TSC2の開発が始まり、私はできる限りサポートに回ることに。テストプレイの相手、ゲームデザインやプログラムの相談など。全員早朝から深夜の寝落ちまで、ずっと開発に勤しんでいた。
時折強引にゲーム開発部を全員追い出して掃除をすれば、買い出しを頼まれたり。
彼女らがコンビニやお菓子で腹を満たそうとしたら私が止めて、調理実習室を借りて料理を振舞ったりした。
そんな感じである日の朝、エプロンを着けた状態で部室に顔を出す。やはりと言うべきかアリスを除いて全員寝落ちしたようで、ミドリはペンタブレットに顔を突っ伏して寝落ち。モモイはキーボードに突っ伏し、ユズは椅子三つを並べて横に倒れており、アリスはずっとゲームのテストプレイをしていた。
アリスが私に気づき、エプロン姿が珍しいのか目を輝かせて見つめてきた。
「先生、おはようございます! 先生は軍師から主婦にジョブチェンジしたのですか?」
「おはよう、アリス。主婦じゃなくてお手伝いさんだよ。皆を起こして、朝食にしよう」
アリスは元気よく返事をして、モモイ達を全員起こしてくれた。寝ぼけ目のゲーム開発部の面々と部室を出て、調理実習室へ。
今回の朝食はトーストにコーンポタージュ、スクランブルエッグにサラダ。トースト用にマーガリンにイチゴ、チョコジャムを用意。四人が席に着いたところで、私もエプロンを外して席に着いた。みんなで手を合わせたら朝食を頂く。
「そういえば先生、料理できたんだね。意外……」
「一人だと料理はやらないんだけどね。なんかやりたくなっちゃって。開発の状況は?」
「アリスちゃんが夜通しでテストしてくれて、バグをまとめてくれました……」
「じゃあ私もデバッグとして入ればいいかな?」
「できるならそうして欲しいかな。時間も少なくなってきてるからね」
こうして朝食を摂り終わり、みんなを部室に帰して食器を一人で片付け。ちょっと遅れて部室入りしたら、コントローラー握って画面とデバッグ画面とにらめっこ。
夕方になったら一人で買い出しに行って補給品となるジュース、ハレおすすめのエナジードリンク、夕飯の食材を購入。夕食作るのにまた調理実習室を使わせて貰った。
午後七時辺り、またエプロン着けて部室に顔を出し、フライパンとおたまでコンコンと音を鳴らした。
「夕飯できたよー!」
「先生待って!もう少しで終わるから!」
「あとどれくらい?」
「分からない! 五分くらいかも!」
「冷めちゃうよ? ……今日のご飯はハンバーグだよ!」
「わーいママー!」
モモイが作業を放り出して、私のエプロンにしがみ付いてくる。
「モモイのご飯は哺乳瓶ミルクだね」
「なんでー!?」
軽い冗談にミドリとユズも笑った。
「先生、ママという言葉は何でしょうか?」
「ママは母親という意味。モモイは私のことを誤認しているみたい」
「母親……データベースから検索します……」
「アリスも食べるよ、ほら」
言葉の意味を調べているアリスの背中をポンと押した。
――
調理実習室で夕食を食べ終わったら、残りを皿に移してラップし、皿を持ってセミナーの方面へ向かうことにした。
訪れてみると、予想通りユウカがセミナーの仕事をしていた。ここもというべきか、デスクの上には山のような書類が積まれている。
「ユウカ、お疲れ様」
「先生……。何の用ですか?」
「差し入れ、夕食だよ」
「……そこに置いててください。料理、できたんですね」
ユウカの声色はどことなくそっけない感じがして、私は声のトーンを落とした。
「なにか、私に悪いところでもあった?」
「……そんなことありません。要件は以上ですか?」
「うん。またね」
私はユウカに軽く手を振って、セミナーを後にしたのだった。
調理実習室に戻って食器を洗う。蛇口を回して洗剤を水で流して。調理実習室は私だけで、水音だけしか聞こえない。やはりユウカの事ばかりが頭に浮かんで、自分の行動が何か間違っていたのかと考えてしまう。
