クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ大統領(偽)   作:けつだけせいじん

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アクション仮面VSハイグレ魔王 2

 

 

 大人になってふと暇な時。

 

 昔見た映画が恋しくなり、再度探し求める、といった事は誰しもがあるのでは無いだろうか。

 

 少年の頃の思い出。

 

 それは輝かしくも鮮烈な光を放っており、色褪せることは無い。

 俺にとって“クレヨンしんちゃん”はそんな少年の頃の思い出の一つである。

 

 例えば映画アクション仮面VSハイグレ魔王もゲラゲラと腹を抱えて見ていた記憶がある。

 

 今ではPTAだのなんだのと厳しくなって規制された表現のオンパレード。

 

 作中におけるコミカルな戦闘シーン。

 

 おバカなしんのすけが期待通りにやらかして、良くも悪くも戦況を引っ掻き回して最後にはハッピーエンド。

 

 

 王道を行く王道。

 事件に巻き込まれ、ピンチになり、しかし主人公の行動のおかげで世界が救われる。

 クレヨンしんちゃん映画第一作目という看板を背負うに相応しい作品だった。

 

 

 そんな懐かしい記憶を掘り起こしてしまったので、サブスクで映画を見直してみた。

 

 

 やはり何度見直しても面白い作品は面白いもので、子供の頃みたいに大声で、とは言わずともニヤリ、としてしまうシーンはあった。

 

 幼少期に見た事もあり忘れているシーンも多く、こんな設定だったっけ。と思うこともある。

 

 しかしなんと言っても面白い。

 その評価だけは覆らない。

 

 最後まで嵐を呼ぶ五歳児の物語を見届けて一息ついた後。SNSを開き一言俺はこう呟いた。

 

 

『久々にアクション仮面VSハイグレ魔王見たけど整合性取れて無さすぎワロタ』

 

 と。

 

 ちゃうねん。

 本当に面白いのは面白いんだ。

 

 だが大人になり、世間の荒波に揉まれまくり、SNSという現代の粗探し叩きツールに染まってしまった悲しきオタクのサガと言うべきか。

 

 どうしても出る矛盾を高らかに叫んでしまう習性を得てしまった。

 

 こんな大人になりたくなかったが、なってしまったのは仕方がないんだ。

 

 悲しいねバナージ。

 

 

 ちなみに何処の整合性が取れてないかと言うと。

 まあ大体全部だ。

 

 全部酷いくらいに整合性が取れてない。

 

 

 おいちょっと待てよ。

 そんな訳ねえだろ、と思うファンの方々もいるかもしれない。

 

 でもハッキリ言う。

 

 全部酷い。

 

 昔の映画にしてももうちょいマシな辻褄合わせか説明シーン追加しとけ、と思うくらい酷い。

 

 

 

 具体的に解説しよう。

 

 まず、大前提の話だがクレヨンしんちゃんの世界には異世界がある。

 

 金矛の勇者に出てきた魔界っぽい所とかじゃなく、ユメミーワールドに出てきた夢の世界でも無い。

 

 第二の地球とも呼ぶべき場所。

 平行世界みたいなもの、と考えたら分かりやすいだろう。

 

 ほぼ同一の地球が隣接するように異空間に隔たっており、その差異はほぼ無い。

 本作野原しんのすけが主人公とする地球を第一地球と仮定するなら、アクション仮面は第二地球の出身というくらいだろうか。

 

 

 それでアクション仮面はテレビ出演の為第一地球へ出張し、作中劇となる“アクション仮面”を撮影するのだが。

 

 何故かハイグレ魔王が第一地球へと出向き、アクション仮面を強襲。

 

 隠していたはずのアクションストーンを奪い去ってしまう。

 

 

 ちなみにこの隠していた筈のアクションストーン。

 これには重大な機能があり、第一地球と第二地球を行き来する為のカギとなっている。

 

 無くしたら元の世界に帰れない。

 そんな重要な物品。

 

 あろう事か千円ちょっとの市販されているアクション仮面ひみつ大百科本にデカデカと機密情報が記載されている。

 

 しかもご丁寧にバックル(ベルトのようなもの)に収納されている。とまで書かれている。

 

 

 あんたバカァ? 

