アビドスの6人目   作:____―--

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...And Justice for All 2

 SRT学園閉鎖の取り消しについて、不知火カヤに掛け合った。カヤは連邦生徒会の防衛室を担当しており、安全保障関連で政治面から連邦生徒会をサポートをしている。カヤとは何となく折り合いが悪かった。連邦生徒会入りたてでリンの補佐官をやっていた時、カヤはリンのやり方にかなり不満を持っていたらしいし、私に対してもあまり良いイメージを持っていなかった。それでも私の言葉に耳を傾けてもらえた。

 

 回答はSRT学園閉鎖の取り消しは管轄外なので難しいと。逆に要望としてヴァルキューレへの編入を勧めるように言われたが、生徒の進路を強引に決められないと私は反論した。

 

 結局、RABBIT小隊らは私にぶん投げてきて、子ウサギ公園占拠事件の事は厳しく処罰しないので先生が上手く保護してあげてほしいと言われた。

 

「ダメでしたか、本人達も納得しないでしょうね……。あ、替え玉もう一ついただけますか?」

 

 夜の屋台のラーメン屋、お互いの片付けるべき仕事を終えたら屋台で整理しようとサクネから提案があり、やる事を終えて屋台でともに夕食を食べている。

 

「もしかすると連邦生徒会長が戻ってきたら、ということでSRTの件も動かせられないらしいし。どう? ミヤコ達は無事に釈放された?」

 

「大丈夫でしたよ。RABBIT小隊のみんな口が固くて。そのまま子ウサギ公園で引き続きキャンプ続けるらしいです。……公園占拠事件は一区切りつきましたが、そのまま普通の先生の業務に戻られるんですか?」

 

「……いや、戻らないよ。ミヤコ達が気掛かりで」

 

 そこでようやくラーメンが運ばれてきて、私は割り箸を割った。

 

「そうですね。突然警戒されている生徒四人の面倒見ろとは、防衛室もなかなかの無茶振りをされましたね。……あ、美味しいですねこのラーメン」

 

「そうだね、ちょっと濃いめだけど美味しい。……警戒されてるし、そのまま近づいても良い印象持たれないし、どうすればいいんだろう……」

 

「そこは私にお任せくださいよ。SRT学園の生き残りとして、何とか橋になってみせますから」

 

「ありがとうね、サクネ」

 

「いや、そこまで信用されては困りますよ、先生。私は胡散臭く人を利用するような奴だとよく言われていますし、何か企んでいる可能性もありますから」

 

「そう? でもサクネは真っ直ぐな生徒に思えるけど」

 

「……あはは」

 

 照れ隠しなのか、サクネはラーメンの器を持ち上げてスープを飲み干した。

 

「RABBIT小隊に接触するときは私から連絡するので、先生は待機していてください」

 

「じゃあ、それまでヴァルキューレに通い続けるよ。まだこんな足だし仕事は増えてないから」

 

「それは……困るなぁ〜」

 

 モッズコートを羽織ったサクネは苦笑いを浮かべながら後ろ髪を掻いた。

 

――

 

 次の日、ヴァルキューレ警察学校でサクネを探しにいくと、何故か私服姿のサクネが校門前に立っていた。

 

「おはようございます、先生」

 

「おはよう……。今日はオフなの?」

 

「いやいや、これは潜入捜査って奴です。先生も一緒に来ますか?」

 

「そうだね。ご一緒させてもらおうかな」

 

 サクネが先導し、モッズコートや荷物を車両のトランクへ。私の車椅子も彼女が畳んでくれて、松葉杖に支えられながら助手席へ。

 

「じゃあ、行きますか」

 

「そうだね」

 

 車両は警察車両ではなく、シルバーの車だ。潜入捜査という以上、堂々と警察車両を持ち出すわけには行かない。

 

「じゃ、行きますね」

 

 車は発車し、D.U.シラトリ区内を走っていく。到着したのは子ウサギ公園近くの古い家で、近くの有料駐車場に車を駐める。サクネは拳銃をチェックして、身支度を整えてから車を出た。

