『悪徳教官』   作:クマぴょん

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【ブリーフィング】

 

 

 DA本部の訓練所にて。

 訓練所の一角に少女たちが背の高い男に群がっていた。何より延空木事件で2人のファーストリコリスを同時に救い、1名のセカンドリコリスすらも救い出したと話題になっていた。フレディはそんなつもりはなかったが、たまたま救ったのが千束とフキのαチームだったのが運の尽きだった。

 こんなに過大評価されてウンザリするフレディにたきなによる救いの手が現れた。

「フレディさんこっちです。」

力強い手でフレディの袖を引っ張る。助かったと一安心するフレディであった。

 

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 ブリーフィングを済ませて作戦を行うつもりでいる。目当てはブルガリア人の傭兵集団とリリベルの両方を捕虜にする。フレディにとって密輸入品は稼ぎになる代物で密輸入品を転売することで軍事組織とフレディ間はWin-winの関係になる。軍事組織からは情報をくれる。それもとびっきり新鮮な情報を・・・。

 今回狙っているブルガリア人の傭兵集団が正にその情報を握っていた。その名も「ズヴェノ」。別名「鎖の輪」という国家再生を目指す超国家主義或いはコーポラティズムの過激派とも言われている軍事組織だ。1927年に産声を上げたズヴェノは士官や一兵卒など軍人から生まれた組織で、数々のクーデターで成り上がるも1949年には主導的組織として廃止になる。

 そんな組織がなぜ日本で生まれたのかは定かではないが、フレディと同じ戦術女性教官であるイーダがズヴェノに所属していた。その線を露わになったのが、先の事件『コルサコフ無差別テロ』の発端『樺太における緑ウクライナ人独立戦争』(前作『軛を解き放て』)であった。

 この独立戦争で多くの軍事組織が関わり、イーダもズヴェノの代表として出向いたのだが、フレディと出会ってからズヴェノとしてではなく、彼女自身の単独によってズヴェノを抜け出したのが原因だった。イーダとズヴェノの人間は『白色の楔』という特殊部隊として設立・台頭したのもズヴェノが日本に近づいた要因である。日本の元準内地とは言え、樺太で起きたテロ事件はアメリカ国防省によって葬られたものの、一部の軍事組織が情報を握ってしまったのだ。それが日本に蔓延る軍事組織やテロ組織の理由の一つとなっている。

 フレディは先鋒を千束とたきなに置き、次鋒をフキ、サクラ率いるαチームで構成された。フレディはホログラムでブリーフィングを始める。

「今回の目標はズヴェノとリリベルの捕獲だ。千束お嬢たちがズヴェノのリーダーの捕獲。フキお嬢たちαチームがリリベルの捕獲。千束お嬢たちがズヴェノを無力化すればするほど、後にこっちの味方になる。リリベルは数人確保すりゃいい。逆にズヴェノまたはリリベルをある程度抑えないと死傷者が出ちまう。特にαチーム、武装は贅沢に用意しているからこれでもってリリベルを抑えて欲しい。何か質問は?」

フレディはリコリスたちに問いかける。するとフキが手を挙げた。

「はい、フキお嬢。」

「千束が担当するズヴェノのリーダー格を抑えれば大丈夫でしょうか?」

「いいや、”ラジミール”を抑えても無駄だ。」

「ラジミールって誰ですか?」

たきなの問いにフレディが答える。

「現代に蘇ったブルガリア人傭兵集団のリーダー、ラジミールっていう男がズヴェノを率いている。狡猾ではないが小物でもない、カリスマ性のある男ではあるが、独立戦争の件でカンカンに怒っている程度だ。容赦なく殺しに来るだろう。こいつらから見てみるか。」

そう言ってホログラムを変えてフレディはズヴェノとラジミールの存在を明かす。

「まずはズヴェノのアジトはまさに要塞だろう。どこから攻めてもトラップがある。侵入は己と一緒にバーから侵入した方がいい。奴らの装備は密輸入の拳銃しか持っていない。そこが弱点だろう。」

「でもさ、私たちの存在はどうやって消すの?」

千束の問いにフレディはホログラムをまたもや変えた。

「消す必要はない。ズヴェノの連中に密輸入を妨害する組織の情報を持ち掛けてにDAとの協力を促すんだ。楠木にはそう言ってある。」

「でもトラップはどうすんの?踏み抜いたら不味いでしょ?」

「そこは混合爆薬の出番だ。建物ごと振動で揺らすのさ。あとはろうそくのように要塞を火で灯すんだよ。」

「あ、危なくない?」

フレディは鼻で笑いつつ答える。彼にしてみれば単身突撃でも簡単なのだろう。

「やってみたら自然とわかるさ。次、ラジミールについて。ラジミールは人望のある人間であらゆる手段で人をかき集める。ただ武器を持たしたらあっけない。弱弱しいリーダーだが、元の素質は非常に高い。何せ傀儡組織から僅か数年で独立。巨大組織として成り立っているのは、正に奴の存在で出来てるのも過言ではない。奴の問いには無視して捕まえて連れて来い。ただし、己の名前は言うなよ。面倒になるからな。」

フレディはニヤリと笑った。不気味な笑いだが彼はやる気満々だ。まるでこの一戦に掛けているんだろう。

「次にリリベルの侵入を阻止する方だがこれには己も参加する。武装は心もとないが制圧戦なら負けてないだろう。」

フレディの参加にサクラが問い詰める。

「も、もしかして接近戦でもするんすか!?」

「んなわけないだろ。ヘンリー銃で牽制するし、口径が小さいから致命傷・・・とまではいかないだろ。相手は防弾性能のある服装で来るだろうが、スペンサー銃だと口径のデカさで逝っちまう可能性もある。さて話は戻して・・・」

フレディは次のホログラムに切り替えた。

「リリベルの数は不明。だがズヴェノがいる要塞、約25名を上回る予想は出来る。これをαチームと己で止める。当てることよりも制圧射撃で足止めをメインにしろ。制圧射撃用の武器はこっちで手配する。質問は?」

その問いに手を挙げるエリカがいた。

「あ、あの!質問です!リリベルを捕まえるにあたってどうやって捕まえるのですか?」

エリカの声が上ずる。

「まぁそう焦るな。己が急所を外して狙うつもりでいる。」

「そんなことしなくてもフキたちに任せればいいのに・・・」

千束がボソッと言う。

「そういうな。こっちは固定機関銃で足止めせにゃならんからな。フキお嬢たちに狙いを定めても『急所を外せ』という可能性が少ない。己がやる方が可能性があるだろ。」

「それはそうだけどさ・・・別にフレディさんが手を汚す必要なくない?」

「千束お嬢が言うならこの作戦は難しくなる。容赦のない攻撃に晒されるαチームにみすみす見逃せるバカじゃないぞ。さぁ出発だ。」

 フレディのやる気の満ちた声に賛同したリコリスは居なかった。何せ同じ母体組織のリリベルと対立するのは、まるでアリが象に挑むほど無理難題の実力差がある。相手は完全武装の突撃銃でこっちは精々短機関銃だ。それを真っ向から挑むことが出来るのは先の延空木事件でサーベルと接近戦闘で制圧したフレディとその傭兵集団のみだろう。

 嫌ってわけではないが任務を帯びているからにはしょうがない。これはもうひとえに彼と共にした運命なんだろう。仕方が無く今作戦に挑むリコリスたちはフレディのあとについていった。

 

 

⇒次回【制圧戦】

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