クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ大統領(偽)   作:けつだけせいじん

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大統領の目覚め

 

【悲報】気付いたら、地球国家元首になっている件について。

 

 

 脳内にそんな現実逃避な文章を浮かべても現実は変わらない。

 

 ゴツゴツと骨ばった身体はしなやかな肢体へと変貌し、たいらだった大胸筋は十分な脂肪を蓄えて膨らんでいる。

 

 生物学上雄、自認上も雄である自分が絶対着用しないであろうワンピースを身にまとい、オマケに頭頂部には立派な角まで生えていらっしゃると来た。

 

 ……いや、なんでさ。

 俺普通に飯食って風呂入って寝て目覚めたら急にこうなってたんだが。

 

 そう、自分の体重で下半身が地面にめり込み、身動きが取れなくなり遠い目になる。

 

 流石にこの状況下で夢かぁ、と思う能天気さはない。

 

 間違いなく、俺はFateシリーズにおけるソシャゲコンテンツ。それに登場する人類悪。異星の神。

 

 ラスボスかと思ったのに主人公に絆されて仲間になった挙句庇って死んだチョロインこと、Uーオルガマリーになっていた。

 

 

「おねーさん、ここで何をしてんの?」

 

 

 しかもなんか凄い聞き覚えのある声がするんだが。

 

 周囲を軽く見渡して見ると、散発的に遊具が見受けられる。場所的には公園であることが分かる。

 

 更に声のした方に視線を合わせると。

 そこに居たのは衝撃的な人物だった。

 

 特徴的な太眉。

 短髪というにはやや短い坊主頭。

 赤いシャツに黄色いハーフズボン。

 

 国民的アニメの金字塔とも呼べる作品。

 その主人公にクリソツな少年が俺に声をかけて来ていた。

 

「……逆に何をしていると思う?」

 

 

 ぱちぱち、と目を瞬かせ。

 うーん、と悩みながら彼はこう返答した。

 

 

「岩盤浴」

 

「こんなめり込んで冷たそうな岩盤浴があってたまるか」

 

 

 地面の中はひんやりとして冷たい。

 そうこう突っ込んでる間にも徐々に身体は地面に沈んでいく。

 

 

「じゃあ……土葬?」

 

「バリバリに生きてるだろ。勝手に殺すな」

 

 

 ポンポンと繰り出される冗句。

 ほうほう、と頷きながら考え込む姿を見て徐々に確信を得ていく。

 

 

「中々に難問ですな」

 

 

 むしろ分かったら怖いよ。

 突然ゲームのキャラクターになって体重がt(トン)単位で重いから自重で埋もれてる、と推理出来るのはシャーロック・ホームズでもない限り不可能だろう。

 

 ホームズでさえもこんな真実、馬鹿馬鹿しくて匙を投げる案件だ。

 

 普通の少年なら、ましてや想定する限り、五歳児のこの子なら突飛な発想はしても当てられはしないだろう。

 

「ひとつ、聞きたいんだが」

 

「なに?」

 

 

 ズズ、ズズ、と。

 とうとう下顎まで沈みながらも決定的な質問を目の前の少年に問いかける。

 

 

「この町の名前は、分かるか?」

 

「それならオラにだって分かるゾ」

 

 

 紡がれる言葉。

 口から漏れる独特のイントネーション。

 

 そのどれもが自分の知識にある主人公と酷似していて。

 

 ああ、どうやら、この世界はーー

 

 

 

「カスカベ」

 

 

 

 クレヨンしんちゃんの、世界らしい。

 

 

 

 ズズズズ、と頭頂部まで地面に沈下し、姿を地上から無くしていった。

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★

 

 

 

 クレヨンしんちゃんの世界だったかぁ……。

 

 

 暫く呆けていたが、下へ下へと沈んで行く中で腕を振り回したり足をバタバタさせたりするが、強大な力で土が掻き回されるだけである。

 

 地下深くへと沈むスピードには変わりなく、むしろ暴れたせいでより一層早まったまである。

 

 なんてこった。もう助からないぞ。

 唯一の光源だった自分が通ってきた穴。もとい落ちて形作った道も俺が暴れたせいで崩壊している。

 先程話していた少年、野原しんのすけであろう子供もこうなっては手も出しようが無いだろう。

 

