後日。都内・某所にて。
たきながスタンドプレイしたビルの出入口にフキたち元αチームと千束とたきな、モモが居た。不気味にも事故物件でありながら解体は行われておらず、誰かの手によって改修工事されていた。フキや千束の上司であるフレディなのかはたまた、愉快犯・真島なのかは不明である。
クルミの調べによるとフレディが所属していた傭兵集団の1人が所有していたという。最もその所有者はフレディの手によって殺されてしまったが・・・。
現在の所有権はフレディのモノになったが、それにしても不気味な静けさである。DAのクリーナーによって片づけられたはずなのに、かすかに血の匂いがする。本当にここにいるのだろうか。
フキは合図した。それは”突入の合図”である。
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ビル内部はーーー空の薬莢や壁の複数個所に銃痕が多く、フキたちが初めてやってきた時より多かった。
しかも薬莢の山の近くでは血の海が出来て固まっており、たきなとサクラを除くセカンドリコリスは吐き気が喉元まで達していたその時、
<<ようやくみつけたか。>>
スピーカーから出るノイズ交じりの男の声。機械音声に近い形だが、この声はフキたち全員が知っている。”彼”だ。
<<逃避行もこれまでだな。エレベーターを用意してある。>>
<<無論、怪我とか負われたら困るからまっすぐ来い。>>
<<いいな?寄り道はするなよ。>>
と一方的に切られた。彼らしいやり口だが、どうもこのビルはおかしい。薬莢もそうだし銃痕もそのまま。
(片付けもしないのか?)
と、たきなが不必要に薬莢の山に近づくと・・・得たいもしれない臭いがたきなを襲い、全身を震わせては思わず下がる。千束が笑って言う。
「もう、たきなったら。さっきフレディさんに言われたこと守れないの?」
「あ、いえ。てっきり・・・それよりもあの薬莢の山のなかに何かが居ます。」
たきなの精一杯の言い訳にサクラが笑う。
「たんなるビックリおもちゃっすよ。ビビりすぎ。」
「しかし・・・」
「ほら、よそ見しないで行くぞー。」
たきなは先ほどの臭いが人間の腐敗した臭いだとわかる。臭いを嗅いだ瞬間、全身のあらゆる毛がブワっと押し寄せた。ここにある薬莢の山は彼が殺めたものだ・・・そう息をのんでフキたちについていった。
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最上階に到着すると・・・暗闇に包まれていた。いや、正しくは暗闇のなかに一筋の光が刺していた。
その光の先に1人の漢が座っている。手には52口径のスペンサー銃を持ってフキたちを待っていた。邪悪な笑みを浮かべて悪役気取りをする彼。これが無ければ延空木英雄とも言われていただろうに・・・。
だが、これこそが彼の正体。闇社会を牛耳るまで成長して、アラン機関による大規模テロを2度も止めた。
1度目は真島との対決よりかは傭兵集団の問題でDAを弱体化を図る裏切り者の鉄血制裁。2度目はDAが国家規模の戦争に巻き込まれ、テロリストの入国を防いだことだった。
これも偏に彼の実力と陰の立役者として闇社会に無数の手を差し伸べては、日本が延空木以来のテロが起きずに済んでいる。ただ1人を除いては。
「よう。お嬢たち見つけたか。それともモモが見つけたのかな?」
答え合わせするかのようにフレディが言う。フキたちはたいそう驚き、答えを編み出したモモが反応する。
「な、何故それを?」
「かくれんぼに飽きたからだ。」
「それはウソです!」
フレディがにやにやしつつ、たきながウソを突き止めた。にやけが止まらないフレディ。
「至る所で見かけた薬莢の山・・・あれはフレディさんによるものですね?」
「なぜそうだと思う?」
「あんな残虐な方法で見せしめるやり方は貴方しかやらない。」
「テロリストがやらないという証拠は?」
フレディはとっさにウソをつくが、たきなはそれを看破した。
「そもそもここの所有権はあなたで、『エレベーターにまっすぐ来い』の裏には死体に触るなという戒めです。」
「おっと、バレるウソをついちまったなぁ・・・」
やれやれと首を振ったフレディ。子供たちの前では、相も変わらずウソをつくのが下手のようだ。
「ありゃ、日本でテロリズムを起こそうとした武装集団だよ・・・もう1週間は経つがな。」
1週間前と言えば彼が退院して行方を眩ました日時と被る。たきな以外はずっと唖然としていた。つまり、この1週間ほど日本が平和なのは全部フレディの仕業だった。
闇社会を牛耳っていれば情報統制も出来る。これを逆手にとってラジアータどころか同じ闇社会に生きるクルミですら欺いた。現在闇社会の頂点に立っているのは彼自身だろう。だが、それは表看板。裏ではDAの教官をやらなければならない。表看板ばかりやっていても、裏看板もやらなければこのような事態になるだろう。
彼は重い腰を上げて椅子から離れた。そして拍手しながらフキたちに歩いた。その一歩一歩が死神のように歩みを運んでいるかの思われた。彼は口ずざむ。
「さてと、DAに戻る前にある種のパーティーをやろう。」
と機械化された左手で指パチンすると照明が全てついた。するとフレディが座っていた後ろで繋がれていた男が居た。
「ここに攻めてきた有象無象のリーダーだ。条件がDAの存在らしいから丁度いいな。」
と肩を揺らして笑う。
悪趣味がここまで極まるとそれはもう無敵の人に近いだろう。彼はフキたちに頷くが何のために頷いたのかはたきな”しか”知らなかった。たきなは自前の拳銃でフレディに歩み寄り、繋がれた男に拳銃を突きつけた。たきなの行動を見てようやくわかったフキたち。それを止めたのが千束だった。
「ちょいちょい!たきな、何やってんの!?」
「情報を吐かせるまでですよ。」
「でも明らかに衰弱しているのに、これ以上なにしても意味ないよ!」
「じゃあ後始末も全部こっちが受け持つが?」
千束とたきなの間に入るフレディ。
「またそうやって!フレディさんは何も解ってないよ~。下手に命を取るのはーーー」
「お嬢たちがやるよりかは幾分マシだ。」
汚れ仕事は全部大人に任せろって言っているのに対しても、千束だけは嫌がっていた。彼はまたもや、やれやれと首を振って言い放つ。
「早く終わらせろよ。1週間放置してた死体の処理に行ってくるわ。」
とおつまみ感覚で非常階段で下の階に向かってしまった。千束がたきなの横に合わせると、
「フレディさんの言い分は解るけど、先走ったらダメだからね。」
「演技でやってましたが、ダメでしたか?」
「演技でやってるのバレたらフレディさん怒るよ?」
千束の言い分はもっともだ。たきなの演技のせいで今度こそ消息不明になるだろう。それ以前の問題もあった。
「千束、怒るだけで済む問題じゃないだろ?」
「”アレの延長線上”で生まれた問題・・・知らなかったのは本当だよ。何回も言ったじゃん。」
「・・・確認しただけさ。」
フキが定義する問題と千束が言う”アレの延長線上”というのは・・・延空木事件の直後にリリベルに捕らえられたリコリスが何名か居るとのことだった。
それを吐かせるためにテロリストを呼び込んだのは、こいつらがリリベルの手先の可能性があったのだ。汚い手を使うならこちらも汚い手を使うほかない。という彼なりの考えだった。彼がそれに察知したのは帰国したタイミングで発覚し、消息不明した1週間より以前であった。だからキッチリ身体を追い込んで、リハビリしてから消息不明という博打に打って出た。
そうDA全体から欺くために。
⇒次回【騙した結果】