アビドスの6人目   作:____―--

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今更ですが、数年活動してきて初めて評価バーに色がつきました。
作品を評価してくださった6人の方に感謝を申し上げます。



Homecoming 4

カイザーローン、キヴォトス史上最悪の企業グループであるカイザーコーポレーションのグループ内企業の一つで非合法な手段で資金をやりくりしている。

 

 彼らはアビドス高等学校に対して法外な利息での借金を課しており、全て返済が終わるのは約300年先とされている。そんな事をしていたら、アビドスの未来なんて無い。今思うと、そんな学校にどうして在籍していたのか、私自身でも不思議に思う。

 

 今日は借金取り立ての日という事で、カイザーローンの連中がアビドス高等学校へやってくるとの事。部室内で溜め込んだ札束を一枚ずつみんなで数を数える。利息分は700万超えと、なかなかの金額である。

 

 それを現金で渡せというのが、カイザーローンの奴らの要求だ。数えきったら、細工したアタッシュケースの中に札束を詰めて、それをカイザーローンの社員に渡して終わりである。ひとまずは今月分は乗り切ったと、安堵していた。

 

私は、ふと疑問に思ったことを口に出す。誘導のために。

 

「カイザーローンの人達はなぜ現金での取引を? 電子などで取引したらやましい事情でも?」

 

すると、アヤネが答える。

 

「カイザーローンは、その……。色々と黒い噂があるんです」

 

と、少し言葉を濁した。そしてホシノが続けて言う。

「まあ、そういう奴らだから仕方ないよね〜。先生だって知ってるでしょ? あの会社のこと」

と、私に話を振ってきた。私は知らないふりをしつつ、答えた。

「えっと、まあ……」

 

実際、様々な学園の首脳陣がマークしているなどそういう情報から良からぬ連中だというのは明確では無いにしても、その片鱗は見えている。そして、時間が経ったと思い指示を出した。

 

「アヤネ、アタッシュケースの座標辿れる?」

「はい、今出します!」

 

 アヤネがタブレットを操作して、アタッシュケースの座標を割り出した。定期的に発信されている座標を辿ってみると、遠回りしながらもある場所に移動していることが分かった。

 

「先生、いつの間にそんな仕掛けを?」

「うん、好奇心でね」

と、ノノミに嘘の返答をする。しかし、ホシノからまたも警戒されるような目線を密かに向けられているのを私は感じ取っていた。しかし、何らかの行動を起こされることはなかった。

 

「向かっているのは……ブラックマーケット!?」

 

 ブラックマーケット、どの学園も干渉出来ない違法な取引を行う闇市場だ。カイザーローンはそこへ向かっているようだ。

 

「へえ〜……」

と私はあからさまに呆れるような、密かな怒りを孕ませるような声色を出した。

 

「それ、ちゃんとした借金なのかな?」

と私はアヤネに聞く。

 

「……危険ですが、調べる価値はあります」

「ん、ブラックマーケットへ行こう」

シロコがそう提案する。他の皆も頷いた。

 

――

 

どうしても私は綺麗な場所に違和感を感じてしまう性分だと、自身で自覚した。サイケデリックなネオンが氾濫するこの地区には、不思議な落ち着きがあった。

 

 ブラックマーケットは、普通の人なら一生関わることはなさそうな場所だ。不良生徒やサングラスを着けた怪しげな人物がうろついている。

 

 アヤネを除く四人と一緒にブラックマーケットを歩いていくのだが、皆は初めて来たのか物珍しそうに周囲を見渡している。ただ、ホシノだけは「学区の外は変なものがあるんだよ」と経験があるような口ぶりだったが、濁すようにそれ以上は語らなかった。彼女は三年生だし、ヤンチャやってた過去もあることから、訪れたって不思議じゃない。

 

 と、そんなブラックマーケットを進んでいくと、突如銃声が鳴り響いた。ブラックマーケットだから別に大したことでもないように感じるが、問題はその次だった。トリニティ総合学園の制服を着た少女が逃げるように走ってくる。

 

「うわああ!! どいてください!」

 

 と、少女は叫ぶ。その後ろからチンピラ達が追いかけ、少女がこちらに走ってくる。

 

