アビドスの6人目   作:____―--

74 / 83
最終編 -BABEL-
アクロの丘 1


 荒れ果てた世界、並び立つビルはネオンを発さず、崩れ落ちた跡だけが残っている。灰色の空が覆う誰も居なくなった世界にて、私とシロコは戦っていた。

 

 そこに憎悪や悲しみといった感情は存在せず、ただ純粋な敵意と殺意だけがそこにあった。

 

 爆薬も銃弾もありったけ使えば、格闘戦もする。戦いは長く続いていたが、決め手になったのはシロコのドローンによるロケット弾攻撃だった。

 

 直撃し、痩せ細った包帯だらけの体は一瞬で真っ赤に染まっていく。四肢の骨は軋みあげ、筋肉は断裂し、血反吐を吐いていた。ここから戦う方法も助かる方法も、どちらもない。

 

 私を見下ろしていた変わり果てたシロコは一歩ずつこちらに歩み寄ってくる。そして持っていた真っ黒なアサルトライフルをこちらに向けた。断頭台で首を落とされるのを待つかのように。

 

「シロコ……」

 

 掠れた声で彼女の名前を呟く。彼女の瞳をよく見てみるとかすかに何かが揺れ動いているのがわかったが、それが何かはわからなかった。

 

引き金に指がかかる。私は目を閉じて、最後にシロコとの思い出を想起した。初めて会ったときのこと、一緒に過ごした日々のこと。

 

「最後に殺すのが、私だったらいいね」

 

 炸裂音とともに左胸に穴が空いた。前の世界での、私の最後の記憶だった。

 

『先生、起きてください!先生!』

 

「ん……」

 

 アロナの呼びかけで私は目を覚ました。どうやら夢を見ていたようだ。

 

『連邦生徒会の緊急招集です! リンさんが先生にメールを送っているので今調べますね!』

 

 昼間のシャーレ、顔を起こして山積みの書類に目の前にパソコンの画面が映る。次に自分の両手を見て痩せてないことを確認し、左胸に手を当てて撃たれてないことを確認。

 

「リンちゃんから? ああ……」

 

 キヴォトス全域で超高濃度のエネルギー体が観測されたが、目視での確認はできず。各自治区の生徒を集めて原因と正体を突き止めたい、といった内容だった。

 

 とうとう始まった。恐れていたことが。

 

「行こう」

 

『了解です!』

 

 仕事を放ってシャーレを後にし、ヘリの音に気づかずに連邦生徒会の黒セダンに乗車する。ドライブモードにしてサンクトゥムタワーへと向かおうとしたが街の様子に異変を察知する。

 

「アロナ、この時間帯はこんなに静かだったっけ?」

 

『うーん……。確かに静かですね。……防衛室長の命令で現在、D.U.シラトリ区に厳戒態勢を敷いています!』

 

「厳戒態勢? そんな早くに……」

 

 その瞬間だった。砲弾が発射されるような音が遠くから聞こえ、私の車に直撃した。

 

「くっ!?」

 

 車が数回転横転する程度でなんとか済んだ。このセダンは防弾仕様なので、砲弾から身を守るためにはうってつけだった。しかし身動きが取れず、全身打撲に。周囲を見ると……カイザーの軍勢が四方を囲んでいた。明らかに過剰戦力だ。やがて数十人ほどのオートマタの部隊が車に近づき、ドアを開けて私を引きずり出す。と同時に囲んでスタンロッドで叩かれながら拘束される。

 

「うぐっ!?」

 

「超危険ターゲットだ。生死問わず無力化しろ」

 

 オートマタの兵士はそう言うと、私の頭に電極を張り付けてスイッチを入れる。電流が体中を駆け巡り、私は意識を失った。

 

――

 

 誰かの声がしている。と同時に両手足が縛られたまま椅子に座らされているのがわかった。目も布で隠されていて、何も見えない。シッテムの箱も手元には無い。

 

「データセンターからの接続も無駄と。あの箱を起動する手段を知っているのは……」

 

「あの先生だけか。やるぞ」

 

 知ってる生徒の声ではない。機械的な声、私を攫ったカイザーの連中だ。布袋らしきものを頭に被せられて、椅子を倒される。次に濡れた感覚と、水しぶきの音がした。

 

