クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ大統領(偽)   作:けつだけせいじん

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ブリブリ王よ、お前が五つの冬を経たばかりで、
二つの肉体の持つ者であるならば、まさにお前は選ばれしものである。
行け、封じられし門へ。
そして道を行くがよい。
さすれば汝黄金の都に招かれん。
その時我汝に力を与えん。
探せ、ブリブリの壺を。
そして、我と共に踊れ。
その時我汝に力を与えん。


ブリブリ王国の秘宝4

 

 

 

「ーー具体的にはどこの世界にと言ったのだ」

 

 

 思わず惚けた声を出した俺に対し、再度聞き取り易く、ゆっくりと発音するブリブリ魔人。

 

 いや、言葉は聞こえてるんだよ。

 ただその返答が予想外だっただけで。

 

 

「え、えっと……俺がこの身体になって、この世界に来る前に居た地球にだ」

「具体的に言えばどのような地球で、どのような座標なのだ?」

 

 

 なんとか捻り出した答えも、さらに鋭利な質問となって帰ってきた。

 

 どのような地球……? 

 放り出された言葉に対し、スペキャ顔になる。

 

 そう言われると、俺が元いた地球ってなんだ……? 

 

 天の川銀河太陽系第三惑星地球ってことしか知らないんだけど。

 しかもこのクレヨンしんちゃんの世界も同位置にあるからそれだけでは分かるはずも無い……。

 

 どう説明すれば良いんだ? 

 流石に日本で住んでいた住所位は言えるが、世界の住所なんて知らないぞ。

 

 必死に知恵を絞り、一つ案が浮かんだので言ってみる事にした。

 

 

「……俺の記憶を参照して、元いた世界に戻せ、という願いは可能か?」

「む……。やってみよう」

 

 

 とりあえずそういう事になった。

 

 此方に向かって手を翳し、摩訶不思議な力で俺の記憶を読み取っているらしく、ふむ。と頷き一言。

 

 

「無理だな。その願いは私の力を超えている」

 

 

 心做しかショボン、と眉毛が垂れて申し訳無さそうな雰囲気を醸し出すブリブリ魔人。

 

 

「なんでも、願いを叶えてくれるんじゃなかったのか」

「そう言われると弱いが……ここはお前が元いた世界からすれば下位の空想世界となる。流石に上位次元の存在をどうこうする術は持ち合わせていない」

 

 

 淡々と語るブリブリ魔人。

 その顔は折角呼び出して貰えたというのに、願いを叶えられない状況の為か心無しか歪んでいるように見えた。

 

 

「そうか。ムリか」

 

 

 ドスンと腰を降ろして項垂れる。

 分かってはいた。分かっては、いたんだ。

 

 こういう可能性があるって事は。

 でも、希望をチラつかされただけに、受けた絶望は大きい。

 

 そんな俺に対し、続けざまにブリブリ魔人は語りかける。

 

 

「だがお前は本当に元の世界に戻りたいのか?」

「……どういう事だ?」

「元の世界に戻りたい、というのは家族や友人を惜しんでのものではないだろう。お前が本当に欲しいのは環境の方ではないか」

 

 

 俺の記憶を読んだからか、ブリブリ魔人は俺の心の奥底まで理解しているらしい。

 確かに、元の世界の未練は創作物による所が大きい。

 元より俺は孤児で天涯孤独の身。友人付き合いは浅く、狭く。恋人もおらず独身貴族。

 

 家族も友人も恋人も普通の人にとって心の拠り所にするものが存在しえない。

 だからこそ俺はオタクコンテンツにのめり込んでいた。

 

 俺が元の世界に戻りたいのは、俺が愛したゲームや漫画、小説、アニメ等のコンテンツがあるから。

 最悪この世界で骨を埋める覚悟もしていたが、やはり帰れるものなら帰りたかった。

 

 

「ならば今のお前に必要な知恵を授けてやろう。その分、それを願いとするが。返答はいかに?」

「随分とサービスがいいな」

「願いが叶えられないと言った詫びだ」

 

 

 なんでも願いを叶えると豪語する魔人がホンの少しアドバイスを行うだけ。なんともスケールが小さい願いがあったものだ。

 

 けれども。

 

 

「それで、良い」

 

 

 今の俺は大統領の肉体を持つ。

 ありとあらゆる事は凡そ実現出来るスペックを持つが故に、知恵を授けるという曖昧な願いにも頷けた。

 

 それに、ブリブリ王国の秘宝はまだもう一つあるからな。

 

 眼前にいる魔人が「白」のブリブリ魔人だとしたら、もう片方の魔人は「黒」のブリブリ魔人。

 

 違いは色だけで魔人としての能力に遜色はない。

 

 いざとなればもう一つ願いを叶える手段がある。

 それが俺の背を後押しした。

 

 

「その肉体、U-オルガマリーの宝具【すでに過ぎし人理の終(プラネット・オルガマリー)】は使えない、という認識であっているな?」

「……ああ、使えないが。それがどうした」

 

 

 話題が唐突過ぎるな。

 意図が読めない。

 

 確かに今の肉体はU-オルガマリーそのものだが、上手く使いこなせていないため、FGOで見せられた権能の数々は封印されたままだ。

 

 だが、それが一体どうしたと言うんだ。

 

 

「ならば、使えるようにしろ。では次にーー」

「待て待て待て、詳しく説明してくれ」

 

 

 分かって当然、という顔で話を進めようとしたのでストップをかける。

 

 お前は分かってるかもしれないが、コッチは凡才なもんで一を聞いて百を知る事なんて出来ないんだよ。

 一から十まできっちり解説しろ! 

