主人公を死なせるのがめんどい
どこの世界にも、クソな大人は腐るほどいるんだなと痛感した。
「本当にごめんね。私達は仕事で忙しいし、お金も持ってないから、あなたの面倒を見れる自信がないの」
「全然大丈夫です」
名門の家の娘なんだから、金を持ってないワケがないだろうに。
自信がないとか言って、本当は俺のことを預かるのが億劫なだけだろ。
遺族の義務として、故人の子供の面倒はちゃんと見ろよ。
いやまぁ、俺もあんた達とは暮らしたくないから、孤児院とかにでも入れて欲しいんだが…
………普通に考えて、6歳の子供に一人暮らしさせるって、頭どうなってんだ?
「ちゃんと毎月仕送りはするから、お金については安心してね。足りなかったら遠慮せずに言ってくれていいから」
「ありがとうございます」
さて、遺産や保険、遺族年金とかの諸々の総額のうち、いったいどれだけ俺に残るのか…
お金持ちと言ったって、貰える金があるなら遠慮なくぶん取っていくだろうし…
流石に衣食住をギリギリ確保できるだけの金はくれるんだろうが、ほとんどはこいつらの趣味や酒のために消えるんだろうな。
ハァー。
なぁ、いるかも分かんないカミサマ(いやまぁこの世界にはいるんだろうが)。
せっかく転生したのに、前世と同じくらい、いや、前世以上にハードってのは、どうなってるんですか?
前世の俺の親はクズだった。
デキ婚をした両親は、どちらともロクに仕事にもいかずに早逝した祖父母の遺産で生活し、息子である俺にはロクに『■情』も飯も与えないで、2人ともいつもどこかを遊び歩いていていた。
14歳になった俺は、そんな両親に嫌気がさし、家出をしようと住んでいたボロアパートの部屋から出た。
………その瞬間、老朽化していたアパートの通路が崩れ、二階から落ちた俺は地面に頭を強くぶつけ死んだ……んだと思う。
死ぬ寸前「つまらない人生だったな」とか思いながら目をつむり、そこで俺の意識は一回途切れた。
次に目を開けた時、俺は赤ん坊になっていた。
最初は、自分を抱き上げている親の表情すら分からないほど困惑していたが、前世で父親のいない間に、父親のパソコンでゲームをしたり、ネット小説を読んでいたりしていた俺は、それらの知識から自分が転生したことを察し、徐々に落ち着きを取り戻していった。
冷静になった俺は病院のベッドで、「前世が最悪だった分、今世の両親はきっと普通のいい人達のはずだ」なんて思っていた。
今世の両親もクズだった。
ただ、今世の両親は、前世の両親とは違いちゃんと働いてはいた。
なんなら2人とも名門の家の生まれで、職場では出世街道真っしぐらの(クソな親戚が言ってた)超エリートだったらしい。
だが、この2人の結婚はそれぞれの家が決めたものだったらしく(これもクソな親戚が言っていた)2人の間には『■』がなかった。
全く会話のない家というのはそれはそれで中々心にくるものがある。
こういうのを心理的ネグレクトとか言うんだろうか?
そして、つい先日、今世の俺の両親も死んだ。
哀しみの感情は感じられなかった。
仕事帰りに大火災に巻き込まれて、2人とも骨すら見つからなかったそうだ。
一人残された俺はクソな親戚からも見放され、齢6歳にして一人暮らしをすることになった。
この時点で中々に鬼畜なのだが、俺の不運はこれだけじゃ終わらない。
地名が『冬木』という時点で少し嫌な予感はしていたのだが、恐らくここは型月の、fate/stay nightの世界だ。
俺が6歳の頃、つまりは原作の10年前に火災が起きているし、何より大火災の日の夜の空に、見覚えのある黒い穴が空いていたから、ほぼ確定で俺はsnの世界に転生したのだろう。
最悪だ…
普通に生きたかったのに、10年後に聖杯戦争なんて厄ネタが起こるのが確定している、ルートによっては世界が滅ぶかもしれない世界に転生するなんて…
たとえトゥルーエンドの世界線だとしても、巻き込まれる可能性がある以上、せめて冬木からは逃げたい。
ただ、俺が冬木から引っ越そうとすると色々な手続きが必要となるが、親戚は面倒くさがってやらないだろうから、引っ越しは実質不可能だろう。
引っ越しを断念して、今住んでいる家から一人で家出したって、何もできない6歳の体では、どこかで野垂れ死ぬか、警察に捕まって冬木の家に連れ戻されるだけだ。
よし、冬木から逃げることは潔く諦めよう。
10年後、第5次聖杯戦争が起こっている間は、どこか旅行にでも行けばよい。
それに加えて、原作キャラともあまり関わらない方が良いだろう。
原作キャラと仲良くなんてなったら、どんな危険な目に合うか分からないからな。
………スタートで少し躓いたが、今世こそ俺は、普通に幸せになってやる!
