クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ大統領(偽)   作:けつだけせいじん

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アクション仮面VSハイグレ魔王 6

 

 

 

「アクション仮面が二人……!?」

 

 

 驚きのあまり、はわわと両手を口に当ててリアクションを取る二人。

 そして俺を二度見して狼狽するアクション仮面。

 

 

 うん、見事なまでのカオスっぷりだ。

 

 

 

「その……お前は一体何者なんだ……?」

 

 

 

 恐る恐るこちらの様子を伺う彼。

 

 自分のコスプレ、というよりも瓜二つの存在。

 鏡写しのようにアクション仮面そのものと言える容姿。

 

 故郷へと遣わした子供を救助しに来たと思ったら、自分のそっくりさんが何故かいるのだ。

 

 そりゃそう尋ねるのは当然だろう。

 

 俺が何者かって? 

 

 

 

『…………フッ』

 

 

 

 ーーそんなの俺自身が一番聞きてえよ。

 

 

 遠い目で明後日の方向を見やる。

 

 

 気付いたらソシャゲのキャラクターになっていて、二次元の世界に入り込んでいる元人間。

 

 簡潔に言えばそうなるのだが、アクション仮面に擬態していた事は言い逃れ出来ない失態だ。

 いつの間にか有線式イヤホンみたいにぐちゃぐちゃに絡まっている現状をどう説明しろと言うのか。

 

 

「まさか……いや……」

 

 

 

 少し考えて、気付く。

 

 もうこれ俺要らないのでは? 

 

 

 散々好き勝手して迷惑をかけた身で何だが、ハイグレ魔王討伐の条件は整っている。

 

 本来だと破壊されていたしんのすけの体内にあるアクションストーンは健在。

 さらにハイグレ魔王から奪い返したアクションストーンで合計二つ。

 

 原作通りなら、二人ともアクションビームを使う下地は整っている。

 

 少々気になる点といえば体内にアクションストーンがあるという事だが、多分大丈夫だろう。

 アクション仮面もバックルにアクションストーンを収納してた事から、ビームを放出する条件はかなり緩い事が推測出来る。

 

 だとしたら、俺という存在は邪魔にしかならない。

 

 

 良し。じゃあもう帰るか。

 

 

 義理は果たした。

 桜リリ子には悪いことをしたが、しんのすけをハイグレ魔王の元へと無事運んで来たからチャラって事で許してくれるだろう。

 

 どうせならダブルアクション仮面でハイグレ魔王を倒せば良いじゃん、と無関係の人達なら言うかもしれないが。どうやっても言い訳が思い付かない以上、不審者と共闘なんぞ出来る訳ないのだ。

 

 こうして心の中の天秤が傾き、大統領の詩を発動させようとした時。

 

 

 

「お前は、未来の私だな」

 

 

 

 ーーイカれた発言が耳に飛び込んで来た。

 

 

 何言ってんだこの仮面ヒーロー様は?? 

 

 

 思わず転移を中止してしまい、マジマジとアクションを凝視する。

 

 すると彼は俺の反応に対して口を開く。

 

 

「私にはミミ子君達のように双子の兄弟はいない。そして探してみたが、第一地球にも同一人物は見受けられなかった」

 

 

 先程の動揺が嘘だったかのように鎮まり、つらつらとアクション仮面は身の上を語り始める。

 

 野原一家がどちらの世界にもいた事からも、第一地球、第二地球共に、基本的な部分は全て同じ地球である。

 

 だが、例外も存在する。

 それがアクション仮面だ。

 

 彼の存在は唯一無二であり、代替なぞいない。

 

 

「だとすれば、偶然この場にて、私にソックリな人間がハイグレ魔王と対峙している事は尋常ならざる出来事となる」

「そうか……通りで……!」

 

 

 ハイグレ魔王もアクション仮面の言いたい事を察し、疑問が腑に落ちたような表情をする。

 

 いや、肝心の俺が何言ってるか全然理解出来てないんですけど。

 

 何が“そうか……通りで……! ”なんだよ。

 

 

「この時間軸に同一人物はいない。それは確かなのだろう。だが、現にお前はこうしてこの場にいる」

 

 

 さながら推理小説の犯人を追い詰めるかのように、俺を指差す。

 

 

「ああ、認めよう。認めざるを得ない。悔しいが、お前の手助けが必要らしい」

 

 

 ヒーローとして明朗快活な彼には珍しく、苦虫を噛み潰したような顔を見せて、ギュッと拳を握りしめる。

 

 一体全体どうなってんだよ。

 

 頼むから最後までお前の思考を開示してくれ。

 

 

「えっと、つまり……どういうこと?」

 

