虚ろな君は、透き通る世界で何を見る?   作:ginnsyake

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巡り憑いた憑流者

転生、入れ替わり…様々な可能性が頭に浮かぶ。

そのどれも非現実な事象を表す言葉だったが、全部否定できなかった。

それ程異常な事だった、脳に送られる視界の情報が、他人の視点になっている現状が…

僕はこちらを見ていた少女の事も頭から抜け、俯き変容した体を眺めて思考に耽ってしまっていた。

 

「おーい…大丈夫?」

声をかけられ、視界に映っていた少女を思い出し、思考に沈んだ意識が一気に現実に引き戻される。

身に起きている現象を考え過ぎてもしょうがないと思った僕は深く考えるのをやめることにした。

 

「ぼ、えっと…自分に何が?」

つい癖で僕と口にしそうになったが、女性の体になっている事を思い出した僕は、咄嗟に一人称を装った。

性自認のズレが生じてしまった事は一旦目を背ける事にして、とにかく今は情報が欲しい。

この身体の変化もそうだが、物理現象が働いていない光輪の事、僕の世界では見たことも無い異物が存在している事について…

と、言いたいところだったが自身の状況は相手も知らない可能性もあるうえ、彼女が違和感を抱いていないこの世界の常識の部分を聞くのは、異常者と思われるかもしれないため自分で答えを見つけた方が良い。

 

むず痒いが、とりあえず今知らなきゃならないのはこの身体の傷だ、

今は完治したのか痛みは無いが、体を包帯でグルグル巻きにする必要があったのは確かだ。

何も分からないが、目の前の少女が命綱な状況で不信感を持たれたくなかった僕は、大量の疑問を内に秘めておくことにした。

 

「…覚えてないの?」

その問いに頷き、その様子の僕を見てた彼女はため息をつきながらも口を開いた。

 

「ぶっ壊れたオートマタが散乱している場所でアンタは血だらけで倒れてたの」

 

「オートマタの数は10体とかじゃない、正確じゃないけど50体は倒れてた」

 

「そこに立ち会わせたからアタシがここに運んで治療したの」

オートマタ…小説くらいでしか聞いたことは無いが、機械人形やロボットのことだ。

血だらけや、壊れてたという情報から考えるに、その機械たちは戦闘用で争いが起きたのだろう。

数的不利な戦いで辛勝にまで持っていき、貧血や疲労で倒れ、程なくして拾われ今に…みたいな感じだろうか?

 

仮にそうだとしても、そこまでの人数差があって戦闘を選ぶだろうか?

逃走には環境が重要になると考えれるが、無謀な戦闘を選ぶよりもそちらの方が勝算はあると思える…

 

『なにか逃げられない理由でもあったのだろうか?』

…考察してみたは良いが、住んでる世界が違い過ぎて夢を見ている様で、イマイチ実感が湧かない。

それに、当たり前だったが僕の記憶の中を探ってもそんな情報は影も形も見えなかった…あるのは何も変わらない憂鬱な日々の記憶と、それが薬の過剰摂取で倒れた所で終わっている事だけだ。

 

「はぁ…」

口から思わず空気が零れる、状況的にため息をつきたいのは彼女の方だろうが、僕には耐えられなかった。

なんで僕は毎回こんな事になるのか…僕の歩む道は何でいつも茨が敷かれているのか。

前世…いや前々世があるのなら何をしでかしたのか、逆に見たくなる。

せっかく眠れると思ったのに、なんてことないように目覚めるし…この身体に以前の様な欠陥は無くても、世界の方が何やらきな臭い…

今まで外も体力が無くてまともに歩けず、家の中でしかまともに生活できなかった僕が、ロボット達と戦闘が起こり死んでもおかしくない様な傷を負う世界に情報も無しで馴染めというのは、動物園で育てられた草食動物を野生に返すのと同義だ…

その上、命の循環において前世の記憶というのは来世に持っていけない物、そのはずなのに…僕を苦しめた恨めしい過去の記憶は今も僕の頭にへばり付いている。

僕の呪いとまで思える、魂に取り憑く不運が嫌で嫌で仕方が無かった…

 

『それでも逃げてられないし…』

僕は死の危険性が無い心臓になって、正常な肉体として生活出来る変化があるだけ。

前世で叶えられなかった願いを満たせる現状が在るだけ良い…

と…愚痴が表にまで出ない様に、少しでも前向きに考える事にした。

 

 

「記憶が無くて、襲われた理由も相手も分からない、か…」

彼女の顔つきが鋭いものに変わり、深く考えこんでいるのが分かる。

目の前で自分が原因で悩んでいる人がいるのに、僕は何もできない事に申し訳なさを感じてしまう。

 

「…分からない事考えても仕方ないか」

彼女はそう呟いて僕の顔に目を向けて、こちらに問いかける。

 

「アンタ住んでる家とか休める所あるの?」

あるかもしれないが当然知らない、その為僕は答えに首を横に振った。

その答えを聞いた彼女は空き部屋があるためそこを使ってもいいと言ってくれた。

こんな危険な世界でホームレスになるのを避けたかった僕はその提案に甘えることにした。

 

「私の友人が来るまでちょっとだけ待ってくれない?」

話を聞くとどうやら友人と一緒に生活しているため両者の承諾が必要らしい。

友人と生活するなんてことが起こるのは稀有すぎると思ったが口を慎み。

僕がそれに了解すると、少女は椅子に腰掛けふぅ…と吐息を漏らし、両目を瞑った。

 

