アビドスの6人目   作:____―--

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...And Justice for All 4

それは、突然やってきた。カンナから連絡が来たのだ。至急病院に来て欲しいと。何か嫌な予感がした私は急いですぐに病院へと向かった。

 

 病院に到着して受付に確認すると、カンナがわざわざ私のところまで来て案内をしてくれる。案内された先は病室で、サクネがベッドの上に横たわっていた。

 

「サクネ……!?」

 

「先生、彼女は昨夜、何者かに襲撃されて重傷を負いました。現場はコノカが検証しています。……幸い命に別状は無く、一、二週間ほどで退院できるとのことです」

 

「襲撃されたって……」

 

「はい、午後十一時頃に彼女はヴァルキューレの車両に乗って学校へ戻ろうとしたところ、爆発物で車両ごと爆破され、その後に銃撃されたと。犯人は見つかっていませんが、落ちていた薬莢から良い装備を使っており、コノカの勘によると犯人は手慣れているらしいと」

 

サクネは白い患者衣を着ており、身体に巻かれた包帯が痛々しい。彼女は目を閉じたまま、眠ったように横たわっていた。私はそんなサクネの手をそっと握ると、彼女の体温が感じられた。

 

 サクネは、カイザーコーポレーションに関連する組織からの怒りを買って襲撃されたのだろうか。もしくはヴァルキューレ警察学校に対する見せしめか。

 

「サクネは……大丈夫なんだよね?」

 

カンナに聞くと、彼女は静かに頷いた。

 

「はい。命に別状はありません。ただ、しばらくは安静にしてもらわないといけませんが」

 

「そっか……」

 

「先生、私もやらなければいけない事があるので、これにて失礼します。何かありましたらすぐに連絡してください」

 

 カンナはそう言って病室を後にしていった。その後ろ姿はどこか寂しげで、怒りというよりもやるせなさを感じ取れた。私も何もできない無力な自分に少し怒りを感じていた。しかし今できることはサクネが目を覚ますまで側にいることだけだった。私は手を握って彼女の覚醒を待つことにした。

 

 しばらくすると、サクネの手が少し動いた気がした。

 

「サクネ……?」

 

 彼女の顔を覗き込むと、彼女はゆっくりと瞼を開いた。

 

「……ん……先生? あれ、私何してましたっけ……」

 

「良かった、目が覚めたんだね」

 

 安堵のため息を吐くと彼女は身体を少し起こし、辺りを見回した。

 

「先生、私……どこか怪我でもしましたか?」

 

「覚えてないの? 昨日の夜に襲撃されて重傷を負ったんだよ」

 

 そう説明すると、彼女は包帯が巻かれていない部分を触りながら何かを考え込んでいった。

 

「ああ、やられたんでしたね。暗くて誰にやられたかは全く覚えてませんが」

 

「襲撃した人は?」

 

 サクネは首を横に振った。

 

「全く、でも私があんな事をやっていたからしっぺ返しが来たのかもしれませんね……」

 

「でも……。それは仕方のないことなんでしょ?」

 

「ええ、はい。私が選択して行ったことですから」

 

 彼女は苦笑いをして、掛け布団を握りしめた。

 

「先生」

 

 小さい声で弱々しげに呟いた。

 

「私、刑事ドラマに憧れていたんです。正義のために戦う、格好いい刑事になりたかったんです。でも一旦SRTに入学して、それから公安局に配属されて、汚れ仕事をやるようになって……。正義って何だろうって、ずっと考えてました。私は正しいことをしているのかな、と」

 

「サクネ……」

 

「先生、私……何が正しいのかもうわからないです」

 

 彼女は俯いて、掛け布団をさらに強く握りしめた。私は彼女の頭に手を置いて、優しく撫でてあげた。

 

「ここからは大人の問題だね。……私があの問題にケリをつけるよ。だから何か証拠になるようなものがあったら場所を教えてくれる? 私が動くから」

 

 そう言うと、彼女は驚いた表情で私を見つめた。

 

「先生……いいんですか?」

 

「足は動けないけど、口と頭は動くからね」

 

