クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ大統領(偽)   作:けつだけせいじん

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ブリブリ王国の秘宝 1

 

 

 

 あれから暫く時が経ち。

 

 俺はというと。

 

 

「やはりダメか……」

 

 

 セイロン島スリランカ南東に位置する立憲君主国家ブリブリ王国。

 そのブリブリ王国所領のブリブリマウンテン島へと訪れていた。

 

 

 何故そんな日本から遠く離れた土地に来たかと言えば。

 

 とあるやべーブツを回収しに来たからである。

 

 

 しかし、それを入手するにはブリブリマウンテン島の遺跡に侵入しなければならない。

 遺跡に侵入する為には扉を開ける鍵が必要なのだけれども、これがまた代用の効かないもので。

 坊主頭で下ぶくれ顔の、推定五歳児並の体格を持つ人物が二人必要なのであった。

 

 そう、ちょうど元の世界にいた日本国民が良く知る人物。

 野原しんのすけと、ブリブリ王国の長子、スンノケシ王子が二人揃ってこそ遺跡の扉は開かれるのだ。

 

 何このピンポイント過ぎる設定、と思うかもしれないがそれはご都合主義ということでご愛嬌。

 

 魔力で形成した人形や粘土等、いろいろ扉を開こうと試して見たのだけれども、見事全滅。

 

 やはり生きている人間でしか反応しないようだった。

 

 

 眼前に鎮座する巨大な扉。

 長年遺跡を守って来ただけあり、重厚感がある。

 

 それすらも大統領のパワーをもってすれば破壊する事は可能だろうが、安易に破壊するという選択肢は自分の中に無かった。

 何せ、この遺跡の奥深くに眠っている“ブリブリ王国の秘宝”はクレヨンしんちゃんの世界観としても特に異質だ。

 

 不法侵入により中に収められている宝が警備システムによりおじゃんになる可能性はどうしても否めない。

 

 ぶっちゃけ、遺伝子データ……髪の毛一本でもあれば人造生命体であるホムンクルスを用意出来るのだけれど。

 そこまで倫理観を捨てきれない俺にとっては無用の長物。

 

 それに今この時点で宝を入手しても“ブリブリ王国の秘宝”の真の力を発揮するには、とある儀式が必要だったりする。

 

 儀式がどんなものだったか正確に記憶していない以上、無理してまで狙う必要は無い。

 

 よし。

 

 

「とりあえず帰るか」

 

 

 くるりとそのまま身体の向きを変え、大統領の詩による補助を発動させて、地下拠点への転移を行った。

 

 

 

 

 ★ ★ ★

 

 

 

 

 “ソレ”に気付いたのはおよそ一日前。

 

 野原みさえと野原しんのすけが商店街の帰り道、福引を回して、ブリブリ王国への旅行チケットを引き当てたことから判明した。

 

 怪しい二人組が以前からこそこそと野原一家を嗅ぎ回って居たのは察知していたが、危険はないとスルーしていた。

 だってクレヨンしんちゃんの世界って不審者は何処にでも湧くからな。

 

 何十年と蓄積された年月で、お出しされたヘンテコキャラクターはそれこそ星の数ほどいる。

 

 アニメ、漫画、映画などの作品を全話視聴し、登場人物を全て把握している人なんて数多い地球人類と言えども、誰も居ないんじゃ無いだろうか。

 

 その類に漏れず、ニワカファンだった俺はまた何か面白い展開が来たなー、とポップコーンを貪り食っている最中、此度の福引で既視感を抱き。

 ようやっと映画時空へと突入した事に気が付いたのである。

 

 

 お、これブリブリ王国の秘宝編じゃん。

 怪しいオカマ達二人組ってサリーとニーナだっけ? 

 最終的にこの二人が人情味を見せて所属してるホワイトスネーク団を裏切ったの良かったよなぁ。

 

 

 そう軽くストーリーを思い返すと、今でも彼らの冒険活劇が脳裏に容易く浮かぶ。

 

 

 この時点で、スンノケシ王子が捕獲済みで、後はもう一つの鍵である野原しんのすけを狙ってるんだっけ? 

 

 一国の王子を誘拐するという、割と無茶苦茶な事をしでかしているホワイトスネーク団。

 真の目的はボスであるアナコンダ伯爵と、腹心の部下であるミスターハブしか把握していない。

 

 大事件を引き起こした彼らの目的は“ブリブリ王国の秘宝”と呼ばれるもの。

 

 それさえ手に入れれば世界を掌中に収められる事が出来るが故に、後先考えないような鉄砲玉ムーブをカマしているのだ。

 

 これから先、野原一家は大変だよなぁ。

 何せホワイトスネーク団所有の旅客機から決死のスカイダイビングをした挙句、ジャングルをさまよい。

 最終的には崩落する遺跡から脱出なんてしなければならない。

 

 俺だったら旅客機の時点で詰んでるな。

 

 と、呑気に考えていたのも束の間。

 ある事実に思い至る。

 

 

 ーーこれ上手く行けば元の世界に戻れるんじゃね? 

 

 と。

 

 そう。

 

 “ブリブリ王国の秘宝”はいわゆるFateで言うところの聖杯。願いを叶える願望器だったりする。

 

 それも汚染もされておらず、願いも湾曲されず。できるだけ真摯に汲み取ってくれる素敵仕様。

 何処ぞの悪神に染め上げられた聖杯くんとは大違いの性能を誇る。

 

 これに目を付けたホワイトスネーク団は優秀だ。

 クレヨンしんちゃんに存在する魔法的な品物は数あれど、この秘宝を上回る物は存在しない。

 ガチのマジで正しく運用すれば世界なんて簡単に手玉に取れてしまう。

 

 え? 結局ホワイトスネーク団のボスは願いのせいで自滅したって? 