 と何処ぞの女子大尉パイロットが言いそうなセキュリティーガバガバっぷり。防犯意識無さ過ぎだろ。

 

 まあここまでは子供向け作品が故、分かりやすく伏線を張る為なのは理解出来る。

 

 多分その市販本からハイグレ魔王が情報収集したであろう事はさておき。

 

 ここまではただの前座。

 問題は次だ。

 

 

 チョコビという、野原しんのすけが好物のお菓子がある。

 

 この映画時空だとチョコビのオマケにカードが付随しているのだけれども。

 

 アクション戦士をチョコビから出てきたナンバー99の超激レアカードを引き当てた持ち主に任せる(!?)という謎人選をしてしまう。

 

 その超激レアカードが第一地球と第二地球を行き来する時空間移動マシーンを起動する為のキーとなっており。

 見事ナンバー99のカードを当てた野原一家はアクション戦士として第二地球へと向かう事になるのだが。

 

 

 冷静に考えると、いやそんな機械があるならアクション仮面が行って帰って来いよ。となる。

 

 

 アクションストーンが盗まれた。

 元の世界へ帰れない。

 

 ここまではいい。

 

 

 なら運否天賦に身を任せてカードを引いた一般人に戦わせようぜ! 

 

 あ、俺はアクションストーンじゃないと移動したくないんでパスします。

 

 

 頭湧いてんのかお前。

 仮にも正義の味方ならとっとこ野原一家からカードを徴収して時空間移動マシーンに乗り込めよ。

 

 普通に戻れる手段あるじゃん、と言いたい。

 

 

 更に次の話だ。

 

 野原一家は第二地球へと向かったが、周囲に変化は無いので何も気付かず帰宅した。

 

 次の日、世界征服を目論むハイグレ魔王の配下により、ハイグレ光線を浴びた人達が町中を闊歩しているのを発見して異変を察知する。

 

 その後なんやかんやあってアクション仮面を呼び出すことに成功し。

 ハイグレ魔王と戦う事になるんだけども。

 

 最終決戦の時。

 アクションビームを放つにはアクションストーンが必要なはずなのに、どう考えても石を無所持のアクション仮面がアクションビームを放つのだ。

 

 いや待てよと。

 

 アクション仮面が最初に持っていたアクションストーンは盗まれた後、取り返したが野原しんのすけに持たせた物で一個。

 

 第二地球に予備として置いていた物で計二個。

 

 そのうち一つはハイグレ魔王に破壊されているので、本来アクションビームを放てるのは石を所持している野原しんのすけしかいない。

 

 

 だが何故かアクション仮面は普通にアクションビームを放つのだ。

 

 いやお前アクションストーン持っとるやないかい。

 

 なのに何故帰れないとかほざいた……? 

 

 

 第一地球の方でアクションストーンを新しく作ったという訳でもなし。説明されぬままアクション仮面と野原しんのすけによるダブルアクションビームでハイグレ魔王を倒し、話は終わる。

 

 

 

「いやあ、今思い返してもなんでアクションビーム出来たんだろう」

 

 

 過去見た記憶を思い返し、当時の心境を口にする。

 

 第三個目のアクションストーンを持っていたとしても、それはそれで野原一家を第二地球へと出向させるのはおかしいし。

 

 うーん、まあ。

 所詮子供向け映画だ。

 

 そこまで深く考えていなかったのだろう。

 

 

 だがーー。

 

 

 はた、と気付く。

 

 

 この世界は現実となっている。

 

 そして、その現実となった世界で。

 アクションストーンを持つものだけがアクションビームを放つ事が可能、という設定が反映されたらどうなるか。

 

 

 考えてみる。

 

 最終決戦の時。

 アクション仮面は最初からアクションストーンを野原しんのすけから受け取るだろう。

 

 何せ本来なら残っているアクションストーンは正真正銘たった一つだけ。

 

 万が一の時の為にも受け取らざるを得ない。

 

 そして決着が付かず、ハイグレ魔王が形態変化まで使ったなりふり構わない攻撃の際、アクション仮面はアクションビームを放つしかない状況に追い込まれる。

 

 しかし、一人分の火力だけでは足りずに敗北してしまう事が容易に推測出来てしまう。

 

 勿論野原しんのすけもやられてしまい、ハイグレ魔王が世界征服へと乗り出す踏み台になる事間違いなし。

 

 

 ひょっとすると、かなり不味いのでは……? 

