ブルガリア人過激派組織「ズヴェノ」を確保したフレディとフレディ麾下αチーム。
そのリーダー格「ラジミール」から情報を頂く算段だが、千束のうっかりでフレディの名を出してしまい、情報すら出してもらえない可能性が出てきた。
これから千束たちはどうなるのやら・・・。
【情報交換】
ズヴェノ襲撃から12時間後のこと。フレディのアジトにて。
ズヴェノの傭兵24名とリリベル2名らを連れた車輛群がアジトの前に止まった。アジトには先にラジミールとラジミールを捕まえた千束とたきなが居る。千束はズヴェノに関して情報を聞き出す為にアジトに、たきなは車輛群を待っていた。先頭車輛から出てきたのは戦術女性教官、イーダだった。イーダは感情を押し殺しながらたきなに言う。
「やぁたきなちゃん。首尾はどう?」
「ラジミールは捕らえました。そちらは?」
「ズヴェノの連中とリリベルを連れてきたわよ。ちょっと気絶しているけど。これで良いんだよね?」
「はい、十分です・・・イーダさん、1つ質問よろしいでしょうか。」
「たきなちゃんの望みならいいわよ。」
たきなは喉元を通り過ぎる言葉を抑えてしまった。うまく言葉にできない。ソレを見たイーダはたきなの頭を撫でた。
「言えない事なら言わなくてもいいのよ?ヨシヨシ・・・」
別にそんな事ではない。ズヴェノとイーダ、フレディの関係性を聞きたかったが、聞き出すのはまずかったとも思えた。
「じゃあ車輛たちをここに止めておくからあとはよろしくね。」
と言って、イーダは歩いて帰って行った。
引き止めることもできたが、逆にフレディたちが帰還して状況がややこしくなったらそれも困る。彼らの痴話げんかなんぞ聞きたくない。仕方がないのでたきなはアジトの中に戻った。
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さらに1時間後のこと。フレディとフキ率いるαチームが帰ってきた。全員ススまみれで汚れていた。リコリスたちは汚れを払いつつも疲れ果てていた。フレディの鼓舞で何とか保っていたが、アジトに到着するなり地面に座り込むリコリスも居た。その時はフレディが拾ってアジト内に戻った。
フレディはアジト内部に入ると、大きな声を出して千束とたきなを呼び出した。
「戻ったぞ!千束お嬢、たきなお嬢!おるかー!」
この答えに答えたのはたきなだった。
「お帰りなさい。車輌は確認しましたか?」
「いんやまだだ。後で己がやっておくから、このお嬢たちを頼む。なんか食わせたり休ませてやってくれ。」
と2人のリコリスを抱えたままフレディは答えた。
先の制圧戦という激戦の最中から撤退中に別働隊のリリベルから追撃を喰らった。幸い負傷者は居なかったものの装備品が欠落してしまったり、疲労困憊で走れなかったりなどの状態から逃げてきた。不幸中の幸いなのかリリベルはフレディのいるアジトまで追撃しなかった。だがフレディが思うに敢えて追撃をしないのは『泳がせる』つもりで追撃をしなかったとも思えたのだ。深読みのしすぎだろうがとっくに過ぎたことでもある。
それはともかく抱えたリコリスの1人が水を求めた際、フレディはふと我に返った。
「水か?待ってろ、歩けるお嬢たちに頼むから・・・」
と諭しながらそのリコリスに激励するフレディであった。
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疲れ切ったリコリスたちはそれぞれ食事をとり、あるリコリスは談笑したり、あるリコリスはアジトに完備しているお風呂に浸かったり、あるリコリスは寝息を立てたり、それぞれ自由に過ごしていた。規律よりも自由裁量という判断でフレディは指示している。また別の機会に使ってやらないと困るのは作戦の中心かつ指揮官として居るフレディが困る。
唯一動けるリコリスは、千束とたきなだけであった。最もフキは休憩に反対はしたが、フレディのまくし立てる理論に屈して渋々休憩に入っている。あとはズヴェノの連中に情報を吐き出すだけか・・・。気が遠くなりそうではある。どこまで情報を持っているのか不明な点だ。そもそもラジミール本人が口を割るタイプではないからであり、どうしたものかとフレディは思いつつ、ラジミールと千束とたきながいる部屋に入っていった。フェイエットビルを念の為に持って行って・・・。
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「どうしても話さないの?」
「断る!君たちがフレディの手先である以上はな。」
千束とラジミールが言い合いしていた。それを筆記で記録するたきながいる。
「手先じゃない証拠さえあればいい?」
千束は敢えてDAである言動を言おうとした。が、たきなが小声で止めに入る。
「千束、ダメです。私たちの存在を知られたら・・・」