 地面に成人女性がめり込んで行った、と大人達に証言しても彼の奇天烈な言動に振り回されてる人達は“いつもの”だ。とおふざけ認識してマトモに取り合ってくれないに違いない。

 

 というか、もし仮に俺がそう言われたら嘘吐くならもっとマシな嘘を吐け、と返答してしまう。

 

 それほどに非現実的な状況に陥っているのだ。

 仕方ないね。

 

 不幸中の幸いと言うべきか。大統領スペックの身体は呼吸を必要としていないみたいだ。

 酸素のない状態でも適応出来るとか流石大統領の肉体である。

 

 大統領の肉体(重さ)のせいでこんな地下深くへダイブし続ける羽目にもなってるんだけどな。

 

 

 しかし、このまま行くとマントルを突き抜けて地球の核まで到達してしまうんじゃないか? 

 

 いや、何もしなければその未来へ到達してしまう事が容易に伺える。

 

 いくら大統領の肉体スペックだとはいえ、魔術的な保護機能が無ければ危ういだろう。

 何せ地球の核の温度は推定五千度とされる。

 実はこれはめちゃくちゃやばい。

 

 例を出すと太陽の表面温度と同値である。

 散々ドラゴンボール等で強敵を押し付けられた事に定評がある太陽さんだ。

 MAD動画で有名な伝説の超サイヤ人ブロリーも太陽に押し付けられて死んでいる。と言ったらその凄さが伝わるだろうか。

 

 今俺の肉体となってる大統領の能力的には恒星級のエネルギーを持っている筈だ。

 力的に言えばブロリーが惑星シャモを「デデーン」とかいう効果音と共に破壊する例の気弾と同レベルの力と考えて良いだろう。

 

 そんな惑星を軽々しく破壊可能である力を持つブロリーでさえ、太陽に押し付けられたら死んでしまうのだ。

 

 つまり太陽は無敵=太陽と同じくらいの地球の核はヤバい理論である。

 オラワクワクすっぞ(白目)

 

 ともあれ、何か方法を考えねばなるまい。

 

 という訳でここで選択肢です。

 三つの中から選んでね! 

 

 壱,サーヴァントとして存在しているなら霊体化。

 弐,原作であった通り重力を操って浮く。

 参,何も出来ない。現実は非情である。

 

 

 はい。試して見たところ。

 

 答えは参でした。

 

 

「いやだって一般人に異能の使い方なんて分からんし」

 

 

 絶望に浸りながら誰に言うまでもなく、言い訳をする。

 

 サーヴァントとして召喚されているなら出来るんじゃね、とまず最初に試みたのが霊体化である。

 

 これを行うと物理的な物は全部すり抜け可能という便利な技なのだけれど。

 別段聖杯に呼ばれて知識をインストールされた訳でもない一般大統領には無理でしたとさ。

 

 まあ近くに居たマスターらしき人物もいなかったしな。

 野原しんのすけの手に令呪らしき痣も無かったし、俺という異物は突発的に発生した存在なのだろう。

 

 

 二つ目の選択肢としては原作のFGOでもあった通り、重力を操る方法である。

 

 第二部七章のミクトランで出会った際に彼女の性能について解説されたりしたのだが、今もなお地下へ沈み続けている通り、t単位での体重がある。

 

 原作の彼女がどう対応していたのかも勿論話されていた。

 それは重力を操る事により浮遊することである。

 

 でもどうやって重力を操るんだっていうね。

 

 ふんっ、と全身に力を込めても筋肉が硬直するだけで無反応である。

 

 一般人に重力の操り方なんて分かるわけないだろ! 

 いい加減にしろ。

 

 こうしている間にも肉体の自重により更に地中深くへと進んで行く。

 

 

 試行錯誤してどうにかならないか足掻いたものの、全てダメだった。

 

 え、何。

 俺急に大統領の身体になって自重で自爆して死ぬってマジ? 

 

 ぐだぐだ時空でも有り得ないくらいの酷さだぞ。

 

 死んだ目でこの先の末路を悟る。

 仮に地球核の熱量に耐えた所で移動する方法がなければ地球の中心で留まり続ける事になる。

 

 地球には重力という中心に物を引っ張る力があるので、地面を突き抜き続けて地球の裏側へ。とはならない。

 

 つまるところ。マントルを通り抜けて、地球の核へと到達したあかつきには、ただひたすら熱で炙られ続ける虚無の人生を過ごす事になるだろう。

 

 死にたいと思っても死ねないのでそのうちカーズは考えることを辞めたENDに入りかねない。

 

 

 うワーッ! ヤダ! すっごくヤダ! 