今日、俺は小学校に入学した。
入学に必要な色々な手続きをしてくれた親戚には感謝しないといけないだろう。(クソクソ悪口言ってごめんなさい)
前世では俺用の服が一着しかなかったため毎日同じ服で学校に行っており、それのせいか「お前クセーんだよ」とか言われてイジメられていた。(本当に俺が臭かっただけかもしれない)
そのせいで小学校で新しく友達が出来ることはなかったし、保育園で友達だった子もみんな俺から離れていった。
中学とかと比べて比較的コミュニティの作りやすいはずの小学校でボッチになるという偉業を、俺は達成したのだ。
だが、今世ではそんな悲しき偉業を達成する可能性はない。
なぜなら、俺の心配とは裏腹に、親戚達はかなりの額の金を俺にくれたのだ。(悪口言って本当に申し訳ございません)
そのお陰で、今の俺は自分用の服を3着も持っている。
これなら誰かにイジメられる心配はない。
保育園の時に作った友達と、入学式の時に作った友達が俺から離れる心配はないし、これから新しい友達を作ることも出来るだろう。
最近色々と順調だな。
ようやく俺にも運が回ってきたらしい。
明日からの学校が楽しみだ。
次の日の朝、初めて教室の席に座った(昨日の入学式では体育館にしか行かなかった)俺を襲ったのは、運命への怒りだった。
俺の隣の席に間桐桜がいた。
は?は?は?
いや確かに、俺と間桐桜は同い年だ。
偶々小学校が同じで、偶然クラスが同じで、偶発的に隣の席になる可能性がないワケではないかもしれない。
だからってこんな運悪く…
クソが
「運が回ってきた」とかナメたこと言ってたのはどこのバカだ?
………フーッ。
落ち着け落ち着け。
よく考えてみろ。
隣の席になったからなんだ?
なんの問題もないはずだ。
蟲ジジイによる調教で精神的に参っているだろう間桐桜が、自分から俺に声をかけることはまずない。
つまり、俺から干渉しようとしなければ、俺と
それならば、俺が原作イベントに巻き込まれる可能性は上がりも下がりもしないはずだ。
………よし、絶対に間桐桜には関わらないようにしよう。
そんなことを思いながらも、つい間桐桜のことを見てしまう。
この世に絶望している、虚ろで光を通さない瞳
どんな感情も映さない能面のような表情
ハァ、7歳がしていい顔じゃないだろ。
………家族から棄てられ、悪辣な老獪に汚される幼い少女を憐れむ。
そう、憐れむだけだ。
自分にどんな不利益をもたらすか分からない厄災に、俺がどう頑張っても救うことのできない哀れな少女に関わろうとするほど、俺はお人好しじゃない。
俺はただの一般人だ。
偽善者を気取るつもりは一切ない。
ただ、周りの人達が笑っている中で、一人真顔で座っている姿を、いつかの自分と比べてしまった。
俺には蟲に侵される苦しみは分からない。
だけど、周りが幸せそうな中で、自分だけが不幸なことを憤る気持ちは、ほんの少しだけ分かる気がする。
再度言おう、俺はただの一般人だ。
だからこそ、同情してしまった子を見捨てられるほど、偽悪者にはなれなかった。
「なぁ、マトウ。隣の席になった並月だ。これからよろしくな」
声をかけた瞬間、ここでマトウに声をかけたことを後悔することはないんだろうなと、根拠もなく思った。
ー九年後ー
ある人物を探して、2年生のフロアの廊下を歩くが、お目当ての人物は中々見当たんない。
あの姉弟子いつも真っ赤な目立つ服を着ているから、視界に入ればすぐ見つかるはずなんだが………あ、いたいた。
「お~い、遠坂せんぱ〜い」
「あら?並月くんじゃない。どうしたの急に?」
「あ〜、バイト先の教会のエセ神父から伝言です。『例の件についての連絡を夜に電話するから、時間を空けておけ』だそうです。」
「………わかったわ、ありがとう並月くん」
