走りながら引き金を引き、銃弾をばら撒くように撃ち続ける。向こうのシロコも同じようにアサルトライフルを連射する。弾を掠めようとヘイローがある今なら、かすり傷程度で済む。次に接近戦に持ち込むべく、一気に距離を詰める。向こうも同じ考えだったがこちらは閃光弾のピンを抜いて捨て身で突っ込む。
炸裂、お互いに無視界になるはずがシロコが回し蹴りしたのを気配で感じ取り、しゃがんで回避する。そして私はそのまま足払いをする。
「っ!」
シロコがバックステップで回避する。その隙にホルスターのリボルバーを抜いてファストドローで撃ち落とす。
「くっ……!」
「前と同じ失敗は繰り返さない」
次にシロコがドローンを起動させて、私へ撃ち込もうとする。しかしそれもまたリボルバーで撃墜する。絶え間なく撃ち合い、お互いがお互いの攻撃を回避しては撃ち落とす。
するとシロコが一旦距離を取り、何かを投げた。
回避するために大きく後ろへ下がる。すると爆発して煙幕を発生させる。
煙が晴れるとそこにシロコはいなかった。どこにいるのか? そんな疑問を浮かべている間にも気配を感じて振り向くが、そこには何もいなかった。そして背後から強い衝撃が走ると共に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「かはっ……!!」
肺から空気が一気に吐き出され、意識が飛びそうになるも耐えて立ち上がる。そこにホシノの盾らしきものを持ったシロコが私へ突進してきた。
次に放電手榴弾を起動させ、盾に投げて爆発させる。
「っ……!」
シロコが怯んだ隙に自爆用ドローンを二台同時に起動させ、シロコへ突っ込ませる。その隙にリボルバーに二発込めて、シロコの方へ走り出す。
そしてドローンが盾ごとシロコに激突し、爆発する。盾で防いだ直後に飛び蹴りをシロコに食らわせ、盾構える姿勢を崩させる。その時シロコの手にあったのはホシノのショットガンだった。
「終わり」
そう彼女が呟いて、銃口を私へ向けて一発。直撃だが踏ん張って爆薬を投げ、そして爆発させる。その衝撃でシロコが吹き飛ばされて倒れる。続いてこちら側もノノミのマシンガンを召喚させ、倒れる彼女に向けて乱射する。
「ううっ!」
シロコは弾丸を浴びて、そのまま倒れ伏す。
「ドローンを……!」
突如として医療キットを輸送するドローンが、シロコの直上に現れ、ドローンが降下し医療キットを投下する。
「……ここまでやられるなんて」
即時治療され、彼女は立ち上がって煙幕をばら撒く。視界が悪くなっていく中、複数の風を切る音が掠める。
「こっちか!」
マシンガンを乱射して煙幕を晴らしたとき、真上に跳躍したシロコがスコープ付きアサルトライフルで私を狙い撃とうとしていた。
「終わり」
そう言って引き金を引こうとした瞬間、アサルトライフルで反撃してスコープを破壊。
「っ!」
シロコが怯み、姿勢を崩して落下する。
「……その戦い方は通用しない、か」
シロコがそう呟くと、体勢を立て直して私へ急接近。ホシノのショットガンに切り替え、至近距離で引き金を引く。咄嗟に体を逸らして回避しても彼女は咄嗟に距離を詰めて、ショットガンを乱射する。
「ぐうっ!」
そのうち直撃を食らい、大きく後ろへ吹き飛ばされる。
「……運命を受け入れて」
シロコの両手の間にブラックホールのような球体が生成され、膨張と収縮を繰り返してる。
「まずい……!」
私は咄嗟にリボルバーを抜いてシロコの方へ発砲する。しかしそれはブラックホールに吸い込まれて消える。
その時、球体にひびが入った。球体は崩壊し、苛烈なエネルギーの奔流が私へ迫る。全身が割れて砕け散りそうなほどの衝撃が私を襲う。
「うあああっ!!」
そして私はそのまま吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。全身が強く打ち付けられ、意識が飛びそうになるも何とか耐えた。しかし……もう体が動かない。