彼女とは私が先生になった時からの付き合いで、生活リズムが破綻しているところを何度かお世話になった。当番にはよく来て貰っていたし、手伝ってもらうことも多かった。
でも私は何かお返しをできただろうかと振り返ると、何も出来ていなかったことに気が付く。私はユウカに何をしてあげられただろうか、今からでも何かできることはないか。
「先生」
呼ばれてはっと我に返る。振り返ると食器を持ったノアがいた。
「ノア?」
「お疲れ様です、先生。これ、お返しします。ユウカちゃんがご馳走様と言っていました」
「わざわざありがとう」
ノアは食器を近くに置いて、そのまま私の隣に立つ。
「ユウカちゃんと何かありました?」
「……ちょっとね」
私は洗い終わった食器を清潔な布巾で水気を拭き取り、重ねていく。
「ユウカに迷惑ばかりかけてて、何もしてあげられなかったなって思ってて。それで……もしかしたら彼女に嫌われたかもって思って」
「そう思っていらっしゃったのですね。でも、ユウカちゃんは先生のことを嫌いになったわけではないと思いますよ」
ノアはそう断言する。彼女を見てみると微笑んでいた。
「どうしてそう思うの?」
「……それは、私の口から言うことではないと思いますので。近いうちにユウカちゃんとお話してみてください。きっと、先生なら大丈夫ですから」
そんなことを言ってノアは私の傍を離れて帰っていった。後ろ姿を眺めながら、何かもどかしい感じがして濡れた指で髪を弄った。
――
ミレニアムプライス参加受付締切日。私は急用で部室から離れ、別の場所で仕事をしていた。途中モモイから連絡があり、受付に間に合ったことを知らされる。不安もあるが、充実感と安心感の方が勝っていた。全てを出し尽くすつもりでやった以上悔いはないし、きっと彼女達なら大丈夫と信じていた。あとは三日後の結果を祈るだけ。
今日は急用で、少し遅れてから部室に向かった。中を覗いてみるが、部室はもぬけの殻。途中でつけっぱなしのパソコンやゲーム機が放置されており、急な用事で部室を離れたと思ったのだと去ろうとした時、妙な痕跡に気が付いた。砲弾や弾痕が部室の外壁にめり込んでいたのだ。
何者かがゲーム開発部を襲撃した。そうと気付いた瞬間、急いでモモイ達と連絡を取ろうとした。しかし返信も既読マークもつかない。
「モモイ! ミドリ! ユズ! アリス!」
邪魔なジャケットを脱ぎ捨て、廊下を駆ける。走りながら携帯電話を弄り、ヴェリタスへ電話を繋げた。
「マキ、コタマ、ハレ! 誰でもいいから電話に出て!」
「先生、慌ててますがどうしましたか?」
「ゲーム開発部が誰かに襲撃されたかもしれない! 居場所特定できる!?」
応じたのはコタマだった。
「……時間が少しかかります」
「じゃあ、何か音で特定できない? 46ミリ砲が発射される音とか!」
「盗聴します。……見つけました。今旧校舎で銃撃音や爆発音のような音が。恐らくそこに逃げ込んでいるかと」
「ありがとう! すぐに向かう!」
電話を切り、全速疾走で旧校舎へ。通りすがる生徒からは奇異の目で見られたが、今はそれどころではない。旧校舎に辿り着くと、コタマが言った通り銃撃音や砲撃音が聞こえてくる。光の剣の発射音が聞こえる辺り、この場所で間違いない。
階段を何段も駆け上がり、上階へ到達する。そして廊下での激しい銃撃戦が聞こえてきた。サブマシンガンの音が激しく鳴り響き、アリスともう一人誰かの声が廊下に響いている。角を曲がりようやく視認できた。
アリスと小柄なメイド服の生徒が攻防を繰り広げている……。いやアリスの方が押されている。アリスは防戦一方で相手の近距離戦闘に翻弄されていた。小柄なメイドは恐らくダブルオーの美甘ネル。C&Cがゲーム開発部襲撃したということだろう。
シッテムの箱を持っていることを確認し、再び廊下を駆け抜けた。
「やめてっ!!」
