『悪徳教官』   作:クマぴょん

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【中身】

 

 

 都内・某所、喫茶リコリコの地下射撃場にて。

 喫茶リコリコの地下射撃場にフレディの荷物があった。どうやら行方不明時に荷物を喫茶リコリコもといミカに預けたままだった。その中身はっていうと、フレディが愛用している古臭い銃火器だった。フレディは「どうしたものか?」と呟きながら、1つ1つバラシては組み立てた。

「フレディさーん!みんなを連れて・・・うわぁ!なにこれ!」

千束が目を輝かせてとある銃に飛びついた。その銃は真鍮製で出来ており、はたから見れば黄金に輝く銃に見えただろう。

「あぁ、ヘンリー銃だ。正式名称はHenry repeating rifle。26-28グレイン黒色火薬44口径を16連発できる代物だ。分間あたり28発以上も撃てて、瞬間火力はスペンサー銃より優れているが、飛距離はない。己が趣味で持ち歩いている1つだ。撃ってみるか?」

「え!?いいの!?」

「構わんよ。ただ持ち手が長い上に扱いにくいってだけは言っておく。」

と、千束たちにヘンリー銃が渡された。給弾はどうやるのか聞いてみたところ、銃身の裏にストッパーがあり、そのストッパーを押し上げて銃口真下に作られたスペースにストッパーをスライドさせる。すると装填口が露出するのでそこから給弾するというもの。摩訶不思議な機構にモヤモヤを隠せない千束たち。ただ西部開拓時代に出てくるだろうと目を輝かせてウズウズしているのは千束だけだった。

「大柄な欧米人なら持ち手を長くするべきだが、小柄な日本人には向かない。引き金の近くに手を添えるべきだ。」

「こ、こうかな?」

 千束がヘンリー銃を構えると、銃身はやや下に下がってしまっている。フレディが再度レクチャーすると、銃身は斜めにはならず体軸に対して直角になった。的に1発撃ってみると、日本人ヘンリー銃に掛かる重い衝撃と黒色火薬独特の硝煙の臭い、煙が千束たちを襲う。思わずむせてしまう千束にヘンリー銃を取り上げるフレディ。

「なにこれぇ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・」

 千束はヘンリー銃を指差しては毛嫌いする。無理もないだろう。無煙火薬より前の時代、黒色火薬が主体の銃だ。フレディが愛用しているLe Mat Revolver(以後レ・マット・リボルバー)もスペンサー銃も黒色火薬が主体だ。

 ヘンリー銃はお役御免としてフレディが代わりに残りの15発を撃ち尽くした。千束を襲った煙や黒色火薬の臭い、ヘンリー銃にのしかかる重い衝撃ですらフレディの前では無縁だった。慣れているのもあるだろうが黒色火薬に慣れてしまうと、黒色火薬特有の煙によって肺炎や結核などの原因に繋がる。フレディの場合は機械化されている身体なので自然と慣れてしまっている状態だからでもある。

 千束がむせているうちにモモがあるライフル銃を引っ張りだした。木製と機関部は真鍮製で出来たライフル銃でどこかマスケット銃にも見える。弾は彫られており、益々フレディの嗜好がわかるような代物だ。フレディは取り出した音を聴きとり、振り返って言う。

「それはスプリングフィールドM1855ライフルの派生したフェイエットビルライフル。ライフリング機構がフェイエットビル兵器廠に送られたことから単にフェイエットビルと言われている。ライフルつってもミニエー機構を取り付けた前装式マスケット銃だ。58口径のミニエー弾を主役にした弾は500ヤード先の敵を打ち抜く。」

「500ヤードっていくつぐらいっすか?」

サクラの問いにモモが答える。

「約460mぐらいですね。」

「ふーん、でも前装式銃なら1分間に1発しか打てないっすね。」

「いや、極めれば2、3発は撃てる。」

サクラの答えに異議を唱えたフレディ。自信満々に答えるその姿は正に銃火器博士。

 フェイエットビル(Fayetteville Rifle)の外観は、ハーパーズ・フェリーマスケットライフル(Springfield US Model 1816 Musket)やスプリングフィールドM1855(Model 1855 Springfield)とほぼ一緒。剣型銃剣を備わっており、突き刺すだけの従来の銃剣とは打って変わって特別仕様となっている。最大射程距離は800ヤード(約730m)におよぶ。至高のマスケットライフル銃とも言えるべき存在だ。

 フレディが荷物の中身を見つつ言う。

「ところでスペンサー銃はどこにあるかわかるか?」

休憩を終えた千束が答える。

「ふぅ・・・え、無いの?」

「あるにはあるが、組み立て前の予備用の銃しかない。」

「あちゃ~前の作戦で落としちゃったかもね。」

「残念だ。」

と言って、予備用のスペンサー銃を組み立てた。

 世界初の軍用金属薬莢連発ライフルの名を持つスペンサー銃(Spencer repeating rifle)。20万丁以上が製造され、日本でも徳川幕府軍や会津藩(大河ドラマ『八重の桜』にも登場)、西南戦争の大日本帝国陸軍が使用されている。60口径を用いられる(標準口径は52口径)連発式ライフルで、7発の給弾を可能としている。弾倉への装填には時間がかかることがあったが、毎分21発前後の発射速度を誇る最も広く使用された連発式ライフル銃である。

 ブツブツと文句を言いながら30分かけ、隅に置かれた機械工具を使いつつ組み立てるフレディ。そのまわりで千束たちが組み立ての様子を見ていた。動作確認もひとしきり終えると次はレ・マット・リボルバーの整備に取り掛かった。

 レ・マット・リボルバーはぶどう弾リボルバーとも呼ばれた拳銃で、散弾銃のように扱うことも出来た。ただぶどう弾を使用すると銃身内部にキズがつくためあまり推奨はされない。レ・マット・リボルバーの特徴は、9発装填のシリンダーよりも大きいシリンダー。これには役目があり、中央にある銃身は拳銃としての役目を果たし、その他の薬室に付随する短銃身は散弾銃として機能する。ハンマーの先端にあるレバーを弄ると、拳銃か散弾銃か選べる。なので弾丸は2つ付随しており、一方は42口径を装填でき、一方の散弾銃は63口径・・・即ち18ゲージバックショットが装填できる。

 1つの拳銃で2つの役割が出来る、そんな拳銃だ。それを片手間で操るフレディは巧みに使い分けをしていた。近く横にある的にはバックショットで、遠い的には拳銃という具合に銃捌きが上手だ。ただ、銃捌きが良いからと言ってその銃に付随する精度は高くなかった。フレディも対応次第ではスペンサー銃も使う光景も千束たちは見れた。

 そんな光景を見た千束が、たきなに言う。

「なんか生き生きしてるね。」

「えぇ。良いモノが見れました。」

 

 

⇒次回【教練】




近代戦争は浪漫。現代における戦略的に負けても近代戦術は通用する。
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