アビドスの6人目   作:____―--

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毎日更新はやはりダメでした。
心身ともに健全な状態で執筆したいものです。


Homecoming 3

アヤネを中心に開かれた対策委員会の定例会議。議題は学校の負債をどう返済するか、だが。

 

「ゲルマニウム麦飯石ブレスレット!」

「うへ〜、他校のスクールバスを拉致ろう!」

「ん、銀行強盗」

「スクールアイドルデビューです☆」

 

あまりよろしくないアイデアのせいなのか、アヤネの眉間がぴくぴくと動いており、フラストレーションの溜め込みが微かに見えていた。

 

「……せ、先生は何か案はありますか?」

 

と、アヤネが私に聞いてきた。

 

「そうだね……」と、私は少し考えた後言った。

「ごめん、あんまりいい案は無いかな」

 

とまず答えた。

「アビドスは砂漠だから、大きな掘削機でも持ってきて何か古代の物を掘り出してお金にできたらいいけど、そんなものは短期的な利益程度。何かビジネス的なもので長期的な利益を出さないと、借金返済には繋がらないと思う。とはいえ、生徒五人、頼りない大人が一人で、出来そうなものは今のところは思いつかない。せめて、アビドス方面へのアクセスが良くなるように交通がもっと整備されれば、それだけでも大分変わると思うけど」

 

と、私は答えた。

 

「そうですよね。そんな簡単にお金は稼げませんよね」

 

 アヤネはそう言いながら、少し落胆した様子を見せた。爆発寸前の様子から、少し空気が和らいだ。と思いきや、

 

「やっぱり銀行強盗をするべき。先生のマスクも作った」

「先生もスクールアイドルデビューしましょう☆ まだ若いですから、きっと人気出ます!」

「ゲヘナのスクールバスを襲撃しようよ〜」

 

 私は天を仰いだ。そして少し後、テーブルがひっくり返りアヤネの怒声が会議室に響いた。

 

「みなさん! 真面目に考えてください!!」

 

 懐かしいような感覚、これがアビドスイズムだ。居場所が奪われる危機に瀕しても、明るい青空の下で、春を駆け抜けているような感覚だ。変わらない、あの日々の。

 

 怒られる四人を傍目に、そこにあった懐かしい感触を全身で感じていた。しかしアヤネのヒートアップが更に加速しそうだったので、待ったと手を前に出して、アヤネを宥めた。

 

「お腹空いてない? ラーメン食べに行こうよ」

 

と、私は提案した。アヤネが何か言いたげな表情をしていたが、ホシノが

 

「おっ、いいねえ。おじさんもお腹空いたよ〜」

 

と、言ってくれたので、一旦この場の矛を収めてくれた。

 

「じゃあ、行こうか」

 

――

 

 今日はジャンボを食べる気分じゃなかった。普通のラーメンの方で満足するような気分で、目の前の器にそこそこ盛られた麺を少しずつ減らしていく。隣のアヤネがチャーシュー麺を食べているのだが、若干ペースが早かったのでヤケにならないようにと声をかけておいた。

 

「お代は出してあげるから、追加注文あったらセリカに頼んでいいよ」

「ふぁい……。ありがとうございます、先生」

 

アヤネは麺を啜りながらそう答えた。

 

 しばらくすると、戸が横に開いた。入ってきたのは、覇気を失いかけている女の子四人組だった。彼女らもまた、私だけが見覚えある顔だった。

 

「あ、あの……この店で一番安いものはおいくらでしょうか……?」

 

 とハルカが聞いてきたので、セリカが580円の柴関ラーメンと答える。するとハルカは引っ込んで奥の人物、おそらくアル達と作戦会議をし始めた。

 しばらくして、ようやく陸八魔アル率いる便利屋68が空腹に耐えかねた佇まいでやってきた。

 

「ほ、ほらね。私にとっては想定内よ。いつも言ってるでしょ? 私の計画に狂いは無いって」

「じゃあ、依頼のターゲットを間違えて傷つけちゃったのも想定内だったの?」

「う、うるさい! あれは、その……。想定外よ!」

 

 セリカが苦笑気味で四人を席へ案内する。どうやら彼女らは計画が狂って持ち銭がだいぶ軽くなってしまっているらしい。それで注文したのは柴関ラーメン一つのみ。四人で一つのラーメンを分け合って食べるのだろうか。

 

 特に私の方から干渉することなく、お冷を片手に彼女らの会話に耳を傾けていた。

お金と引き換えに何度もやってくれるゲヘナの不良集団にして自称アウトロー組織、便利屋68。なお彼女らは少しした後にアビドス高等学校へ襲撃の予定である。なのだが、私は黙っていようと決めていた。

 

 ちょっとしたら、便利屋68のテーブルに柴関ラーメンにしては明らかに規格外な大きさのラーメンが運ばれてきた。大将曰く手元が狂って量が多めになってしまったらしい。嘘だ。明らかに金欠の彼女らに気を使って、サービスで大盛りにしたに違いない。そういった意味では、柴大将は素敵な大人の一人だ。

 

 それから四人は美味しそうにラーメンを啜り始めた。ジャンボよりも明らかにサイズが大きく、今は見るだけで胃もたれしそうだ。そして知らず知らずのうちにアビドスの皆が便利屋68の方に絡みに行ってて、奇妙な縁が生まれていた。

 