 

 話の流れについていけなかったのか、説明してくれと暗にいう五歳児。

 

 よく言ってくれたしんのすけ。

 俺も何を言われているかさっぱり分かんないぞ。

 

 

「ああ、しんのすけ君。つまり彼は」

 

 

 ぐっ、と言葉に詰まった風に止める。

 

 しかし、一呼吸置いて力強い声でこう言い切った。

 

 

 

「ハイグレ魔王に敗北した世界線。その未来から来た私だ」

 

 

 

 ーーいや違いますけど。

 

 

「そういや、オラ……研究所でアクション仮面にお助けして貰わなきゃ今頃やられてた」

 

 

 アクション仮面は鷹揚に頷いた。

 

 

「おそらく、そこが分岐点となったんだろう。私は第二地球へと帰還出来ずに、戦わずして敗れてしまった」

 

 

 いやそれ俺の単純なミスですけど。

 本来なら全然余裕でしんのすけはハイグレ魔王の元へと辿り着いてました。

 

 

「第一地球には私の生みの親である郷博士がいた。彼ならばタイムマシンを発明してもおかしくはない」

「おお、そういえばあのアクション仮面が秘密兵器だって、変なツノ付けてた!」

「秘密兵器……なるほどな。言い得て妙だ。それが過去へ戻る為の機械だったんだろう」

 

 

 いやそれただの嘘ですけど。

 本当は身体的特徴な角なんです。

 

 

 おかしいな。

 一から十まで全て間違っていると言うのに、こうも理路整然とした説明を受けていると、言い返せない状況になっている。

 

 

 なんでこうも一本筋が通った解説になっていくんだ? 

 弁明しようにも、弁明したら釈明のしようがない不審者になるのバグってんだろ。

 

 

 どうだ。合っているだろう。と言わんばかりの視線を受けて。堪えきれなかった俺は。

 

 

 

『ああ、そうさ。私は絶望の未来を変えるために“北春日部八号”を使って過去へと戻ってきたのだ』

 

 

 

 全力でその勘違いに乗ることにした。

 

 

 

「何よそれ……反則じゃないのよ」

 

 

 愕然とした表情で肩を落とすハイグレ魔王。

 まあ、完封したと思った相手が勝負盤ごとひっくり返してきたらそうなるよな。

 

 俺は別人だけども。

 

 

『いけるか? 私よ。あいつは手強いぞ』

「ああ、もちろんだとも。私よ。負ける気は毛頭ないさ」

 

 

 そうしてトントン拍子に誤魔化す間でもなく、共闘する流れとなり、二人してハイグレ魔王と対峙することになってしまった。

 

 

「ちょちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 

 これに対して困ったのはハイグレ魔王である。

 二人ものアクション仮面なぞ相手に出来るか、と大慌てで静止をかける。

 

 

 

「ひ、卑怯だと思わないの。二人がかりで戦うなんて」

『それを言うなら、お前は四人がかりで私を倒そうとしていたが?』

 

 

 うぐっ、と押し黙るハイグレ魔王。

 先程やろうとしていた事がブーメランとなり、自分に返ってきたのだ。

 

 言い返せないのも無理は無い。

 

 

「これも平和の為だ。私よ、全力でいくぞ!」

『もちろんだとも、私よ!』

 

 

 そうして飛び出そうとした時。

 

 

「は、ハイグレ化! 私を倒してもハイグレ化は解けないわよ!」

 

 

 ピタリ、と動きを止める。

 二人して顔を見合わせ、話の続きを促す。

 

 

「私が負けを認めない限り、ハイグレ化の催眠は永遠に解けない」

『だからお前の土俵で勝負をしろ、と』

 

 

 そういう事、とうっそりと笑うハイグレ魔王。

 ただ、心做しか冷や汗をかいている事から、焦っていたのは確かなのだろう。

 

 

「そうねえ、のぼりっこで勝負しない? 負けたら大人しく地球から去るわ」

 

 

 下手に戦闘関係の選択肢を挙げれば、叩き潰されるのは自分だと理解しているらしく。

 

 提示された勝負方法は原作通りだった。

 

 

『どうする?』

「……人質を取られたのなら受けるしか無いな。良いだろう。のぼりっことやらで、決着を付けるとしよう」

 

 

 

 こうして。

 過程は色々崩壊したが、俺という異物も添えて。

 のぼりっこの勝負試合を始めることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いこと。この塔の頂上に辿り着いて、中心にあるスイッチを先に押した方が勝ちよ」

 

 

 

 宇宙船の頂上付近。

 ハイグレ魔王を模した像を見上げる。

 

 