 

そこから物陰で古民家を監視するように、裏路地に隠れて張り込みを決行する。私はというと近くの自販機で缶コーヒーを買い、棒付き飴玉を咥えて一服していた。

 

「事件の内容って教えてもらうことはできる?」

 

「そうですね、簡単に説明しますと。ある地上げ屋があの古民家に押し入ろうとしているんで、そいつらを懲らしめてやるって感じです」

 

「なるほどね」

 

 そうしてしばらく張り込みをしていたら、一台の黒塗りの車が古民家の前に止まった。その車からは数人のスーツ姿の人物が降りてきて、古民家のインターホンを鳴らした。すると年老いた犬人の男性が玄関から現れた。

 

「そろそろご決断をしてはいかがでしょうか、〇〇さん」

 

「この古民家を手放したくないんだ。何度も言っているだろう?」

 

「私は良い取引条件を提示させていただいております。悪くない話だと私は思うのですが……」

 

 ここでサクネはハンドカメラで動画の録画を開始し始めた。

 

「帰ってくれ!」

 

 古民家の老人はスーツ姿の人達を追い払うように手を振り払うとドアを閉めていった。彼らは肩を竦めると、古民家の周りを歩いて周囲をチェックし始める。そして何かの工作をし始めた。

 

「あーあー、証拠撮っちゃってるよ? いいのかなー?」

 

 小声でサクネが私に言う。私は飴玉を口の中で転がしながら答えた。

 

「あいつらは?」

 

「どこかの悪い組織だよ。でもバックには大きい組織がついているみたい」

 

 しばらくすると、

 

「先生はここに」

 

 とサクネが動き出し接近していく。

 

「すみませーん、ヴァルキューレ警察学校のサクネですが……」

 

 彼女は生徒手帳を片手で開いて見せながら、

 

「ここで何をされているんですか?」

 

と質問した。

 

「なんだ? ガキが」

 

「ヴァルキューレ警察学校のサクネです。この古民家に何用ですか?」

 

「……お前みたいなガキには関係の無い事だ。さっさと消えろ」

 

「質問に答えてもらって良いですか? ここで何をされているのか、って」

 

「……取引の交渉だ。深入りするな」

 

「取引の割にはなんかやってたみたいじゃないですか。……説明してもらっても?」

 

「そもそも何故ヴァルキューレの連中がここに居る? 上が抑えていたはずじゃなかったのか?……まあいい。こいつ一人だけだ! やっちまおうぜ!」

 

 被疑者たちが一斉に銃を構えた。その直後、サクネは一人の懐へ飛び込んで背負い投げを繰り出して地面に叩き伏せた。

 

「このガキ!」

 

 奴らは銃を構えて発砲する。サクネは咄嗟に遮蔽物に飛び込んで銃弾を防いでから、一人に足払いをかけて転倒させた。そしてもう一人が放った弾を躱して、逆に相手の懐へ飛び込む。そのまま背負い投げをして地面へと叩きつけた。

 

「逮捕ーっ!!」

 

 サクネが叫び、手錠を複数個取り出して次々と嵌めていった。

 

「……サクネ、凄いね」

 

「これでもSRT出身なので!」

 

 騒ぎを聞きつけたのか、古民家の老人が玄関から出てきた。

 

「君達は?」

 

「ヴァルキューレ警察学校のサクネです。ちょっとこの連中が事情聴取拒否したのでちょっと荒事を……えへへ」

 

「とにかく、助かったよ。君達が居なかったら今頃ひどい目に遭っていたと思う」

 

 老人は優しい笑みを浮かべながら私達にお礼を言った。

 

「さて、増援を呼びますね」

 

 それからサクネの要請に応じて警察車両が到着。古民家に放火を企てようとした証拠も見つかり、ロボット達は全員逮捕された。こうして事件が一旦解決し、私達は古民家から立ち去った。公安局の方へ戻るのだが、今度はサクネの方に事件に関する無数の書類が舞い込んできた。

 

「書類、だるいなぁ……」

 