「でもさ~もう捕まえてバレている以上、遅いと思うじゃん。」
「しかし・・・」
千束の言う通り、存在がバレている以上は無理に隠す必要はなかった。ラジミールがDAという存在を知っている知らないの問題ではない。DA内の一組織がラジミールを捕えている以上、無理に隠し通す必要がない。ラジミールも薄々気づいているはずだ。特にイーダが戦術教官としてDAに入ったのが原因で、ズヴェノの連中が日本に入国したのが約1週間前。フレディがDAから逃れていた期間と合致している。だから千束はそう考えて編み出したのが『隠す必要性がない』。
千束の考えに戸惑いを隠せないたきなを見て、ラジミールが言う。
「君たちがDAという治安組織なのは十分知っている。何せ裏切り者がその組織に入っているからな。」
やっぱり。千束の考えはほぼ的中していた。あとはフレディとの仲を確認したい。
「ふーん、じゃあフレディさんとはどういう仲なの?」
「・・・本人から聞いてないのか?」
千束の問いに困惑するラジミール。
「聞いてないからいまラジミールさんに答えてもらうかな。」
「出来れば奴に聞いてもらった方が早いのだが・・・まぁいい。奴には武器の密輸入を頼まれている。」
「どんな武器なの?」
「先の事件と同様の武器の密輸入さ。」
先の事件とは延空木事件のことである。延空木事件では真島率いるテロ組織がある組織の煽りを受けてDAに対して宣戦布告した事件でもある。正確には真島は千束との一騎討ちにしたかったが煽っていた組織が撤退したのと、どっかの誰かさんが一騎討ちの間に入ってしまい、真島と共に消えた事件のことである。
ラジミールは延空木事件を知っているということは、隠蔽を試みたDAとDAの情報インフラを担う『ラジアータ』から漏れ出した情報の一部なのだろう。直接的な情報ではなくても間接的に知っているのは、単にフレディとイーダという存在が大きいのだろう。
千束は嫌とも言える事件に、苦虫を?み潰したような顔を一瞬して元に戻った。だが、ラジミールはそれを看破する。
「君は3-6-Light・・・延空木で起きた事件に関与していたんだね。」
「な、なに急にどうしたの?」
千束が慌てるがラジミールはすかさず説き伏せようする。
「何より、君を救い出したのに裏切られて撃とうと失敗したんだね?」
「・・・」
千束が黙り込む。どこで知った情報なのだろうか?フレディが性格上から全て言うわけがない。たきなが千束の前に立ってラジミールから守る。
「その話はやめです。現在の話をしましょう。」
だが、ラジミールは辞めなかった。
「君も君で撃とうとしたのに彼女のせいで撃てなかった。違うかい?」
「・・・どこでその話を?」
たきなは怖くなってきた。フレディから聞いた情報と違い、狡猾さがにじみ出ているラジミールに対して怖くなったのだ。
ラジミールが展開する脅し文句に1発の銃弾が放りこまれた。銃弾はラジミールをかすめて壁に当たる。こんなことをする奴は今まで1人しかいない。
「ラジミール、辞めておけ。子供相手に何やってんだ。」
フレディが2人を助けた。精神的苦痛な話を銃弾で物理的にへし折ったのだ。
「ケッ・・・俺を騙したのはどこのどいつだ。子供を使って騙し討ちしようとしやがって・・・」
「お互い様だろ?密輸入の件はありがたかったぜ。」
「アレもお前の仕業だったわけだ。まんまと引っかかっちまった・・・まぁいい。で、何の用だ?目の前の子供を脅すなとかか?」
「それもあるが、今の貴様を見たらなんか虫唾が走ってな。子供に八つ当たりして何になる?」
「なんにもならねぇよ。ちょっと威張っていたかっただけだ。」
ラジミールは千束とたきな2人に対して威張っていたいだけのようだった。それにしてはだいぶ痛々しい2人を見て優越感に浸っていたのだが・・・。それに対してもフレディが指摘した。
「あとどこでその情報を?本来ならば出てこない情報のはずだが?」
「とあるテロ組織の生き残りがいると聞いてな。それを元手に探し当てたらビンゴだったわけだ。」
「となると・・・奴はまだ生き残っているってことか。次こそ始末してやらないとな。」
大人2人のやり取りを見た千束は言う。
「え?まだアイツ生きてるの?」
大人2人はそれぞれ答える。
「確証ではないがな。」
と答えるフレディと、
「だが可能性はある。」
と答えるラジミール。
余計なことを言わない方が互いに見の為だと大人2人はそう思って話した。それは千束の為にとどまらずたきなの為にも大人2人にも影響することであった。真島が生きているという情報がDAをかいくぐっている状態ならばラジミールの可能性はかなり高い。機械化されたフレディさえ入って来てない情報だ。フレディが「確証ではない」と言ったのは真島が、まだ日本に潜入している可能性が微粒子レベルで存在しているからだ。もっともラジミールの情報が正しければという前提条件があるが・・・。