 

 マジかこいつ、みたいな目で見られながらも、ゴホンと咳ばらいを行い話を戻してくれた。

 

 

「お前はこの宝具をどう認識している?」

「どうって……異聞帯の厄災・災害を再現する宝具だと思っていたけど」

 

 

 確かゲームの宝具演出では七つの異聞帯の滅亡シーン抜粋みたいなシーンが連続して描かれており、全体攻撃を与えるバスター宝具だった。

 テキストも一応確認したが……小難しい事が書かれていてサッパリ理解してないんだよな。

 

 俺は雰囲気でFGOをやっていた。

 特に理解してなくても周回が出来ればそれで良かったし。

 

 

「そうだ。お前が言った通り、【災害の再現】と【文明の認可】が主目的の宝具だ」

「うん、それで? それが俺の願いとなんで関係するんだ?」

「……【文明の認可】と聞いて、思い当たることはないか」

 

 文明の認可……? 

 そう言われてもな。

 大雑把過ぎてどう捉えれば良いのか分からん。

 

 キョトン、と小首を傾げてみれば。

 やれやれと言わんばかりに目を伏せるブリブリ魔人。

 

 仕方ないだろ。

 そんなこと急に言われても思いつかないって。

 

 

「空想樹、と言えば分かるか」

「え、あっそういう!? いや空想樹はヤバいでしょ!」

 

 

 遅まきながら、言われて気付いた。

 確かに空想樹は文明の認可だ。

 

 かつて人理に存在する価値無しと断定された行き詰まり。もしものIF。

 ゲームではそれを空想樹という要を元に、異聞帯の世界を広げていた。

 それだけを聞けば、なんて面白い樹木なんだと思うかもしれないが。

 

 一つ問題がある。

 空想樹が生まれた世界と元の世界は共存し得ない、という事だ。

 

 ブリブリ魔人は宝具を使えるようにしろ、と言った。

 つまり空想樹を植えて、新たなる異聞帯を造れと言ったも同然。

 そうすれば一体何が起こるか。

 世界同士の命運を賭けた殺し合いだ。

 

 

「無理。あんなキツそうな重荷背負いたくない」

「話は最後まで聞け」

 

 

 はい。

 居住まいを正し、正座して話を聞くモードに入る。

 

 

「普通に運用すればお前の懸念通り、血で血を洗う世界戦争になるだろう。だが、“普通に運用すれば”の話だ」

 

 

 ふむ……? 

 普通に運用もクソも無くないか? 

 

 異聞帯を作る以上、どうしたって新しい人類は産まれてしまう。

 行き詰まりと言えども、それは生きている。

 

 生きている以上、争わねばならない。

 そりゃ俺がどっちかに肩入れすれば、英霊システムなんて無さそうなこの世界だ。

 大した犠牲も出さずに勝利出来るだろう。

 

 でもそんな事絶対に嫌なんだが。

 

 

「まず、1km空けた土地を確保。その後元いた世界のコンテンツを楽しむ為に、それに近しい世界の文明を認可する」

「うん」

「次にお前自身が単独顕現を用いて過去に飛ぶ」

「うん!?」

「そうすれば空想樹は単なるシミュレーターに過ぎない。遊び終われば空想樹を伐採すれば終わりだ」

「いや……それアリなのか?」

「アリだから言っている」

 

 

 淡々と事実を語るようにとんでもないことを羅列していくブリブリ魔人。

 だが、言われて見れば問題ないように聞こえる。

 

 空想樹は確か太さが数百メートルだった筈。

 高さは気にせず横幅的に1kmあれば場所はOK。

 田舎の山でもあれば、元から人も居ないだろうしそこに樹立させるとして。

 

 空想樹を作るとテクスチャが広がり、空想樹を中心とした領域に全てを断絶する嵐の壁が産まれる。

 故に、人を巻き込まないように田舎に空想樹を創造すると、嵐の壁に阻まれ今度はショッピングすら出来なくなる。

 

 だがそこで活躍するのが獣特有スキル“単独顕現”だ。

 

 単独顕現は一言で言えばタイムトラベル自由な証みたいなもの。

 厳密に言うとかなり違うが、これで過去に飛ぶと、空想樹が確定する前なので嵐の壁が無い状態になり、外に出てショッピングを行うのも自由になる訳だ。

 

 そうすれば俺はあらゆるコンテンツを遊び放題、と。

 

 ……真面目に悪くないな。

 元の世界に戻れないのは惜しいが、代用となるものがあるとすれば全然悪くないぞ。

 

 異聞帯だって、最初からシミュレーション上のみに現れるNPCと考えれば、そんなに罪悪感も湧かないだろうし。

 

 過去に戻ったとて、今の時間帯に追いつけば、強制的に範囲外の人間は無かったことにされる。

 一時期的に嵐の壁内の環境がちょろっと露出するだろうが、田舎で空想樹を立てる以上、残る人類が田舎の山ん中に偶然居合わせることもなく。

 最後に伐採する時の罪悪感もない。

 

 うむ。完璧では? 