 やがて対策委員会の皆が食べ終わって、店を出ようと席を立つ。その時に、私はようやく便利屋68に話しかけに行った。

 

「えっと、アルさん達でしたっけ。アヤネ達と仲良く話してくれてありがとうございます」

 

 と、私はアル達にお礼を言った。

 

「ええ、まさかここで気の合う人達と出会えるとは思わなかったわ」

 

 アルは微笑みながら答えた。そして、私は彼女たちに牽制を仕掛けた。

 

「私は今、シャーレの先生ですけど一時的にアビドス対策委員会の顧問的なものをしています。もし、アビドス高等学校に寄ることがあれば、可能な限りおもてなししますので、今後ともよろしくお願いします」

 

 と言った。アルの表情は、何故か顔面蒼白で今にも泡を吹いて倒れそうで、ハルカに限ってはショットガンを握り暴走寸前の状態だった。そんな様子を確認しながら、頭を下げて店の外へ出た。

 

――

 

 アビドス高等学校に戻ってから、3階の教室の椅子に座り、窓の向こう側をずっと眺めていた。

 

 私は先生である以上、教卓に立つべきだろうが、何故か机と椅子に座っている方がしっくりくるのだ。それはきっと、過去の記憶のせいだと机の上を指でなぞって思った。

と、耳の無線機にアヤネの声が聞こえてきた。

 

『先生、この学校に向かってくる大規模な戦力を確認しました。恐らく日雇い傭兵の集団かと。どうしますか?』と、アヤネは私の指示を求めてきた。私は即座に返す。

「皆に武器持つよう言って。やり合うよ」

『分かりました!』と言って通信は切れた。

 

 そして数分後、便利屋68率いる集団が学校の門の前に姿を現した。アルは覚悟を決めたのか、無言のまま片手でスナイパーライフルを校舎の方に向けて構えている。

 

「せっかく良くしてもらって悪いけど、依頼だから」

 

 と、便利屋の社長アルは言うと、他の奴らも各々武器を構えた。

 機会を見計らい、私は一階の放送機器がある部屋へ駆け込みマイクを手に取った。

 

「えー、ラーメン屋で仲良くなったのに武装勢力揃えて校門前でたむろしてる恩知らずの便利屋シックスナインの皆様〜。お引き取り願えない場合は武力行使いたしますのでご了承ください」すると、遠くから怒号が響いてくる。

 

「便利屋68よ! ぐぬぬ、や、やってやるわ! 総員戦闘準備!」

 

 そうして戦いが始まった。アヤネの側に走り、シッテムの箱を起動させる。

 

「全員! アルは優れたスナイパーだから、極力接近戦で戦って! ホシノはハルカを集中的に潰して、ハルカはスイッチ入ったら危険よ! 他は遊撃で数を減らして! カヨコ、アルは後回しでいいから」

 

 私の指示に従い、前衛組の四人が一斉に動き出す。アヤネはドローン操作でのバックアップだ。

 

「一階からだと戦況が見えない。校舎の高いところへ行く」

「先生、気をつけて!」

「大丈夫。もう慣れっこだよ」

 

 屋上への階段を上がりながら、ホシノからの通信が入る。

 

『先生〜、ハルカちゃんはおじさんの方でやっておいたよ〜』

『分かった。あとは判断に任せる』

 

 私は屋上へ出た。

 戦局は既に終盤を迎えており、日雇い傭兵達が気絶しており、便利屋を追い詰めている状況だった。

 

『先生、アルをやっていい? 他からの邪魔は入らなさそう』

 

 シロコからの提案にも、直ぐに許可を出す。

 

「いいよ。但し、カヨコに意識をとられないで」

『ん、わかった』

 

 指示を出した直後、銀髪の少女が遮蔽物から飛び出して行き、スナイパーライフル構えるアルに向けて一直線に駆けていく。

 

 アルも即座に反応し、スコープを覗き込むが、既に遅い。

 

 シロコの飛び蹴りが命中した。

 

 キツめの一撃を食らい、アルは吹き飛ばされて、地面の上を転がるように倒れた。

襲撃したメンバーは全員、無力化。学校の防衛は完了となった。

 

 思ったより遅くなった学校のチャイムで、日雇いの傭兵達が立ち上がって引き揚げていく。私は屋上から一階へまた長い階段を降りていき、放送機器のマイクを手に取った。

 

「まもなく下校時間となります。お気をつけて帰宅して下さい」

 

 そう告げると、また遠くから『お、覚えてなさーい!』とアルの捨て台詞が聞こえてきた。

 

 

戦いの後、皆が部室に戻ると、私達はソファーに座って、今回の反省会を始めた。

 まず最初に、私が口を開く。

 

「何とか、追い返せたね。私の下手な指揮通りに動いてくれてありがとう」

「いやいや、そのぐらいの指示の方がおじさん的には助かるよ」

「少数精鋭だから通用した指揮だし、他のケースは対応しづらいよ。勉強もっと必要かな」

 

 と、ホシノと話す。

 

「んー……、依頼主聞き出すこと出来なかった」

「口が固そうだし、仕方ないよ」

 

 と、少し残念そうな顔を浮かべたシロコを慰める。ただし、黒幕は私の方で確実に把握している。彼女達の方で明確な証拠を掴ませるよう、あとは誘導するだけだ。

 

「これからも後方の指揮をお願いしますね、先生」

 

 アヤネの言葉に、私は頷いた。

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