『悪徳教官』   作:クマぴょん

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【前章のあらすじ】
退院突如として消えた教官ことフレディ。彼はとある情報を基にテロリズム拡大を阻止した。
しかし、千束を筆頭にDAはその情報を一部しか知らず事の顛末を千束たちに明らかにした。
延空木事件から約半年の今。なぜリリベルはリコリスに固執しているのだろうか?それとも別の狙いがあるのか?


~教練~
【喫茶リコリコで一服】


 

 

 都内・某所、喫茶リコリコにて。

 千束とフレディが邂逅してから僅か数時間後のこと。強制的に喫茶リコリコに連れていかれたフレディ。

「せめて一服吸いたいのだが?」

と申し立てるフレディと、

「まだ吸ってないの?」

と笑われる千束。まるで親族回りにいるどこにでもいる伯父さんと姪っ子のようだ。まぁフレディが異形すぎて普通の人間に見えないのだが・・・

 因みに返り血のまま外に出かけるのは流石に辞めたので、アイリッシュ・マフィアンの姿で現れた時はモモを筆頭に何人かは倒れかけた模様。カタギに見えないその姿に何度かは職質されたものの、予めDAに用意された身分証明書で難を凌いだ。

 

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 千束の推す力であれよあれよで喫茶リコリコに出向いたフレディ。

「店長~、ただいまー。」

「ただいま戻りました。」

 千束とたきなが喫茶リコリコに入ると続けてフキたちが入ってくる。

「し、失礼します//」

「お久しぶりっす。」

フキが赤面しながら入ってくるがミカは気づかない。エリカやヒバナ、モモも続いて入ってくる。

「し、失礼致します。」

最後にフレディが挨拶する。

「やぁ、旦那。大世帯ですまん。」

「構わないよ。」

ミカは笑顔で千束たちを出迎える。

 喫茶リコリコの明るさは相も変わらずだった。フレディはほっと胸をなでおろした。変わらない場所がある、帰れる場所がある、だからこんなに明るいのだ。血で穢れた心が洗われ、帰れない毎日で居た彼を照らす、それが喫茶リコリコの存在なのだ。

「ふぅ・・・ココは落ち着くな。まるで家に帰って来たみたいだ。」

「ずっと居てもいいんだよ?あ、用意してくるね。」

と足早に千束はたきなと共に裏へ行った。

「何を・・・って流石に制服じゃ接客は務まらんか。」

 ミカがフレディのいるカウンターにエスプレッソが届けられた。

「フレディくん。はい、これを。」

「おっとすまないな、ミカの旦那の手を煩わせてしまって。」

「いや、良いんだ。これでチャラなんだろう?割に合わないと思うのだが・・・」

「千束お嬢を悲しませないためにはこの1杯で充分さ。後で射撃場借りても?」

フレディの頼みを受けてミカは大きく頷き、

「あぁ、構わないよ。あと吸うなら外で頼む。」

と答え、厨房へ赴くミカであった。

 喫茶リコリコでの休憩は非常に落ち着いた雰囲気で、心が沁みる程休める。そんなフレディという大人に質問攻めを強いるリコリスの子供たち。それを見た千束とたきなも参加することになった。

 どうして消えたのだの、家探しはどうしだの、教官という仕事を放り出しただの、フレディにとっては造作でもない質問だった。もっとも一番許せてなかった千束以外にもたきなやフキも「質問」という形で怒りをわずかながらあらわになっていた。それでも狼狽えずに淡々と答えた。質問攻めが終わると一服がしたいが為にフレディは外へ出た。

 

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 外を出て真っ先にキューバ産ブランド、Jose L Piedraを1本取り出しては火をつけて、パイプもつけずにそのまま吸い始めた。

「フゥー・・・生き返る。この1本最高に尽きるぜ。」

フレディが1本の葉巻を吸って感動を得ていると、後ろから声がした。

「吸ってて美味しいんですか?」

突然後ろから声をかけられたのか、日頃の反射なのかフレディは思わず葉巻を落とし、Le Mat Revolverをとっさに手にかけた。フレディに声を掛けたその人物はたきなであり、フレディの横に現れた。

「私ですよ。」

「脅かすなよ・・・びっくりしちまったじゃねぇか。」

「びっくりしたのは私の方ですよ。胸ポケットに突っ込んでいいモノではないですよ。」

 たきなが指摘した胸ポケットにはLe Mat Revolverが入っており、喫茶リコリコの前で出されるのはまっぴらごめんである代物だ。フレディは思わず胸ポケットから手を離して、今度は落とした葉巻に手を伸ばした。

「で、こんなしがないヤニカスに何の用だ?」

「用も何も吸い過ぎは禁物ですよ。」

「お嬢に指図されることはない。」

「こう見えて心配してるのですよ?私も千束も。」

心配されて思わず目が点になったフレディ。「なら辞めるか?」と葉巻を見つめる始末。それを見たたきなは、

「?です。」

と、言い放つ。弄られて好かれているのに益々たきなの意図が読めないフレディであった。

 

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 フレディとたきなが店内に戻ると、子供たちが一同に休んでいた。喫茶リコリコとメニューを前に休まない手はない。そんなところだろう。フレディは再びミカが作ったエスプレッソに手を付ける。至福のひと時を味わうかのように深く座席に座る。まったりとした空間にこのひと時がたまらなかった。葉巻が無くてもやっていける、ヤニカスが性分のフレディはそう思った。

 ひと時を堪能していると千束がある提案をフレディに言う。

「ねぇねぇフレディさーん。」

「ん?どうしたんだ千束お嬢?」

「射撃の腕、鈍ってない?」

「あんなめちゃくちゃになったアレに対してか?」

「そうじゃなくて!さっきのは別だってば。フレディさんの荷物はこっちで預かっていたままだから、そのついでに聞いてみただけ。」

「にしちゃあ・・・やけに気張ってんな。」

「みんな見たかったからね。教官フレディの早撃ちガンマンとして!」

と、千束は西部劇で良く見るガンマンの仕草をした。夢見るのはいいがそんな気分でもないフレディはやれやれと首を振った。

 しばらくは近接戦闘だけで何とかしのいできたが、流石に射撃の腕は鈍っていたのはよろしくない状態ではあった。もうしばらくは千束の言う、射撃戦でも対応できるように対応しなければならない。

「わかった、射撃場へ行こう。千束お嬢は皆を連れてきてくれ。」

 

 

⇒次回【中身】

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