 

 

 いやいやいや。そんなまさか。

 

 

 それにこの世界線が映画時空とは限らない。

 漫画版時空の可能性もある。

 

 

 実はアクションVSハイグレ魔王は二通りあり。

 

 映画と漫画版ではストーリーが全然異なっているのだ。

 

 実際に目を通してないから詳しくは無いが、漫画版はアクション仮面は最初から第一地球に出向かず、ハイグレ魔王と一度戦っている。

 

 話の都合上、負けてしまうのだが。

 

 なんやかんやあってこの世界線でも野原一家は第二地球へと迷い込む。

 

 序でにアクション仮面のビームを強化出来る薬も開発されており、最終決戦ではアクショングレートビームでハイグレ魔王を倒す事が出来たらしい。

 

 この世界が漫画版だという可能性は捨てきれない。

 

 

「……一応、確認だけはしとくか」

 

 

 再び地上に出していた使い魔との視界リンクを開始し、野原しんのすけの様子を探る。

 

 すると野原一家は海へと向かって車を進めており、急に脇道に逸れたかと思うと、アクション仮面ランドなる明らかに違法建築されたものらしき場所へと進んで行った。

 

 

 ナンバー99のカードは昨日引き当ててるのは確認済み。

 

 今のところ、映画で放映されていた通りのまま。

 漫画版らしき要素は欠片もない。

 

 念の為、保険はかけてあるから大丈夫だと思うが……。

 

 

 

 追加で放っていた二羽目の使い魔に視点を切り替える。

 

 

 そこにいるのはアクション仮面こと郷 剛太郎。

 相棒の桜ミミ子の二人。

 

 

 会話をしているようなので耳を傾けて盗聴に集中する。

 

 

「怪我はもう大丈夫?」

「この通り、平気さ」

「あの子達に呼ばれたら行くの?」

「もちろんだとも。何を今更」

 

 

 何処ぞのカフェテラスで堂々と会話をする二人。

 人気番組の登場人物だのに、人が声掛けしないのはこの世界特有の人の良さだろう。

 

 

「心配なのよ。今のアクション仮面はアクションストーンを失っているから」

 

 

 憂いを込めた瞳で、喉から絞り出すように声を出している桜ミミ子。

 一度不意をつかれたとはいえ敗北しているからだろう。

 

 アクション仮面の身を案じるように語りかけている。

 

 

「なあに、向こうには予備のアクションストーンがある。呼ばれた後に受け取れば良いじゃないか」

「召喚された時に真っ先に狙われたら?」

「避けれないと思うか?」

 

 

 ニヤリ、と不敵に笑うアクション仮面。

 怯えや恐怖といった負の感情はなく、その表情は自信に満ちている。

 

 

「でも……」

「何がそんなに心配なんだ」

 

 

 もじもじ、と手を組み、言葉に詰まっている様子。

 一度不意をつかれた以上。同じ事が二回もあってしまうのでは、と懸念しているみたいだ。

 

 それを彼は見抜き、ポン、と安心させるよう肩に手を置く。

 

 

「正義は負けない。アクションビームが使えずとも。私は勝つさ」

「そうね。そうよね。その通りだわ!」

 

 

 その励ましにより元気を取り戻したようで。

 勇ましく吠えたて叫ぶ彼女。

 

 

「「ワーハッハッハ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 うんうん、なるほどねぇ。

 

 

 アクションビーム使えないってマジ? 

 

 

 大統領、動きます(ヤケクソ)

 

 

 

 

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