リヴェルム連合王国は世界で唯一の異世界を股にかける連合王国だ。
常識も慣習も何もかもが違うもの達がすんなり一つにまとまるわけは無く問題が続出する。
そのたびに新たな法を整備して問題に一つずつ対処していくのだが人が足りず行政府はいつもてんてこ舞いだ。
どうしても政府で対応しきれないとなるとサイン王が出向いて住民達を説得することになる。
全てのリヴェルム国民はサイン王に洗脳されているため、彼がお願いすれば大抵の問題はうやむやにできるのだ。
ただ、この方法も万能では無い。
駄々をこねればサイン王に会えるなどと思われれば大変なことになるし、神格化されすぎると不敬を理由に私刑が蔓延することになる。
だから匙加減が大事なのだ。
建国の英雄のせいでほっておくと不可侵の存在として祭り上げられるため、適度に人間くさい噂話を流して親しみやすさをアピールする。
実際にサイン王本人は私生活では面倒くさがりでズボラな人間なためエピソードには事欠かないのだ。
このような活動をホルムの組織は行っている。
諜報や防諜なども行う情報機関の長を行っている。
そして彼女は神がいて魔法のある世界の住民だが機川が生み出す電子機器が大好きだ。
魔力を一切用いないで情報をやり取りできる通信機器や大量の情報を処理できる情報処理装置は今や彼女の仕事に欠かせない道具だからだ。
「邪魔するよ」
ホルムが機川が引き籠もっている部屋に訪れる。
部屋の中には用途が分からない試作品と資料が雑に積み上げられている。
「相変わらず汚い部屋だ。大事な物はちゃんと仕舞っているんだろうね?」
「何? 喧嘩しにきたの?」
「アンタのところの人間が部外者に情報を渡しているようなんでね。その話をしにきたのさ」
悪い顔をしているホルムに機川は苦々しい顔を向ける。
「誰?」
「副技師さ。挙動不審なやつがいただろう?」
思い当たりがあるのか機川は納得した顔をする。
「金? それとも女?」
「女さ。
研究者はウブな奴が多いからね」
機川は深く溜息をつく。
「本人には裏切った自覚が無いのが余計始末が悪い。このまま放っておくとズルズルと行くところまで行くよ」
「わかってるわよ。後はこっちのほうで対応しておくわ。教えてくれてありがと」
機川の言葉にホルムは皮肉げな笑みを返す。
「状況を理解しているのかい?
大事になったらファロスヒルが来ることになるんだよ?」
「わかっているわよ。私はココを蟲の寝床にするつもりはないわ」
ファロスヒルはモーエレンとサイン王の言うことしか聞かず敵に容赦が無い。
ホルムは敵でも利用価値があれば利用方法を模索するが、エルフ姉妹は裏切り者に冷徹な判断を下す。
「まず機密情報の取り扱い資格や持ち出しをキチンと制度化するんだよ。
面倒だが放っておくと、もっと面倒なことになるからね」
機川は説教しはじめたホルムを睨むが言い返しはしない。
彼女の言うことは何時でも正しいことを理解しているからだ。
「どうすればいいかはアンタの面倒を見ている秘書の一人に聞けば良い。アイツは中々に優秀な奴だからね」
「えっ?」
「やっぱり気がついていなかったようだね。
アンタといい私達の主といい自分の力に自信がありすぎて足元が見えていないようだ。敵はナイフや毒を持っているものだけという訳じゃないんだよ?」
困惑している機川をそのままにホルムは話を進めていく。
「そこでここからが相談だ。
今開発している新しい電算装置なんだけどね。試作品をもう一つ余分に作ってもらえないかい?」
機川は眉をしかめてホルムを見つめる。
「リリースまで待てないの?
完成したらいくらでも卸すわよ」
「アンタの所で育てている人工知能に似たものをアタシの所でも育てているんだよ。アレはいいものだね?」
ホルムの言葉に機川は目を見開き固まる。
なぜなら人工知能の開発はサイン王から『時代にあわん』と止められているマル秘案件なのだ。
「本職からしたらココの情報はダダ漏れなんだよ。餅は餅屋ということが分かったかい?」