 そう彼女がぼやいていると、たまたま通りかかったコノカが声をかけてきた。コノカは公安局の副局長で、制服を着崩した格好をいつもしている。

 

「お、サクネお疲れさーん。公園占拠の件は珍しい手柄だったっすね」

 

「あはは、ありがとうございます……」

 

「さっき地上げ屋を取り締まったんだってね。独断専行の癖は相変わらずか〜、姉御きっとカンカンだよ」

 

「ああ~」

 

 サクネは苦笑いし頭の後ろに手をやった。その時だった。

 

「青島、こっちにこい」

 

 警察のジャケットを付けた局長、カンナが眉を吊り上げながらサクネを呼び出した。サクネはやれやれと肩を落として、局長室へと歩いていった。コノカもあちゃーと頭を押さえて私のほうに向き直す。

 

「青いっすね、サクネは。先生は間近で彼女を見てどう思いました?」

 

「まずはまっすぐな子だと思ったね。自分が信じるものに対して、まっすぐで」

 

「ですよね〜。でもあたし、彼女気に入ってるんすよ。突然無茶ぶり吹っ掛けてランニング20km課したって必死に食らいついてきたんで」

 

「それは確かに凄いね……」

 

 私はちょっと引き気味の返答をした。その時、局長室越しにサクネの怒声が響いてきた。

 

『だったら、何のためにヴァルキューレを背負っているというんですか!!』

 

『そのヴァルキューレを、お前が勝手に動かしてどうする!?』

 

 周囲の生徒もまたかと気にも留めない様子で通り過ぎていき、コノカもやれやれと肩を竦めている。

 

「姉御とサクネはずっとこんな感じすね。……にしても今回はやけに姉御が突っかかってるすね。子ウサギ公園近くの事件に触れて欲しくなかったんすかね」

 

 子ウサギ公園、サクネの筋書きが正しければミヤコ達はそこに戻ってきているはずだ。しばらくすると口論がヒートアップしてきたので、コノカも席を立って局長室へ入っていったのだった。

 

――

 

 夜のD.U.シラトリ区は眠らない街である。並び立つビルの明かりは煌々と輝き、道路を行き交う車やバイクのヘッドライトがその光に照らされる。帰宅途中の人から夜遊ぼうとする人まで、様々な人がこの街を闊歩している。そんな中、今日の仕事を終えたサクネと待ち合わせていた。

 

「おまたせしました、先生」

 

 モッズコートとは違った、黒のフード付きコートを羽織ったサクネがやって来た。

 

「いつものコートは?」

 

「ああ、今からミヤコちゃん達と接触するので違う格好にしないと。怪しまれちゃうじゃないですか」

 

「そうなんだね」

 

「さ、ミヤコちゃん達に会う前にちょっと買い物しましょうか」

 

 とサクネが私の背後に立ち、車椅子をゆっくり押し始めた。

 

「どこか行くの?」

 

「弁当屋です。彼女たち、きっとご飯に苦しんでいると思うので」

 

 彼女は繁華街の弁当屋に足を運んだ。店内に入ると、空きっ腹にはたまらない香りが鼻を突き抜ける。カウンターに大量の惣菜が並んでおり、サクネが売り子の猫の人に声をかける。

 

「すみません、焼肉弁当大盛り六つください」

 

「ありがとうございますー! お会計は……」

 

 サクネは財布からカードを取り出す。

 

「これでお願いします」

 

 機械にタッチしたらピッという音がなり、会計が完了した。

 

 弁当が完成するまでの間、店内で待つ。その時にサクネがぼやくように口を開いた。

 

「最近、ヴァルキューレの財政状況が良くないみたいで、銃を使うのは控えろって口酸っぱく言われちゃって」

 

「そうなんだ……」

 

「しかも私たちって舐められてるというか、ゲヘナの風紀委員会、トリニティの正義実現委員会と比べると弱いから、よく逃げられちゃうんです。SRTだったら良い装備とかあったんだけど……。まあ、近いうちに良い装備が入ってくるって噂程度に聞いているので、それまで我慢ですね」

 