「男らしい、正々堂々とした公明正大な勝負よ。文句ないでしょ」

 

 

 なんの取っ掛りもないこの塔を登れと。

 ロッククライミングでもこんな無茶振りはしないぞ。

 

 まあ超人たるアクション仮面と、大統領の力を持つ俺にとっては簡単だろうが。

 

 結構単純だけど、理不尽な勝負だよな、と内心思う。

 

 

「いくわよ……ヨーイ」

 

 

 

 ハイグレ魔王の号令に集中して、駆け出そうとして。

 

 背後から迫り来る魔の手に気付く事が出来なかった俺は、太い腕で首を締め付けられた。

 

 

 

『うぐっ』

「さっきは良くもやってくれたな。アクション仮面……!」

 

 

 その正体は、俺が蹴飛ばして気絶させた筈のTバック男爵だった。

 

 

 それを尻目にハイグレ魔王は一足先に塔へと向かって登りだした。

 

 

『いけッ! 私の事は構うな……!』

 

 

 アクション仮面は心配そうに俺を見ていたものの、俺の後押しにより、遅れて塔を登りだした。

 

 

 

「このままお前をぶっ殺してやる……!」

 

 

 

 ギリギリと。Tバック男爵は単独でバスを持ち上げる怪力によって首を締め付けてくる。

 

 それに対し、俺はニヤリ、と笑った。

 

 

 

『過去の私よ。後は頼んだ。絶望の未来を変えてくれ!』

 

 

 

 そう言い残して地面を蹴り、Tバック男爵を巻き添えにして空中に身を投げた。

 

 

 

 

「あ、アクションかめーーん!」

 

 

 

 しんのすけの叫ぶ声を聞きながら、俺達は宇宙船を離れ落下していく。

 

 まさか、こんな展開になるとはな。

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★

 

 

 

 

 

『ありがとう。お前のおかげだ。自然な流れで離脱出来たよ』

「な、なにを言ってやがる。血迷ったか!」

 

 

 

 高所からの落下。

 それに怯えず、尚も俺の首を万力のような力で締め付けているTバック男爵。

 

 だがゆっくりと、見せつけるようにして。

 その拘束を引き剥がしていく。

 

 

「馬鹿な……!?」

 

 

 元々、大統領の力の方が誰よりも強い。

 苦しげな声を上げたのも。抵抗出来ない様子も、全てが演技。

 

 

 俺という異物が違和感なく離脱する為に、一芝居うったのだ。

 

 

 だからほら、本来の力を発揮すればこの通り。

 

 

 

「俺の拘束を外しやがった……」

 

 

 俺と道連れになる覚悟を決めていたのか。

 空中に身を投げた際も、怯まずに掴み続けた腕も、あっさりと解放することが出来る。

 

 

『じゃあな、Tバック男爵』

「クソッ。クソッ。クソがぁぁぁぁ!!」

 

 

 重力操作で空中を浮き、絶望の声を上げて落下して行く哀れな男を見送る。

 

 

 これでもう大丈夫だろう。

 

 

 色々と想定外の連続だった。

 最後の最後に介入するだけのつもりが、色々と掻き乱してしまった。

 

 まぁしかし、結果として大団円となる未来を切り開けたのだ。

 

 終わり良ければ全て良し。

 立つ鳥後を濁さずとも言うし。

 

 俺の出番はこれで終わりだ。

 

 後はポップコーンを食べながら最終決戦の鑑賞でもしていよう。

 

 

 

 

 ーー後日談。というか、今回のオチ。

 

 

 

 あの後、アクション仮面としんのすけはダブルアクションビームで無事ハイグレ魔王を討伐することが出来た。

 

 

 居なくなった俺に関しても、役目を果たしたから未来へ帰ったのだろうと言われていた。

 

 

 ハイグレ化も無事に解け、元の地球に帰還した野原一家。

 

 

 アクション仮面からの贈り物を受け取り、はしゃぎながらアクション仮面の仮装に着替えるしんのすけを見て。

 

 

 ようやく映画が終わったのだな、と地下拠点で一息つく。

 

 

 波乱万丈な一日だったけれど、いざ終わって見れば、“楽しかった”という感情で満ちていた。

 

 

 次の映画もあれば、また関わろうかな、と思うほどに。

 

 

 まあ、暫くはそうないだろう。

 だから今は、穏やかで平和な、おバカな五歳児が巻き起こす騒動を楽しむとしよう。

 

 

 






という訳でハイグレ魔王編は終了です。
次回はブリブリ王国編となります。

ちょっと更新頻度が落ちるかもしれませんが、気長に待って頂けると幸いです。
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