 

 

「では、次に宝具を使用する方法についてだが」

 

 

 ここまで来ると、ブリブリ魔人の言葉を全面的に信用していた。

 

 流石はブリブリ魔人。俺の記憶を漁っただけでここまで面白そうな組み合わせが出来るとは、と。

 そんな具合にキラキラと目を輝かせ、肝心要の宝具の使い方を教授してくれるのを今か今かと心待ちにしていた。

 

 次の驚くべき発言が来るまでは。

 

 

「地球国家元首U-オルガマリーのロールプレイをしろ」

「なんて??」

 

 

 俺の耳が遠くなったのかな。

 とんでもない戯言が音声として聞こえて来たんだけど。

 

 

「地球国家元首にて人類の友。U-オルガマリーのロールプレイをしろ」

 

 

 一言一句、はっきりと。聞き取りやすく発音された声は嫌でも認識され。

 

 その内容を咀嚼することおよそ三十秒。

 

 当然抗議した。

 

 何言ってんだこの豚野郎。

 

 

「お前がその肉体を上手く使いこなせないのは、精神と肉体の結び着きが甘いからだ。それは自覚しているだろう」

「いや、まあ、はい」

 

 

 地下世界に落ちた時、渾身の駄々こねで大統領の力を引き出した時のことを思い出す。

 あの幼児退行とも言える行動がなければ今でも大統領の力を引き出せていなかっただろう。

 

 だから、その精神を肉体に近付ける為にもっと形から入れ、と。

 言わんとする事は理解出来るんだけど、公開羞恥プレイなのはどうにかなりませんかね? 

 

 

「ならない」

 

 

 そっかぁ。

 

 

「同調し、同化し、同意するのだ。その器に。さすれば道は開かれるだろう」

 

 

 では、願いは叶えた。さらばだと言い壺の中にシュポッと戻って行くブリブリ魔人。

 壺は役目を終えたと言わんばかりに、トプンと黄金で出来た平面に沈んでいく。

 

 ……確かに、役に立つアドバイスではあった。

 

 でも、リアル大統領ロールプレイはちょっと……。

 

 恥を取るか、実を取るか。

 厄介な案件だ。

 

 収穫はあった。

 ひとまずはこれでヨシとしよう。

 

 

 ……さて。とりあえず、ミスターハブが丁度持ってきた二つ目の壺、奪うか。

 

 再びアナコンダ伯爵と同様にガンドを打ち込み気絶させ、所持していた壺を抱き寄せる。

 

 そして有無を言わせず、驚いた表情を見せるオカマ二人とスンノケシ王子一人をブリブリ王国の首都内にほっぽり出す。

 

 ミスターハブとアナコンダ伯爵? 

 放置でいいでしょ。面倒くさい。

 

 

 

 

 

 地下拠点に戻り、小脇に抱えていた壺をテーブルの上に起き、ふぅ、と溜息を吐く。

 

 大統領ロールプレイ、かあ。

 ほんとにやらなきゃダメかなぁ。

 

 そうしないと宝具が解放されないっぽいのは分かるけど、素面で大統領のロールプレイをノリノリでやれる訳ないし……。

 

 

 そう物思いにふけっていると。

 

 

 持ち帰った壺がガタガタと揺れ、ボワンと煙と共に黒いブリブリ魔人が唐突に現れた。

 

 えっなんだ? 

 まだ壺からブリブリ魔人を出すための解放ダンスは踊って居ないはずだけど。

 

 しかし、改めて見ると本当にデカイな。

 

 周囲にある木々が雑草レベルのスケールじゃんね。

 その巨体をぼんやり眺めていると。

 

 

 黒色のブリブリ魔人は口を開く。

 

 

「盗掘者には死を」

 

 

 は、と口から空気が盛れる。

 

 有無を言わさず、大きく振りかぶられた右腕。

 それはグォンと大気を震わせ、規格外の速さで振り抜かれた後。俺は宙を舞った。

 

 





ブリブリ王よ、もしお前が宝を望まぬのなら、それも良かろう。
その時は結びの鍵を使い全ての扉を閉じるがよい。

その宮殿へは決して足を踏み入れてはならない。
そこには、一千頭の象を使っても運び出せないほどの宝が眠っている。
しかし、その宝を持ち帰ろうとした者は魂までも呪われ、永遠に地中の闇に閉じ込められるであろう。
その宮殿に決して足を踏み入れてはならない。

この話は結構独自解釈あります。

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