両手を広げ、アリスとネルの間に割り込んだ。
「先生!」
「っと危ねえ! いいところだったのによ」
ネルは発砲を止め、私の方を向いてにやりと笑う。
「てめぇが先生か。鏡を盗んだ時に飛び降りたはあんただったな。さっきの割り込みといい、大した度胸してやがる。気に入ったぜ、あんた」
「お褒めに預かり光栄だね。この襲撃はミレニアムタワーのリベンジでやったの?」
「いや違うな。あのバカみたいにデケぇ武器を持っている奴に一発食らわせたくてな」
「はい! アリスはあのチビメイド様に気に入られています!」
「誰がチビメイド様だ! ぶっ殺されてぇのか! ……でここからどうするんだ、先生?」
ネルは銃のマガジンを抜き、新しいものへ交換する。私はアリスを庇うような姿勢を取りながら彼女に伝える。
「アリス、今から言うことをよく聞いてね。床に向かって光の剣を100%で撃って」
「否定します! 先生が巻き込まれます!」
「大丈夫! 策は考えてあるから。軍師である私を信用して。お願い」
「……信じます!」
アリスは床に向かって光の剣のチャージを始める。
「……正気か、先生! 今の角度だと巻き込まれるぞ!」
チャージ音に耳を澄ませ、寸前になったところで助走をつけてネルの方へ飛び込んだ。そして彼女の両肩を押さえ、押し倒すように倒れこんだ。その瞬間、光の剣が床へ発射され大爆発を起こす。激しい爆風で瓦礫が落ちてくるも、シッテムの箱で守られ無傷。煙が晴れる頃にはゲーム開発部の姿は消えていた。
「無茶しやがって……。おい先生! 怪我はないか!?」
押し倒したネルから心配されるも、彼女は無事なようだ。
「無傷だよ。ほら上手くいった。私がネルを押さえつけて時間稼ぎする間、彼女達は逃げる時間を稼げたってこと」
立ち上がって砂ホコリを払い、平気だということをアピールする。
「で、まだ追いかけるつもり?」
「……いや、いい。概ね目的は果たした。もう戻る」
ネルはやれやれと肩をすくめ、背を向けて歩き出した。私もアリスが開けた床の穴から飛び降り、彼女達を追いかけて行くのだった。その後追撃も無く、損傷した旧校舎について何の言及もされなかった。
――
ミレニアムプライス結果発表前日、突然ノアから連絡が来た。
『先生、突然のご連絡すみません。セミナーの方へ来ていただけませんか?』
詳細は何も教えてくれなかったが、ノアが私を呼び出すということは何か大事な話なのだろうと、私はすぐにセミナーへ足を運んだ。
部屋へ入ると、ノアとユウカが待っていた。ユウカは何か思い詰めたような表情で私を見ている。私も彼女の姿を見た瞬間、何か後ろめたいような気持ちになり、思わず視線を逸らした。
「先生、お疲れ様です。突然お呼びしてごめんなさい」
「大丈夫だよ。それで、話っていうのは?」
「はい、先生とユウカちゃんで話し合える場を設けようかと。では先生、何でもいいのでユウカちゃんに言いたいことを」
「えっ、私が?」
ノアに促され、少し考えてからユウカに向かって口を開いた。
「……ユウカ、いつもごめんね。私、ユウカにずっと迷惑かけてばっかりで。生活を見てもらったり、シャーレの仕事を手伝ってもらったり。心配してくれたのに危ないこともたくさんして……。でも、ユウカのお陰で私はここまで来られたと思う」
咄嗟に組み立てた思いを、ゆっくりと言葉にする。
「だから……ありがとう」
俯いたユウカから反応はない。焦りを隠せず、すぐに続きの言葉を紡いでいく。
「最初に会ったのは、連邦生徒会のところだったよね。私は先生になって初日で右も左もわからなかった。そんな時、連邦生徒会長を探しに来たユウカと初めて会って。色々あたふたしてたけど、ユウカが助けてくれた。その後、ユウカが私の当番にずっと付き合ってくれたり……」
「先生、もういいです……」
ユウカは両手で顔を覆い、肩を震わせていた。