 するとサクネはオフィスの引き出しの鍵を私に手渡してくれた。

 

「引き出しの中に決定打となる証拠は無いですけど、証拠品の居場所は書いてあります。……先生、お願いします」

 

「うん、今は休んでて」

 

 私がそう言うとサクネは頷いて目を閉じた。引き受けたはいいものの、不安も大きい。足が動けない中、一人で証拠集めをするのは至難の業だ。でも、彼女を助けなければ。壊れそうな彼女に私と同じ面影をみたから。

 

 まずは一人で公安局のオフィスに移動する。そして誰も見ていない隙に引き出しを開けて、鍵を使って中を確認する。全てのファイルを急いでバッグの中に詰め込んでいく。急いで引き出しをしまい、何事も無かったかのように振舞って退室する。そして私は公安局から脱出したのだった。

 

 サクネが残してくれた書類などは、決定打とは言えないものばかりだった。カイザーコーポレーションが関係無いと尻尾切りしてしまえば、それで終わりだ。しかし唯一手掛かりとなり得るものがあった。それはヴァルキューレ警察学校の地下にある金庫と周辺の地図だった。金庫の中身は重要な書類が保管されており、その中に違法リベートの証拠があるかもしれないと彼女は言っていた。

 

 金庫はどう開けるか、どうやって問題起こさずに証拠品を持ち出すのか、そもそも持ち出すのは可能なのか。様々な問題を考えてみるも、自分一人では解決できない。

 

 だから、私は車椅子を引いて子ウサギタウンへ足を向けた。

 

――

 

 両手で必死に車椅子を回して子ウサギタウンの公園に辿り着く。道を走ってRABBIT小隊がいるキャンプへ駆け込むと、食事の準備をしようとしていたRABBIT小隊の四人が。彼女らは息を切らした私を見て驚いていた。

 

「先生? 今日は一人ですか?」

 

 すぐに私は右足の痛みを堪えながら車椅子から降り、前に倒れて頭を地面に着ける思いで下げた。

 

「助けてください……。サクネを、助けたいんです……!」

 

「お、おい! 足を痛めているのだろう、無茶するな!」

 

「ううん。足よりも大事なものを……私は守りたい……」

 

そう言って顔を上げたら、四人は驚いた表情で私を見ていた。

 

「……先生、サクネに何かあったのですか?」

 

 サキとミヤコに両肩を抱かれて身体を起こされ、私は事情を話した。サクネが密かに集めていた書類なども渡し、全部話した。ミヤコ達の方でも思い当たる事はあったようで、少し前にここら辺のロボット市民が仕切るカルト的な団体が公安局に襲撃されたのだが、その時の装備が最新鋭の物だったと。ミヤコ達もカンナらと接触し、またカイザーコンストラクションが子ウサギタウン再開発するため、武器と引き換えに公安局が放浪者たちの襲撃を支援させているのではないかという推測も話してくれた。

 

「先生、サクネが話してくれたことがもし真実だとすればこれは大きな問題です。市民に奉仕すべき警察学校が、私企業のために働いているわけですから」

 

「警察と企業が結託して市民を攻撃とか……意味わかんないなもう」

 

 ミヤコとサキはそう呟く。

 

「私のお願いは、ヴァルキューレ警察学校の地下金庫から証拠を盗み出して欲しいの」

 

「正気か? あの要塞に何百人いると思ってるんだ?」

 

「ちゃんとした支援があっても、難しいんじゃ……?」

 

 でも、助けられるのはほぼRABBIT小隊だけだった。警察学校自体が汚職されているとなれば、上位組織のSRT特殊学園が動くはず。今SRTを体現している彼女らが適任だ。

 

「連邦捜査部シャーレとして、超法規機関の権限を行使して支援します。だからお願いします」

 

「先生、それってさ」

 

 モエが私の方を向いて口を開いた。

 

「ヴァルキューレの負傷した生徒一人のために私達を動かすんだよね。しかもほぼ責任取るみたいなこと言ってさ」

 

「うん。……サクネもきっと望んでたはず。そのために私とRABBIT小隊を繋いでくれたのだろうし、私にすべてを話してくれたはず」

 