「すみません通ります! きゃっ!」

私とぶつかってしまい、少女は尻もちをついた。

「ごめんなさい、怪我は無い?立てる?」

「あうう、私こそごめんなさい!」

 

立ち上がった私は手を差し伸べる。少女は手を掴み、立ち上がった。そこにチンピラ達が追い付く。

 

「どけ! あたしが狙ってるのはそこのトリニティの生徒だけなんだよ!」

 

チンピラの一人が叫んで、銃を向けてきた。その瞬間、咄嗟に拳銃を抜き発砲していた。ワンテンポ遅れて、ホシノもショットガンを発砲した。さらに遅れて三人が掃射し、チンピラ達はKOされた。

 

「ブラックマーケットの中は気が抜けないねえ〜」とホシノがぼやく。

 

少女は見覚えがあった。阿慈谷ヒフミという名前で、モモフレンズというマスコットキャラクター群をこよなく愛する少女だ。背負っているペロロのリュックが彼女の狂信者ぶりを象徴している。

 

「あ、ありがとうございます! 捕まっていたら、学園に迷惑がかかるところでした」

と、ヒフミが感謝の言葉を述べた。

「気にしないでいいよ。ところで、トリニティの子がどうしてここに?」

「実は、ここでしか手に入らないグッズがあるって聞いて、それで……」

 

と彼女は答えながらその目的の品を見せてくれた。口元にアイスクリームを突っ込まれたペロロのプチ人形だった。

 

「ペロロ様が好きなんだ。私は小銭ポーチでちょっと持ってて……」

 

 そこでまたも銃声が鳴り響いた。さっきのチンピラ連中の増援がまた現れた。

 

「うへ〜、また来たよ。トリニティの子は先生と一緒に物陰に隠れててね。先生が飛び出すかもしれないからちゃんと見張ってて」

と、ホシノは私とヒフミを押して物陰に隠れさせた。そして四人が飛び出し、チンピラ達の方に向かっていった。そんな最中に、私は再びペロロの小銭ポーチをヒフミに見せていた。

 

「これ、百貨店に行った時にコラボしてたから買ったんだ。可愛いなって」

「そうなんですね! もしかして、モモフレンズ大好きですか?」

「そこまで知らないかな。名前は知ってる程度で」

「えっ、そうなんですか! ……そういえば、お互いの名前も知りませんでしたね。私は阿慈谷ヒフミです」

「先生だよ、よろしくね」

 

と自己紹介をしたところ、向こう側で手榴弾の炸裂音が鳴り響き、チンピラ達が吹き飛んだ。

 

「先生終わったよー」

 

と、ホシノが手を振ってくる。他の三人も戻ってきていた。

 

「ブラックマーケットの治安部隊が来る前に、早くこの場から離れましょう!」

ヒフミがそう言って、私達は騒ぎが起きた現場から抜け出した。

 

――

 

 抜け出した先は、ブラックマーケットの別区画にあたるエリア。屋台が並んでいる中心街だ。

 

 なんだかんだヒフミはホシノ達に押し切られ私達と同行することに。このまま行くと、アビドスの皆がアレをしてしまうので、そこにトリニティの生徒が巻き込まれたら学園間の問題になりかねないか心配であるが、今は一休みのつもりで皆と一緒に屋台のたい焼きを食べることに。

 

 セリカが私の前にやって来て、

 

「先生は何味がいい? 特にないなら、適当に選ぶけど」

 

と、私にたい焼きを勧めてきた。

 

「抹茶味かな、無かったらあんこで」

と、私は答えた。しばらくして、ノノミがたい焼き入った袋を持ってきて

 

「はい☆ 先生もおひとつどうぞ」

「ありがとう、いただくね」

 

と、渡してくれた。私はそれを受け取って、抹茶味のたい焼きを一口齧る。そして、その甘みに舌鼓を打ちながらたい焼き袋をまじまじと見た。

 

「先生、もっと食べたいんですか?」

「ううん、何でもないよ」

 

 前の世界線にて、紙袋はヒフミの強盗マスク代わりに使われた。それがあのファウスト誕生へと繋がった。勝手に煽てられて作り上げた偶像なのに、そのファウストがヒフミとアビドスの繋がりになったのだと考えると、少し複雑な気分に。彼女の高らかな叫びが私達を呼んだあの時をふと、思い出した。

 