「っ!?……っ!!」

 

 水責めだ。苦しい、息ができない。布も濡れていて満足に呼吸もできず、私は悶えた。

 

「シャーレの先生。シッテムの箱を起動する方法を言え」

 

「それが人に頼む態度なの……? そんな手を使ってるから株価も落ちていくんだよ……」

 

「黙れ。早く言え」

 

「っ!?……がっ! おえっ……!」

 

 水責めの勢いは強まるばかりで、私は呼吸もままならなくなる。窒息寸前になったところで袋を外され、水を吐きながら呼吸する。頬に打撃を加えられ、口の中を切った。

 

「言え」

 

「……私しか、起動できない。私の指による生体認証が必要だから」

 

「なるほど。生体認証か……ならば」

 

 とそこで上から複数の銃撃音が。よく澄ませてみると聞き覚えのある声だ。しかし私の視界は塞がれていて、誰が来たのかはわからない。やがて部屋に二人の足音。

 

「はぁ…はぁ……。先生、大丈夫ですか!?」

 

「ご無事ですか? 先生」

 

 手足が自由にされる。ゆっくりと目隠しを取ると、そこにはサクネとカンナ。ヴェルキューレの二人がいた。

 

「打撲跡、布袋に水バケツ。……くっ、あいつら先生を拷問してたのか」

 

「先生、立てますか?」

 

 私は立ち上がり、カンナに支えられながら歩く。

 

「大丈夫、まだ動ける。サクネは……生活安全局だったんじゃ?」

 

「青島は……手のかかる奴でして、あちこちに配属変更された挙句、私が公安局に再度引き入れました」

 

「良かったね」

 

「……ええ」

 

 カンナはすこし照れながら言う。

 

「暴行罪、傷害罪、監禁罪、証拠次第では強要罪。あいつら、ただじゃおかないからね」

 

 サクネは倒したカイザーPMC、ヴァルキューレに偽装してた連中に手錠をかけていた。

 

「尾刃さん、ひとまず先生を連れてこのDUから退避をしましょう。状況も状況ですし、私たちで動いたせいで消耗も激しいはずです」

 

「そうだな。……先生、歩けますか?」

 

「いける。今の状況について、説明してもらえる?」

 

「ええ。その前にこれを返却しておきます」

 

 とカンナが取り返してきてくれたであろうシッテムの箱を渡されてから現在の状況について説明を受けた。

 

 六時間前、カイザーPMCが連邦生徒会を襲撃。行政委員会を解散させ、ブレインとなるサンクトゥムタワーを掌握。D.U.シラトリ全域に戒厳令を敷き、交通機関、通信網は遮断、ヴァルキューレも行政権を失い宙ぶらりん。

 

 大企業が武力で連邦生徒会を制圧するというアホみたいな事態になっている。……私が攫われている間、リンが開いてくれた会議も恐らく私の不在で何も進まずに終わり、会議終わった直後にカイザーらがリンらを監禁状態にしたと見ていい。

 

 ……まったく考えてなかった。カイザーコーポレーションという連中が何を仕掛けてくるかなんて。

 

「先生、大丈夫ですか?」

 

 カンナの声で私は我に返る。

 

「大丈夫、ちょっと考え事してた」

 

「そうですか……。とりあえずここから脱出しましょう」

 

カンナとサクネが先導し、私はついていく形で屋外へ。外はすでに夜で、DUの周りはカイザーPMCの兵士とオートマタが巡回する厳戒態勢だった。

 

「先生、こっちです」

 

 カンナの指示で動いていくが、

 

「見つけたぞ! 撃て!」

 

巡回していた兵士に見つかってしまった。私は咄嗟に遮蔽物へ隠れこみ、銃弾の雨が飛び交う中、カンナとサクネが応戦する。

 

「尾刃さん! ハンドガンが残り三十発しかないです! 手錠もそんなにありません!」

 

「わかった。……先生、私が囮になります。その隙にサクネと一緒に……」

 

 そこで彼方の方から銃声が聞こえてくる。

 

「なんだ!?」

 

と兵士がそちらを向いた瞬間、援護らしき弾丸が兵士らを襲う。

 