「……そんな真剣な顔されちゃうと、断れないね」

 

 モエはやれやれという表情で、ため息を吐いた。

 

「……私たちはSRT。キヴォトスにおける込み入った犯罪行為に対し、真っ先に投入される特殊部隊」

 

「秩序維持のため、犯罪者を速やかに制圧し……」

 

「可能な限り全火力を瞬く間に投下し……」

 

「気づかれる前にその場を去る」

 

 RABBIT小隊らが信条のような言葉を述べ、ミヤコが締めくくった。

 

「これはSRTがやらなければいけないことでしょう。みなさん、作戦の準備を。これより、ヴァルキューレ公安局の違法リベートに関する証拠を確保するため……『クローバー作戦』を、開始します!」

 

――

 

 午後十一時半、いよいよ作戦決行時間となった。私は公園のキャンプでモエと一緒に待機し、ドローンの遠隔操作でミヤコ達の後ろをサポートする。

 

「監視カメラはハッキング済だから、気にしないでOK~。ただ三十分しか持たなそうだからそれまでに完了よろしく」

 

 隣の席でノートパソコンに複数のハッキング機器を操作するモエがそう告げると、カメラに写るミヤコ達が慎重に次のポイントへ移動していく。

 

「厄介なセキュリティだね~。これはヴェリタスの副部長が手掛けたのかな?」

 

 ヴェリタスの副部長……。チヒロの事か? ワカモのバレンタイン騒動で、彼女はヴァルキューレのセキュリティ体制に憤慨していたからそれでセキュリティを組み込んだのだろうと余計な思考を振り払う。

 

「では、ポイントSまで移動!」

 

 ミヤコの指示で、彼女らは移動していく。私もドローンを操作し、彼女の後ろをついていったその時だった。突然、カンナから電話がかかってきた。

 

「モエ、カンナから電話が……」

 

「ん? いいよ、取っても」

 

 私はモエに断りを入れて、電話を取る。するとカンナの焦った声が耳に入ってきた。

 

『先生、青島について知りませんか?』

 

「サクネの事は何も聞いてないけど。病院にいたはずじゃ?」

 

『それが、病室からいなくなってしまって……。 わかりました、ご協力感謝いたします。何か分かったら連絡します』

 

 通話が終わり、モエにサクネがいなくなったことを伝える。

 

「うーん、でも今気にすることじゃ無いよね。今は任務に集中」

 

 ミヤコ達は地下の金庫室前の扉まで辿り着き、モエが扉にハッキングを仕掛ける。扉は電子式となっており、簡単に開けられない。

 

「モエ、まだか!?」

 

「今やってるっての! 私だって急いでるんだから!」

 

 モエとサキが言い争っている中、私は腕時計をじっと凝視していた。解除にかかった時間は三分、扉は開き三人が突入。私も操作して金庫内にカメラを回していく。

 

「例のリベートに関する証拠を探してください」

 

「じゃあ、私は左の本棚から」

 

「うぅ……暗い。私は右で……」

 

「私は高い所から見るね」

 

 ミヤコ達は目的の物を探し始めた。私もカメラで探していき、ドローン内からワイヤーを展開させて書類を一つずつ確認していく。

 

「『カイザーインダストリー』、記録は一週間前……これだ!」

 

 サキが書類を取り、ミヤコがそれを確認していく。

 

「これは……証拠として十分ですね」

 

「公安局のやつらに一泡吹かせられるな」

 

 一息ついたサキは書類を確保して、ミヤコに手渡した。しかしその時だった。ドスンという音が金庫内で聞こえ、二人が振り向くとミユが青い顔になっていた。

 

「と、扉、閉めちゃって……。ドアノブとか、無いタイプで開けられないかも……」

 

 サキとミヤコは扉を蹴り飛ばしたり、力づくで開けようとしたがビクともしない。どうやらこの金庫室はオートロック式らしく、内側からは開けられないようだった。

 

「ど、どうしよう……!?」

 

 慌てふためくミユにミヤコとサキは冷静に対処しようとするも、焦っているせいでうまく頭が回らないようだ。

 

