非常に難しかったが、“変身”だった。
血を吸った相手に変身することができる個性。もしヒミコがスパイなどになったらあっという間に昇格できるだろう。
ヒミコの場合は、既に個性が出ていたので暴走などの危険性もなく、安全に訓練を行えた。
何をしたか、簡略化して話そう。
まず、摂取した血を体内に保持すること。
ヒミコの個性は、確かに強い。私の血を吸えば、私になって私に個性を思う存分に扱える。
だが、それは一人までの話だ。
2人同時だったら? 3人は? 4人は?
つまり、飲んだ血を体内に保管して、好きな時に変身できる様にしようと言うわけだ。
結果は、今の所3人分が限界だった。
そして次に、血の統合。
例えば、私の血ともう一人誰かの血を混ぜ合わせ、“混合させた血液”を作り、それを摂取し、二人分の個性を扱えるかどうか。というものだ。
結果は、成功だ。
訓練の末、買ってきた血液パックの血と、私の血を混ぜて飲んだところ、私と血液パックの血液の保持者であろう人間が結合した姿に変身することができ、二人分の個性を同時に扱うこともできる様になった。
しかし、これはヒミコにかかる負担が大きく、1日2回。10分まで。という約束を設けた。
正直、私もヒミコも普通の幼児にはあるまじき身体能力や個性の用途を身につけてしまったが、生きる為。差し引いてはヒーローになる為だ。致し方ない。
それはそうと、今日は児童相談所に出発する日だ。
今は、買ってきたキャリーバックの中に、良の金と、缶詰などの食料品を詰めている。
「ねえ研究員さん」
唐突にヒミコが話しかけてきた。
「なんだ?」
私は、良の日記やら、良の遺品を別のバックに詰めながら聞き返す。
「私達、これからどうなるの?」
…もっともだな。
これまで麻痺していたが、ヒミコは私とは違い正真正銘の女児だ。
ここらで安心させてやらなければ。
「…何があっても大丈夫だ。私が、お前を必ず助けるから。何があっても、離さないからな」
………なんか告白みたいになったな…?
ああ、ほら…。ヒミコがポカンとしている…。
「くっふふ…あはははは…!」
今度は私が、豆鉄砲を喰らった鳩みたいにポカンとした。
何故笑うのだ?
「ありがとう。そう言ってくれるって信じてました」
でもちょっと告白チックでしたけどね。
ヒミコがくすくす笑いながらそう言った。
キャリーバックと遺品のバックを持って立ち上がる。
「…そうか」
直後に私は、ヴヴン、と咳払いをしてから言う。
「それじゃあ、行こうか。ヒミコ」
「はい。行きましょう」
バックを持った私達は、抜き足差し足で家を出ていくのだった。
これが、私の歩む道への第一歩だ。
そんな事を考えながら。
いい感じに筆が乗って二話連続投稿できた〜♪
ちょっと研究員さんとトガちゃん強化しすぎちゃった感はありますけどね。
それはそうと、書きたくなっちゃったのでifルートも書くかもしれません。