「ごめんなさい、ここまで拗れてしまったのは私が原因です。自分でもよく分からない感情で、ずっと先生を困らせてしまって。本当にごめんなさい……!」
ユウカは涙ながら、謝罪の言葉を繰り返した。私は彼女の肩を抱き、優しく声をかける。
「本音、言える?」
「……はい」
「うん、じゃあ聞かせて」
ユウカは深呼吸をし、私の目を見てゆっくりと話し始めた。
「先生がゲーム開発部のみんなと楽しそうにしているのを見て……。私の方が、もっと先生と一緒にいたのにあんな楽しそうじゃなかったのに。本当は先生が先生らしくなってくれて喜ぶべきなのに。どうしてか……感情が制御できなくて分からないんです」
私は黙ってユウカの話を聞いていた。少し間を開けてから、さらに続ける。
「ミレニアムタワーの時だってそうです! 私の言葉を受け入れてくれないから、先生にとって私はいらない存在に思えて! ずっと私と一緒にいてくれたのに、どうしてと色んな感情が混ざってよくわかんなくなってきて! それで、私……私は……!」
ユウカは言葉を詰まらせる。彼女の目から涙が零れ、頬を伝い落ちる。
「先生に拒絶されるのが……怖かったんです……!」
「そうなんだね。拒絶はしてなかったけど……。すれ違っちゃってたんだね」
私はユウカが落ち着くまで、背中を撫でていた。するとノアがいつの間にかユウカの背後に立ち、『えいっ♪』と彼女の背中を押した。ユウカは驚いた表情を見せつつ、私の方に身体を預ける。私はとっさに手を回してユウカを抱きしめた。
「ごめんなさい。……仲直り、しようか」
「はい……先生。ごめんなさい……」
ユウカは私にしがみ付きながら泣き続けた。ノアも穏やかな笑みを浮かべ、反対側からユウカを抱きしめる。
彼女に心配されないように、無茶はしないようにしよう。そしてもっとユウカのことを知って向き合おう。頭を優しく撫でながら、そう心に留めたのだった。
ユウカが泣き止み、穏やかな表情を見せてくれたところで、彼女が口を開いた。
「先生、ゲーム開発部のことですが……。廃部の心配はもうありません。先に伝えておこうかと」
「そっか。またみんなで集まってゲームとかできる?」
ユウカは軽く頷く。
「ええ、もちろんです」
「……良かった。明日は安心して結果発表を待っていられるよ」
これでゲーム開発部も、ユウカの心配事も全て解決した。私は肩の荷が下りたような気がしていたのだったのだが、、一件気掛かりなことがあり、問いかける。
「ユウカ、率直な気持ち聞かせてくれないかな。ユウカはアリスのことをどう思っている?」
差押品保管所の一件で浮かび上がった、ひっかかる点。何者かがアリスを警戒、あるいは敵視していたことについて。もしその一件と繋がっているなら、ユウカの心の中を知りたいと思ったのだ。彼女はノアに目線を向けると、微笑んで頷かれる。
「セミナーの立場としては何も言えません。ですが私個人としては、アリスちゃんはアリスちゃんです。可愛いゲーム開発部の部員です」
「……うん。ありがとう」
そのままユウカは、私に向かって頭を下げた。
「先生、今まで本当にご迷惑をおかけしました」
「もう謝らなくていいから。……これからもよろしくね」
「はい!」
元気な返事で、いつものユウカに戻ってきた。
そして翌日、ミレニアムプライスの結果発表の日を迎えるのだった。
――
テレビに映るコトリがミレニアムプライス受賞式の司会を明るい声で進め、次々と作品を読み上げていく。三桁の応募作品の中で明確に実績として残されるのは七作品のみ。恐らくその中にTSC2も入っているはず。しかし六位、五位と次々発表になっていくが、私達が手掛けた作品は一度も呼ばれない。
そして一位の作品は……新素材開発部、その名前が呼ばれた途端にモモイはディスプレイを撃ち抜いた。
「うえぇぇん! 今度こそ終わりだぁぁぁぁぁ!!」