「ちわーっす。姉御とサクネ達、大丈夫っすか?」

 

「先生! 大丈夫ですか!?」

 

「うう……らしくない事しちゃった、どうしてこんなことに……」

 

 コノカ、生活安全局のキリノ、フブキが駆けつけてきた。

 

「あちゃー、三人ともボロボロっすね。こっからはあたし達に任せてくださいよ。あいつら、いつかぶん殴りたいと思ってたんすよ」

 

 公安局副局長のコノカがショットガンで兵士らを威嚇しながら言う。

 

「すまない、頼んだ」

 

 カンナが安心した様子で呟くが、サクネはキリノの隣に立って戦う。

 

「うう……。キリノ、生活安全局が恋しいよ〜。生活安全局の方が仕事量少ないし、残業もないし……」

 

「いえ、本官からするとサクネさんはやっぱり公安局が合っていると思います!」

 

 そのまま突破して進んでいくが、コノカを除いて消費は激しい。

 

「先生の指揮はすごいけど、頭数も支援も補給品も圧倒的に不利だってば! 援軍呼ぼうよ!」

 

「だが、今D.U.全域の通信網はシャットダウンしている……。かくなる上は……」

 

 フブキとカンナが話している中、シッテムの箱を握ってアロナを呼ぶ。

 

「アロナ、誰か助けを呼べない?」

 

「うぅ……難しいです。通信網のシャットダウンはサンクトゥムタワーから出された命令なので。でも、物理的距離が近い人なら呼べるかもしれません! 試してみます!」

 

 それからしばらく。画面の少女は悪戦苦闘の表情を浮かべながら無数のモニターとにらめっこしていた。

 

「すみません、たった一秒だけしか繋がることができませんでした」

 

「わかった、ありがとう」

 

 私はアロナにお礼を言って現実に戻る。目の前に落ちている12.7が五発入るリボルバーを見つめ、戦うべきかを考えていた。いや、今はまだその時ではない。大型リボルバーをホルスターにしまい、カンナ達に付いていく。

 

 やはり連中の動員力はすごいのか、じりじりと消耗戦を強いられている。

 

 無理やり使えるようにした注射器を使うべきか、それとも……。

 

「先生、あれ……」

 

 サクネが指さす方向を見ると、ドローンが飛んでいた。

 

「もしかして……!」

 

「ドローン稼働中。小隊は爆発に注意を」

 

 ドローンから煙幕弾が発射され、煙幕が辺りを包み込む。その時、掛け声と共にガラスを破る音。と同時に銃声音が鳴り、カイザーの兵士たちは倒されて行った。

 

「ミヤコちゃん達!」

 

「RABBIT1、先生と要人を確保。大丈夫でしたか?」

 

「うん、ありがとう。助かったよ」

 

 ミヤコらRABBIT小隊が駆けつけてくれたのだ。

 

「サクネ、大丈夫ですか? 負傷しているようですが」

 

「ずっと戦いっぱなしで……。正直しんどいかも」

 

「わかりました。先生、ここはRABBIT小隊に任せてください」

 

「うん。指揮するよ」

 

 私はRABBIT小隊に指示を出し、カンナやサクネと共に脱出。そのままRABBIT小隊たちが不法に占領している子ウサギ公園に辿り着いた。到着直後、カンナとサクネは負傷者の手当として寝かされ、私はRABBIT小隊の隊長であるミヤコに状況を共有した。そしてアロナから提案された現状を打破する作戦を伝える。夜通しで準備を行い、夜が明けた。

 

「シャーレを奪還するのですね」

 

「うん。正直、クローバー作戦の時より比にならない戦力が相手になるかもしれない」

 

 勝機があるとしたら、ヴァルキューレの一部が手助けしてくれること。戦力のカードを並べてみると、カンナ、コノカ、サクネの公安局、キリノ、フブキの生活安全局。ミヤコ、サキ、モエ、ミユのRABBIT小隊。クローバー作戦の時よりも大所帯だ。

 

「ちょうどいい。いつかシャーレをぶっ飛ばしたいと思ってたところだったんだ」

 

 サキがそう豪語すると、起きたばかりのサクネが口を挟んできた。

 

「おはよう。……シャーレに行くんだね。私もやらせてくださいよ」

 