 

 あれはブリブリ魔人の全ての力を欲しいって言ったアナコンダ伯爵が悪いし……。

 それにちゃんと本当にそれで良いのかって再確認もしてくれた上での自滅だ。

 言っちゃなんだが自業自得だろう。

 

 魔人としての権能も含めて力を手に入れたせいで自滅した間抜け伯爵の事はさておき。

 

 

 聖杯戦争なんて血を血で争う闘争もしないでオーケー。使用条件もある壺にヘンテコダンスを行う儀式だけとユルユルのユルと来た。

 条件を満たせばブリブリ魔人という見た目ぶりぶりざえもんそっくりの魔人が現れ、願いを叶えてくれる。

 

 ちなみにあくまでも似てるのは外見だけ。

 救いのヒーローの肩書きとは裏腹にちゃっちい悪事やセコい裏切り、オマケにことある事に金をせびるクソ豚とは大違いなのだ。

 

 お助け料ならぬ、願い料金一億万円ローンも可、とかいう魔人はいない。

 ただひたすらマトモで善良なブリブリ魔人。

 それが“ブリブリ王国の秘宝”なのである。

 

 

 それさえあれば元の世界へ戻して欲しいという願いを叶えてくれる可能性が非常に高い。

 

 俺も大統領スペックの魔力のおかげで実質聖杯みたいな事が出来るが、それは過程を想像しているからこそ行える事だ。

 

 万物の創造も対象を知っているから実現出来ることで。

 下品な話だが良くある例から選出すると、カレー味のウンコか、ウンコ味のカレー。

 どっちが良いかという題目もチョイスも糞な選択肢がある。

 

 そんなもん知るか、と言う大多数の人が出す答えはともかく。

 

 この中で俺はカレー味のウンコは作れても、ウンコ味のカレーは作れなかったりする。

 

 何せ俺はウンコの見た目や匂いが分かっていても味を知らないからだ。

 ウンコという固有名詞は把握していても、味を知るには排泄物の味を舌で感じ取らなければ完璧な再現は出来ない。

 よしんば出来たとしても、それっぽいナニカになってしまう。

 

 有り余る魔力を唸らせても知らない事は知らないし、出来ないことは出来はしないのだ。

 

 これと同じように元の世界は知っていても、帰り道を知らないから帰る方法が実現出来ない。

 

 それゆえに、今回の事件の渦中にある秘宝は俺にとって地獄にもたらされた蜘蛛の糸であった。

 

 

 

 

 ……というわけで。

 

 早速ブリブリマウンテン島を探し出したは良いものの、遺跡を守護しているセキュリティが突破出来ず、おめおめと撤退してきたのだった。

 

 今思えば原作でホワイトスネーク団が潜水艦や旅客機を保有する財力がある割に、爆薬とか採掘機を使い、遺跡の扉を壊さなかったのも、伝承で正規の手順で辿り着かなければ宝が入手出来ない云々とかがあったりしたからなのだろう。

 

 じゃなければ律儀に二人分の鍵を探すわけないもんね。

 

 

 とはいえ、何も収穫が無かったわけじゃない。

 

 今回の探索で入手し、懐にしまっていた品を取り出してテーブルにコトリと置く。

 

 それはブリブリ王国の森深く。猿達が居住としていた遺跡から見つけ出した逸品。

 ブリブリ魔人へのいざという時の抑制装置。

 

 遺跡を破壊する為の二対ある豚の鼻石。

 その片割れだった。

 

 

 俺、思ったんだ。

 

 野原一家って今回放置するには余りにも危険過ぎない? って。

 

 

 いやさ。ストーリー的にはこの豚の鼻っぽい石を入手する為に仕方ないのは分かる。

 

 俺だって最初はのんべんだらりと最後の最後に美味しい所だけかっさらおうと考えていた。

 

 でもパラシュート抜きにスカイダイビングを決めたしんのすけを野原ひろしや野原みさえが追いかける描写があるのを思い出して、最初から関わることを速攻決めた。

 あれ、下手しなくともギャグ描写抜きにしたら間違いなく追いつけないし。

 そのまま地べたに叩き付けられて汚い花火を散らす事受け合いである。

 

 原作に矛盾描写があるアクション仮面VSハイグレ魔王みたくならなければ、おそらく大丈夫だろうとは思いつつも、やっぱり不安な事には変わりない。

 

 それじゃなくともジャングルを探索中、野生の虎とワニが出てくる事があった。

 何故かしんのすけのゾウさんで追っ払えたが、俺という異物が既に介入した以上、ヘンな事が起きないとは限らない。

 

 そのまま襲われれば悲惨な未来になるのは確実。

 

 悪夢のようなピタゴラスイッチで未来から来たアクション仮面扱いされた事実は未だに忘れていないからな。

 

 内心、胸がドキドキしまくりだったんだぞ。

 

 介入すれば介入するほど、ドツボに嵌る予感はするが、流石に裸一貫でジャングルに放り出されるよりはマシだろう。何より、遺跡を開く鍵であるしんのすけに万が一が死の危険がある橋を渡らせる訳にはいかない。

 

 そうと決まれば色々準備しなくちゃな。

 

 

 あと、しんのすけに小宮のえっちゃんのサインが欲しいとかというインターセプトを挟まれたら堪らないし。その予防もしなくては。

 

 これから忙しくなるぞ。

 

 

 





なお、主人公が先にブリブリ魔人が封印された壺を入手していれば“救いのマラカス”(壺バージョン)とかいう産廃を作って置いていく予定だった模様。

ダンスをアナコンダ伯爵が踊ってくれれば映像再現でいくらでも儀式を再現できるからね……

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