「ちょっと、残り五分も残ってないんだけど?」

 

 モエが焦ったようにノートパソコンの時計を見て言う。私はドローンを金庫室の前に飛ばして扉をスキャンするが、すぐに解決方法が見つからなかった。せめてシッテムの箱を金庫まで持っていけたら、いやそれでも内側から開ける方法が無い。

 

「これはミユのミスだろう!?」

 

「誰のせいとか言ってる場合じゃないでしょ?」

 

「うぅ……死にたい……逃げたい……」

 

「み、みんな、落ち着いてください!」

 

 極限状況に陥り、焦りが表面化してみんなバラバラに言い争いを始めてしまう。ミヤコは自信をくじかれたのか、冷静さを欠いていた。

 

「どうすれば……。 私は……どうしたら……!」

 

 ミヤコが呟く。その声を聞いて、私は冷静になれた。一度深呼吸し、心を落ち着かせる。

 

「ミヤコ」

 

 ドローン越しに、私はミヤコに声をかける。

 

「RABBIT小隊の隊長だから、まずはみんなをまとめないと」

 

「先生、ですが私は何もできない! 私自身を信じられない……!」

 

「じゃあ全員、五秒だけ静かにして」

 

「いったい何を……!」

 

「いいから!」

 

 私は一喝して全員を黙らせる。そして数秒間沈黙が続いて、口を開いた。

 

「落ち着いた?」

 

「は、はい。でも……」

 

「ミヤコは全部一人で背負わなくていいよ」

 

 私は、ドローン越しにミヤコに語りかける。

 

「みんなを信じてあげて」

 

「信じて……」

 

「その代わり、他のみんなもミヤコを信じること。彼女の指示には従い、そして自分の持てる力を最大限に発揮する。できる?」

 

「は、はい」

 

 ミヤコは頷きながら返事を返してくれた。他のみんなも私の言葉に聞き入っているようだった。

 

「じゃあ、みんなはミヤコの指示に従って。どうしようもないときは隊長のアイデアを信頼する」

 

 ミヤコは深呼吸し、みんなを鼓舞する。

 

「先生、ありがとうございます。では、故意に警報を鳴らしましょう。鳴らしたらヴァルキューレ警察学校の方が金庫を開けに来ますので、そこから脱出し、警報が鳴っている状況下でORPまで強行突破します。いいですね?」

 

「了解!」

 

 それから五分後、警報が鳴り響く。金庫外から雑談と足音が近づいて来るのが聞こえる。やがて、金庫が開けられヴァルキューレ警察学校の生徒が中に入ってきた。

 

「猫ちゃーん、出ておいてー。ネズミはちょっとあれだけど~……」

 

 二人入ってくる。サキと合図を合わせ、彼女は一人を組み伏せて気絶させる。私はドローンから電気ワイヤーを展開し、もう一人を気絶させた。

 

「脱出しましょう! 付いてきてください!」

 

 ミヤコが先頭を走り、私達も追うように走る。

 

「ミヤコ、ドローン内にはスモークグレネードが三個入っている! 指示で射出できるから!」

 

「了解です! 視界が開けたところでは遭遇しないように、接敵する際はこちら側から意表を突く形で!」

 

 そしてヴァルキューレ警察学校と交戦開始。ミヤコの細かい戦術指示にみんなも従う。ハッキングで防火扉を誤作動させれば、トラップで足止め。道中、生活安全局のキリノとフブキも軽々しく倒していく。次々と階層を上って、屋上ヘリポートへ近づいていく。

 

「誤作動起こした火災探知機、水浸しの床……。電気ワイヤーをお願いします!」

 

「了解!」

 

 ミヤコに言われるがままワイヤーを射出すると、ヴァルキューレ生が感電して気絶した。

 

「視界が開けているので、スモークを柱の間に!」

 

 スモークグレネードを射出すると、視界が遮られる。その間に倒しては移動、倒しては移動を繰り返していると、屋上ヘリポートへたどり着いた。

 

 モエが操作するヘリが到着するのには、五分ほどかかるようで、バリケードの設置や地雷の設置などを行い、待機しようとした。しかしすぐに何者かがこちらにやってきた。

 