「サクネ……。でも、その怪我じゃ……」

 

「怪我なら大丈夫! というか怪我してもヴァルキューレの外壁登れたのは知ってるでしょ? ……今の私は今まで以上に燃えているんですから。尾刃さん、ミヤコちゃん達と協力してくれるなら、こんなに熱くなれることはないですよ。……で、ミヤコちゃん。一時限定でうちをRABBIT5として加入させてくれない?」

 

 サクネはミヤコに交渉する。元SRT学園同士の因縁もあるのか。

 

「サクネ、RABBIT小隊は四人です」

 

「そっか……」

 

「でも、あなたの友達としてなら、私は歓迎します」

 

「ミヤコちゃん……」

 

 ミヤコから手を差し出されたサクネはその手を握りしめる。

 

「よろしくね」

 

 準備ができた段階で、いよいよシャーレ奪還作戦、『パセリ作戦』が決行される。

 

「各員、準備はいいですか?」

 

 ミヤコの号令にRABBIT小隊と公安局、そして生活安全局のメンバーが頷く。

 

「パセリ作戦開始!」

 

「シャーレの先生だ! 加勢しろー!」

 

 カンナを慕う待機中の公安局の生徒らも加勢に入り、一気に正面衝突する。

 

 吹き荒れる銃弾に爆風、そして戦車の砲撃。遮蔽物に隠れながら、ふと思うことが一つあった。先生として初めてやった仕事もこの場所だったなと。あの時はユウカ、チナツ、ハスミ、スズミの四人でシャーレを目指していた。あの時、戦場の音による反射的反応で銃を奪って我を忘れて前線に向かっていたなと。

 

「ミヤコ、ヘリが近づいてきている。ミユに対応させる?」

 

「いえ、ミユはサキの援護を。前方にクルセイダーを目視で確認。……ってサクネが突撃してる!?」

 

 遠方から確認すると、サクネが砲撃を避けながらクルセイダーのハッチを怪力でこじ開け、『逮捕だーっ!』と叫んで中に。やがて無力化して戻ってきた。

 

「公安局は化け物しかいないのか……?」

 

「……進みましょう」

 

 サキとミヤコがそんなやりとりをして、私たちも後に続く。追い込まれた兵らは建物内へ撤退し、SRTとヴァルキューレらがシャーレを包囲するという形になっていた。

 

「多方面からの同時突入で制圧しましょう!」

 

「聞きましたか! ハンマーを持ってきてください!」

 

 ミヤコの提案に公安局らも準備をして、RABBIT小隊も突入の準備を行う。

 

「サクネは私と一緒に。先生も私たちの後ろをお願いします」

 

「わかった」

 

 ミヤコの指示でRABBIT小隊は突入。その後ろから私たちも続く。建物内に入ると、まず建物内のエンジェル24に立て籠っていた兵らがRABBIT小隊に撃たれて倒れていった。

 

「……クリア! 店員のソラさんを救出しました!」

 

「このまま前進しましょう」

 

 ミヤコはそう指示し、RABBIT小隊は進む。そして私はRABBIT小隊の最後尾に付いていく。

 

「サクネは随分と公安局の方らに慕われてますね」

 

「可愛がられてる、かな? 皆して公安のバリ公と言われちゃってさ」

 

『あー。一度マークされた被疑者を徹底的に追い回すことから生まれちゃった異名だね』

 

 モエがサクネのあだ名を解説し、サクネは苦笑いする。

 

「……目標の再確認をしましょう。目標は二つあり、一つ目は建物の地下にある『クラフトチェンバー』を奪還すること。二つ目、建物のどこかに幽閉されている、リン行政官の救出」

 

「でも……人質がどこにいるかわからないのに、突入していいのですか……?」

 

『確かに人質の位置を把握せずに開始するのは、安全の保証が難しいと思うんだけど』

 

 ミユとモエがそう指摘すると、突如耳元の通信機に何者かが割り込んできた。

 

『それはこっちに任せてよ』

 

「モモカ、無事だったんだ」

 

 連邦生徒会のモモカがサンクトゥムタワーの地下通信センターから割り込んできていて、通信はRABBIT小隊にも聞こえるようにしていた。アユムと一緒に監視の目をかいくぐって、通信を割り込ませたのだろう。

