都内・某所にて。
フレディが人間の血という血を吸って帰って来た。キッチリ人数分の返り血さえ貰って来ている。仕事してきた証拠だ。その頃、千束たちは衰弱死になりかけた元テロリストを救い出して、情報を吐かせた。フレディが部屋に入るな否や、モモが気づいてフレディの元にすり寄って来た。
この子にとって、血生臭い彼よりもフレディ自身に会えたことが一番の喜びかもしれない。無表情なまま”生きてる右手”でモモの頭を撫でた。ただヤニカスのフレディはモモよりも葉巻が吸いたかった。退院してから1週間経過した今ですら葉巻を吸っていない。何よりの理由は目の前にいる”子供たち”の言いつけを守っているからだ。
「で?情報は?」
最低限の情報をやるが、千束たちは押し黙っている。
「問題にしちゃヒントが少ないから良問ではないな、すまん。捕まえているリコリスの数は?」
千束たちは首を振った。この情報は使えない。
「なら手先はリリベルなのは知っているのか?」
それすらも首を振る。フレディのデカい溜息で部屋が重くのしかかった。
「んじゃこいつらはリリベルを知らずにDAの依頼とも知らずにリコリスに差し向けたのか・・・聞いてあきれる。」
と言った瞬間、Le Mat Revolverを取り出して千束たちが救い出した男はぐちゃぐちゃになった。
情報が出ない以上、生かしておく理由がない。それが千束が思う博愛主義であろうとフレディは関係なかった。何よりもリコリスに刃が向けれられるなら、その矛先をフレディに向かわせてたら義理人情関係なく殺れる。それが千束というデカい人物像であってもそれに立ち向かえるだけの実績はコイツ自身にもある。
千束が身体を震わせてフレディに牙を立てる。
「なんで!なんで殺したの!」
「碌でもない情報と存在を知られたら危ないからな。」
「それでも殺す必要なかったじゃん!」
「苦労しなかったらお前たちが危なかったぞ。」
「危ないもなにもそこまでして私たちを騙す必要があるの!?」
確かに。命を賭してまで戦う必要があるかと言ったらないのだ。昔ほど少年兵として戦いに身を挺していた時代じゃない。もう今はほとんど戦うどころか人を殺める必要性すらないのだ。
それでも千束・・・いや千束たちに釘を刺した。
「どっちにしろそいつは死ぬ運命だ。ヤツの左奥歯確認してなかったのか?」
「知ってる・・・知ってるから怒ってんの!」
「ならどの道死ぬだけだったはずだ。それが少し早まっただけだ。」
「そういう話じゃなくて!」
千束は騙し続けるフレディに怒り心頭だった。たきなやフキたちが抑えても、自分のイデオロギーや思想を捻じ曲げたことにはらわたが煮えくり返っていた。特に自分をよく知っている人物がそれを捻じ曲げたことで、余計に堪忍袋の緒が切れてしまったのだ。騙しに騙した結果、フレディは降参した。
「次からするなって言われたのに、またしちまったのは理由があるがそれはそれ。これはこれだ。申し訳が立たぬ。」
彼の言葉を聞いて少しは落ち着いた千束。でも次の言葉でまた暴れるかもしれないのはたきな、フキたちにとって危惧していた。だからフレディに対する尋問内容を変える必要があった。
まず、たきなが答える。
「今回の件はリリベルで間違いないというのは解りましたが、他には?」
「リコリスというかDAそのものを知らん連中だったらしい。依頼料は俺たちに支払った1人あたりの”レンガ”よりも多く、全体で2枚の”座布団”だったらしい。」
レンガというのは1000万円のことで、座布団は1億円のことだ。つまりテロリストには2億円が手に入る手筈になる。もういないが・・・。
次にサクラが言う。
「んじゃ・・・リリベルがウチらリコリスが捕まえているという情報はどこに。」
フレディは自分の頭を指した。
「脳・・・あっ、もしかしてラジアータの情報を脳に!?」
「そうだ。機械化された脳みそなら一部の情報を分けたっていいだろう。」
「そういう問題じゃないすよ・・・」
サクラは腕をだらーんと垂らして呆れた。フキは他に質問が無ければ言うつもりでいたが、とりあえず辺りを見渡した。傍に居たモモはずっとフレディを抱きしめていて、エリカとヒバナは何か言おうとして何かを考える。
既にフレディには他の能力として他人の心が読み取れるものがあるが、それはあくまで”次の行動”であり読み取るよりかは次のアクションを待っている。するとエリカが質問する。
「で、ではそのリコリスは今もどこかに?」
「あぁ、そのどこかを吐かせるために追い込ませたが・・・もう無理だな。」
自分でぐちゃぐちゃさせた男の情報を頼りに言うが、今はもう遅い。ヒバナが少し考えて言う。
「捕らえられたリコリスには追跡機能が残っているはず。ラジアータや教官の情報網から特定できないでしょうか?」
「それが出来たら苦労してその男から情報吐かせるか?無理だろ。」
「それもそう・・・ですね。」
ラジアータすら、彼の情報網すら引っかからない。手がかりも無しに彷徨っている状態。そんな状態のなか、モモが何かを思い出したように言った。
「こんなことを聞くのもアレなんですが、延空木事件直後のごたごたの最中に小規模な銃撃戦があったんですか?」
フレディがビンゴゲームのごとく指を指した。
「そう、それで何人かは捕まったまま帰ってこれてない状況下にいる。早速お前たちで編成を組みなおす必要がーーー」
「そんなことよりなんで消えたの!」
千束がまた激怒した。並々ならぬ怒り方でフレディに近づく千束。
「帰ってから店長自慢の一品を手にするって言いながら帰ってこないし!」
先の作戦でフレディは千束にミカのエスプレッソを受け取ったら仲直りすると約束していた。それを反故にして、作戦に従事を着眼点としていた。だからフレディにとっては日本が火の海を被ることは御免だと考えていた。それでも千束は戦いのど真ん中にいるフレディを救い出したかった。何としてでも戦いを辞めさせれば互いにいい思い出来るからだ。千束は想いをぶつける。
「戦わないフレディさんのほうが何倍も頼もしいし、私たちだけでは不満なの!?」
「お嬢・・・」
千束が言うように作戦従事はリコリス。指揮は楠木司令やミカ、フレディで居れば十分だと言う。しかし、それに不十分だと思いフレディ自ら動いている。千束にとってはフレディの行動に不服だった。
「お願いだから・・・」
「無理だ。」
千束の懇願する姿にフレディは振り払う。
「内地の平和よりお嬢たちの平和が第一とする時点でそれは願い下げだ。大人が動かなければそれを達成できない。違うか?」
「でもでも!」
千束は首を振りながらも否定する。フレディは千束の目線に併せて身体をおろし、彼女を抱き寄せる。そして生きてる右手で頭を撫でた。
「すまんな。これしか返せなくてな。」
「フレディさんのバカっ!」
千束の涙はフレディの身体を濡らし、フレディはただ謝ることばかりしかできなかった。そして来てくれた皆にも、
「探してくれてありがとう。そしてすまなかった。」
と簡易的でありながら謝罪を述べた。
⇒次回【喫茶リコリコで一服】