リヴェルム戦記   作:あいかや

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53x 中の人はゲーマー

 サイン王の中の人はゲーマーである。

 そのため何事も効率を重視して考える癖が付いてしまっている。

 

 それは戦闘に関しても同様だ。

 ゲーム上の戦闘では先手をとったほうが圧倒的に有利であり、初撃の結果がそのまま戦闘結果に繋がるといってよい。

 

 だからサイン王のステータスは先制攻撃と手数の多さを重視して組み立てられている。

 そして、その収集癖を満たすため、様々な状況に対応できるようにと、スキルを極限まで最適化している。

 つまり彼はゲーマーにありがちな取れるスキルは全て取り、そのスキル全てを最大レベルまで伸ばしている。

 

 これは全てが数値化されるゲームの中でだからこそできる行いであり現実世界では不可能なことだ。

 スキルの取る順番や成長させる手段を厳選し最大効率を出すための方法を知らなければ実現できないからだ。

 

 故にサイン王とその部下達は周囲の人間から奇異の目で見られている。

 古エルフと巨人との戦争でその力を思う存分見せつけ、それがまだ全力で無いことを知られて人外扱いされている。

 

 ただスペックが高いだけで何事もうまくいくかというとそうではない。

 戦争では知識と経験と人外の力で他者を圧倒しているが、政治の世界ではやり込められることも少なくない。

 

 サイン王は庶民出身のため為政者としての合理的な思考が徹底しておらず付け入る隙が多いのだ。

 持ち前のカリスマ性で国民から圧倒的な支持を得ているため国内では敵無しだが、国外ではいいように利用されることも一度や二度ではない。

 舐められたり馬鹿にされることは決して無いが、気の良い金持ちの親戚のような扱いをされることが多くなってきている。

 

 そんなサイン王の中の人は街造りや内政が主眼のゲームが大好きだ。

 生まれ育った世界と比較すると今いる世界の文明レベルが低いため、これを同水準まで高めたいと常日頃から考えている。

 そこにはゲーマーとしての育て作り上げたいという気持ちしか無く、機川やアカネのような生活環境をより良くしたいという感情は一切無い。

 

 外からは自分とその仲間が安心して暮らせる場所を作ることに力を注いでいるように見えるが、実際の所は作ることが目的となっており過程を楽しんでいるだけだ。

 結果には興味が無いため成果を誇ることも自慢することも無い。内政に注力したいから戦争を嫌っているが戦うことは嫌いなわけではないのだ。

 

 サイン王の心の内はこうなのだがソレを誰かに漏らすことは決して無いため彼の性格は周囲に誤解されたままだ。

 他の為政者からしたら『何を考えているかわからない奴』なのだが本人はゲーム感覚で文明を育てているだけなのだから分かるはずも無い。

 そこに見た目は絶世の美女なのに中身が男のせいで出てくる違和感が加わり、サイン王は真意が読めない人物として認識されている。

 

「次!」

 

 話題のサイン王が新人冒険者相手に無双している。

 実訓練場という名のただ広いだけの場所で冒険者達相手に大立ち回りをしている。

 

「本気を見せろ!

 目立てば名前を覚えてやるぞ!」

 

 サイン王は群がる冒険者を次々と跳ね飛ばし薙ぎ倒していく。

 リジョは混ざりたそうにしているが隣のモーエレンをチラリと見て我慢している。

 

 モーエレンはサイン王の所行に黙ってぶち切れている。

 公衆の面前で王を罵倒するわけにもいかず笑顔を浮かべてはいるが表情は固まっている。

 実訓練場の中にいる冒険者達は騒がしくも楽しそうにしているが、周囲で見学している者達は鬼に目を付けられないように皆が息を潜めていた。

 

「協力してこい!

 一人で私を倒せると思っているのか!」

 

 そもそも何でこんな事になったのか。

 それは他国から来た跳ねっ返りの冒険者がサイン王を馬鹿にしたからだ。

 

 その男は実力でのし上がったことを誇りにしていたため生まれの良い人間が大嫌いだった。

 だからフェリグス神国民が傾倒している王を見てあんな女が強いわけがないと言い捨てたのだ。

 

 それを聞き流せるほど神国民は大人ではない。

 男はその場で囲まれ袋だたきにされたのだが、その騒動を見た王が面白半分に『自慢の実力とやらを見てやろう』と言い出したのが良くなかった。

 それで新人冒険者達が私も見て欲しいとこぞって手を挙げて今の騒動になったのだ。

 

「リジョ、こいつらでは肩慣らしにもならん。

 こっちに来て新人共に戦い方を見せてやれ」

 

 皆の視線がリジョに集まるも、当人は隣にいるモーエレンを気にして固まっている。

 モーエレンは神国の予算編成に強い影響力を持つため彼女の機嫌をどうしても伺ってしまう。

 リジョも冒険者をしていた頃なら心赴くままに行動していたものだが今や彼女にも立場があるのだ。

 

「こんな機会は二度と無いぞ。

 それともお前は私一人が怒られればいいと思っているのか?」

 

 サイン王の言葉にリジョはどうすれば良いのか迷ってモーエレンを見るも、彼女はブチ切れながらも微笑みを浮かべ『王命よ、行きなさい』と吐き捨てる。

 それでもリジョはモーエレンの言葉の裏を探ろうとしてアワアワしていると『気が済むまで暴れたら私の元にあの子を連れてきなさい』と送り出される。

 

「早く来い!

 どうせ怒られるならしっかりと楽しんだほうが後悔も少ないぞ!」

 

 サイン王はリジョを華やかな笑顔で迎入れる。

 

「心配しなくてもモーエレンは我々を辞めさせることなどできん。

 それにだ。

 もうすぐ書類に囲まれ視察など出来なくなるほど忙しくなるのだ。最後の休暇だと思って存分に遊ぼうではないか」

 

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