転生した。隣の席がマトウさんだった。   作:ボヨンボヨン

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「学校忙しい!楽しい!」とか思ってたら約1週間経っててビックリしました。
チンタラ進めてたらエタる予感しかしなかったので、今回結構無理矢理に話進めました
その弊害で文章的にかなり不自然な所があると思いますが、ダイジェスト版だから仕方ない(?)と割り切って読んでください。

こんな言い訳ばかりのキモい作者の駄作でよけれは、どうぞ!


Q→シン 第九流れてから少し(約9年)経ったら、なんかシンジくんがガンギマってた。

 

地獄を見た。

 

そこは、暗くて臭くて寒かった。

そこには不快で悍ましい、邪で醜悪な蟲が無数に蠢き、その蟲の海に、無能で可愛い妹が溺れていた。

妹が…桜が、蟲共に犯され穢され壊されていた。

だけど僕は、恐怖で指一本動かせなかった。

 

自分が壊れる音を聞いた。

 

無能な妹の存在によって保たれていた僕の優越感が崩れた。

自身を特別だと信じることができなくなった。

自分を魔術も使えない欠陥品だと認めてしまった。

 

自分がこれからどうあればいいのか、分からなくなった。

 

僕を見た桜の目には、憎悪と憐憫と諦観と嘆願と、これまで桜の目には映っていなかった多様な感情が覗いていた。

それなのに、桜は僕に何も言わなかった

憎まれたのならば、憎まれるべき存在であろうとしたのに。

憐れまれたのならば、きっと僕は彼女を憎悪したのに。

助けを求められたのならば、もしかしたら桜を救い出すために戦ったのかもしれないのに。

だけど桜は沈黙した。

だから、僕はアイツにとっての何であればいいのかが分からなかった。

これまで自己の肯定を桜の存在に頼っていた僕は、自分が何者なのか、とんと分からなくなってしまった。

 

それがとても気持ち悪くて…

寝て起きた後も、朝食を食べた後も、学校に来てからも不快感は収まらなくて…

 

「ゲボッ、ウ゛、ェ」

 

昼休み、結局僕は校庭で吐いた。

同級生と遊んでいる時に吐き気に耐えられなくなったけれども、校舎内のトイレに行くには到底間に合わなくて…

だからといって他の生徒が周りに多数いる所で吐くのも許容できなくて…

誰も使わない遊具の裏で隠れて吐いた。

だから誰にもバレないと思っていた。

このまま素知らぬ顔で教室に戻って、授業を受ければいいと思っていた。

それなのに…

 

「慎二先輩!大丈夫ですか!」

 

「………アマエ?」

 

生意気な後輩が僕を見つけてしまった。

僕より桜の方が才能があるとか抜かしやがったのが許せなくて、数ヶ月間距離を置いていた後輩に…

 

「……ッ!僕に話しかけるな!一体何のつもりで僕に近づいて!」

 

「何のつもりも何も、嘔吐している体調の悪そうな先輩がいたら普通声をかけるでしょう。…服は吐瀉物でビチャビチャですね。まぁ、何はともあれ、とりあえず保健室に行きますよ。」

 

「………」

 

アマエの言葉を無視していると、強引に腕を掴まれて立たされる。

 

「自分で歩けないなら、無理矢理引きずって行きますよ。というか、調子悪いんだったら意地張らず大人しく保健室に行きましょうよ。」

 

「別に僕は調子が悪いワケじゃない!」

 

「調子良い人は普通吐かないんですよ。慎二先輩に何かあったら桜ちゃんも悲しむんですか「そんなワケないだろ!」

 

「…どうしてそう思うんですか?」

 

「アイツは!桜は!どうせ僕のことを見下してたんだ!だから僕に関わることなんかで悲しむワケがない!」

 

そうだ、自分より劣等な人物のことで、高尚な人物が一々気を揉む必要はない。

それに、僕は桜を助けなかった、桜を見捨てた。

そんなヤツを案じるほどの余裕なんて、桜にはない。

 

「…優しいお兄ちゃんが体調崩したら、妹は普通心配しますよ。」

 

「………『優しい』?あぁそうだよ、僕は自分が特別で桜を無能だと思っていたから、錯覚でしかない優越感を持ってたから、僕は桜に優しくしてた。でも、本当に特別だったのは桜だったんだ、劣等だったのは僕だったんだ。ハッ、桜からすれば、僕はさぞ哀れで滑稽だったろうな。」

 

「先輩が劣等感を言葉にするほど追い詰められてて、且つ桜ちゃん関連ってことは、例の家業についてですか…桜ちゃんが間桐の家を継ぐことに気づいて、それを認められない慎二先輩はストレスで吐いた。筋書としてはこんな感じですか?」

 

「………」

 

うるさい、黙れ。

なんでロクな情報もないのに、そんな詳細なことまで推理出来るんだ…

 

「沈黙は肯定とみなしますよ。それにしても、本当に桜ちゃんが間桐の家業を継ぐとは…桜ちゃんは不憫ですね。」

 

「間桐の家を継いだアイツが、僕から誇りを奪ったアイツが不憫なワケあるか!」

 

アイツが可哀想じゃないワケがないだろう。

 

「………あの子の哀れな所なんて、数え始めたらキリがないですよ。まず、『養子』だという点。普通の子供ならば血の繋がった家族と暮らしたいだろうに、何かしらの理由で本来の家族と引き離され、心細い思いをすることを余儀なくされていることは憐れでしかない。次に将来を確定されてしまっていること。慎二先輩のように家業を継ぎたいなら別ですが、そうでなかった場合、やりたくもないことを将来やらされるのが確定しているというのは気の毒だ。そして、継ぎたくて継いだワケでもない家業のせいで、元は優しかった兄から妬まれる。これは本当に痛ましい。どうです?桜ちゃんは可哀想でしょう?」