 

『リン先輩なら、シャーレ居住区の北部、今は使われてない三番目の部屋にいるよ。なんとか通信ログを復旧させて突き止めたよ』

 

『先生、どうかリン先輩をお願いします』

 

「お手柄だよ、この作戦が終わったらうす塩味チップスビッグサイズ十袋買ってあげる」

 

『あー、明太子がいいかな……』

 

『私はコンソメ味でお願いします』

 

 アユムとモモカのリクエストを脳内のメモに残し、RABBIT小隊は進む。各部屋、区画を順番に制圧し、ついに地下のクラフトチェンバーへと到達。

 

「第一目標、確保しました」

 

「シャーレ内の安全が確保されてからリンを助けよう。モエ、どこが残っている?」

 

『ロビーに敵指揮官が立て籠もってる。単独だね』

 

「わかった。……リン、もう少し待っててね」

 

 次にロビーへと向かう。サクネがショットガンを持って一発、ドアを蹴り破ると続いて突入。

 

「くっ……!」

 

 カイザーPMC指揮官、ジェネラルだけがそこにいて、サクネがショットガンを向けながら投降を促す。

 

「お前がカイザーPMC指揮官か? 諦めろ。お前らの計画はこれで終わりだ」

 

「笑わせるな! 本当にこのままで終わると思っているのか!?」

 

 ジェネラルは手を動かし、何かを取り出そうとした瞬間……。咄嗟にリボルバーを抜き、腰あたりの位置で一発撃った。腕に命中し、持っていた装置らしきものを床に落とす。

 

「ぐあっ……!」

 

 続けて片手で発砲、二発目、三発目共に頭に命中し、ジェネラルは倒れ無力化される。だが、凄まじい衝動が止まらなかった。奴に近づいて見下ろし、銃口を向ける。

 

「あんたらが……あんたらが余計な横槍を入れたせいで……!」

 

 四発目、五発目を胴体に加える。

 

「ぐううっ!?」

 

「この程度じゃ、痛くないでしょ。ヘイロー持ってるお前らからしたらヘビー級チャンピオンのストレート程度にしか感じないはずでしょ……! だったら!」

 

 本気で奴の股間部目掛けて蹴りを繰り出す。

 

「うぐおあっ!?」

 

 奴は股間を押さえながら悶絶する。

 

「オーガニックなバットもボールも持ってないあんたじゃ大したことないでしょうが!! お前らのクソ企業のせいで秩序を滅茶苦茶にされ、キヴォトスが終わろうとしてるんだぞ!! もし失敗したら一生恨んで憎んで、ヘイローをぶっ壊してやる!!」

 

 拳を振り上げたその時、肩を掴まれる。

 

「先生、これ以上は過剰防衛です。……報いは私たちがしっかり受けさせますから。もう気絶してますし」

 

「っ……。ごめん、頭に血が上ってた……」

 

 私はリボルバーをしまい、サクネに謝る。

 

「……リン行政官を救出しましょう」

 

 ミヤコがそう言って、私はリンのいる部屋に向かった。電子ロックをハッキングしてもらい、扉を開ける。リンはベッドに座って待っているようだった。

 

「リンちゃん、ごめん。大遅刻だ」

 

 そう言って部屋へ歩き出した途端、強烈なめまいに襲われた。

 

「先生!?」

 

ミヤコとサクネが私の体を支え、ゆっくりベッドに座らせる。

 

「大丈夫ですか、先生」

 

「……先生は相当消耗してます。前日からカイザーPMCに襲撃され、拷問を受け、私たちが救出し、脱出してそこから寝ずにシャーレ奪還作戦を練ったり、指揮させたりと。……今の先生は疲労困憊です」

 

 ミヤコが説明するとリンが私に言う。

 

「先生、今は休んでください。今後は事前に決めた通りに私が指揮を執ります」

 

「リン……。わかった、お願いね」

 

リンは頷いて、私はベッドで横になる。

 

「……ごめん、みんな。ちょっと寝るよ……」

 

「ええ、おやすみなさい。先生」

 

ミヤコの声を聴きながら私は目を閉じた。そして私の意識は深い闇へと落ちていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。