『悪徳教官』   作:クマぴょん

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【葛藤という演技】

 

 

 廃工場襲撃から2時間後のこと。フレディのアジトにて。

 千束はたきなと共にずっとフレディに向かって愚痴を垂れ流していた。ソレを聴いたフレディはうんともすんとも言わず、葉巻を吸って気を紛らわした。千束達にイライラしているわけではない。自分自身に対してイライラしているのだ。教官である立場の関係上、自分なら出来たことを彼女たちに押し付けるのは無理があった。解ってて出来なかった自分を責めた。

 千束の愚痴が終わりに近づくと、たきながフレディのご機嫌に気づいた。

「フレディさん?大丈夫ですか?」

たきなの答えに続かないフレディ。ソレを見た千束は呆れて答える。

「無理だよたきな。フレディさんなんか解って貰えないよ・・・」

「そうではありません。ラジミールさんに聞きます。」

フレディの横に立っていた葉巻仲間のラジミールが居た。

「俺でよければ構わないが・・・フゥー」

「フレディさんに何かありましたか?例えば、責任を感じたりとか?」

「そうだなぁ、そうともいえる。君たちが思う気持ちが重荷になって、コイツは教官の座を辞めるとか抜かしやがった。」

「「!?」」

ラジミールがそう言うと、千束とたきなが驚く。

 フレディの悪い癖がまたもや発作として起きた。ただ、フレディの発作というよりもフレディが思う葛藤の姿を葉巻で隠していただけなのかもしれない。突然、千束が謝りだした。

「フレディさん、ごめんなさい!もう言わないから・・・ね?」

と謝ってもフレディは動じない。葛藤のせめぎ合いが彼の中で起きている。

「諦めな。コイツの悪い癖が出てきている以上、君たちの声は届かない。何せ君たちの言葉をプラスして追い立てたのは俺だしな。」

ラジミールがそう言われると千束は黙った。

 もとより作戦伝達が上手くいかなかったフレディの責任でもある。ならばいっそのこと教官の座を捨てて、自分が鉄砲玉になれば、子供たちを悲しませる必要性がない・・・と都合よく解釈したのが今のフレディだ。ソレを聞いたラジミールは虫唾を走って、フレディを更に追い込ませた。

 責任の座は誰がやるのか?もとより世界観が違うフレディのせいなのか?はたまた責任を追い込み、抵抗者の始末を命じたラジミールのせいなのか?それとも不殺を徹底した千束なのか?

 そんなこと解りきっていた。ラジミールが煽らなければこんなことにならなかった。だが責任を追及してもこのままでは埒が明かない。千束はうつむき哀しみながら引き下がった。

 

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「なぁ?そろそろ機嫌を直せよ。葉巻も吸った、あの金髪の子供から引き?がした・・・あとこれ以上何を望むんだ?」

 ラジミールがフレディのご機嫌取りに動いていた。そのご機嫌取りを聴いていたのは、たきなとフキも居た。野次馬が居る中でフレディは黙り込む。

「はぁ~・・・君はどう思う?」

ラジミールがフキに向かってため息交じりつつ質問した。

「どうって・・・待つしかありません。」

とフキは答えた。

「それが妥当な答えだろうよ。」

「なら過激なあなたがどうかしたらどうです?」

たきなが逆の立場になって問う。ラジミールの扇動がなければここまで落ち込んでいるはずがない。そう見込んでの問いだった。

「それが出来たらこんな無駄なことやるか?都合よくご機嫌が良ければいいと思う?コイツの心が動くことがあればいいんだが・・・」

ラジミールはフレディから葉巻を奪ったり、口に入れたりして繰り返した。どうもピンと動じてないフレディの様子は、周りの人間を困惑している。どうしたものかと皆々が考えふけっていた時、皆が居る部屋に扉が開き、フレディを除く目線が扉に行った。

 そこに居たのはモモだった。皆が息を?む中で勢いよく扉を開けたのだ。そりゃあ誰だって目線がそっちに向く。

「フレディさんに通達です!リリベルに動きがあります!」

そうモモが言うとフレディはハッと起きたかのように言った。

「・・・それは誠か?」

「はい、現在こちらに向けて動いている模様です。」

「よし、ラジミール。演技はやめだ。フキお嬢たちは遊撃を、たきなお嬢は千束お嬢を呼んで奇襲の準備を。」

 フレディの出陣の下知を言い果たすと、たきなとフキが慌てふためく。

「えっ!あ、はい。」

「わ、わかりました。」

ラジミールがため息つけながら言う。

「一々落ち込むのに演技もクソもあるかっつーの。」

「へっ、士気はずっと高まるものばかりじゃないからな。一度は落ち込むことも大事だ。」

そう言われてでかいため息をつくラジミール。

「次からあの金髪の子供にはやるなよ。子守の面倒はやりたくないからな。」

「はいはい、んじゃ貴様も重い腰を上げて動けよ。」

「子供殺しの次は遊撃任務か・・・気に食わないねぇ。」

と部屋から立ち去るラジミールであった。

 フレディが落ち込んで自分を責めたのは演技だった。何かの拍子で落ち込んだ士気を立て直すためにハッタリをかましたのだ。自己都合と言えばおしまいだが、千束たちを謀ったのであれば何たる謀略家。ハッタリにしては大人のラジミールの協力を得ての謀略で、子供たちを騙したに過ぎない。千束を引き下がらせる唯一の方法がこれしか無かったのも大人の悪い癖である。

 

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 数時間後、リリベルとの一戦はあっけないもので終わった。

 まず、αチームを十字架のように配置した後に暗がりかつ狭い所に誘い込む。誘い込みはズヴェノの連中に託されており、万が一の場合は誤射しても構わないという承諾を得た。接近戦闘は千束とフレディが担当し、それぞれ機関銃陣地に配置した。RPKことカラシニコフ軽機関銃を並びたてて迫ってくるリリベルに向かって発砲。正面がダメと判断するだろうと思って側面にもRPKで対処することで襲撃に来たリリベルは十字砲火に晒され、撤退を余儀なくされる。

 何名かは捕虜にしたものの、抵抗虚しく歯に仕込んだ毒によって自殺した。ズヴェノの連中には若干の死者が出たが、リコリスに負傷者は無かったのは不幸中の幸いであった。ただ自殺者を運ぶのはさすがにリコリスは不味かったので、手慣れているズヴェノの連中に任せた。幼いリコリスには休みが必要だ。今度は大人の出番である。

 フレディが突如としてこんなことを言う。

「明日、単身で”DA本部”に殴り込みに行ってくる。」

と・・・。

 驚いたのはラジミールと大人以外の子供・・・、リコリスたちであった。誰もが拒絶反応を示すが、単にDA上層部を仕留めるために乗り込むんじゃない。リコリスの解放の交渉の場を設けるためでもある。この件に関しては楠木にも伝えるつもりだが、どう転ぶのはフレディ本人に託された。

 

 

⇒次回【本心】

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