『僕の話に付き合わされたみたいなものだし、そっとしておこう…』

拾われ、保護された立場にいる僕は、不可抗力とは言え瞑想している彼女に後ろめたく思い、疲れてそうな空気な今に声を掛ける事は出来なかった。

 

部屋に互いの呼吸音以外響かない静寂が訪れる…が、その静寂もそこまで続かず、ドアの開閉音で破られた。

 

 

「飲み物買ってきたよ~」

扉から入ってきた女性が缶コーヒーとジュースを持って少女に声を掛ける。

その人の見た目は、背は160程あり、薄いクリーム色の髪に、セーターとスカートを着て女子らしい服装だった。

彼女の頭上にも同様に光輪が浮かんでいる、この世界では誰もが持っている物なのだろうか…

 

「あ~何々‼あの子起きたの~?」

部屋に入った彼女は起きている僕に気づいて大声を上げる。

僕は耳に刺さるような高く大きい声で僕は目を閉じそうになったが、少女の方は顔にしわも作らず目を開き、賑やかな女性の方を向く。

 

「この子どうするかなんだけど、ユイはどう思って…」

 

「一緒に生活しようよ!そのために助けたんだから‼」

真剣な面持ちの少女の問いにユイと呼ばれた方はあっさりと返し、それどころか食い気味に同居を主張する。

 

「アタシもできればそうしたいけどユイも知ってるでしょ」

この先は聞かなくても予想できた、大量のオートマタという懸念点の話が出る事を。

そもそも僕を治療し保護するという事はロボットを使って僕を狙っている何者かへの、敵対行為に他ならない。

ロボットを率いている何者かと敵対するのを受け入れて保護を選ぶべきなのか否か…そう言った話し合いなのだと、少ない言葉だったが理解できた。

 

「宮ちゃんことだしカイザーが関わってるかも、って考えてるんでしょ?」

カイザー…というのは分からないがこの世界の組織かなんかだと想像できる。

の方も図星らしくその指摘に頷いていた。

 

「カイザーみたいな大物は相手に回復の機会与えないよ、多分出せる兵力を矢継ぎ早に出して潰すと思う」

 

「それに、こうやって治療しちゃったんだしもう手遅れだよ」

 

「一蓮托生ってやつだよ、もうこの子に関わった以上私達退けないよ?」

 

「…それは否定できないな」

ユイの方は作り物の様な妖しい笑みを浮かべその様子では暗い雰囲気を全く感じなかった、少女は小さく息を吐きながらユイの言葉に頷き、肯定する。

 

「こうなったら腹くくるしかないよね!」

 

「まぁ言い出しっぺのアタシにも責任はあるか…」

そう言って方針を決めた彼女らはこちらに向きなおし、口を開く。

僕はその物騒な会話をする二人の様子を見て。

出した結論に胸を撫で下ろした。

まだ生きていられる…そう思ったから。

 

「アタシは雨宮 サエ、機械いじりが得意だ」

 

「家電製品の修理、銃器の違法改造とか仕事にしてる」

 

「こっちが仲紬 ユイ、傭兵の仕事してる」

 

「仕事内容は詳しく分かんないから本人に聞いて」

 

「気軽にユイお姉ちゃんって呼んでね~」

 

銃器に傭兵…予想はしてたけどほんと物騒な単語だ、違法改造という事は法律で銃自体は所持を許可されている訳で、誰でも自衛手段を持っているが、逆を言うと誰でも暴徒になる事が可能という事、それに…

 

『雨宮さんが仕事として銃に触れているという事は子供でも所持できる可能性がある…』

銃社会も仕事の内容についても慣れていかなければこの先やっていけないだろうが。

それでも不安だ…もし持てたら子供の癇癪一つで大事件が起こる、到底維持できるような治安は生まれない…

いや、銃発砲なんかは日常になっている可能性もあり得る…

 

「君は名前何て言うの?」

僕が常識の変化に衝撃を受けている時、仲紬さんに困る問いをかけられる。

名前、僕自身の名前は知っているが、この身体の持ち主の名前は分からない。

考え事していたのもあって、少しうろたえながらも僕は長く黙っているのも不自然だと思い、素直に自分の名前を答えることにした…

 

「自分は空木 リン、っていいます…」

 

「よろしくね~リンちゃん」

僕が自己紹介を終えると小さい僕の身体を包み込むように、仲紬さんに抱き着かれた。

 

「ちょっと怪我人なんだからあまり無茶させるなよ…」

 

「大丈夫、痛みはないですから」

息苦しくて居心地は悪いが、無理矢理離れて空気を悪くするのは気が引けた僕はじっと堪える事にして弁明する。

 

「別にいいじゃん、一緒に生活する家族みたいなものなんだし~」

飽きれた目を仲紬さんに向ける雨宮さん、仲紬さんはそれにどうも思ってない様な態度を返す…

 

『こういうスキンシップは割と良くあるのかな…だとしたら勘弁してほしい…』

優しいとはいえ知らない人と生活することに不安を抱く…

その反面、他人と関わる新鮮な出来事に僕は期待を胸にした。




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少なくても期待してた人にはほんと申し訳ないです、主の空っぽな頭をどうか許していただきたい…
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