「……またしても貴様らか」

 

 十階建て超えの建物の外壁をよじ登り、公安局長のカンナがヘリポートに到着した。

 

「貴様らは包囲されたも同然! 無駄な抵抗はやめろ!」

 

 カンナが銃を構えるが、ミヤコは堂々と前に立ちはだかった。

 

「公安局長」

 

「あんな目にあったばっかりで全く懲りないとは、気は確かか? 無駄な抵抗ばかりして、迷惑をかけ続けるのはやめろ」

 

「サキ、出してください」

 

 ミヤコの指示でサキは証拠をカンナに見せつける。カンナは知っていたのか、微かに動揺を顔に浮かべた。

 

「突然、ヴァルキューレが新しい装備に変えたもんだから、何かあると思っていた。それに、向こう側から内部告発が届いたのさ」

 

「キヴォトスの治安を担当するヴァルキューレ警察学校が、私企業との取引において犯罪行為に手を染める……これは、確実に問題かと思われます。公安局長、これをあなたが知らなかったはずがありません」

 

 サキとミヤコがカンナに証拠を突きつけ、次々と言葉を並べていく。そしてミヤコが真剣な表情でカンナに問い詰めた。

 

「正義を志していた生徒もいるというのに、その正義が踏みにじられているのはどう考えていますか!!」

 

 ミヤコは怒りに震えながらカンナにそう問いかけた。

 

「……」

 

しかし、カンナは黙ったままだった。

 

「……本当に言いたい放題だな、貴様たちは」

 

カンナは、怒りに震えていた。

 

「貴様らには特権がある。そしてその上で正義を論じている間に、私たちが何をしていたか知っているか。汚い現場で、どれだけ妥協に塗れながら公務を処理していたことか!」

 

 怒りに震えた声で、カンナは続けた。

 

「それが社会だ、現実だ! 手を汚さずに、正義を掲げ続けることなどできない! 貴様らのようなガキに、それが分かるか! その判断をせざるを得なかったこの気持ちが!」

 

 カンナだって辛いはずだった。正しい正義に憧れていた部下に汚れ仕事を強制し、目を背けて、それが社会だと言い聞かせて。しまいには、部下を守ることすらできない。

 

 彼女の咆哮にみんなが一歩退く中、ドローンを動かして彼女の近くに来た。

 

「カンナ」

 

「その声は……先生でしたか」

 

 ドローンのカメラが、カンナの顔を映す。彼女は怒りに震えながらもどこか悲しそうだった。

 

「信念を貫くのは、大変かもしれない。それでも……最終的に自分の未来は、自分で判断し続けていくものだよ」

 

「それでも……自分の信念だけに従っていたら、私は全てを失ってしまう……! こんな中途半端な立ち位置で! 私には、何もできない!!」

 

「あなたを慕ってくれる部下が一人居たはず」

 

「青島? ですが私は彼女を守れませんでした。私を慕い、公安局の実情を一番重く受け止めている彼女を……」

 

「それでもサクネはまだあなたを慕っているよ。今のあなたを見て、悲しまないわけない。だから、一緒に」

 

 ドローンはカンナの側に寄る。

 

「大丈夫。状況は大変だろうけど、辛いだろうけど。それでも行き先は、自分で決められる。きっと付いてきてくれるはず」

 

 カンナはミヤコ達に向けていた銃を下した。

 

「公安局長、あなたの方にも正義がきっとあるのでしょう。その正義は私たちと少し違うだけです。……サクネをもう少し信じてあげてください」

 

 やがてヘリが到着し、ロープが下ろされる。

 

「総員、ハーネスを準備を。順番に離脱します」

 

 ミヤコが指示し、撤収作業に入ろうとした時だった。

 

 ミヤコの足元に一発の銃弾が撃ち込まれた。それはカンナではなく、別の生徒によるもの。ヴァルキューレ警察学校の屋上にて、夜風にモッズコートがはためいている。

 

「あなたは……!!」

 

 包帯巻いたままの青島サクネが、カイザー製の銃を手にミヤコの方へ向けていた。

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