 

「………だからなんだよ。僕には関係ない。」

 

「そうですね。家族と言ったって、どこまでいってもただの他人です。桜ちゃんがいくら惨めでも、慎二先輩には関係ないと言えるでしょう。」

 

「そうだよ。桜がどれだけ可哀想でも僕には関係ない。大事なのは、桜が僕から『間桐』の誇りを奪ったっていう事実だけ「でも、他人であると同時に、あなたが桜ちゃんの家族であることは覆せない事実だ。家族で…お兄ちゃんであるならば、妹を理解し、救い、愛すことが理想だ。あなたはそれを目指さないんですか?」

 

「………桜が可哀想なことは百歩譲って認めてあげるよ、僕は桜の兄として、アイツを助けてあげるのが正解だってことも受容する。だけどさ、僕がその理想に届くのは不可能だ。理想が分かっていたとしても、僕は決して届かない理想に挑むほどバカじゃない。それにだ、桜は僕に一度も助けを求めてない。求められてないのに応えるなんてことは、ただの迷惑でしかないだろう?」

 

「桜ちゃんに求められてないから行動しない………結局あなたは誰かの…桜ちゃんのせいにしないと自分を変えられないワケだ。自分で自身を定義出来ないから、自分がどうあるべきか分からないから、今のあなたは苦しんでいる。」

 

「………うるさい。」

 

「別に悪い意味で言ってるワケじゃありません。自分で自身を定義することは酷く難しい。自身の肯定を他者に求めることも、誰からも肯定されないから苦しむことも自然なことだ。だからこそ慎二先輩、あなたは桜ちゃんに聞くべきだ。あなたを必要としてるかもしれない他者……桜ちゃんがあなたにどうあって欲しいと思っているのかを。」

 

「………桜が僕を必要としてる?」

 

「えぇ、桜ちゃんがもし苦しんでいた場合、桜ちゃんから見て最も頼れる存在は、家族であり兄であるあなただ。例え桜ちゃんが言葉としてあなたに助けを求めていなくても、心の中でどう思っているかは分からない、いや、きっとあなたに助けて欲しいと思っているはずだ。」

 

「そんなワケ…」

 

「そんなワケがあるかないかは、桜ちゃんに直接聞けばわかりますよ。………あなたは桜ちゃんとちゃんと話し合って、その上で桜ちゃんが望む理想の兄になるんだ。桜ちゃんの人形として、道化としてあなたは振る舞えばいい。そうすればあなたは自身で自己を定義する必要はない。全ての責任は桜ちゃんに負わせれることができる。あなたが今少なからず抱いている桜ちゃんへの罪悪感も、彼女のために生きることで解消することが出来る。どうです?名案じゃないですか?」

 

「………」

 

欠陥品である僕が、特別()のために生きる、それは酷く僕に似合っている気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アマエと話した日の夜、僕は二人っきりで桜と向かい合っていた。

 

「なぁ桜、お前は僕にどうあって欲しい?」

 

「どう?」

 

「そうだな、具体的に言うと………お前は僕にこの間桐の家(地獄)から救い出して欲しいか?それとも僕には憎むべきマキリの血を引く者(家族)として、悪辣であって欲しいか?」

 

「私の理想を兄さんに押し付けるなんておこがましいこと……「いいんだ桜。ワガママを言って。桜の理想がどんなものでも、例え『死んでくれ。』という願望でも、僕は受け入れるから。」

 

「それなら………私は誰かに…兄さんに助けて欲しいです。でも、きっと兄さんじゃ私を救えません。兄さんじゃお爺様に勝てない。お爺様に逆らった人の末路は蟲の餌。私のワガママのせいで兄さんがひどい目に合うのはイヤです。だから、これからも、今まで通りの普通の、でも少し歪な兄妹として、一緒に暮らしてくれますか?」

 

「そんなことでいいのならもちろんだ。だけど、桜が『助けて欲しい』と思っているのならば、僕は諦めない。だから、これから僕は桜を救うために励むよ。普段はお爺様に従うけど、チャンスが来ればお爺様に反旗して、お前を助け出してみせる。」

 

「………兄さんはどうして私を助けようと思ってくれるんですか?私を簒奪者として憎み、賤民として蔑んだほうが、兄さんはよっぽど楽なはずです。それなのに…」

 

「………桜と同じクラスで隣の席の並月アマエっているだろ?僕は桜が蟲に壊されている所を見て、これから桜とどう接していけばいいのか悩んでた。それで、今日の昼アマエにその悩みを話した、いや、聞き出されたんだ。もちろん魔術の情報は伏せた上でな。それで僕の悩みを聞いたアマエに『兄貴として妹のために行動しろ』って言われて気づいたんだ。僕は苦しんでいる桜を救うべきなんだってことに。」

 

「………」

 

「アマエ、アイツは桜と仲良くなりたいらしいぜ。無視ばっかりしてないで、今度少し話してやれよ。」

 

「………はい。」

 

桜とアマエの友人関係…

それがあんな退廃的なものになるなんて、この時の僕は夢にも思っていなかった。

 

 




桜とシンジが一緒に暮らした期間が短かったら、蟲蔵見つけられても桜何も言わないんじゃ…
桜から何も言われなかったら、ショタ慎二メンタルグラグラになるんじゃ…
とか思いながら書いたら、慎二くんが誰おま状態になりました。
後悔はしてます。
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