「ヒフミ、そろそろ私達の探しているものを言ってもいいかな?」

「はい! ここはあまり知らないですけど、答えられる範囲なら」

 

 嘘をつけ。いっぱい知っているでしょうが。と心の中でツッコミを入れながら、口を開いた。

 

「怪しい金融機関とか、銀行とかそういうの知らない? ブラックマーケットで」

 

彼女は少し考えてから答えた。

「この近くに、ブラックマーケットで一番大きい闇銀行ビルがありますけど……、どうかしましたか?」

「払ったお金がどう使われているのが知りたくて」

とぼかしながら答えると、アヤネから通信が。

 

「先生、マークしていた現金輸送車が接近中です。車の周囲には重装備の護衛が付いているので、ひとまず身を隠した方が良さそうです」

 

と、アヤネから指示を受ける。私はホシノに目配せして、ハンドサインを送ると頷いた。

「みんなー、休憩時間は終了〜」と、ホシノが声を掛ける。

 

私達は急いで裏路地に隠れることに。ヒフミは困惑しながらついて行く。見つからないように現金輸送車を追跡すると、ヒフミの言っていた大きな闇銀行に辿り着いた。

 

「先生、ここからどうしますか?」とアヤネから通信が。

「ドローンのマイクをカイザーローンの連中に向けて」

アヤネはドローンを操作して、マイクをカイザーローンの社員に向けた。

 

『今月の集金です。金額は……』

『確認しました。集金記録書類に署名を……』

カイザーローンの連中と闇銀行の行員と書類のやり取りをしているのを目視で確認できた。

『……はい、確かに頂戴しました』

と、行員は書類を受け取り、建物内に入っていく。

 

「クロだ」

 

と呟くと、爆発寸前のセリカが「信じられない……。私達のお金が犯罪組織に横流しされてる……」と怒りを顕にしていた。

 

「先生、これからどうしますか?」

「取引の証拠となるものが欲しいけど、どれが……」

と呟いたところでヒフミが

「あの、さっきの取引記録とかはどうでしょうか?」と提案してきた。

「ああ。でも、どうやって取る?」

「えっと、それは……」とヒフミが口ごもる。

 

すると今までで最もやる気に満ちたシロコが覆面マスクを手にして、とうとう放った。

 

「ん、銀行強盗で手に入れる」

 

「シロコ、それは流石に……」

と私が言うと、ホシノが口を開いた。

 

「ん〜……、でもそれしか方法はなさそうだね〜。先生はどう思う?」

「……条件つけさせて。証拠以外は盗まないこと。ちゃんとしたお金で、アビドスの借金は解決させる」

「OK〜、じゃあそれで。みんな、準備は良い?」

「待って」

 

と私はホシノを止める。

 

「ヒフミ、ここからはアビドスの問題だから、もう帰っていいよ」

「で、でも……」

「大丈夫。後は私達に任せて。トリニティの子がアビドスの連中と一緒に犯罪行為したなんて、言われたくないでしょ?」

「……」

ヒフミは黙った。少しして彼女は口を開いた。

 

「……すみません先生、私もやらせてください! せっかく助けてくれた人達が困っているのに、何も出来ないのは嫌です!」

「でも……」

 

 私が反論しようとしたところで、シロコが私の肩を叩いた。

「先生、ここは彼女の意志を尊重してあげて」

とシロコが私に向かって言った。私は少し考えた後に答えた。

 

「……自己責任だよ。分かった」

「ありがとうございます!」

 

 ヒフミは感謝の言葉を述べた。

「ごめんね、アヤネ」

「いえ、もうこうなった以上は止められませんので……」

とアヤネは答える。私も銃を持とうとしたところで、またも全員に止められた。

 

「先生は後方支援で」

と、ホシノ。

 

「……脱出用の車を調達してくる。それでいい?」

そう返すと、皆は頷いた。シロコから覆面マスクを受け取り、五人は銀行へ。私は付近の駐車場へ向かった。

 

――

 

『先生、そろそろ準備完了するよ。車は?』

「物色中」

 

と耳にかけられた通信端末からシロコの声が聞こえてきた。シッテムの箱を片手に人気の無い立体駐車場を歩き回り、候補の一台が目に止まった。黒い4ドアのセダン。キーレスタイプ。

 