「例の件って一体なんなんですか?」
まぁこのタイミングならば、聖杯戦争以外ありえないが………
「秘密よ。あなたには教えられないこと。それよりもさ、並月くん」
あかいあくまが、微笑みを投げかけてくる。
………この人の笑顔って、二つの意味で心臓に悪いよな。
「駅前にできたエッグタルト屋、凄く混んでて買いに行くの大変だから、バイト終わりに買ってきて。明日学校で渡してくれればいいから。お代はちゃんと私が持つからさ」
「………いやですよ、めんどくさい」
「安心して、もちろんタダでとは言わないわ。今度組手をする時、私は右手を使わないであげる。それだけのハンデがあれば、もしかしたら私に勝てるかもよ」
………マズイ
自分が揺らいでいるのが分かる。
右手を使わないハンデは魅力的だ。
凛姉の言う通り、本当に勝てるかもしれない…
これまでの10年間の戦績は0勝103敗
ここで凛姉に貸しを作ることで、初めての白星を手に入れられるならば…
「………わかりました。駅前のエッグタルト屋ですね。何個買えばいいんですか?」
バイト終わりにエッグタルト屋によると、流石に夜も遅かったので、あまり並ばずに買うことができた。
エッグタルトを買った俺は帰る途中で、バイト終わりの士郎先輩と出くわした。
「よっ、アマエ」
「士郎先輩、先輩もバイト終わりですか?」
「あぁ。お前今日もウチ来るだろ?」
「はい。ご相伴に与らせていただきます」
「俺に言ったって意味ないぞ。作ってるのは桜だからな。お礼なら桜に言わないと」
「そうですね。マトウは料理も上手になったし、良く笑うようになった。全部先輩のお陰です。本当にありがとうございます」
「急にどうした………俺は桜に特別なことは何もしてないぞ」
「イヤイヤご謙遜を。あなたはマトウの特別ですよ。ねぇ士郎先輩」
「なんだ?」
「桜の味方になってあげてくださいね」
「?どういう…「やっぱり今日は帰ります。マトウや藤村先生には謝っといてください」
家に帰った後冷凍食品を食べた俺は、布団の上でゴロゴロしていた。
………久しぶりに冷凍食品食ったな。
やっぱり手料理って美味いんだよな。
……変な意地張らずに士郎先輩の家行くべきだったか…
いやでもあんなこと言った後に一緒にご飯食べたくない。
よし、明日たくさんおかわりしよう。
ピンポーン
インターホンの音が鳴る。
こんな時間に誰が…
そう思いながらインターホンのカメラを確認すると…
マトウ?
俺今日は士郎先輩の家行かなかったのに、わざわざ帰りに寄ったのか…
ドアを開けてマトウを招き入れる。
「お前早く帰んないと、シンジ先輩に心配されるぞ」
声をかけるが無視される。
………なんか小学校低学年の頃を思い出すな。
なんて気楽なことを思いながら俺の部屋に入る。
部屋に入った瞬間、一瞬でマトウに押し倒される。
なんか今日いつもより激しくないか?
「なんで今日は先輩の家に来なかったの?先輩曰く、最初は来るつもりだったんでしょ?私に何か気まずいことでもあったの?」
なんかマトウがキレてる。
なんでだ?
気まずいのは確かだが、それは士郎先輩に対してだ。
特にマトウには何も…
あ、
まさか…
「アマエ、今日遠坂先輩と話してたよね?ダメだよ?あなたは私のモノなんだから…」
「いや、あれは、その…」
「言い訳は聞かない」
そう言ってマトウが俺の首を絞める。
「ッ」
「今日はキモチイイところまではやらない。苦しいところで一旦止めて、もう一度締めて…それを何回も繰り返してあげる」
呼吸が阻害され、脳への血流が滞ることによって朦朧とする意識の中で、俺はいつも通りの疑問を抱く。
コイツこんなキャラだっけ?
桜ルートです
この駄作内での夜の桜
衛宮邸に行く→オリ主に首絞め(ックスはしてない)をする→お菓子?食べ歩きに行く