 彼女の愚痴を聞いていると、店内の弁当が出来上がったのでサクネが袋を持って外へ出た。

 

「次はミヤコちゃん達のところに行きますよ」

 

 また彼女に車椅子を押され、繁華街から移動を開始する。ビル群を抜けて子ウサギ公園へ。公園は静まり帰っており、人の気配は感じられなかった。フードを被ったサクネはRABBIT小隊が占拠していたであろう場所へ。そこにはテントが張り巡らされていた。

 

 そこにまたしても警戒心マックスのサキが銃をサクネに突きつけていた。

 

「誰だ!……って、お前か」

 

 フードを外して、袋を地面に置いたサクネが両手を上げる。

 

「やあ、一緒に弁当食べない?」

 

 サクネがお気楽そうなトーンでサキを誘った。

 

「あのな、私たちとお前は敵同士なんだぞ。しかも誰かも知らん奴が持って来たものなんて、毒が入っているかもしれないじゃないか。警戒するのが当然だろう」

 

「えー、疑っちゃうの? 仕方ない、先生一緒に食べよう。せっかくの焼肉弁当が冷めちゃうしー」

 

「う、うん」

 

 サクネが袋から弁当二つを取り出し、私と一緒に食べ始めた。

 

「食べたかったら取って行っていいよ? ただし、取らなかったら私たちがもう一つ食べちゃうけど」

 

 サクネの選んだ弁当は中々のもので、炭火焼きの香りが食欲をそそる。目の前のサキも苦悩の表情を浮かべているし、テントから出てきた三人も弁当をチラチラと見ている。

 

「先生、この弁当はネットでの評判が良くて、それで気になってたんですよね。お昼休憩の時買おうとするんだけど、絶対行列とかできてて、平日の夜とかじゃないと中々チャンスが無くて……。いざ食べてみるとすごい美味いですね」

 

「うん、美味しいね」

 

 サクネは怪しい笑みを浮かべながら誘惑の言葉を四人に並べる。そして、負けたのは彼女たちだった。

 

「くっ……!」

 

 サキは弁当一つを取っていくと、ミヤコらも弁当を一つずつ取っていった。

 

「いただきます」

 

私達は弁当を食べながら雑談を交わすことにした。最初に口を開いたのはミヤコだった。

 

「サクネ、どうして私たちにこんな事を?」

 

「うーん、そうだね。理由は色々あるんだけど……、私もSRTに帰りたいから。そういった意味では一緒だし、影の支援者をやって閉鎖撤回できないかなって。それに、ミヤコちゃん達にも先生を知ってもらいたくてね」

 

「先生を?」

 

「うん。先生は生徒なら誰の味方でもあるから」

 

「事情にもよるけど、大体はそうだね」

 

 私は頷いて返し、箸を進めながら弁当の味を堪能する。

 

「お友達とかはまだ難しいかもしれないけど、RABBIT小隊も先生と話してみたら?」

 

 サクネが提案するが、まだ反応はイマイチだった。私からも何か話そうと、隣にいたサキに話しかけた。

 

「SRT特殊学園にいた頃のサクネってどういう感じだった?」

 

「あまり知らん。ミヤコの方が詳しいんじゃないか。でも口が上手いというか、相手の懐に入り込むのは得意だったな。周りに友達は多かったと思うし、営業とかに居たら結果を出せるタイプだ」

 

「そうだよね。そう思う」

 

 弁当の中身を空にしたサクネが今度はタブレットを取り出し、映像を見始めた。兵器や銃器について解説する番組で、マニアックな人達から人気な番組だ。

 

「おっ、やりすぎミリタリー大百科じゃん。私にも見せてよ」

 

「わ、私もみたいです……」

 

 モエとミユがサクネの背後に回り込み、一緒に画面を眺める。

 

 こうしてみるとやはりサクネのさりげなく距離を詰めるやり方は上手いなと思う。

 

 私はまだRABBIT小隊と距離を縮められていないが、いずれは彼女のように仲良くなれるだろうか。食事を共にし、夜は更けていっていった。

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