「アロナ、この車の持ち主と最後に使った時間を探って欲しい」

『持ち主はカイザーローンのようです! 最後に使われたのは4ヶ月前、恐らく担保に取られて、持ち主が変更されたのでしょう』

「好都合だね。アロナ、ハッキングして持ち主を書き換えて」

『了解です!』

 

 数秒後に車のドアボタンを押すと認証が通り、ドアが開いた。

 悪い事をしているのは承知の上だが、元の持ち主がドジを踏んだのが悪いし、今はあのカイザーの物だ。そう頭の中で言い訳をしつつ、私は運転席に座り、エンジンをかけてハンドルを握り締めた。

 

「確保した。今から私の事は"ポーター"と呼んで」

『……わかった。ポーター、0号の指示に従って』

「せ……。ポーターさん! もう5人は実行しているので、指定したポイントに車を向かわせて下さい!」

「了解」

 

 0号、もといアヤネの指示で私は覆面マスクを被り車を発進させた。ペダルを踏んだ感触としては、スピードは申し分なく、追っ手を撒くのに十分な性能だ。

 駐車場から大通りを出て、銀行ビルへ向かう。もう周辺は慌ただしい雰囲気に包まれていた。

 

『ポーター、ブツ確保して引き上げに入った。あとどれくらい?』

「あと5秒!」

 

 そう言った瞬間、爆発で壁をこじ開けられた場所に到着。停車直後に破壊された壁から五人が煙幕の中からシルエットを現した。

 

「クリスティーナは助手席! 他は全員後ろ!」

 

 叫ぶと、ノノミが助手席に。他が後部座席に乗り込んだ。そして、彼女達を乗せ終えると私は急発進した。

 

「待って!! 市街地でこんなスピード出すの!?」

「きゃあああ!! こんな所で私死にたくありません!!」

 4号ことセリカ、ファウストことヒフミが悲鳴を叫んだ。

 

「大丈夫。なんとかなるから」

 大通りを逆走し、障害物を躱していると、重機関銃搭載されたマーケットガードの車両が後方から追いかけてくるのが見えた。そして銃弾が飛んできて後部のガラスを突き破る。

 

「あうう……! マーケットガードまで……」

「先輩! 盾で機関銃から守って!」

「ん? あ、りょーかい!」

 

 1号ことホシノが盾を後方に展開し、銃弾を防げば、ブレーキを踏んで交差点を曲がったりする。その度にキツキツの後部座席は阿鼻叫喚となり、慣性に釣られて体を左右へ揺らす。

 

「うへ〜! おじさんがみんなにサンドイッチにされてるよ〜!」

と、追いついたマーケットガードの車両が横に並ばれ、体当たりを仕掛けて来る。

 

「クリスティーナ、横にいる奴に全弾発射!」

「アイアイサー☆」

助手席のノノミがマシンガンを真横の車両に向けて乱射すると、蜂の巣にされた車は爆破して、炎上した。

 

「グッジョブ! 0号、ブラックマーケット内で建設中の橋を教えて欲しい!」

「えっと、データを送ります! 何をするつもりですか?」

「飛び越えて撒く!」

「ええーっ!?」

 

 全員の悲鳴を無視して、私は大通りを外れてアクセル全開に。工事中の看板も薙ぎ倒して、建設中の橋を全速力で駆け抜ける。

 

 そして、何故か丁度いい傾斜のジャンプ台のようなものが置いてあった。迷いなく飛ぶことを選び、傾斜にタイヤを滑らせながらジャンプ。空を飛んで、橋から橋へ飛び越えた。

 

 追っ手も橋を越えようとせず、私達はそのままブラックマーケットを駆け抜けていった。

 

――

 

 ブラックマーケットの外、黒の車を乗り捨てて、全員が覆面マスクを脱いだ。

「はあ……、もう死ぬかと思いました」

「でも楽しかった」

「二度とごめんよ! あんなの!」

「ジェットコースターみたいで楽しかったです!」

 

 車を降りた私は、シロコが抱えるバッグを見つめた。証拠の書類だけを盗むように言ったはずだが、明らかに大きな膨らみがある。

 

「ブツ、見せて」と言うとシロコがバッグを地面に下ろす。ファスナーを開けると、中には大量の札束が入っていた。

 