おかしい。私は確かにユウカから廃部の心配はしなくていいと聞いていた。だから受賞するのは確実だとそう思っていたのだが。ゲーム開発部は失意のどん底に突き落とされ、部屋の空気は沈み切っていた。
ユズの居場所はどうしようか、アリスは誰が引き取るのか。
「……アリスは何とかミレニアムに居られないかな。できればゲーム開発部のそばで。無理なら私の方で引き取るから」
私の方から意見を出してみると、姉妹が揃ってこちらを向いた。
「わ、私の部屋に連れていく! ベッドも一緒に使うし、ごはんも二人で分けて食べよう!」
「わ、私の分もあげるっ!」
「二人とも……。バレたら大変なことになるよ」
その時だった。扉が開き、ユウカが部屋に入ってきた。
「ゲーム開発部のみんな、おめでとう!」
明るい声で、ゲーム開発部の面々に祝福の言葉を送る。
「えっ、なんで……?」
モモイが疑問を零す。私も同じ気持ちだった。するとユウカが壊れたディスプレイの代わりにスマホの映像を見せる。
「これを見て」
そこに映されていたのはミレニアムプライス受賞式の中継の続き。そして……ゲーム開発部の作品が特別賞として表彰されていたのだった。
「ええっ、嘘……!?」
マキも部室に飛んできて、祝福の声を上げる。ネットの評判を見てみても、作品に対する熱意ある好意的な意見が並んでいた。検索数を見ても影響力は大きく、有名アイドルを上回る勢いである。
「えっと……っていうことは、廃部にならないんだよね!?」
「ええ、でもあくまで臨時の猶予だから。正式な受賞ではないし、来学期まで保留という判断よ。……でも、本当によく頑張ったわ。じゃあ、延長申請など事務的な手続きが必要だから、落ち着いたら生徒会室に来てね」
ユウカとマキは出ていって、呆然とするゲーム開発部と私。
「せ、先生! やったよ!」
モモイが飛びついてきて、私は勢い余って床に押し倒される。アリスもこちらにやってきて、私に抱き着いた。
「ぐえー……」
何とか落ち着いたら起き上がり、みんなに声をかける。
「じゃあ、なんとか部活も守れたということで打ち上げ行かない? いいところの焼肉屋さんとか」
「先生、いいんですか!?」
「お金大丈夫なの!?」
「うん。私、高給取りだから。一年で良いローン組めて、三年で自分の墓が立つくらいだし」
「いや怖っ!?」
「先生、自分の墓が立つとはどういう意味ですか?」
「アリスちゃん、それは聞かなくていいよ……」
わいわいと、いつものテンションを取り戻していっている。そんな中で私は振り返ってみる。
アビドスの外で先生の仕事をするのに不安があった。でも、ゲーム開発部と関わって温かい時間を共有でき、みんなと仲良くなれて。新しい居場所を見つけたような、そんな気がしたのだ。また来れるのなら、今度は遊びに来れればいいな。
そう思いながら賑やかなミレニアムの生徒達を眺め続けていったのだった。
――
打ち上げの前に一つだけ寄りたい場所があった。それは生徒会室、ユウカがいる場所である。ドアをノックして入室すると、彼女だけが居た。
「先生? ……ゲーム開発部のみんなは一緒じゃないんですか?」
「うん。ちょっと先に行かせててね。ユウカ、ゲーム開発部の子たちと一緒に打ち上げに行かない? 焼肉屋さんだけど」
ユウカは驚いたような表情を浮かべ、すぐに首を横に振った。
「いえ、私は遠慮しておきます。私が行ってもモモイが怖がるだけなので。先生が連れて行ってあげてください」
「……いつか時間空く日は?」
「未定です。もしかしてお誘いですか?」
「そうだね。もっと砕けた話をしたいというか、今度こそ自分の本心で話したいなと。ダメ?」
ちょっと恥ずかしげに目線をユウカに向けると、彼女はくすりと微笑んだ。
「いいですよ。私も極力空けるようにしますね。なのでその時になったら……」
ユウカは歩み寄り、私の前に立って手を握ってきた。
「先生、たくさんお時間いただきますね!」
次はプロローグ編です