足音が一歩ずつ、私の方へ近づいてくる。暗闇の視界に灰色の長い髪をした彼女が見える。リボルバーは遠くに捨てられ、手持ちの武器は何一つない。両手は麻痺し、アーマーはボロボロ。左足からは血が滴り落ちる。
彼女が黒のアサルトライフルの銃口を左胸の方に向けてくる。
同じ光景だ、あの時と。結局それが本質で、そういう物語だったのかもしれない。でもせめてあの時の素敵な日々を一緒に送っていた彼女に言葉をかけられるとしたら。
「今度こそ……」
掠れ声を絞り出して、私は言う。
「最後に殺すのが、私だといいね」
そんな言葉を最後に全てを受け入れた。目を瞑って、安らぎに身を委ねようとした。
しかし、いつまでたっても痛みは来ない。私は目を開けてシロコの方を見ると、彼女は引き金に指をかけたまま。指先は震え、暗い瞳が揺れ動く。何かを言葉を吐こうと口元が動く。
「あ、ああ……」
そして彼女は持っていたアサルトライフルを地面に落とし、頭を抱えてうずくまる。
「あああああああああ!!」
そして黒ドレスのシロコは叫んだ。
「私が、殺した。私が、殺してしまった。私が、『ミコト』を殺してしまった……!」
そっか、そうだったんだ。
「先生、ミコトって……」
この世界のシロコが私へ問いかける。私は彼女に向いて答える。
「……ずっと忘れていた。でも、ようやく思い出せた。それが私の名前だった」
ゆっくりと身体をを起こして、座り込んだまま黒ドレスのシロコを見る。
「この世界に来る前、生徒時代の時。私はミコトという名前で青春を謳歌していた。でも、突然世界が滅びて私だけが生き残っているとずっと思っていた。でも違った。……あの子も生きていたんだ」
「先生! なんとか自爆シーケンスを阻止できました!」
アロナの声が遠くのタブレット端末から聞こえた。
「ありがとう」
それから静寂がこの空間を包んだ。黒ドレスのシロコはずっと泣きじゃくっていて、向こうの黒いアロナと色彩の嚮導者はただそれを傍観していた。私の隣に立つシロコも状況が飲み込めず、呆然とする。
「惨めな結末だね……」
自嘲するように小さく呟くと、仮面を付けた嚮導者が静かにこちらへ歩いてくる。シロコが警戒して銃を向けようとするが、いいよと手で制止させる。
"ミコト……"
「どうしたの?」
声は穏やかなものだった。
"君にどうしても見せなければいけないものがある"
「え?」
すると、その人は包帯だらけの手で仮面を取り外し素顔を現した。
「……どうして。なんで」
脳の中は真っ白になり、喉が震える。見たことがある顔だった。色彩のせいなのか変容しているが、それでもはっきりとわかる。私たちの『先生』がそこにいた。
「……どうして、ここにいるの……? 今まで何をしてきたの? どうして私達の敵に? もう分からないよ!」
仮面を再び着けた先生はただ私を見つめる。そしてゆっくりと口を開く。
"……ごめんね、ミコト。君に色んなものを押し付けて、そして今また君に重荷を背負わせている"
拳を握り、視界が潤んでイライラする。
「……遅い、バカ。先生なんて……大嫌い!」
三角座りのまま顔を埋めて、私は泣きじゃくった。
"……うん。本当にごめん"
謝ったって、何もかも私の中では手遅れで、もう取り返しのつかないところまで来ている。でも強く憎むことも恨むことも出来ない。もう疲れたんだ。
"雨宮ミコト、君にお願いしたいことがあるんだ"
「やだ」
"……お願いだから、聞いて欲しい"
先生は私に近づいて跪く。
「……聞くだけだから」
"ありがとう。ミコトは優しいね"
「早く話して」
"私の代わりに戦ってきた砂狼シロコ、君の親友を託したい"
「シロコを……。でもこの世界に二人のシロコが存在することになるけど……」
"それは問題無いよ。だから……お願い"
先生は私の手を優しく包み込んでそう言った。私はその手を振り払い、立ち上がって答えた。
「いいよ」