 

 背筋がゾッとする。

 

 あんな生き方をするなら死んだ方がマシだ。

 そもそも死にたくないんだけども。

 

 再び意味が無いと思いつつも手足をバタバタして藻掻く。

 土の圧力なぞ意にも介さず自由に動かせはするが、それだけ。

 

 特になんら変化は起きない。

 

 

 すると突然足元が冷たい土からの開放感を覚える。

 

 

 ん? と疑問に思うと同時に。

 

 段々と、段々と。腰から下にある土が無くなっていく。

 いや土がない場所に落ちていく、という表現が正しいか。

 

 どこぞの空白地帯にでも当たったのかな。

 まあ、どうせちょっとした隙間くらいの空間だろう。

 

 空白区域を抜ければまた沈むだけだ。

 

 

 そう油断していたのも束の間。

 

 やがて胸元まで開放感がある事に気付き。

 

 首元まで開放感がある事に恐れ。

 

 スポンっ、と空中に身を放り出されて絶叫した。

 

 

 

「ウワァッーーーー!」

 

 

 

 見渡す限りの大森林。

 眼下には地下空間だというのに、広大な自然が広がっている。

 

 

 ホゲーーっ! 

 死ぬ、死ぬ、死ぬぅ! 

 

 

 一体、何百メートルの高さがあるんだよ。

 ビュンビュンと身体に当たる風がより一層不安を煽る。

 

 身をバタバタ捩らせて何とかしようとするも、無駄。

 

 凡人の俺が都合よく力の使い方に目覚める訳もない。

 

 

 あっあっあっヤダ死ぬ地面にもうすぐ落ち俺、死

 

 

 

 ズドォンッ! と地面に頭から突っ込む。

 

 大統領の体重が高所から解き放たれたせいで地面は陥没し、クレーターが出来た。

 

 

 俺は潰れてミンチにはならず、犬神家状態で頭だけ地面に埋まり、下半身を天に向かって突き出していた。

 

 

 ぶ、無事……なのか? 

 

 地中に上半身を埋めてる事は無事と言えるかはともかく。

 これだけの衝撃があって尚、我が肉体には痛みはなく、かすり傷一つすらない。

 

 良かった……生きてる……。

 

 ほろり、と涙を流す。

 

 これに男らしくないとか文句を言える奴は紐なしバンジーを東京スカイツリーからやってから言って欲しい。

 幾ら大統領の肉体だとはいえ、つい先刻まで普通の人間だった俺にとっては想像を絶するほどの恐怖だった。

 

 

 ……アレ? そういや地面に沈んでいかないな。

 

 

 理由は分からんがここらの地面も相当硬いようで、地下空間へ来る前と同様に地中へと沈むことはもう無くなっていた。

 

 やがて腕力で周囲の土を掻き出し、自力で脱出をする。

 

 

 酷い目にあった。

 

 

 土埃で汚れた全身を叩きながら肩を落とす。

 

 

 にしても、一体何処だろう。此処は。

 

 巨大な地下空間に生えている森林。

 その景観は人の手が入ってないせいか美しく、青々と植物が生い茂っている。

 

 暫しほぅ、と見惚れてかぶりを振る。

 

 

 見惚れるのは後だ。今は此処が何処か考えよう。

 

 

 春日部の地下空間……。

 見渡す限りの大自然……。

 

 なーんか聞き覚え、というか見覚えがあるんだよなぁ。

 

 ……でもどこで……。原作にこんな場所あったかな? 

 

 

 あ、いやそうだ。

 

 俺はこの光景を知っている。

 

 

 具体的には西暦2009年公開の『クレヨンしんちゃん オタケべ! カスカベ野生王国』で。

 

 四膳守という自然環境を守りた過ぎて全人類動物化計画を図る害悪人物の拠点。

 

 シネマの大画面で笑いながら見ていた場所そっくりだ。

 

 

 

 もしかしなくてもコレ、映画時空かよ!! 

 

 

 

 

 

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