フレディはそんな話をしに来たわけではない。フェイエットビルを装填しつつ、ラジミールにある質問を聞いた。
「ラジミール、率直に聞きたい。密輸入で暴かれた組織は知っているか?」
「お前以外なら心当たりはある。」
「じゃあ密輸入の取引条件を天秤に賭ける。」
「それだと日本の治安維持に不利が祟るんじゃ?」
フレディの答えに困惑するラジミール。ラジミールにとどまらず千束やたきなすらも困惑した。
「テロしなければの話だ。」
「なるほどね。いいだろう・・・密輸入中に重武装した子供たちに襲われた。年頃はそこの子供と同じぐらいだろう。」
「いつ?」
「入国して間もないころだ。」
「となると1週間前か。」
顎に手を持っていくフレディ。何かしらの情報が引っかかっているようだった。するとたきなはフレディの外套を引っ張ってフレディを気づかせた。
「なんだお嬢?」
「リリベルの存在を明らかにすべきではありません。」
確かに。たきなの言うことは一理ある。ただ、答え合わせに曖昧な表現で答えてもらっても確実な証拠になり得ない。
「いんや、リリベルじゃない可能性もある。DAの下部組織は幅広いからな。違ったら違ったで0からやり直す必要がある。」
「しかしながら、リリベルをひっくるめて、DAの単語も出す必要はないかと思います。仮に彼が全部知っていたとしてもです。」
「協力を得るには、彼に有利な条件で話さないとずっとリコリスは不利になる。楠木を連れて真島を取り逃がしたことはいまでも覚えているからな。」
DAが失態を犯した事例はいくつかあるものの、一番の失態は先の事件で真島を取り逃がしただけならず、楠木司令自ら乗り込み、マキャヴェリズムを問いだしたことだった。フレディはあの時、傭兵であったため深く言及はしなかったが、憤りを感じていた。
相手にとってその情報が有利であれば、ビジネスが出来る。それが出来なければビジネスは出来ない。DAはビジネスが出来なかった、それだけのことであった。
「いいか?たきなお嬢。あの件以来、こっちははらわたが煮えているんだ。DAはビジネスが出来ない。」
「し、しかし!」
たきなは引き下がらなかった。するとラジミールが言う。
「ビジネスが出来ない子供を相手にするの辞めたらどうだ?その子じゃできないだろう。なにゆえ真面目過ぎる。」
ラジミールが言う通りだ。真面目すぎるたきなではビジネスがままにならない。フレディはラジミールの助け舟を得たのだ。仮想敵であり、これから仲間になるズヴェノに。
「それもそうだな。千束お嬢、たきなお嬢、ここは己に任せて2人は休んでろ。」
「・・・わかりました。千束、行きましょう。」
「分かった・・・」
たきなは不服ではあったが、彼らのビジネスにリコリスが介入すればするほど、情報は出てこないと見たのかあっさりと引き下がった。たきなは千束と共にその部屋から出ていく。それを確認したフレディはラジミールに再び質問した。
「話は戻る。連中、何か言い残したことはあったか?」
「ある。確か・・・残りの捕虜とまとめて輸送しろ。だったか?他にも捕虜がいるんだろう。」
「因みにどこで聞いた?」
「日本の地理は疎いから解らない。が、コーナンという橋付近でそれを聞いた。」
「港南橋か・・・どうやって聞き出した?」
「今度は質問攻めか?いい加減にしてくれ。」
ラジミールは激怒した。だがそれに答えるほどフレディはやわじゃない。
「いいか、ラジミール。2人で共通の敵を作らないと終わらない。こっちはテロをしなければ密輸入の取引には目をつぶる。あとはズヴェノの連中がしたいようにすればいい。逮捕も殺害もない。」
「・・・いい条件だが、裏がありそうだな?」
フレディはさらに踏み込んで言う。そうDAという組織を明かし餌をばら撒くのだ。
「こっちにはDAという治安組織に属している。もう知っているだろう?」
「さっきの子供たちを見たらな。普通は思えないほどだが・・・」
「ならばあの子たちはリコリスという組織だ。」
「リコリス・・・リコリス・・・そうか!Lycoriasか。ギリシャ神話の女神にふさわしくない毒々しい名前だが、気にいった。」
「だろ?どうだ?共通の敵を叩き潰すキッカケは与えた。」
「こんな状況でNOって言えるか?」
フレディは不気味に笑い出す。それを見たラジミールが答えた。
「YESに決まってる。祖国の為ならば厭わない。」
「そうだな、祖国の為に。」
フレディは笑いながら答え、ラジミールを解放した。
『祖国の為に。』とはズヴェノが言う合言葉でありキャッチコピーでもある。それを大人2人が揃いも揃って言ったのだ。これで交渉は締結。DAを出汁にしたかいがあったのかは定かではない。ラジミールのご機嫌取りの為だけにDAを餌にした。それだけの事だった。
⇒次回【統一戦線】
子供と大人の対になるように書いてます。大人の悪い癖が出たらそれは大人の仕業でしょう。