リヴェルム戦記   作:あいかや

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18x 教育は大事

 サイン王は廻神のお気に入りだ。

 基本的に温厚で慈悲深く、質素な暮らしに満足し献身的な所が好まれている。

 

 実際は内政好きなゲーマーなだけで、贅沢するぐらいなら全リソースを国力増強に注ぎ込みたいだけだ。

 温厚で慈悲深いのも自身の苦い経験から演じているだけで、本質はゲーマーにありがちな激情家で二元論者だ。

 

 そんなゲーマーだからこそ廻神とは相性がいい。

 廻神は人間が幸せでいるためには素朴な暮らしが一番だと考えている。

 奪わず、争わず、自分達の手で生み出した物で満足していれば平穏な人生を送れるのに。そう廻神は思っている。

 

 そして、こういう明示されたルールをゲーマーはすんなりと受け入れる。

 サイン王のようによく訓練されたゲーマーになるとルールを守りつつ出来ることを捜す事に楽しみを見いだすのだ。

 

 だから廻神はサイン王のことを特別視している。

 もっと頼って貰えれば喜んで力を貸すのに、と別次元から見守り続けている。

 彼からしたら力を借りたときの代償が怖いだけなのだが、廻神は遠慮していると思っている。

 

 この異例とも言える神と人との関係はこの世界では非常に目立つ。

 通常神は人を群体と認識しており特定の個人に便宜を図ることはないため、サイン王の勢力は要注意勢力として見られている。

 

 そして警戒しているのは神だけではない。

 現地の神々が注目しているのだから、その神々の信徒も同じように注目せざるを得ない。

 神々は信徒に理由を教えないため憶測と疑念ばかり育っていく。

 

 そんな訳でアマレースの合祀殿には各地から神官がやってくることになる。

 住民に祈りの場所を提供するのはもちろんだが、フェリグス国とサイン王の事を知るには丁度良い場所だからだ。

 それに面子の問題もある。他の神の礼拝所があるのに自分達のが無いなんて事態はあってはならないことだからだ。

 

 そうして暫くすると合祀殿は信徒間で起きた紛争解決や友好、協力関係を助長するための場所になった。

 

 今までは人の問題は人だけで解決していたが、そうなるとどうしても信徒数が多い三大神の意向が強く反映されてしまう。

 それをまずは信徒同士で意見を纏めてから神託により承認を得るように変えたことで、穏便に議論できるようになったのだ。

 

「エーリカさま、この前はありがとうございました」

 

 神託承認制の原因をつくったのエーリカだ。

 彼女はサイン王の側で現代的な生活をしていたため人権意識がこの世界の常識と大きく異なる。

 弱者が理不尽な目に遭っているのを見過ごせず、彼女の正義は現場に混乱と対立をもたらした。

 

「サーラちゃん、元気になってよかったね」

 

 現地神より格上の廻神より、さらに格上である誘女の寵児に正面から文句を言える者など此処にはいない。

 神を間に入れて話し合おうとしても誘女は廻神と違いこの世界にまったく興味が無く、娘の意向を優先する。

 上位存在の権能を持って愛し子の『敵』になったものを力で屈服させるのだ。

 

 そのことを聞いたサイン王はすぐさまベルナデッタを呼び出し協議した結果、今の形に落ち着いた。

 しかし神託承認制になってもエーリカの道徳観が変わるわけでは無いので問題が無くなるわけではない。

 サイン王や機川なら地元民の常識と折り合いをつけることもできるが、精神年齢が幼いエーリカは自分の正義を優先してしまうからだ。

 

「エーリカさま、本日もご機嫌うるわしゅう」

「ん」

 

 だもんでエーリカは一部の神官達から恐れられている。

 彼らの常識が彼女には通用しないため、どんな難癖をつけられるかと身構えてしまう。

 

「ベル姉!」

「どうしました?

 一緒に散歩でもしますか?」

 

 そのためベルナデッタはエーリカが周囲に馴染めるよう気をつけていた。

 偶然を装ってなるべく一緒に行動し、新たな価値観を学べるように助言をしているのだ。

 

「ミーナちゃんの赤ん坊が産まれたよ。元気な男の子だった」

「それは良かったですね。今度、一緒に見に行きましょう」

 

 ただこれはこれで新たな問題も出る。

 廻神は質素を旨とする神なので金回りのいい人間とは相性が悪い。

 神官や有力者からしたら道徳観が現代的なエーリカと慎ましい節制家のベルナデッタの二人が揃うと親より怖い存在になるのだ。

 

「そろそろ学校はできるかな?」

「まだ先ですよ。

 家も無い人もいるのですからね」

「ねねさま(サイン王のこと)は『国の礎は人、その人を育てるのを怠けてはいけない』と言ってたよ。

 だから学校を作るのは大事じゃないの?」

「そうですね。

 ですが、まずは衣服、食べ物、住居の三つを満たすことが先なのです。それらが満たされて初めて仕事に専念できるようになり学校で学ぶ余裕がでてくるのですよ」

 

ベルナデッタは手を繋いだエーリカに諭すように話しかける。

 

「人々の生活に関わることは焦ってはいけません。他人から与えられるのでは無く、自分達の力で手に入れるようにしないといけないのです」

「でも、ねねさまは『小さい頃に学んだことはその者の信念となる』と言ってたから、なるべく早く学校をつくったほうが良いと思うな」

 

 ベルナデッタは歩みを止めエーリカを見る。

 

「だって道徳観や死生観が同じ人の方がうまくやっていけるよね?

 なら立派なフェリグス国民になってもらうために小さいうちから教育しないと。そっちのほうが断然うまくいくと思うよ」

 

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