「……最初に言ったことは覚えてる?」

「これは……銀行員が勝手に入れていたから、その……」

と言い訳をするシロコ。私は大きな溜め息をついて、書類だけをホシノに手渡した。

 

「このお金、どう処分しようか」

「私が適当に処分しておきます」

「お願い」

とバッグをノノミに手渡す。そして、私は五人に告げた。

 

「もうこんなことは二度とやらないでね」

『先生、一人こちらに向かってきてます』

 

と、アヤネの報告が。全員再びマスクを再着用し私はすぐに銃を構えたが、ノノミが銃を抑えた。

 

「先生は大丈夫ですよ」

 

 現れたのは……便利屋68のアルだった。走ってきたのかかなり疲労しており、敵意などは一切感じられなかった。やるのかやらないのか、目配せで確認するも、結論が出ないまま彼女が口を開いた。

 

「あ、あの、さっきの銀行強盗の襲撃を見せてもらったけど……、超クールだったわ! 無駄の無い動き手口で、カーチェイスは映画のような迫力で、もう最高だったわ! だから、その……。名前とかチーム名とか教えて欲しいんだけど、駄目かしら?」

 

 と、アルは目を輝かせながら聞いてきた。悪ノリでノノミが前に出てきて

 

「私達は、覆面水着団でーす☆」

「覆面水着団! 超クールね!」

 

 と、ホシノも悪ノリで出てきて

「あ、この子はクリスティーナちゃんで、この子はブルー。紙袋マスクの子はリーダーのファウストで…」

「ええっ!? あうう、まだ続いてたんですね……」

 

と、ヒフミが恥ずかしそうに顔を俯かせている。

 

「その、ドライバーの方は?」

「雇われ、今回限りの契約よ」

 

するとノノミが私の腕を抱き締めて

 

「この方はポーターさんです! 口数少ないですけど、とってもクールでかっこいいんですよ!」

「……契約は完了した。あなた達とはもう赤の他人はずだけど。ルール2に反するから、覆面水着団とか名前とか私にとってはもう関係ない」

「きゃー!! プロフェッショナルの仕事人って感じで超痺れるわ!!」

 

 役割を一時的に被っているものの、アルに対するウケは上々のようだ。

 

「じゃあ、この辺にしておくわ! 覆面水着団とポーターさんの今後の活躍に超期待してるから!」

 

 そう言って、アルは走り去っていった。

 

「ヒーローショーではしゃぐ子どもみたいだった」

「……アビドスに帰ろう。書類を確認しないと」

車を捨てて、帰路につくことにした。

 

――

 

 学校へ戻り、部室内で盗んだ書類を全員で確認した。結果、アビドスに襲撃を仕掛けてきたヘルメット団、セリカを誘拐しようとした連中、裏で糸を引いていたのはカイザーコーポレーションだというのが、明確に分かった。

 

 黒幕を全員で認識をしたのは良いにしても、問題はその後のヒフミの行動だった。カイザー連中が犯罪組織と明確に繋がりがあること、アビドスの現状、この二点を、トリニティ総合学園の生徒会『ティーパーティー』に報告しようとしている事だった。

 

 ホシノが難色を示したように、私も政治的なリスクを懸念したが、前の世界の先生はヒフミの行動を止めない選択をした。その選択の影響として、ホシノ先輩を取り戻す戦いの時に砲撃支援をしてくれた。

 

 だが、私はそれ以外の影響を全く知らないのだ。先生とトリニティの関係性で知っている事なんて、あの調印式で先生が撃たれた事、その後の戦いでみんなと戦った事以外、全く知らない。

 

 前の世界ではアビドスの生徒として、この学校の生徒として過ごしてきた。先生が何をしたのかなんて、恐らくほんの少ししか理解していないのだろう。

 

『あなたに求めるのは、正しい選択ではなく経験です』

 

 不思議な電車の中、水色髪の女性に告げられた言葉をふと思い出し、頭の中に反響した。でも、その言葉の意味をまだ理解していない。

 

 私は先生だ。なら、前の世界線の先生と同じ選択するべきだろう。今の判断材料なんて、私の記憶と先生の選択だけだ。

 

 難色示すホシノに「信じてみよう」と伝え、ヒフミがティーパーティーに報告するのを黙認した。

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